盗撮する人の心理とは?再犯率や盗撮を止めるための対処法を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士

今、この記事を読まれている方は、

「なぜ盗撮の再犯率がここまで高いのか?原因は?」

「盗撮を繰り返すことを防ぐ方法はないのか?」

といった疑問を抱かれていることだと思います。

本稿では、読者の方のそういった疑問に弁護士が回答するとともに、

「盗撮を繰り返すことを止めるために、弁護士はどう関わることが出来るのか?」等も説明していきます。

この記事でわかること

  • 盗撮の再犯率は高い?再犯率はどれくらいなのか。
  • 盗撮をする人の動機にはどういったものがあるのか。
  • 盗撮を繰り返してしまう人は病気の可能性?原因や治療法を解説。
  • 盗撮をしてしまった人(そのご家族)が、弁護士に依頼することのメリット。
  • 弁護士に依頼することで、容疑者の方のご家族にもサポートが提供できる。

 

盗撮とは

盗撮とは、撮影の対象者の了承を得ずに、裸や下着等を撮影する行為を言います。

典型例としては、駅やデパートのエスカレーターなどでスカートの中にカメラを向けて撮影する行為がこれにあたります。

 

 

盗撮は止められない?

盗撮の再犯率

盗撮の再犯率はかなり高いです。

法務省がまとめた犯罪白書によれば、盗撮の再犯率は64.9%とされています。

引用元:平成27年版犯罪白書のあらまし第6編 性犯罪者の実態と再犯防止|法務省

一般刑法犯の平均再犯率が47.1%であることに照らすと、その再犯率の高さは明らかです。

引用元:平成27年版犯罪白書のあらまし第1編 犯罪の動向|法務省

盗撮と一般刑法の再犯率の比較円グラフ

また、同犯罪白書によれば、盗撮で有罪判決を受けた人全体の中で、過去に2回盗撮で有罪判決を受けたことがある人が24.7%、3回以上有罪判決を受けたことがある人が22.1%にものぼることが分かっています。

つまり、盗撮で有罪判決を受けた人が100人いれば、そのうち約47人は過去に2回以上盗撮で有罪判決を受けたことがあるということです。

盗撮の再犯率についての円グラフ

加えて、再犯者の初犯年齢(はじめて盗撮で有罪判決を受けた年齢をさします。)の割合は、29歳以下が48.1%、30歳代が28.6%、40歳代が23.4%となっています。

これらの数字から、盗撮の再犯率がかなり高いということ、さらには初犯年齢が若いほどその傾向は顕著になるということがわかります。

また、「一度盗撮に手を染めてしまうとなかなか止められない。」という盗撮に対する依存度の高さもわかります。

 

 

なぜ盗撮をするのか

盗撮する人の心理・動機とは?

盗撮をする人の心理・動機については複数考えられますし、それぞれが併存している場合もあります。

ここではその中でも主要なものについて挙げていきます。

盗撮する人の心理・動機

 

①自己の性的欲求を満たすため

まず、盗撮の被害者が自分の好みの相手であったなどの理由で被害者に対して抱いた性的な興味・欲求から、盗撮をすることによって得られる興奮などを求めて盗撮を行うということが挙げられます。

盗撮に関する報道等で、「容疑者は『好みの女性だったので』と供述している」と聞いたことがあるという方も多いかと思います。

そういった供述をしている容疑者は、①の心理状態・動機で盗撮をしたといえます。

この動機は、盗撮をはじめて比較的日が浅い人に多く見られる印象です。

この段階で盗撮を止めることが出来なかった人は、これから述べる②や③の心理状態・動機で盗撮を繰り返していくようになる傾向にあります。

 

②スリルを味わいたい

次に、盗撮行為自体をしているときに感じるスリルを味わいたいがために盗撮を行うということが挙げられます。

①とは異なり、盗撮行為によって得られるもの(撮影した画像や動画)に興奮を覚えるのではなく、被害者や周囲の人にバレないように撮影する、という行動自体から興奮を味わいたいというように、目的が少し変化します。

①と併存している場合もあるかと思いますが、多くの場合、当初①の目的で盗撮をしていた人が回数を重ねるにつれてこの目的で盗撮をするようになるという傾向がみられます。

似たような心理状態として、万引きを繰り返してしまうという「クレプトマニア」(「窃盗症」とも言われます。)があります。

クレプトマニアの人の中には、万引きをするときの緊張感やスリル、また万引きに成功したときの達成感や解放感を味わいたくて商品を盗んでしまうという人がいます。
そのため、商品を購入する十分なお金を持っていたり、自分が欲しくもない商品を盗んでしまった、という特徴が見られます。

盗撮の場合もこれと似ていて、誰にも気付かれずに盗撮をするスリルや緊張感を味わいたいがために盗撮を日常的に繰り返してしまうという人がいます。

こういった心理状態・動機で盗撮に及ぶようになっている場合、何らかの精神的な病気が影響している可能性も考えられますので、心療内科等での治療が必要です。

 

③盗撮行為が常態化・習慣化してしまっている

最後に挙げるのは、何か目的があるわけでもないのに盗撮行為をしてしまうというものです。

こういった心理状態・動機で盗撮をしている人は、これから述べる「窃視症(せっししょう)」に罹患しているおそれが高いため、本人が自分の意志のみで盗撮を止めることはかなり難しいです。

そのため、早急に心療内科で治療を受けることが必要です。

以下では、盗撮を繰り返してしまう人の多くが罹患しているおそれが高い「窃視症」という病気について説明します。

 

盗撮を繰り返す場合には病気の可能性

窃視症について

皆さんは、「窃視症」という病名をお聞きになられたことはあるでしょうか?

