強姦罪とは?強制性交罪から不同意性交罪へ。違いとは?
かつて、強姦罪は「姦淫」すなわち性交のみが処罰対象でした。
2017年の刑法改正により「強姦罪」は「強制性交等罪」となり、性交のほか、肛門性交、口腔性交も処罰対象として含んでおり、男性の被害者も想定されることとなりました。
また、3年以上(20年以下)の有期懲役から厳格化され、法改正により、5年以上(20年以下)の有期懲役となりました。
さらに、非親告罪となり、被害者の告訴なしに起訴できるようになりました。
2023年、再び法改正があり、これまで必要とされていた「暴行」・「脅迫」、「心神喪失」・「抗拒不能」といった要件が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という要件に変更されました(7月13日施行)。
また、この改正によって、性交同意年齢の13歳未満から16歳未満への引き上げ、身体の一部又は物を挿入する行為の取扱いの見直し、配偶者間において不同意性交等罪などが成立することの明確化も行われています。
ここでは、不同意性交罪がこれまでと具体的にどのように変わったのかについて、弁護士が解説していきます。
なお、強姦罪については上記のとおり、改正が2回あっているため、1回目を2017年改正、2回目を2023年改正と表記しています。
性犯罪に対する処罰の強化
暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。
→性交のみが処罰対象
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下『性交等』という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
→性交のほか、肛門性交、口腔性交も処罰対象
・「暴行」「脅迫」「心神喪失」「抗拒不能」要件を改正し、性犯罪の処罰を強化
・陰茎以外の身体の一部又は物を膣又は肛門へ挿入する行為も対象
・夫婦であっても処罰されることが条文上明記
かつて、強姦罪は、「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。」という規定でした。
強制性交等罪について
2017年の刑法改正により、強姦罪は「強制性交等罪」となり、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下『性交等』という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。」という規定となっています。
「強姦罪」は、「姦淫」すなわち性交のみが処罰対象でしたが、強制性交等罪は、性交のほか、肛門性交、口腔性交も処罰対象として含むようになりました。
それまで、肛門性交や口腔性交は、強制わいせつ罪として処罰されてきましたが、2017年法改正により厳重に処罰されることになりました。
不同意性交罪について
2023年、再び法改正があり、これまで必要とされていた「暴行」・「脅迫」、「心神喪失」・「抗拒不能」といった要件が「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という統一的な要件に変更されました(刑法177条1項)。
また、その原因となり得る行為についても、下表のとおり、例示的に明記されたため、被害者がそのような状態にあったかどうかの判断をしやすくなりました(刑法176条1項各号)。
- ① 暴行又は脅迫
- ② 心身の障害
- ③ アルコール又は薬物の影響
- ④ 睡眠その他の意識不明瞭
- ⑤ 同意しない意思を形成、表明又は全うするいとまの不存在
- ⑥ 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕がく
- ⑦ 虐待に起因する心理的反応
- ⑧ 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮
上記の要件について、具体例はこちらをご覧ください。
また、2023年改正前は、「性交等」とは、「陰茎」を膣への挿入すること(性交)、肛門へ挿入すること(肛門性交)、口へ挿入すること(口腔性交)を意味していました。
2023年改正により、上記に限定されずに、膣又は肛門に「陰茎以外の身体の一部又は物」を挿入する行為についても「性交等」に含まれることとなりました(刑法177条1項)。
さらに、2023年改正により、夫婦であっても、処罰の対象となることが条文上明確になりました(刑法177条1項)。
