起訴されたらどうなる?起訴の流れについて解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


起訴されると、被疑者から被告人へと立場が変わり、刑事裁判を受けることとなります

起訴された場合の有罪率は約99%です。

したがって、起訴されるということは、ほぼ確実に前科が付くということを意味します。

また、身柄拘束の場所が移動になったり、保釈を請求できるようになったりするなど、変化が生じます。

この記事では、そもそも起訴とはなにか、起訴されればどうなるのか、起訴後の流れなどについて解説します。

起訴とは

起訴とは、検察官が、裁判所に対して、審判(審理・判断)を請求する行為をいいます。

刑事事件で起訴するかどうかの判断は、検察官が行います。

被害者や警察官が起訴をすることはできず、起訴をする権限は、検察官だけが有しています。

これを「起訴独占主義」といいます。

起訴には、大きく分けて、通常起訴(公判請求)と略式起訴の2種類があります。

以下、それぞれの詳細についてお伝えします。

通常起訴(公判請求)とは

通常起訴は、正式には、公判請求といわれます。

通常起訴されれば、公開の法廷で裁判が開かれ、判決の言渡しを受けることになります。

刑事事件のうち、通常起訴がなされる割合は、約9%です(令和4年)。

参考:令和5年版犯罪白書

正式起訴の解説については、こちらも参照してください。

 

略式起訴とは

もう一方の略式起訴は、比較的軽微な事件について、公開の法廷を開かずに、書面での裁判を求める行為をいいます。

略式起訴を行うためには、次の3つの要件を満たす必要があります。

  1. ① 簡易裁判所管轄の事件であること
  2. ② 100万円以下の罰金又は科料を科すことのできる事件であること
  3. ③ 裁判を略式手続で行うことについて被疑者の異議がないこと

被告人には正式な裁判を受ける権利が保障されていますので、書面での簡略な手続で行われる略式起訴を行うためには、被告人に異議がないことが必要です。

他方、略式起訴は、書面で裁判が行われますので、被告人にとっても、裁判を受けるために裁判所に出頭する必要がなくなり、事件の結論を迅速に知ることができるというメリットがあります。

書面での裁判の結果は、正式起訴の判決に相当する略式命令を受けることで知ることとなります。

この略式命令に不服がある場合には、正式裁判を求めることが可能です。

刑事事件のうち、略式起訴となる割合は、約20%です(令和4年)。

検察庁終局処理人員総数の処理区分別構成比

参考:令和5年版犯罪白書

略式起訴の解説については、こちらも参照してください。

 

 

起訴されたらどうなる?

起訴されたらどうなる?

 

被告人へと立場が変わる

起訴されれば、それまでの被疑者(ひぎしゃ)から、被告人(ひこくにん)へと立場が変わります。

単に名称が変化するだけでなく、法的に立場が変化し、被疑者段階とは異なる取扱いがなされます。

以下、具体的にお伝えします。

 

身柄の拘束が続く

被疑者段階で勾留されていてそのまま起訴された場合、被告人段階でも勾留の効果が維持されますので、引き続き身柄を拘束されます。

被疑者段階の勾留は、最大20日(10日 + 10日)ですが、被告人段階の勾留は、最大2月(1月 + 1月)で、延長が必要な場合、特段の手続を経ることなく、自動で更新されます。

被疑者段階の勾留場所は、警察署の留置場であることがほとんどですが、被告人段階では、多くの場合、起訴後しばらくして拘置所に移されることとなります。

留置場では、弁護士は、平日・休日を問わず、24時間接見が可能ですが、拘置所では、原則として、平日の9時から17時の間しか接見をすることができません。

 

保釈の請求が可能になる

被疑者の勾留は最大でも20日ですので、被疑者には保釈という制度自体がないのですが、被告人になれば、保釈を請求することができるようになります。

保釈には、保釈保証金※が必要で、住む場所の指定や被害者との接触禁止などの条件が付けられることがほとんどですが、それ以外は通常の日常生活を送ることが可能です。

※保釈保証金の金額に決まりはありませんが、通常150万円から200万円程度が多いです。

お伝えしたとおり、拘置所では平日の日中しか接見することができませんので、円滑な裁判の準備に支障が生じかねません。

この点、保釈が認められれば、弁護士にとっても、時間制限を気にすることなく裁判に向けた打合せを行うことができるというメリットがあります。

 

起訴前後の比較

上記をまとめると下表のとおりとなります。

要素 起訴前 起訴後
立場 被疑者 被告人
勾留の期間 最大20日(10日 + 10日) 最大2月 + 延長が必要な場合は自動更新
勾留の場所 留置場 拘置所
保釈請求 ×

 

 

起訴された場合の流れ

ここでは、通常起訴と略式起訴のそれぞれについて、起訴された後の流れをご紹介します。

 

通常起訴の流れ

通常起訴は以下のような流れで進んでいきます。

通常起訴の流れ

 

