非親告罪とは?【弁護士がポイントを解説】

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

非親告罪とは、告訴がなくとも、検察官は、被疑者を起訴できる犯罪のことをいいます。

非親告罪となる犯罪としては、盗撮、痴漢、不同意わいせつ罪、不同意性交罪、大麻取締法違反などがあります。

被害者がいる犯罪の場合、非親告罪であっても示談、被害届の取り下げ、告訴の取消しを目指すことが刑事弁護の重要なポイントとなります。

親告罪とは

親告罪とは、告訴がなければ刑事裁判ができない(起訴できない)犯罪のことをいいます。

本来、検察官は起訴するか否かについて、広範な裁量をもっています。

以下の法律の条文を見てみましょう。

【刑事訴訟法】
第247条 公訴は、検察官がこれを行う。
第248条 犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

「公訴」とは、検察官が裁判所に被疑者を起訴することです。

条文から、起訴は検察官の専権であり、かつ、様々な諸事情を考慮して、起訴するか否かを決定できるということがわかります。

ところが、これには例外があります。

それが親告罪です。

 

絶対的親告罪

親告罪には、被害者のプライバシーに配慮すべき犯罪があります。

被害者の中には、犯罪被害者であることを誰にも知られたくないと感じる人が多いです。

このような場合、起訴することで、被害事実が世間に知れ渡ってしまい、周囲から好奇の目で見られるなど被害者が2次被害を受ける恐れがあります。

このような犯罪をあらかじめ類型化しておき、起訴する条件として被害者の告訴を必要とするものがあります。

これを絶対的親告罪といいます。

 

相対的親告罪

また、家族の間で行われた窃盗などの財産的な犯罪については、家族同士で話し合って解決することが可能な場合が多いです。

このような場合、捜査機関は、介入に抑制的であるべきです。

そこで、被害者である家族から告訴があった場合に限り、起訴すべきという犯罪があります。

これを相対的親告罪といいます。

以下、絶対的親告罪と相対的親告罪の中で、主要なものを例示します。

絶対的親告罪 相対的親告罪
  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 未成年略取罪・未成年誘拐罪
  • ストーカー規制法違反の罪
  • リベンジポルノ被害防止法
  • 信書開封罪・秘密漏示罪
  • 私用文書等毀棄罪
  • 器物損壊罪
  • 信書隠匿罪
  • 過失傷害罪
  • 窃盗罪
  • 詐欺罪
  • 恐喝罪
  • 背任罪
  • 横領罪
  • 業務上横領罪
  • 遺失物等横領罪
  • 私用文書等毀棄罪
  • 器物損壊罪
  • 信書隠匿罪

 

 

強姦罪の非親告罪化

これまで、強姦罪(正式には強制性交等罪。以下同じ)は親告罪であり、起訴するに当たって、被害者の「告訴」が必要でした。

被害者の判断で、起訴・不起訴が決定されるという状態は、被害者に大きな負担となるものであり、強姦の二次被害となっているという批判もありました。

そこで2017年、刑法改正により、強姦罪は、非親告罪とされました。

今後は、被害者の告訴がなくとも、検察官は、被疑者を起訴できることになり、被害者の負担は軽減されることになりました。

著作権法の非親告罪化

著作権とは著作物を創作したことによって獲得した権利のことをいいます。

著作物とは、例えば、小説や論文等の言語、絵画などの美術、音楽、写真等があります。

著作権を侵害した場合、以前は権利者の告訴がなければ起訴をすることができませんでした。

すなわち、著作権者が処罰を望んでいない場合は処罰することができませんでした。

ところが、近年の著作権法の改正により、次の要件をすべて満たすものが非親告罪となりました。

非親告罪に該当する要件

上記要件は抽象的でわかりにくいため、具体例を紹介します。

非親告罪となる場合 ・販売中の漫画の海賊版を販売する行為

・販売中の小説の海賊版を販売する行為

・映画の海賊版を販売する行為

親告罪の場合 ・漫画のパロディをブログに投稿する行為

・漫画等の同人誌をコミケで販売する行為

 