第177条 前条第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。
3 16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
引用元:e-GOV法令検索|刑法
同意年齢の引き上げ
刑法は、一定の年齢以下の子供に対する性的行為は、たとえその子供が同意していたとしても、処罰することとしています。
これは、性犯罪の本質的な要素が「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」であることから、子供の場合、判断能力が未熟であることから「自由な意思決定」が期待できず、同意の有無を問わずに性的行為をしただけで処罰すべきという考えがあるからです。
この「同意年齢」について、2023年改正前は、「13歳未満」となっていましたが、改正によって「16歳未満」に引き上げられました(刑法177条3項)。
ただし、13歳以上16歳未満の子供に対しては、5歳以上年長の者のみ処罰されます(同条)。
子供の年齢 | 処罰される者 |
---|---|
13歳未満 | 年齢差を問わず |
13歳以上16歳未満 | 5歳以上年長の者 |
13歳の子供に対して、18歳以上の者が性的行為を行った場合は、同意があったとしても処罰の対象となります。
罰則について
かつて、強姦罪は、3年以上(20年以下)の有期懲役でしたが、2017年改正により、5年以上(20年以下)の有期懲役となりました。
2023年改正では罰則(法定刑の長さ)の変更はありません(刑法177条、181条2項)。
引用:e-GOV法令検索|刑法
準強姦罪:3年以上の有期懲役
強姦致死傷罪:無期/5年以上の有期懲役
準強制性交等罪:5年以上の有期懲役
強制性交等致死傷罪:無期/6年以上の懲役
準不同意性交罪:5年以上の有期拘禁刑
不同意性交致死傷罪:無期/6年以上の懲役
執行猶予が付されうるのは、懲役3年以下の場合ですから、2017年の改正以降、執行猶予を獲得することは、困難となっています(未遂減軽、心神耗弱減軽、酌量減軽等で減軽されることによって、執行猶予の可能性は残ります)。
親告罪から非親告罪へ
かつて、強姦罪は親告罪、すなわち被害者からの告訴がなければ起訴できないことになっていましたが、2017年改正により非親告罪となり、被害者の告訴なしに起訴できるようになりました。
被害者に告訴という行為を求めることは被害者に過度な負担となっているのではないかとの声が高まり、非親告罪化しました。
しかしながら、被害者の告訴や被害届が起訴・不起訴の決定に大きな影響を与えるであろうことは改正後も変わりません。
早期の示談交渉の重要性
不同意性交罪は、重大な犯罪ですので、何もしなければ起訴されて有罪になる可能性が高いと思われます。
また、上記のとおり、法定刑も重く、執行猶予を獲得することも簡単には行かないでしょう。
そのため、特に早期の示談による解決が重要な犯罪といえます。
示談解決のメリットは以下のとおりです。
メリット①不起訴や執行猶予の可能性
検察官は起訴・不起訴の判断に被害者の処罰意思を重視します。
示談が成立し、被害者が被害届を取り下げ、処罰を望まない場合、起訴する必要性が低くなります。
もっとも、不同意性交罪は重大な犯罪であることには変わりなく、示談が成立しても、絶対に不起訴となるわけではありません
しかし、仮に起訴されても、量刑には大きな影響を及ぼすでしょう。
状況によっては執行猶予となる可能性も高いと考えます。
メリット②民事上の問題を解決できる
被害者は、加害者に対して、民事上、不法行為に基づく損害賠償請求権を有しています。
すなわち、加害者は刑事責任とは別に、民事上の慰謝料の支払い義務があるのです。
示談は、一定の金銭での解決を合意内容とするものなので、示談が成立するということは、この民事上の損害賠償責任の問題も同時に解決できることとなります。
メリット③被害者の救済に資する
起こってしまった事件自体は取り消しようがありません。
示談が成立しても、被害者の心の傷は完全には癒えないでしょう。
しかし、示談は、被害者にとっても、過去と決別し、前を向いて生きるためのきっかけとなり得ます。
したがって、示談成立は、加害者だけでなく、被害者の救済にも資することができます。
不同意性交罪を犯してしまったら
レイプ事件を起こしてしまった方、ご家族がレイプ事件で逮捕されてお困りの方は、早期に弁護人を選任し、充実した弁護活動・防御活動を展開する必要性が大きいといえます。
当事務所には刑事事件に注力する弁護士が在籍しています。
まずはお気軽に、当事務所にご連絡ください。
ご相談の流れについてはこちらからどうぞ。