①起訴状の送達

起訴されてから数日以内に、起訴状が送達されます。

勾留されている場合には、留置場に送達され、そこで起訴状を受領します。

起訴状には、「いつ・どこで・どのような犯罪を犯したとして起訴されているのか」が具体的に書かれていますので、その内容に間違いがないかを確認しなければなりません。

 

②第1回公判期日の決定

起訴から1~2週間程度で、1回目の裁判の日程が決定します。

これについても、勾留されている場合には、留置場に送達され知らされることとなります。

事案にもよりますが、1回目の裁判の日程は、起訴から1~2月後ぐらいの日を設定されることが一般的です。

 

③検察官請求証拠の開示

起訴から約1月程度で、検察官が裁判で請求する予定の証拠が開示され、閲覧・謄写(コピー)することができるようになります。

起訴状などと異なり、開示の連絡は弁護士宛てにしかなされませんので、証拠の内容を確認するには、弁護士に検察官請求証拠を入手してもらい、弁護士から証拠を受け取る必要があります。

 

④裁判

争いのない認めの事案であれば、1回で結審し、次回が判決期日となり、計2回で裁判が終了することがほとんどです。

【ⅰ1回目の裁判の流れ】

a 人定質問


名前・職業・住所・本籍地を尋ねられ、人間違いがないかの確認が行われます。

 

b 起訴状朗読


検察官が起訴状を朗読します。

 

c 黙秘権告知


裁判官から黙秘権が保障されていることが告げられます。

 

d 罪状認否(ざいじょうにんぴ)


起訴状に間違いがないかどうか、被告人と弁護人への確認が行われます。

 

e 冒頭陳述(ぼうとうちんじゅつ)


検察官が証拠で立証しようとする事実が読み上げられます。
被告人がどのような人物で、なぜ犯罪を犯したのかなどが具体的に示されます。

 

f 証拠調べ


まず、供述調書などの書面や物の取調べが行われます。
次に、情状証人の尋問や被告人自身への質問が行われます。

 

g 論告求刑(ろんこくきゅうけい)、弁論(べんろん)


検察官が論告求刑を、弁護人が弁論を行います。

 

h 最終意見陳述、結審(けっしん)


最後に、被告人が意見を述べる機会が与えられ、結審します。

【ⅱ2回目の裁判(判決期日)の流れ】

a 保釈中の場合


保釈中の被告人が判決期日を迎える場合、開廷前に所持品検査が行われます。そのため、開廷時刻の15分ほど前には法廷に到着しておく必要があります。

執行猶予付きの判決や無罪判決を受けた場合、判決の言渡しを受けた後、そのまま自宅に帰ることができますが、実刑判決を受けた場合には、保釈の効果が失われ、直ちに身柄を拘束されることとなり、自宅に帰ることは許されません。

したがって、保釈中に判決の言渡しを受けに行くときには、実刑判決の場合に備えて、刑務所に持って入りたい荷物を整理した上で持参しなければなりません。

 

b 勾留中の場合


勾留中の被告人が執行猶予付きの判決や無罪判決を受けた場合には、勾留の効果が失われ、その時点で釈放されます。

ただし、拘置所などの勾留場所に荷物を置いたままですので、判決の言渡しを受けた後、一旦勾留場所に戻り、荷物を整理してから出所するという流れがほとんどです。

実刑判決を受けた場合には、特に変化はなく、勾留場所に戻って、判決の確定や入所する刑務所の決定を待つこととなります。

 

c 在宅(身柄の拘束がない)の場合


身柄の拘束がない在宅事件で執行猶予付きの判決や無罪判決を受けた場合、特に変化はなく、自宅に帰ることができます。

実刑判決を受けた場合でも、その場で身柄を拘束されるわけではなく、一旦は自宅に戻ることができます。

判決から10日前後で、検察庁から呼出状が届きますので、これに従って検察庁に出向き、そこで収監されることになります。

 

略式起訴の流れ

身柄の拘束がない在宅事件で略式起訴された場合、裁判は書面で行われ、科される可能性のある刑も罰金又は科料ですので、特に大きな変化はありません。

略式命令が郵送で送られてきますので、これに従って、検察庁で罰金・科料を納付すれば手続は終了となります。

これに対し、勾留されていて略式起訴された場合、略式命令を受けた時点で勾留の効果が失われ、釈放されることとなります。

通常、略式命令は、略式起訴のあった当日中に出されますので、通常起訴の場合と比べて早期の釈放が実現されます。

なお、いずれの場合であっても、略式命令で支払いを命じられた罰金・科料を納付せずに放置していれば、労役場留置を強制されるおそれがあります。

労役場留置は、1日当り5000円で計算され、支払いを命じられた罰金・過料の額に達するまで行う必要があります。

 

 

起訴されたら示談はできない?

