器物破損で弁償は義務?刑罰や示談金の相場を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


器物破損をしてしまった場合、民事上の損害賠償責任が発生し、弁償する義務が生じるのが原則です。

自らの責任によって他人に損害を与えた場合、これを弁償する義務を負うとするのが、民法上の原則であるためです。

そのため、器物破損の事案において、どのような法的責任が生じ、どの程度の賠償が必要となるのかを正しく理解しておくことは重要です。

この記事では、器物破損に関して、弁償の義務をはじめとする法的責任の内容や、示談金の相場、対応のポイントなどについて、弁護士が解説します。

器物破損で生じる責任とは?

故意や過失により他人の物を破損してしまった場合、法律上、大きく分けて2つの責任が生じます。

※器物破損は、刑法では「器物損壊」と規定されていますので、以下では器物損壊と表記します。

ひとつが「民事責任」であり、もうひとつが「刑事責任」です。

民事責任とは、自分のせいで他人に財産上の損害を与えた場合、その責任を負う者として、生じさせた被害額を弁償して損害を回復する義務のことをいいます。

他方で、刑事責任とは、犯罪行為を行った場合に、刑罰を受けることによって罪を償わなければならないという責任のことをいいます。

いずれも器物損壊を行ったときに生じる法律上の責任ではありますが、民事と刑事では、誰に対してどんな責任を負うのか、その対象や内容が異なってきます。

器物損壊の弁償を理解する上では、器物損壊で法的責任が発生することに加え、民事責任と刑事責任を正しく区別できるようになることが大切です。

 

 

器物損壊で弁償しなければならない?

他人の器物を損壊した場合、原則として損壊した物の価格を弁償する必要があります。

他人の物を損壊して損害を与える行為は民法上「不法行為」と呼ばれ、これによって生じた損害を賠償する義務が生じます(民法709条)。

不法行為による損害賠償

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法|電子政府の総合窓口

器物損壊、つまり故意または過失によって他人の財物に損害を与えることはこの不法行為に当たるため、民法に定められた上記のルールによって、その損害を弁償する義務があるのです。

これは、被害者に対して自分の落ち度によって与えてしまった損害を回復させるものであり、器物損壊で生じる2種類の責任のうち、民事責任に該当するものです。

 

 

器物損壊で弁償が必要なケースとは?

器物損壊を起こすと、上記のように民事上の賠償責任が生じ、これを弁償する義務を負うことになります。

ここでは、器物損壊による弁償が必要となるケースについて、具体的な例を挙げて説明していきます。

日常生活において、思いがけず他人の物を壊してしまうことは誰にでも起こり得ます。

以下に、よくある器物破損のケースを紹介します。

器物損壊で弁償が必要なケースとは?

店舗での商品破損

買い物中に誤って商品を落として破損させてしまった場合、その商品の価値相当額を弁償する必要があります。

特に、高額な商品の場合は、弁償額が大きくなる可能性があります。

また、破損した商品が他の商品にも被害を及ぼした場合は、その分の賠償も必要となります。

被害が安価な場合など、賠償を請求されないケースもありますが、それはあくまで店側の好意によって免除されているのであり、法律上は賠償責任が生じているケースが多いと考えられます。

 

借家・賃貸住宅での損壊

賃貸住宅で生活しているとき、うっかりして室内の壁や床、窓、ドアなどを損壊してしまうことがあります。

このような不注意を原因として、通常の使用方法によって生じる破損を超えるような損害が生じたときには、賃貸契約に基づいて入居者がその修理費用を支払う責任を負うのが一般的です。

たとえば、不注意で家具の配置中に壁を傷つけたり、掃除中に物を落として床に損傷を与えたりしたときなどに弁償の責任が発生します。

 

車両関連の事故

自動車の運転は事故を発生させるリスクをはらんだ行為であり、しばしば器物損壊の原因となります。

高速度で走行する自動車は破壊力が高い上、被害物も自動車や建物の外壁など高価な物になりがちなことから、自動車事故は器物損壊の中でも特に高額な被害を発生させやすくなっています。