あまり聞き馴染みのある病気ではないかもしれません。

窃視症とは、裸体などをのぞき見ることによって性的快感を得る症状のことです。

主な症状としては、自分が見られていると気付いていない人が衣服を脱いだり、裸でいたり、性行為をしている姿を見ることで性的に興奮するというものが挙げられます。

他人のプライベートをのぞき見るという行為自体に興奮を覚えるため、のぞき見ている相手との直接の性的行為等は望まないといった特徴があります。

窃視症が重症化して窃視障害(せっししょうがい)になると、のぞき見の機会を求めて行動するようになります。

 

窃視症の診断基準

窃視症であるかについては、以下の基準に照らして医師が判断を行います。

  • 自分が見られていると思っていない人が裸でいたり、服を脱いだり、性行為をしている姿を観察することで反復的に強い興奮を覚え、その興奮が空想、衝動、または行動で表現されている。
  • その結果として、強い苦痛を感じているか、日常生活に(職場、家庭内、または友人関係で)支障をきたしている、もしくは、同意のない相手に対して衝動を行動に移している。
  • その状態が6カ月以上続いている。

引用元:窃視障害|MSD マニュアル

 

治療が必要なケース

上で紹介した症状を自分が発症しており、かつ診断基準も満たしているという自覚がある場合には、一刻も早く医師の判断を受け治療を行う必要があります。

なぜなら、先ほども述べましたが、窃視症である場合ご自身の意志だけで盗撮を止めることは難しいからです。

専門的な治療方法等に長けた医師の力を頼ることが重要です。

また、後で詳しく述べますが、いざ医師の力を頼ることにしたとしても、本人が自分の意志で治療を受け続けるのは難しい部分もあると思います。
したがって、ご家族など周囲の方が本人の背中を押してあげることが、再犯防止の観点からも必要です。

 

窃視症の治療方法

窃視症の治療方法は、大きく分けると、①心療内科や支援団体で精神カウンセラーによるカウンセリングを受ける方法と、②薬を服用したりして治療を行う方法の2つがあります。

①カウンセリング療法について


カウンセリング療法では、精神カウンセラーとのカウンセリングにより、窃視症の人の認知の歪みを改善していきます。

窃視症の人の中には、他人をのぞき見ることに罪悪感を感じていなかったり、自分勝手な理由(「露出の多い服装をしている方が悪い。」等)でのぞきをしたり、盗撮を繰り返したりしている人がいます。

カウンセリング療法では、こうした認知の歪みを正していくという治療が行われます。

 

②薬物療法について


薬物療法では、窃視症の根本的な原因がストレスである場合も多いことから、そのストレスを緩和する効果を持っているSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)による治療をすることが一般的です。

仮に、SSRIによる治療の効果が見られなかったり、障害が重度である場合には、男性ホルモンであるテストステロン濃度を低下させ、ひいては性欲を減退させる抗アンドロゲン薬による治療も行われます。

薬物療法の場合には、副作用が生じる場合もありますので、そのリスクも考慮に入れたうえで、いずれの治療方法をとるかなどについては医師と相談しながら選択していくこととなります。

引用元:精神障害 |MSD マニュアル

 

 

盗撮を止めるためにはどうすればいい?

更生へ向けての本人の強い意志

罪を認めて反省すること

盗撮事件では、盗撮されてしまった被害者がいます。

当然のことながら、被害者に落ち度は一切ありません。

自身が盗撮されたという事実を知った被害者が受ける精神的ショックはとても大きなものです。

盗撮をしてしまった人は、まずはそのような立場にある被害者の存在や被害者が受けたショックに考えを巡らせ、自らの罪を認めて強く反省することが必要です。

盗撮をはじめて比較的期間が浅い段階だと、これにより再犯を防止する効果もかなり得られるでしょう。

 

被害者側に謝罪の意思を伝えること

反省をしたうえで、被害者側に謝罪の意思を伝えることが必要です。

もちろん、謝罪の気持ちを伝えたとしても被害者の方が許してくれるという保証は全くありません。

しかし、自分のしてしまったことと向き合い反省したうえで、被害者に対して誠心誠意謝罪の気持ちを伝えられるのであれば、今後二度と盗撮を繰り返さないよう更生する第一歩になるでしょう。

なお、詳しいことは後で述べますが、被害者の方に謝罪をしたい場合には、弁護士に依頼して、弁護士に間に入ってもらうことで被害者の方が連絡先を教えて下さりやすくなります。

ですから、弁護士にそのことについて相談するとよいでしょう。

 

