痴漢冤罪は弁護士にすぐにご連絡を|現場で役立つ対処法を解説
目次
痴漢の冤罪はすぐに弁護士にご連絡を
刑事専門の弁護士の助言を受ける
冤罪であれば、逮捕されることも処罰されることも絶対にないはずだから弁護士を頼むまでもないと考えている方がもしもいらっしゃるのであれば、大変危険です。
冤罪であっても、逮捕される可能性は十分にありますし、誤った有罪判決を受ける可能性も否定出来ません。
また、仮に逮捕されなかったとしても、警察の取り調べは一般の方が想像しているものよりもはるかに過酷です。
刑事事件の流れの中で、弁護士のサポート無しに冤罪であるとして戦うことは非常に困難です。
冤罪なのだから、自分の言い分を信じてもらえるはずだと考えていたような場合は、より一層ショックを受けることになるでしょう。
警察の取り調べに心が折れて虚偽の自白をしてしまったり、簡単に身体拘束が認められてしまい会社を解雇されてしまったりといった事態も起こりえます。
刑事事件に詳しい弁護士に早期に連絡し、弁護を受けることで、仮に身体拘束を受けることになったとしても早期の釈放が見込める事案がありますし、取り調べへの適切な対応のアドバイスを受けることで、冤罪による不利益を回避することが出来る可能性があります。
とはいえ、その場で知り合いの弁護士に依頼をしようと思っても、そんな弁護士はいないという方が大半でしょう。
そこで、痴漢冤罪事件については、インターネットで刑事事件に詳しい弁護士を調べて、その弁護士から助言を受けることをお勧めいたします。
刑事事件を専門に扱う事務所の場合、痴漢冤罪の対処法についての専門知識やノウハウを持っているため、的確な対応法を助言してもらえるでしょう。
ご家族が逮捕されている場合
既にご家族が逮捕されている場合、ご本人は刑事専門の弁護士に相談しようとしても、身柄を拘束されているため相談できない状況です。
そのような場合、ご家族がご本人に代わって、刑事専門弁護士に依頼して、ご本人に面会(「接見」といいます。)して助言してもらうという方法をお勧めします。
特に、冤罪を防止するためには迅速に刑事弁護活動を開始すべきです。
そのため、できるだけ早期の接見がポイントとなります。
なお、刑事事件を専門に扱う事務所の場合、この接見を強力にサポートしてくれる事務所もありますので、そのようなサービスを提供している法律事務所に相談されると良いでしょう。
当番弁護士制度とは
当番弁護士とは、日本弁護士連合会が運営している制度です。
逮捕されているご本人が当番弁護士の利用の申し入れを行えば、24時間以内に1度だけ弁護士が接見に来てアドバイスをしてくれるという制度です。
接見に来てくれる弁護士を選ぶことは出来ませんが、最低限のサポートは受けられるはずです。
また、無料で利用できるため、私選が難しい場合、警察に「当番弁護士制度を利用します。」と伝えるようにしましょう。
【現場で役立つ】痴漢の冤罪で絶対にやってはいけないこと
①現場から逃げること
痴漢をやってもいないのに、通退勤の貴重な時間を奪われたくないと感じ、その場から立ち去ろうと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、このような対応は絶対にやってはいけません。
なぜなら、本当は冤罪であったとしても、一度逃げたという事実がある以上、捜査機関はうしろめたいから逃げたのだと決めつけ、その後の捜査でも強硬な態度に出てくる可能性があるからです。
一時期、線路を走って逃げるといった誤った対応が話題となったこともあります。
このような行為は鉄道営業法にも違反してしまいますので、痴漢よりも重い刑罰が科されることになる可能性が極めて高いです。
また、駅構内を走って逃げるという場合もリスクがあります。
走っている途中に他の通行人の方にぶつかったり突き飛ばしたりしてしまうと、暴行罪や傷害罪に問われることとなります。
痴漢は冤罪であったとしても、通行人に怪我をさせてしまった場合、これらの犯罪は間違いなく成立します。
結果として傷害罪は痴漢よりも重い刑罰となることもあり得ますので、本末転倒といえるでしょう。
いずれの方法であっても、その場から逃げることは絶対にやらないようにしてください。
冤罪のために罪を犯してしまっては本末転倒です。
②警察に身元を隠さないこと
駅員室等へ移動した後、警察が現れ、身元の確認が行われます。
このとき、「冤罪なのだから個人情報を渡す必要もない」と強硬な姿勢を見せることは、得策ではありません。