また、大規模な事故に至らない場合でも、たとえば駐車場で誤って他人の車両に擦った程度であっても、修理費用の負担が生じることがあります。

自動車事故の場合、自動車保険によってカバーされることもあるとはいえ、注意する必要が高いといえます。

 

損害が派生した場合

器物損壊での弁償は、直接的に発生させた損害だけでなく、派生的に生じさせた損害にも責任の範囲が及ぶことがあります。

たとえば、自動車を破損させた場合、修理費のような直接的な損害に加えて、修理の間に代車を使用したといった事情があれば、その費用などについても、合理的な範囲で弁償しなければなりません。

そのような代車を利用する費用は、器物損壊行為がなければ支払う必要のなかったものであり、これもまた器物損壊によって生じた損害といえるためです。

 

故意による場合

以上の例はいずれも不注意、すなわち過失による器物損壊の例ですが、当然ながら、器物損壊を故意に行った場合も弁償の責任が生じます。

器物損壊は過失によるケースだけでなく、憂さ晴らしやストレスの発散、報復、嫌がらせといった感情的な理由によって、故意に行われることもあります。

このように、過失でなく故意に行われた器物損壊についても弁償の対象となります。

 

 

故意ではない器物損壊でも弁償が必要?

故意ではない、つまり過失による器物損壊であっても、原則として弁償は必要です。

「故意でなければ器物損壊の責任は問われない」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは刑事責任の話です。

たしかに、刑事であれば、器物損壊罪という犯罪が成立し罪に問われる可能性があるのは、故意の場合に限られます。

他方で、器物損壊で弁償する義務は民法に基づく損害賠償責任であり、故意・過失を問わず、他人の物を壊してしまった場合には賠償の義務が発生します。

被害者の立場からすると、自分の財産に他者から損害が加えられたのであれば、それが故意であろうとなかろうと、弁償してほしいと考えるのが普通です。

故意でも過失でも、物の破損という損害が生じていることには変わりがありませんので、弁償する責任が生じることになります。

 

 

器物損壊で成立する犯罪と刑罰

器物損壊は、民事上の損害賠償責任が生じるだけでなく、故意に行われたときには、犯罪行為として刑事責任が発生します。

意図的な器物損壊行為は、刑法が定める「器物損壊罪」にあたり、「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」に処せられます(刑法261条)。

参考:刑法|電子政府の総合窓口

犯罪として処罰されるというのは重みのあることですので、故意に器物破損を行わないよう注意する必要があります。

器物損壊罪についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。

 

 

人の物を壊してしまったときの示談金の相場

器物損壊によって他人の物を壊してしまった場合、「示談」という手続きによって解決できるケースがあります。

示談とは、加害者が被害者に謝罪し、これを受け入れてもらうことによって紛争を解決することをいいます。

示談の際には、損害賠償や慰謝料などを包括した解決金のような趣旨で、「示談金」という金銭を被害者に支払うのが一般的です。

いくらくらいを支払えばよいのか、示談金の相場が気になるところですが、器物損壊の示談金は被害弁償の意味合いが強いため、壊した物の時価や修理費用などの実損額をベースに考えることになります。

ただし、示談の成立は双方が折り合えるかというのが決定的なポイントとなってきますので、必ずしも客観的な損害額に縛られるわけではありません。

刑事と民事は別個の責任であると解説してきましたが、示談が成立し民事的に事件が解決していることは、刑事事件としての処分にも大きな影響を与えます。

そこで、早期に示談を成立させて刑事的な処分を最小限に抑えたいといった事情があるときは、慰謝料の見合い額を上乗せする意味を込めて、実損額を超えた金額を提示することもあります。

