チケット転売|バレる理由、違法なケースと罰則を弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  

コンサートや演劇などのチケットを不正に転売すると、チケット不正転売禁止法違反で処罰される可能性があります。

法律で規制されているのは、特定の種類のチケットを所定の手法で転売した場合ですので、チケットの転売がすべて違法というわけではありません。

どのような転売が違法となるのかを知るためには、チケット不正転売禁止法の正確な理解が欠かせません。

そこでこの記事では、チケット転売のなかでもどのようなものが不正転売として規制されているのか、違法となるケースや罰則などについて弁護士が解説します。

チケットの転売には法律違反の不正転売と適法な転売の2種類が存在するわけですが、この記事では特に断りのない限り、前者の不正転売の意味で「チケット転売」という表現を用いることにします。

チケット転売とは

チケット転売とは、コンサートなどのチケットを定価を超える額で転売することであり、チケット不正転売禁止法により規制されています。

以下では、チケット不正転売禁止法が規制しているチケット転売について、より正確な定義を解説していきます。

 

チケット不正転売禁止法とは

チケット不正転売禁止法とは、興行等のチケットの不正転売を規制する法律です。

正式には、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」といいます。

 

チケット転売の定義

チケット不正転売禁止法が規制しているのは、「特定興行入場券の不正転売」及びこれを目的として特定興行入場券を譲り受けることです。

【根拠条文】
(特定興行入場券の不正転売の禁止)
第三条 何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない。
(特定興行入場券の不正転売を目的とする特定興行入場券の譲受けの禁止)
第四条 何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない。

引用元:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律|電子政府の総合窓口

特定興行入場券とは

まず、「興行入場券」とは、不特定多数の者に見せる映画や演劇のうち、国内で行われるもののチケットのことをいいます(同2条)。

引用元:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律|電子政府の総合窓口

そして「特定興行入場券」とは、以上の興行入場券のうち、次のすべてを満たすものをいいます。

現在では、比較的規模の大きなライブや演劇などのチケットは、転売禁止や本人確認が厳密に定められていることが多くなっています。

そこで上記の定義が難しければ、一般的にイメージする「チケット」はかなりの確率で「特定興行入場券」に当たると考えてもいいかもしれません。

不正転売とは

チケットの「不正転売」とは、次のすべてに該当するような転売のことをいいます。

「業として」とは、転売行為を反復継続する意思をもって行うことをいいます。

「不正転売」とは、反復継続する意思をもって販売価格を超える額で転売するということですので、簡単に要約すると、営利目的での転売を指していると考えることができます。

 

チケット転売の問題点

以上のようにチケット転売は法律上禁止されていますが、それはチケット転売に次のような問題点があるからです。

一般論としては、安く仕入れたものを仕入れ値以上で売って利益を得るのは商売の基本ともいわれ、転売行為そのものを一律に不適切とは言い切れません。

しかし、そのような市場の自由にゆだねることが不適当な一定のものについては転売行為を規制するのが社会の利益にかなうといえ、チケットもそのようなものの1つなのです。

需要に合わせて生産数を調整できる工業製品と異なり、興行では座席数が決まっており、供給に上限があります。

そこでチケットの買い占めによって供給不足に拍車がかかると、適正範囲を超えた過剰な価格高騰が起き、さらに利益目的の買い占めが過熱するという悪循環が発生します。

このような悪循環は健全な経済活動とは言えず、興行の開催にも支障を来しかねません。

チケット転売にはこのような問題があることから、「興行入場券の適正な流通を確保」することを目的として、チケット不正転売禁止法が定められているのです。

 

チケット転売の罰則

チケット転売の罰則は、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」であり、これらは併科される可能性があります(同法9条1項)。

併科され得るということは、懲役だけ、あるいは罰金だけといった単体の刑罰ではなく、懲役と罰金を両方科される可能性があるということです。

【根拠条文】
第九条 第三条又は第四条の規定に違反した者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 (略)

引用元:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律|電子政府の総合窓口

 

 

チケット転売が違法となるケース

以上のように規制されているチケット転売ですが、実際に転売によって処罰されるケースが存在しています。

 