起訴後の示談の注意点

起訴されるまでに示談が成立していれば、不起訴処分の獲得が期待できます。

起訴された後は、保釈による早期釈放と、執行猶予付きの判決による懲役回避が重要な目標となりますが、これらとの関係でも、示談は重要な意味を持ちます。

そのため、起訴された時点で示談が成立していない場合には、起訴後も引き続き示談交渉を行う必要があります。

起訴前の示談交渉では、検察官が起訴・不起訴を決定するまでに示談を成立させることを目指しますが、起訴後は、裁判が結審するまでに成立させることを目指します。

これは、裁判が結審してしまうと、原則として新たな主張や証拠を提出することができなくなり、せっかく示談が成立しても、判決に反映されないという事態が生じかねないからです。

結審後に示談が成立して、判決に反映してほしいという場合には、弁論の再開を請求することができます(弁論を再開するかどうかは裁判所が判断しますので、必ず弁論が再開されるとは限りません)。

また、判決が出た後に示談が成立した場合には、判決に反映させることは物理的に不可能ですので、控訴して、示談が成立したことも含め、改めて判断してもらうことになります。

 

 

弁護士の活動

起訴されれば、被告人として裁判を受けて、判決を待つことになります。

裁判での有罪率は約99%ですから、起訴されることは、ほぼ必ず前科が付くということを意味します。

参考:令和5年版犯罪白書

そのため、起訴されるまでの間は、起訴による前科を回避するために、不起訴処分の獲得に向けた活動を行います。

起訴された後は、目標を切り替え、執行猶予付きの判決の獲得に向けて、引き続き活動を行うこととなります。

以下、それぞれの活動について、具体的にお伝えします。

 

起訴される前の活動

被害者がいる犯罪の場合、不起訴となるために重要なことは、被害者と示談を成立させることです。

そして、示談が成立すれば、どのような内容で示談が成立したのかを示すため、示談書を作成します。

この示談書には、被害者に対する謝罪、示談金を支払うこと、被疑者(加害者)の刑事責任を許すこと、被害届を取り下げることなどを記載します。

このほか、性犯罪やストーカーの場合などでは、今後は一切被害者に近付かないこと(違反すればペナルティがあること)などを記載すべきケースもあります。

個別の事案に応じて、そして、被害者の納得を得られるような内容で示談を提案する必要があり、起訴されるかどうかにも大きく影響しますので、起訴される前の中で、力を注がなければならない活動の一つです。

示談以外では、早期釈放に向けた活動も重要です。

勾留されている場合、最大で20日間身柄を拘束され、最悪の場合には、仕事を失ったり学校を退学になる可能性がありますので、準抗告や勾留取消請求などの方法を用いて、早期釈放を目指します。

 

起訴された後の活動

ひとたび起訴されてしまうと、遡って不起訴となる(起訴がなかったことになる)ことはありませんので、執行猶予付きの判決を得られるよう、裁判の中で主張することが重要な活動となります(当然のことですが、無実である場合には、無罪を主張することが優先です)。

すでにお伝えしたとおり、起訴された後であっても、執行猶予付きの判決や保釈を得るためには、示談の成立が大きく影響しますので、引き続き示談交渉を行う必要があります。

示談が成立したことを裁判の中で考慮してもらうためには、作成した示談書を証拠として請求し、裁判の証拠として採用してもらうことが必要です(証拠として採用されなければ、いくら示談が成立していても、裁判の中では一切考慮されません)。

また、執行猶予は、刑務所ではなく社会の中で更生するものですので、これまでとは環境が異なり、再び犯罪に手を染める心配がないということを示さなければなりません。

そのために、家族や友人などに、情状証人として法廷に立ってもらい、被告人の身元を引き受けて監督することを話してもらい、被告人には、情状証人の言うことを聞いて生活することを誓ってもらいます。

 

 

まとめ

通常起訴された場合は、保釈を請求して早期釈放を実現することと、執行猶予付きの判決を獲得して懲役を回避することが、重要な弁護活動となります。

特に示談は、保釈と執行猶予にとって重要な事情になりますので、起訴までに成立していない場合でも、起訴後も引き続き交渉を続けて示談を成立させるように努力しなければなりません。

略式起訴は、軽微な事件について、書面だけの裁判で罰金又は科料を科す場合に行われるものです。

裁判所に出頭することなく書面だけで裁判が行われますので、裁判を受けるために何度も裁判所に出頭する手間が省けます。

また、勾留されている場合には、略式命令を受けた時点で勾留の効果が失われますので、早期釈放を実現できます。

いずれの場合においても、刑事事件で検挙された場合には、速やかに弁護士に相談・依頼なさることをお勧めします。

経験豊富な弁護士が、まずは不起訴処分によって前科を回避し、起訴された場合には、保釈による早期釈放や執行猶予付きの判決の獲得を目指します。

 

 

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