風俗トラブルの解決|対処法や解決までの流れを弁護士が解説
風俗でよくあるトラブルと罰則
風俗店を利用するにあたって、性欲を抑えられずに禁止されている行為に及んでしまった場合、風俗店との間で深刻なトラブルに発展するケースが多々あります。
まずは、風俗トラブルとしてありがちな禁止行為や、それらの禁止行為が犯罪となる可能性について解説をしていきます。
盗撮
条件付きでサービスの撮影を認めている風俗店もあるかもしれませんが、基本的には風俗店は従業員がサービスを行なっている際の撮影を禁止しています。
撮影した画像・動画が流出するリスク等を考慮すると、従業員を守るためには当然の禁止事項といえるでしょう。
このような禁止事項に違反して無断で撮影を行なってしまった場合、撮影罪(性的姿態撮影等処罰法)及び各都道府県によって定められている迷惑行為防止条例違反の罪に問われる可能性があります。
撮影罪については、法定刑が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」となっています。
引用元:性的姿態等撮影処罰法2条1項1号
条例違反の刑罰は、各自治体ごとに異なります。
例えば、東京都の例では、「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(ただし、常習性がある場合は「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」)と定められています。
引用元:東京都迷惑防止条例
本番行為の強要
風俗店は、客や従業員に性交を行うこと、俗にいう本番行為を禁止しています。
これは、売春防止法という法律があるためです。
風俗店が本番行為を容認しているとなると、従業員が対償を受けて不特定の相手方と性交する仲介や斡旋を行なった、またはそのような場を提供したということで売春防止法に違反してしまうからです(売春防止法第6条、第11条)。
引用元:売春防止法|eGov法令検索
もっとも、売春防止法には売春を行った当事者を罰する規定は存在しませんので、利用者の立場ではこの法律による罰則を受けることはありません。
しかしながら、従業員が本番行為を拒否しているにもかかわらず、利用者が本番行為を強要してしまった場合、その態様によっては強制性交等罪に問われる可能性があります。
強制性交等罪の法定刑は5年以上の懲役という極めて重いものになっており、未遂も処罰対象に含まれているため、このような行為は決して行ってはいけません。
ただし、風俗店において「本番強要」といわれるものの全てが強制性交罪に該当するわけではなく、そうではないケースも多く含まれているように思われます。
そのため、本番強要が原因となっている風俗トラブルは、風俗トラブルの中で最も難しい問題となりがちです。
予定されているサービスに含まれない行為
風俗店は従業員が行うことができるサービスを限定して利用者に示しています。
サービスを受ける中で性欲が抑えきれなくなり、予定されているサービスを超える行為を行なってしまった場合、そのような行為については合意がない行為ということになります。
本番行為は既に説明したとおりですので、この項ではその他の行為について解説をしますが、口腔性交をさせてしまった場合には強制性交等罪に該当してしまいますし、それ以外のわいせつな行為であれば強制わいせつ罪(刑法第176条)が成立してしまいます。
引用元:刑法|eGov法令検索
強制わいせつ罪の法定刑は六月以上十年以下の懲役となっており、罰金刑はありません。
強制性交等罪と同じく未遂も処罰対象に含まれますので、注意が必要です。
18歳未満の従業員によるサービス
まともな風俗店であれば、従業員の年齢確認を行なった上でサービスに従事させているはずですから、従業員が児童(18歳未満)ということはほとんど起こりえません。
しかしながら、従業員側が年齢を偽っていたり、確認をしっかり行なっていない風俗店であったりという場合は18歳未満の従業員から風俗店のサービスを受けてしまうことがあり、その場合は児童買春に該当する可能性が出てきます。
児童買春の法定刑は、五年以下の懲役又は300万円以下の罰金となっています(児童売春・児禁止法第4条)。