チケット転売がバレる理由

チケット転売で処罰されるということは、転売行為が捜査機関に発覚して摘発されているということです。

チケット転売がバレるのは、チケット転売では購入者を募る必要があり、隠密に犯行を遂げることが性質的に不可能な犯罪であるからです。

昔ながらのいわゆる「ダフ屋」は、「チケット譲ります」といった看板を掲げて興行会場の周辺に立つなどしており、ある意味路上で公然と犯行に及んでいるといえます。

また、近年ではSNSを通じて購入を呼びかける事例がとても多くなっていますが、仕入れたチケットをきっちり売りさばくためには公開のアカウントを使用せざるを得ません。

そうすると、警察のサイバーパトロールに発見されたり、転売行為によって迷惑を被っている人から通報されたりといった経路によって発覚することになります。

 

チケット転売が違法な事例

法が規制するチケット転売の要件を要約すると、①主催者の事前の同意なく、②業として(反復継続する意思を持って)、③定価を超える額で販売することとなります。

主催者がチケットの転売(特に、定価を超える額での転売)について同意を与えることは考えがたいですし、定価を超えているかは客観的に判定可能なので、問題になるとすると、「業として」に当たるかどうかという点です。

違法な例

定価5,000円のコンサートチケットを、事前に主催者の同意を得ることなく、今後も同種の行為を繰り返す意思を持って、7,000円で販売した。

「業として」とは、「反復継続する意思を持って」行うことと解釈されている点がポイントです。

反復継続する「意思を持って」ですので、転売行為自体を反復継続する必要はなく、そのような意思を持って行われたと認定できれば、初回の転売行為であっても違反になるということです。

逆に、行けなくなったコンサートのチケットを処分する場合のように、はじめから一度きりのつもりであれば、たとえ定価を超える額で転売したとしても不正転売には当たらないことになります。

 

チケット転売で逮捕されたケース

チケット転売による逮捕されるケースは実際に存在しており、逮捕者が出ています。

実例

WBCチケット不正転売、都内の男女2人を逮捕…約120枚で180万円の利益か

ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本戦の観戦チケットを定価の4倍の高値で転売したとして、警視庁は21日、無職の男(25)(東京都世田谷区)、会社員の女(24)(新宿区)をチケット不正転売禁止法違反容疑で逮捕したと発表した。

WBCのチケット約120枚を転売し、約180万円の利益を得たとみている。

発表によると、2人は昨年11月、今年3月にいずれも東京ドームで行われた豪州戦の外野指定席(6000円)3枚と、イタリア戦の外野指定席(7000円)2枚の計5枚を転売サイトを通じて都内の30~40歳代の男女2人に計13万円で不正に転売した疑い。

逮捕はいずれも19日。

チケットは公式サイトで入手していたという。

調べに2人とも容疑を認め、男は「自分は野球ファンで、全国に観戦に行く際の宿泊費などに充てるためだった」と供述している。

引用元:2023年4月21日 読売新聞オンライン

 

購入者は罪には問われない?

チケットの購入が法律違反となるのは、不正転売目的でチケットを購入する場合です。

自身が利用する目的であれば、不正転売者からチケットを購入したとしても、原則として罪に問われることはありません。

ただし、現在では多くの興行で本人確認が厳格に行われており、入場の際に身分証の提示を求められることがあります。

そうすると、不正転売によりチケット購入した場合、購入者と別人であるとして入場を拒否されることがあります。

また、チケットを譲るということ自体が嘘で、入金をしたもののその後連絡がつかなくなるといった詐欺の可能性もあります。

このようなリスクを回避するためにも、たとえ罪に問われないとしても、不正転売者からチケットを購入することは控えるべきといえるでしょう。

 

 

逮捕・起訴されないようにするには

以上のようにチケット転売は発覚しやすく、実際に逮捕者も出ています。

以下では、チケット転売により逮捕・起訴されないために注意するべきポイントをご紹介します。

 