痴漢の被害に遭ったと主張している者がいる以上、警察としては、本当に犯人と指摘されている人物が痴漢を行なったか否かを捜査する必要があります。
本当は冤罪であったとしても、このような状況を客観的に見た場合、犯罪の嫌疑(けんぎ)が一定程度は認められてしまいますので、逮捕の要件を満たす可能性が十分にあります。
そのため、個人情報を隠した場合、捜査機関は逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあるとみなして逮捕の手続きに踏み切ることが考えられます。
また、勤務先を話さないと、所属確認のために職場に連絡がいく可能性もあります。
個人情報を隠すことで、身元引受人を任せられる人に連絡を取ることで解放される可能性を放棄することになりますから、オススメはできません。
③なるべく物には触れないこと
かなり昔からある捜査手法ですので、ご存知の方が多いかもしれませんが、痴漢の捜査の中で微物検査というものが行われることがあります。
微物検査によって、被疑者の手などに被害者の衣服の繊維がどの程度付いているかが分かることがあり、その検査結果をもとに被疑者が被害者に意図的に触れたかどうかを推測していくことがあります。
微物検査の結果、何も衣服の繊維が検出されなかった場合に、直ちに冤罪であることが分かってもらえるという訳ではありませんが、冤罪であることを弁護側が主張する根拠の一つとなりえます。
しかし、微物検査を実施する前に色々なところを触れていた場合、繊維が付着していないのはそのせいだと考えられてしまい、嫌疑が晴れない可能性が出てきます。
④供述調書に署名押印をすること
警察に身柄が引き渡された後は、警察署で事情聴取を受けることとなります。
その際に冤罪であることを主張したとしても、警察は「相手がこう言っているのだから、仕方ない。」「この書類にサインしないと帰れないよ。」などと強引に自白する内容の供述調書にサインを迫ってきます。
刑事事件において、冤罪にもかかわらず犯行を認めてしまうと取り返しがつきません。
検察官も裁判官も、自白した内容の供述調書があれば、その供述調書を有力な証拠として簡単に起訴し、有罪判決を書きます。
とりあえずその場を逃れるためにサインをしただけで、あとから本当のことを言えば信じてもらえるという考え方は、少なくとも日本の刑事事件においてはほとんど通用しません。
現場でどう動けばいい?痴漢で疑われた場合の対処の流れ
①痴漢の被害申し出から下車まで
冤罪の場合、被害の申し出があっても下車したくないと思います。
しかしながら、そのままその場から動かないということは現実的ではありません。
周囲の目もありますし、下車しないよう抵抗する際に周りの物を強く掴んでしまい、微物検査に影響が出る可能性もあります。
もしも周りに証人となってくれそうな方がいれば、協力してくれないか頼むことも考えられますが、難しそうであれば、素直に下車した方が無難でしょう。
下車後も共通して言えることですが、出来るだけ周りの物や人に触れずに済むよう行動してください。
②警察が来るまでの対応
警察が来た後は、会社等に連絡をしようとしても現行犯逮捕したからもう連絡は出来ないなどと言われる可能性があります。
そのため、警察が到着するまでの間に会社や家族等に痴漢の冤罪に巻き込まれたことを報告しておく必要があれば、この時間に行うようにしておきましょう。
なお、被害者や目撃者と名乗る方が連絡先や勤務先を教えるよう要求してくることもあるかもしれませんが、これらの人物に個人情報を教える必要はありません。
この後で述べるように、警察にきちんと情報提供を行えば十分です。
③警察が来たら必要な情報提供
警察が到着したら、冤罪である旨をしっかりと伝えるとともに、質問に答え、要求された個人情報についても提供しましょう。
そうすることで、少しでも逮捕の必要性が低いと考えてもらえる可能性もあります。
ただ、注意すべきことは、自分は痴漢をやっていないような場合でも、被害者は本当に痴漢被害に遭っている可能性があるということです。
被害者が痴漢をでっち上げたというような軽はずみな発言はせず、「自分はやっていない」という発言にとどめましょう。
④逮捕ということになれば当番弁護士の要請をする
その場で現行犯逮捕として扱われることが決まれば、そこから最長72時間は外部と連絡を取ることが不可能になります。
知り合いの弁護士がいない場合は、当番弁護士制度を利用したいということを警察に必ず伝えてください。