引用元:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律|eGov法令検索
もっとも、利用者が従業員の年齢が18歳未満であることを知らなければ、故意がないために処罰対象にはなりませんので、風俗店の利用で児童買春とされることはほとんどありませんが、悪質な風俗店であれば従業員が児童であることを事後的に伝えて利用者からお金を巻き上げようとしてくることもあるかもしれません。
そのような場合は風俗トラブルとして対応が必要となってきます。
風俗トラブルの裁判例
風俗トラブルは、利用者側も従業員側も、出来ることならあまり周囲に知られたくないという性質の事件ですから、示談で解決するケースの方が多く、裁判にまで発展するケースはあまりありません。
しかしながら、なかには風俗店側の対応が問題となり、利用者と揉めに揉めて裁判に至るという事例が存在します。
以下では風俗トラブルの正しい対応法が垣間見える裁判例を1つ紹介します。
判例 東京地方裁判所平成29年2月28日付判決
<事案の概要>
女子高生の制服姿の店員の姿や動作をマジックミラー越しに眺める等の機会を提供するサービスを行なっている風俗店において、利用者が盗撮行為を行なった。
風俗店が利用者に対して迷惑料として100万円を支払うよう要求し、風俗店側の対応に恐怖を抱いた利用者は、これに応じてその場では示談書を交わした。
その後、利用者が示談金を支払わなかったために裁判に至った。
<判決の概要>
利用者は風俗店に対して迷惑料を支払う義務はないと判断した。
<判決の理由>
この事例では、盗撮行為があったこと自体は争われておらず、風俗店と利用者との間で交わされた示談書の有効性が争われています。
示談書にサインをしている以上、特別な理由がなければ、契約として有効に扱われるのが原則です。
しかしながら、この事例では、風俗店側が利用者を軟禁状態にした上で、執拗に賠償を求め、示談書にサインをしなければ帰宅出来ないと思わせるような状況を作り出していたという事情がありました。
その結果、強迫による示談書の取り消し(民法第96条1項)が認められ、そのほかに風俗店に損害が生じていることを示す証拠もないとして風俗店の請求が退けられることになったのです。
引用元:民法|eGov法令検索
この裁判例からは、たとえ利用者が盗撮のような犯罪行為を行なっていたとしても、風俗店が無理やり示談を交わさせてもいい理由にはならないということが分かると思います。
違法な行為によって示談書が交わされた場合には、このように示談書を無かったことにすることも可能です。
利用者の立場としては、その場で示談書を交わしてしまったものの、その後に適切な対応に切り替えたからこそ風俗店に金銭を支払わずに済んだ事例といえます。
風俗トラブルが起こった時の対処法
先ほど紹介した裁判例のように、風俗トラブルが起こった時には適切に対処をしなければ大事になってしまう可能性があります。
事態を悪化させないよう、風俗トラブルの対処法をいくつかご紹介します。
示談書に安易にサインしないこと
風俗トラブルが起きた直後に、怖い男性従業員が現場に押しかけてきて、大声で威圧する等した上で高額の慰謝料を支払うことを約束させられるという事態が起こりえます。
こんな話は漫画やネットの噂だけだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、弁護士が相談を受ける中でこのような経験をされている方の話は少なくありません。
自分が禁止行為をしてしまったという負い目と男性従業員の態度等への恐怖はあるかもしれませんが、風俗店が用意した示談書に安易にサインすることはやめてください。
盗撮や強制性交等による被害に遭ったのは従業員であり、風俗店に対して金銭を支払うべき義務がないことがほとんどだからです。
風俗店に何かしらの損害が発生しているような場合であっても、風俗店の主張する損害が妥当なものなのかを検討する必要がありますし、示談金の支払い先が従業員としてあった場合でも金額が妥当かどうかは検討の余地があるはずです。
いずれの場合でも安易に示談書にサインすることはお勧めできません。
刑事事件における示談や示談金の相場についてについて、詳しくはこちらをご覧ください。