定価を超える額でチケットを転売しない

違法なチケット転売に当たらないためには、定価を超える額でチケットを転売しないことが重要となります。

販売価格が定価を超えなければ、転売により利益が出ることはありませんので、不正転売になることはありません。

たとえ定価を超える金額での転売であっても、反復継続の意思がなければ不正転売には当たらないと解説しましたが、そのような意思があるかの判定は実際のところ微妙な問題です。

そのため、たとえ反復継続の意思がなかったとしても、高額転売という事実が発覚すれば、不正転売の嫌疑をかけられることがないとはいえません。

誤解を招くことのないよう、仮にチケットを転売するとしても、利益の発生しないような価格設定とするのがよいでしょう。

 

正規ルート以外でチケットを転売しない

せっかくチケットを取ったにもかかわらず、急用などで参加できなくなり、もったいないのでいくらかで引き取ってほしいといった事情が生じることがあるかもしれません。

そのような場合は、主催者の認める正規のルートで転売することをおすすめします。

問題なのはあくまで利益目的でチケットを高額転売することであり、行けなくなったチケットを定価以下で他人に譲るのは、本来問題のない行為です。

このため、チケットを適切に譲渡するためのサービスを提供している事業者が存在しています。

主催者が指定する業者を通じた転売であれば、不正転売に当たることはなく安心して不要なチケットを譲渡することができます。

 

正規ルート以外でチケットを購入しない

チケットは転売するときだけでなく、入手する際も正規ルートに限ることをおすすめします。

正規以外の転売品を購入しても、自身に不正転売の意図がなければ、購入者が処罰対象となることはありませんが、既に解説したとおり、詐欺その他のトラブルに巻き込まれる可能性は否定できません。

そのようなトラブルを避けるためにも、チケットの入手に際しても正規ルートに限ることをおすすめします。

 

刑事専門の弁護士に相談する

チケットを高値で転売した場合、違法な不正転売に該当する可能性があります。

もしそのような心当たりがある場合は、刑事専門の弁護士に相談することをおすすめします。

法で規制されている「チケット転売」とは、一般的な言葉のイメージと概ね一致してはいるものの、厳密な定義となると、「特定興行入場券」の解釈など、非常に専門的な判断となってきます。

ご自身の転売行為が法律違反に当たるのか、仮に違法だとしてどのように対処すべきなのかといったことは、法律の専門家である弁護士に相談しなければはっきりしないのではないでしょうか。

刑事専門の弁護士であれば、チケット転売の違法性の判断や、違法であった場合の対応などについて適切に助言できますので、心配がある場合は刑事事件を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。

 

 

チケット転売の相談先

チケットを転売により購入した方

チケットを転売により購入した場合、原則として購入者が罪に問われることはありませんが、チケットが無効になるなどのトラブルに巻き込まれる可能性があります。

そのような場合、国民生活センター又は全国の消費生活センターに相談することができます。

引用元:独立行政法人国民生活センター|チケットの転売に関するトラブルにご注意!

相談先が分からなければ、消費者ホットラインに問い合わせると相談先の案内を受けることができます。

電話番号は全国共通で「188」となっています。

 

チケットを転売した方、転売目的で譲り受けた方

チケットを転売したり、あるいは転売目的で譲り受けたりした場合、チケット不正転売禁止法違反として犯罪行為になるおそれがあります。

違法かどうかを判定し、違法である場合の適切な対処法について助言を受けるためには、刑事事件にくわしい弁護士に相談することが大切です。

刑事事件における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。

 

 

まとめ

この記事ではチケット転売について、違法となるケースや罰則、違法な場合の対処法などについて解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

・違法なチケット転売とは、特定興行入場券を、主催者の事前の同意なく、定価を超える金額で業として転売することであり、チケット不正転売禁止法により禁じられている。

・チケット不正転売禁止法では、チケット転売のほか、チケット転売目的でチケットを購入することも規制されている。

・要件を満たさない転売については違法ではないものの、トラブルを避けるためには、チケットを転売する際は主催者が認めた転売サービスを利用すべきである。

・チケットを高額転売した場合、違法なチケット転売に当たる可能性があるため、刑事事件にくわしい弁護士に相談すべきである。

当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。

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