そうすることで逮捕初期に必要な最低限のアドバイスを受けることが出来ます。
痴漢冤罪で弁護士ができること|弁護士に依頼するメリット
①逮捕を防ぐ
冤罪であっても現行犯逮捕をされる可能性はあります。
また、現場から離れたとしても、捜査機関が防犯カメラ映像等を駆使して、後日逮捕に至る可能性もあります。
前者の場合、弁護士がその場にいない以上は避けることは難しいですが、後者の場合には弁護士が逮捕の必要性がないことを捜査機関に示して逮捕を避けられる可能性があります。
逮捕された場合、身体拘束を受けることによる不利益だけでなく、報道されることによる不利益も生じる可能性があります。
冤罪であっても、一度逮捕の報道が出てしまえば社会的に大きなダメージを受けることになりますし、冤罪であったことが後日発覚しても、そのことが報道されることはほぼありません。
②長期の身体拘束を防ぐ
仮に逮捕されてしまった場合、そのまま勾留の手続きに進んでしまうと、最大23日間の身体拘束を受けることになってしまいます。
冤罪であったとしても、長期間の身体拘束を受けることで仕事に大きな影響が生じてしまうでしょう。
弁護士はそのような事態を避けるために、裁判所に対して意見書を提出し、勾留を認めないよう働きかけることが出来ます。
冤罪である可能性を示したり、勾留の要件を満たしていないことを説得的に主張したりすることで、長期の身体拘束を防げる可能性があるでしょう。
逮捕されてから勾留が行われるまでは僅かな時間しかないため、迅速に動かなければ勾留を阻止することは難しいといえます。
一刻も早く刑事事件を取り扱っている弁護士に依頼をするべきです。
③被害者と示談交渉を行う
冤罪であれば被害者との示談交渉をする必要はないと思われるかもしれませんが、場合によっては被害者と示談交渉を行うことも選択肢になります。
全く被害者に触れていない、人違いであるといったケースでは示談交渉は行いませんが、意図的ではないにせよ被害者に何らかの形で接触があったようなケースでは、痴漢をしたわけではないものの、不快な気持ちにさせてしまったことについての謝罪等を行うことで示談を目指すということがあります。
この活動は、冤罪であることを主張するだけでなく、被害者側から被害届を取り下げてもらうことで検察官や裁判官が冤罪を生むリスクを減らすことを目的としています。
冤罪である可能性が一定程度あり、かつ被害者も処罰を望んでいないようなケースでは、検察官がリスクを冒して起訴をする方向に踏み切ることは少ないと考えられます。
被害者との交渉は弁護士しか行うことが出来ないことが一般的です。
直接交渉を行おうとしても、捜査機関は取り次ぎませんし、被害者も冷静に話を聞いてくれるとは期待出来ません。
冤罪に巻き込まれてしまった場合は、起訴されるリスクを少しでも減らすために、上記のような対応も視野に入れた適切な対応を取るために、一刻も早く弁護士に相談しましょう。
痴漢の冤罪で示談すべきかについて、詳しくはこちらもご覧ください。
④冤罪での起訴を防ぐ
痴漢は冤罪が多い犯罪類型であると考えられています。
そのため、現在は以前より検察官も慎重に証拠検討を行なっており、冤罪によって起訴される可能性は相対的に低くなってきているでしょう。
しかしながら、必ず冤罪で起訴されないかというと決してそうとは言えません。
被害者の供述やその他の証拠関係によっては、検察官が冤罪であることに気付けないこともあります。
冤罪である可能性を証拠とともに説得的に示したり、被害者との示談を行ったりといった活動は弁護士しか出来ません。
また、どれほどの熱意をもって冤罪の事件に取り組むかによっても結果が変わる可能性もあります。
そのため、冤罪に巻き込まれたときこそ、刑事事件を普段から取り扱い、熱心に活動をしてくれる弁護士に依頼をするべきです。
痴漢に強い弁護士について、詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
痴漢の冤罪に巻き込まれた場合にどのような対応をすべきか、ご理解頂けたでしょうか。
そもそも冤罪に巻き込まれないような気配りをすることで、ある程度は冤罪に巻き込まれるリスクは減らせるでしょう。
しかし、それでも冤罪は起こり得ます。
いざというときのためにこの記事がお役に立てれば幸いです。
デイライト法律事務所には刑事事件に注力している弁護士が在籍しています。
痴漢の冤罪に巻き込まれてしまった場合には、ぜひご相談ください。