やり取りを録音しておくこと
場合によっては風俗店の責任者と電話や対面で何度かやり取りをすることがあるかもしれません。
恫喝されるなどして示談書に半ば無理やりサインさせられたとしても、あとからその事実を証明できなければ水掛け論に終わってしまいます。
そのため、可能であればやり取りは録音しておき、あとから強迫による取り消し(民法第96条1項)を主張することを検討しましょう。
引用元:民法|eGov法令検索
一刻も早く弁護士に相談を
風俗トラブルは、利用者個人で解決しようとするべき案件ではなく、弁護士に対応を任せるべきです。
利用者個人で対応をしようとしても、相場からかけ離れた高額の示談金を支払うことになってしまったり、家族などに風俗店の利用が知られてしまったり、脅しによって怖い思いをしてしまったりといった結果になってしまうケースが少なくありません。
弁護士に対応を任せることで、適切な金額での示談交渉を行うことができますし、家族などへ連絡をするといった脅しには、毅然とした対応を取ることが出来ます。
また、風俗トラブルの多くは刑事事件に発展する可能性も十分にありますから、刑事事件化を避けるためにも一刻も早く弁護士に相談されることをお勧めします。
風俗トラブル解決までの流れ
風俗トラブルを弁護士が解決するまでの流れは以下のようなものになります。
なお、風俗トラブルといわれるものは警察が介入する前の段階のご相談がほとんどですので、警察が介入していないという前提で解説を行います。
①弁護士に相談
風俗トラブルが起きた場合、まずは弁護士に相談をしましょう。
弁護士が相談の中で事実関係を丁寧に聞き取り、犯罪に該当するか否か、どのような対応をしていくべきかという見通しを立てます。
この相談の際に、本当のことを話してもらわなければ正確な見通しは立てられません。
事実関係をぼかして伝えたり、本当のことがバレたくないという気持ちから事実と異なる内容を伝えたりしてしまうと、かえってその後の示談交渉がまとまらず、不利な立場に置かれる可能性があります。
たとえば、本番行為を無理やり強要したという事実があるにもかかわらず、そのような行為は行なっておらず言いがかりをつけられているという前提で見通しを立てた場合、お店に対して強硬な姿勢で示談金の支払いを拒否するべきだという見通しを立てることもあるでしょう。
そのような見通しを前提に活動を行なった結果、風俗店側が警察に相談し、捜査によって真実が明らかになってしまった時点では方針を変えても手遅れということになりかねません。
弁護士は相談内容について守秘義務を負っていますから、ご自身のためにも必ず本当のことを話すようにしてください。
②風俗店との交渉
依頼を受けた場合は、相談で聞き取った事実をもとに立てた見通しに沿った解決を目指します。
弁護士から風俗店へ連絡し、依頼を受けた風俗トラブルの代理人として就任したことや、本人やその家族、職場等への連絡を差し控えるよう伝えます。
ほとんどのケースでは、弁護士が介入した後に弁護士を無視して家族や職場へ連絡をするような風俗店はありませんから、安心して弁護士に交渉を任せましょう。
仮に相談前の段階で風俗店から示談書を書かされており、その内容があまりにも不合理なものである場合には、当該示談書は無効とする旨も同時に伝えます。
依頼者に非がある場合、非がない場合のどちらであったとしても、風俗店側の話もしっかりと聞く必要があります。
依頼者に非がないと考えられる場合であれば、風俗店側はどのような事実を主張しているのか、その事実を裏付ける証拠はあるのか、風俗店側の主張を前提として依頼者が法的責任を負うべき状況なのか等を判断しなければなりません。
他方、依頼者に非があると考えられる場合であれば、風俗店側がどのような条件を求めているのか、どのような点に憤っているのか等を聴取した上で、許してもらえるよう働きかけを行わなければなりません。
このような交渉を通じて、何とか双方が納得できる形での解決を提案していくことになります。
③示談書の作成
風俗店との間で示談の条件が決まった後は、示談の内容を後から確認できるように示談書を作成することになります。
示談書の内容として、必ず盛り込むべき事項は、風俗店側で依頼者の個人情報を流出させないことや警察への被害申告等を行わないことを約束してもらうことになります。