そうすることによって、被害者の納得を得られやすくなり、示談成立の可能性が高まるためです。

他方で、被害者の側にも物の損壊に関して落ち度があった場合などには、いわゆる「過失割合」のような考え方で、その分を差し引いた額での示談となることもあります。

器物損壊の示談金の相場としては、被害額が大きく関係してくるものの、必ずしもそれにとどまらないことを知っておきましょう。

 

 

器物損壊の3つのポイント

器物損壊の3つのポイント

器物損壊罪は親告罪である

故意に行われた器物損壊行為は、刑法上の器物損壊罪にあたりますが、この罪は「親告罪」とされています。

親告罪とは、容疑者を起訴するために、被害者からの告訴という意思表示が必要とされる罪のことです。

親告罪では、容疑者を処罰するためには告訴が必須であり、告訴がない状態では処罰することはできません。

そして、告訴には法律上期間の制限があり、告訴のないまま所定の期間が経過すると、告訴できなくなる結果、もはや処罰されることはなくなります。

そのため、器物損壊では、被害者から告訴が出されるかが、刑事事件となるかを左右する大きなターニングポイントとなるのです。

器物損壊における時効の詳細は、以下のページをご覧ください。

 

被害者との示談交渉を成功させる

器物損壊では、被害者との示談交渉を成功させることが重要なポイントとなります。

示談は、当事者同士の合意によって紛争を解決する手続きです。

示談の内容がどのようなものになるかは事案によって千差万別ですが、告訴や被害届を提出しないこと(すでに提出されている場合は取り下げること)が合意の内容とされることも一般的です。

そのような内容の示談を成立させることは、器物損壊では特に大きな意味を持ちます。

器物損壊罪は親告罪であり、示談によって告訴が取り下げられると、それで処罰の可能性が事実上消滅することになるからです。

親告罪である器物損壊罪では、被害者と示談を成立させることは、損害を弁償して民事責任を果たすとともに、刑事事件としても事件を終了させることになります。

単に反省を示すということだけでなく、処罰の可能性を消滅させる点において、器物損壊で示談交渉を成功させることは重要な意味をもつといえます。

示談交渉における弁護士選びのポイントについては、以下のページをご覧ください。

 

刑事事件に強い弁護士に相談する

器物損壊が刑事事件として扱われる場合、刑事事件に強い弁護士に相談することは非常に重要です。

法律の専門家である弁護士は、複雑な法的手続きをわかりやすく説明し、依頼者が自分の権利を守るための適切なサポートを提供します。

また、示談交渉においても弁護士の支援が役に立ちます。

相手方との交渉は、法的知識と交渉スキルを伴う難しいプロセスであり、専門家のサポートを受けることが有益です。

器物損壊事件では、刑事事件に強い弁護士に相談することで、不安を軽減し、問題を効果的に解決する道筋を見つけることができます。

刑事事件における弁護士選びの重要性については、以下のページをご覧ください。

 

 

器物損壊と弁償についてのQ&A

器物損壊の慰謝料の相場は?

器物損壊の民事責任は実際に生じた損害額にとどまることが多く、慰謝料は発生しないケースもあります。

ただし、故意による損壊や、損壊により被害者に重大な精神的苦痛を与えた場合には、慰謝料が認められることがあります。

具体的な金額は、損壊の態様や被害者の受けた精神的損害の程度により異なりますが、数万円から数十万円程度となることが一般的です。

 

 

まとめ

まとめ
この記事では、器物損壊に関して、弁償の義務をはじめとする法的責任の内容や、示談金の相場、対応のポイントなどについて解説しました。

記事の要点は、次のとおりです。

  • 器物損壊では、故意・過失を問わず民事上の損害賠償責任が発生する。
  • 故意による器物損壊は、器物損壊罪が成立し3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。
  • 器物損壊での示談金の相場は、物の種類や破損の程度により異なるが、修理費用や市場価値を基準に算定される。
  • 器物損壊を起こした場合、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要である。

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