強制わいせつで執行猶予がつく可能性はありますか?【弁護士が解説】
強制わいせつで起訴され有罪となった場合、執行猶予がつく可能性はありますか?
必ず刑務所に入らなければならないことになりますか?
強制わいせつのケースでは、事案によっては、執行猶予つきの判決が出される可能性があります。
ここでは、執行猶予の条件、どのような場合に執行猶予がつくのか、執行猶予がつく確率やポイントについて、弁護士が解説していきます。
なお、強制わいせつ罪は、2023年の法改正により、正式名称は「不同意わいせつ罪」へ変更されました。
ここでは、馴染みがある「強制わいせつ罪」と表記しています。
執行猶予がつく犯罪とは?
強制わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下とされています。
執行猶予付きの判決が出される可能性があるのは、3年以下の懲役刑の言渡しが妥当と判断された場合です。
すなわち、強制わいせつ罪の法定刑の中には、6か月ないし3年という期間の懲役刑も含まれていますから、その期間の懲役刑が妥当な事案であると裁判所に判断された場合には、執行猶予付きの判決となる可能性があります。
逆に言えば、事案として軽微であると裁判所に認定してもらえなければ、執行猶予付き判決を受けることはできません。
執行猶予つきの判決を受けるための条件
執行猶予付き判決を受けるためには他にも条件があります。
- ① 前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか
- ② 処せられたことがあっても、その執行の終わった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者である必要があります。
さらに、条件とまではいえませんが、判決を下す裁判官に、「この被告人になら執行猶予に付しても問題ないだろう」と思ってもらう必要があります。
【根拠条文】
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
引用元:刑法|電子政府の総合窓口
執行猶予の確率
執行猶予がつくか否かは、ケース・バイ・ケースであって、一概には言えません。
参考程度とはなりますが、令和4年における有期の懲役刑又は禁錮刑を言い渡された総数に占める全部執行猶予率は64.2%でした。
根拠:令和5年犯罪白書
また、強制わいせつ事件についてのみでいうと、平成26年の執行猶予率が約65%となっています。
根拠:平成27年犯罪白書
裁判所はどのような点に着目して量刑を決めている?
では、裁判所は、どのような点に着目して、量刑を決めているのでしょうか。
当然ながら裁判所は、様々な要素を勘案して量刑を決定しています。
重要な要素としては、①犯行態様の悪質性、②被害者に与えた結果の重大性、③犯行動機、④計画性の有無、⑤被告人の反省の有無・程度、⑥同種前科の有無等が挙げられます。
これらを総合考慮するわけですから、裁判官によっても判決内容に差が生じることは当然あります。
弁護士としては、「①犯行態様の悪質性」ないし「⑥同種前科の有無等の考慮事項」に関し、被告人に有利な証拠を可能な限り提出し、さらに証拠からどのような事実が認定できるのかを説得的に論じ、
- ① 犯行態様が悪質とはいえないこと
- ② 被害者に与えた結果が(一般的な強制わいせつと比べて)重大ではないこと
- ③ 犯行動機に酌むべき事情があること
- ④ 計画性のない突発的犯行であること
- ⑤ 被告人が深く反省し更生を誓っていること
- ⑥ 犯行に至った原因が精神的な疾患にあることが判明し、今後精神科等で治療を継続していくことで再犯を防止することが可能であること
などを主張していくことになります。
弁護人の活動によって、裁判官の判断に影響を与えることができます。
弁護人によってその熱意・技量に大きな差がありますから、刑事事件に専門特化した弁護士を選任することが重要になります。
当事務所には、刑事事件に専門特化した弁護士が在籍しています。
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