依頼者自身や風俗店が作成した示談書では、双方の希望する条件がしっかりと反映できていなかったということになりかねませんから、示談書の作成も弁護士に任せましょう。
示談書に双方の押印が行われた時点で示談が成立し、示談書は依頼者とトラブルの相手方となった従業員のそれぞれが1通ずつを保管しておくことになります。
ここまで手続きが進めば風俗トラブルは無事に解決したということになります。
なお、ご家族に風俗トラブルを内緒にしているような場合には示談書の扱いに困ると思いますが、相手方が万が一合意内容に違反した場合に備えて、数年間は合意書を捨てずに保管しておくべきです。
風俗トラブルでよくある相談
風俗トラブルが生じた場合、迷惑料等の名目で風俗店から金銭を要求されることがあります。
しかしながら、風俗トラブルにおいて被害に遭っている人物がいるとすれば、それは風俗店の従業員個人です。
風俗店の高額な請求に応じたとしても、従業員個人との間で示談が成立していなければ、後日警察に被害届を出されたり、従業員個人から賠償請求をされたりする可能性は残ってしまいます。
その場では冷静な判断が出来ないこともあると思いますが、決して金銭の支払いには応じてはいけません。
仮に風俗トラブルにおいて利用者が違法行為を行なっているような場合であっても、弁護士に相談した上で、適切な相手方に、適切な金額を支払うことで十分に責任を果たすことが出来ます。
既に示談書を交わしてしまった場合でもその場の状況次第では取り消すことが出来る可能性もありますから、必ず弁護士に相談してください。
風俗トラブルが起きた後、男性従業員や責任者がやってきて、利用者の免許証等を写真に撮られるといった形で個人情報を握られることがあります。
個人情報を後々どこかに流されるようなことがないか不安に思われる気持ちは理解できます。
このようなケースで弁護士が示談交渉を行う場合は、示談書の中に風俗店が得た利用者の個人需要方を破棄し、流出させないことを誓約してもらう条項を盛り込むことを提案します。
風俗店が個人情報の破棄を受け入れない姿勢を見せている場合であっても、粘り強く交渉し、仮に個人情報を流出させた場合の責任等について説明することで、最終的には合意に至ることもあります。
利用者自身での交渉ではなかなか強く要求できない部分でしょうから、個人情報を握られてしまっているような場合には弁護士に示談交渉を行ってもらいましょう。
従業員が本番行為を誘ってきた若しくは了承していたにもかかわらず、サービス終了後に本番強要があったと言い出すケースも稀に存在します。
このような場合、風俗店側は警察に今すぐ通報するような姿勢を見せて高額な金銭を要求してくることでしょうが、事実と反するのであれば、断じて応じてはいけません。
強制性交等罪の事件は密室で行われていることが多いですが、このような虚偽の被害申告の場合、本当に被害に遭っているのであれば存在するはずの事実が抜け落ちていることが少なくありません。
利用者の立場では、風俗店や従業員の言い分に安易に流されることなく、弁護士に相談した上で毅然とした対応をとりましょう。
仮に警察に被害届を出された場合であっても、無実であれば有力な証拠が出てくるはずもありませんから、適切に対応することで冤罪を防ぐことは十分に可能です。
まとめ
風俗トラブルについての解決方法の解説は以上になります。
風俗店を利用していることを家族や職場に知られる可能性があると考えるからか、風俗トラブルでは風俗店のいいなりになってしまう方も多くいます。
もちろん盗撮や強制性交等にあたる行為を行なってしまった場合には、真摯に謝罪し、適切な賠償をする必要はありますが、自分一人で解決しようとしてしまうと一方的に不利な条件となってしまう可能性があります。
風俗トラブルの解決に慣れている弁護士に相談をして、適切な対応をしてもらうことで交渉の結果が変わることがあるかもしれません。
風俗トラブルに巻き込まれたことを恥ずかしいと思わずに、刑事事件に注力している弁護士が在籍している当事務所にぜひご相談ください。
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