刑事事件で裁判に出頭しなかったらどうなる?【弁護士が解説】
裁判所から刑事事件に出頭するよう連絡がきました。
出頭しなかったらどうなるのでしょうか?
被告人の場合
出頭しなかった場合の取り扱い
刑事裁判においては、被告人の出頭がなければ公判を開くことができないとされており(刑事訴訟法286条)、在宅事件として捜査が進められていた場合には、裁判所から出頭を求められることになります。
しかしながら、被告人が公判に出頭しなかったとしても、そのことが何らかの犯罪に該当するわけではありませんし、出頭しなかったことに対する罰則規定も存在しません。
それでは公判に出頭する必要はないのではないか、と考えられる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうはいきません。
被告人が裁判に出頭しないということが続く場合には、裁判所が被告人を勾引することが考えられます。
「勾引」とは、被告人が住所不定である場合や正当な理由なく裁判所からの召喚に応じない場合に、強制的に裁判所に連れていくことができる手続きです(刑事訴訟法58条)。
勾引は公判への出頭を確保するための身体拘束なので、その効力は裁判所に引き渡されてから24時間以内という短い期間となっています(刑事訴訟法59条)。
出頭しなかった場合全てで勾引の手続きが取られるわけではなく、勾引までされるケースは稀ではありますが、以下のような裁判例があります。
判例 正当な理由がないと判断された裁判例
住居地から裁判所まで出頭することが可能である被告人が、病気を理由に7度も出頭せず、更に呼び出しに対しても出頭できない旨の連絡を行なった場合に、正当な理由なく召喚に応じないおそれがあると認められています。
【東京高等裁判所昭和53年4月6日付判決】
病気であるため出頭できないという理由は、一般的には正当な理由であると認められることが多いと思われますが、何度も同じ理由による不出頭が続くと、正当な理由がないと判断されて、強制的に裁判所に連れていかれる可能性があるということです。
また、何度も公判に出頭しなかったことが理由となり、逃亡のおそれが高いと判断された場合には、その後勾留される可能性も残されています。
勾留は長期間にわたることも多いため、日常生活に支障が出る場合も多いことでしょう。
保釈されている場合は要注意!
起訴されたときには勾留されていたものの、保釈保証金を支払って保釈されていた場合、裁判所からの召喚に応じない事には高いリスクが伴います。
なぜならば、被告人が召喚を受け正当な理由なく出頭しないときには、保釈を取り消すことができるとされているからです(刑事訴訟法96条1項1号)。
保釈が取り消された場合には、当然、保釈保証金は没収されます(刑事訴訟法96条2項)。
保釈保証金の金額の相場は、最低で150万円、通常200万円ともいわれており、非常に高額です。
そのため、保釈保証金が没収されることで、金銭的にもかなりの痛手となることが予想されます。
また、保釈が取り消された後は再度勾留をされることになるため、長期の身体拘束が見込まれます。
証人の場合
裁判所は、刑事訴訟法に特別の定めのある場合を除いて、何人でも尋問をすることができると定められています(刑事訴訟法143条)。
刑事訴訟法で特別の定めがある場合とは、公務員であった者や衆議院もしくは参議院の議員、内閣総理大臣その他の国務大臣が、職務上知り得た秘密に関する事項について証言を求められた場合に限られています(刑事訴訟法144条、145条)。
そのため、ほぼ全ての国民は、裁判所からの要請があれば証言をする義務があり、裁判所からの召喚に応じなかった証人に対しては、罰則の規定があります。
刑事訴訟法151条は、
「召喚を受けた商人が正当な理由なく出頭しないときは、決定で、10万円以下の過料に処し、かつ、出頭しないために生じた費用の賠償を命ずることができる。」と定めています。
過料は、刑罰ではありませんので、過料の支払いを命じられても前科がつくわけではありません。
もっとも、刑事訴訟法152条は
「証人として召喚を受け正当な理由なく出頭しない者は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。」と定めており、こちらはれっきとした刑罰です。
そのため、証人として裁判所から出頭を命じられたにもかかわらず、出頭しなかった場合には前科がつく可能性があるという事に注意が必要です。
被告人であっても証人であっても、公判に出頭しないことにはデメリットしかありません。
裁判所からの召喚を受けた場合には、素直に応じることが一番といえます。
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