 

非親告罪となる犯罪一覧

非親告罪となるのは、親告罪に該当する犯罪以外のすべての犯罪です。

非親告罪の代表的なもの(当事務所へのご相談が多いもの)を例示いたします。

非親告罪となる犯罪一覧

 

 

非親告罪の弁護活動のポイント

上記のような非親告罪は、法律上、被害者の処罰感情に関わらずに検察が起訴できるため、示談交渉という弁護活動の意味がないようにも思えます。

しかしながら、非親告罪であるからといって、被害者の処罰感情を無視して検察官が起訴するというケースは考えられません。

すなわち、検察官は、たとえ非親告罪であっても、被害者の意向を最大限尊重しています

被害者自身が処罰を望んでいない場合は、起訴する必要性が低くなると考えられるからです。

特に、被害者がいる犯罪で、殺人罪などと比較して軽微な下記の犯罪については、被害者の意向が大きく影響すると想定されます。

 

非親告罪でも被害者の意向が大きく影響する可能性がある犯罪

  • 公然わいせつ罪
  • 児童ポルノ禁止法違反
  • 痴漢(迷惑防止条例違反)
  • 傷害罪、同致死罪
  • 強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪

したがって、上記の犯罪における弁護活動は、示談、被害届の取り下げ、告訴の取消しを目指すことが中心となります。

 

 

示談交渉の重要性

示談とは、刑事事件とは別に民事事件としての解決を図ることです。

なぜ、民事の示談が刑事事件において重要となるのでしょうか。

一般に、示談を成立させることによって、被害者の許しを得ることができれば、処罰感情の低下が認められると考えられます

そのため、示談の成功は、不起訴の獲得、刑の執行猶予、減刑などに大きく影響すると想定されます。

 

 

早期に弁護士に相談することをお勧めします

示談を成功させるためには、できるだけ早期に刑事専門の弁護士に相談することをお勧めいたします

示談交渉をする場合、通常、捜査機関に被害者の連絡先情報(電話番号等)の照会を行います。

このとき、加害者が自ら示談交渉をしようとしても、多くの被害者は連絡先の開示にそもそも応じないことが想定されます。

もう二度と加害者と接触したくないと考える被害者が多いからです。

他方、弁護士であれば、連絡先情報(被害者の電話番号等)の開示をしてくれることが期待できます。

したがって、示談交渉のスタートが見込まれます。

次に、交渉自体は開始しても、示談金額について、双方の提示金額に大きな差が生じることが往々にしてあります。

例えば、被害者側から法外な示談金を要求される可能性があります。

刑事事件に強い弁護士であれば、具体的な事案における示談金の相場を判断できると考えられます。

また、弁護士は交渉のプロフェッショナルです。

示談交渉を開始しようとする意味を弁護人が丁寧に説明し、早期から根気強く、丁寧に示談交渉を続けてこそ、示談成立の可能性が見えてきます。

さらに、刑事事件でお悩みの方は、今後の捜査の流れや処罰の見通しについて、とても不安に感じていらっしゃるかと思います。

刑事事件専門の弁護士の相談されることで、これらの不安を取り除き、希望の光を抱かせてくれる可能性があります。

 

 

まとめ

以上、非親告罪についての内容、弁護活動のポイント、示談交渉の重要性等について詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。

非親告罪は近年拡大化の傾向にありますが、たとえ非親告罪であっても示談交渉の重要性は変わりません。

早期に、可能であれば逮捕前に、刑事事件に注力する弁護士に相談することで、身体拘束の可能性を下げたり、不起訴処分・執行猶予付き判決の可能性を高めたりすることができます。

刑事事件でお困りの方、刑事事件で家族が逮捕されてしまった方は、まずはお気軽に、当事務所の刑事事件部にご連絡ください。

刑事事件に注力する弁護士が対応いたします。

 

 


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