ご家族などのサポートがあること

盗撮を二度と繰り返さないためには、ご家族のサポートが重要です。

すでに述べましたが、盗撮は再犯率が高く、自己の意志だけで盗撮を止めるということは難しい場合が多い(窃視症に罹患していればより一層)です。

また、本人が自らの意志で医師の元を訪ねて治療を受けるというのもなかなか難しいといえます。

したがって、本人にはご家族などのサポートが必要不可欠であり、本人が継続的に適切な治療を受けることが出来るよう、本人と最も距離が近いご家族がサポートをしてあげることが重要になってきます。

 

信頼できる弁護士に依頼する

大切なご家族が、ある日突然盗撮の容疑者として逮捕されてしまったり、捜査対象となってしまった場合、

「違法な取調べを受けていないだろうか。」、「体調は大丈夫だろうか。」といった容疑者が今置かれている状況のことや、「仕事をクビになってしまうのではないか。」、「刑務所に入ったらしばらく会えなくなるのではないか。」といった将来への不安がたくさん出てくると思います。

そういった場合、信頼できる弁護士に相談をし助言をもらうだけでも気持ち的にかなり楽になりますし、専門家である弁護士に依頼することで主に以下のメリットがあります。

 

ご家族にきめ細やかなサポートを提供できる

弁護士は、今述べたような不安を解消できるように、ご家族に対してきめ細やかなサポートを提供します。

具体的には、弁護士がご家族の代わりに容疑者との面会(専門用語で「接見(せっけん)」といいます。)に行き容疑者本人から話を聞き、そこで聞いた内容から今後の見通し(例:身体拘束がいつまで続きそうか、起訴されてしまうのか等)をご家族にお伝えします。

また、容疑者本人の健康状態などについても面会の際に確認し、ご家族に伝えることが出来ます。

その他にも、ご家族自身の今後についての心配事も沢山あると思います。経験豊富な弁護士にご相談いただければ、専門家として、ご家族に対して適切な助言をすることができるでしょう。

 

示談交渉を速やかに開始できる

示談交渉を弁護士に依頼するメリット


示談交渉を開始するタイミングは、早ければ早いほど良く、容疑者が受ける恩恵も大きなものとなります。

例えば、逮捕される前など捜査の早い段階で示談が成立していれば、逮捕・勾留されなくなる可能性が高くなりますし、逮捕・勾留されていたとしても、不起訴になって比較的早期に釈放される可能性も高くなります。

容疑者本人がいくら「被害者に対して示談をしたいから連絡先を教えてほしい。」と捜査機関に対して申し立てたとしても、捜査機関は容疑者本人に対して被害者の連絡先を教えることはありません。

なぜなら、容疑者が被害者に対して口封じするなど証拠隠滅を図るおそれがあるからです。

しかし、容疑者に弁護士がついていれば、弁護士が捜査機関を通じて被害者にコンタクトをとり、被害者から「容疑者本人に連絡先などを伝えないこと」を条件に連絡先を教えてもらえる場合があります。

被害者の方も、弁護士が間に入っていれば安心して連絡先を弁護士に教えてくださる場合もあります。

このように、容疑者本人が弁護士に依頼するメリットはとても大きいです。

 

示談交渉をするメリットは被害者にもある


示談をするメリットは容疑者だけではなく、被害者側にもあります。

一般に、刑事事件の被害者は、刑事裁判手続の中では犯罪被害によって受けた損害を回復することが出来ません。

ですが、示談が成立し示談金を受け取ることにより、被害者は損害を一定程度回復することが出来ます。

このように、示談には容疑者だけでなく被害者にもメリットがあるということを分かっていただけたと思います。

なお、当然のことですが、示談交渉に際して弁護士が被害者に対して高圧的な態度で示談成立を要求するということは絶対にあってはなりません。

弁護士は、被害者の被害感情に出来る限り寄り添い、被害者に対して容疑者からの謝罪の気持ちを伝えるという姿勢を貫きます。

 

更生支援についても相談できる

弁護士としては、当該容疑者の方のために最善の弁護活動をすべきことは言うまでもありませんが、「犯罪なき社会を創る」ということも弁護士の職責です。

そのための手段の1つとして、「更生し、二度と犯罪に手を染めないような環境作りをする。」ということが重要であると考えます。

弁護士に依頼をすれば、ご本人やご家族と共に、今後どうすれば更正できるのかを一緒に考えてもらえます。

その中では、弁護士から、個々人の状況に応じて、更生するための支援(「更生プログラム」ともいわれます。)を受けられる機関を紹介することが出来るでしょう。

 

関係機関と連携して窃視症の治療をサポートできる

窃視症についていえば、窃視症の治療をしてもらえる心療内科を紹介するなどもしてもらえることがあります。

いざ窃視症の治療に踏み切ろうとしても、ご自身だけではどこで治療を受けるべきなのかなどが分からないことも多いかと思います。

弁護士は、過去に同じような事案をいくつも扱っていますから、過去の豊富な経験の中で知った関係機関や支援団体を紹介してくれるはずです。

 

 

まとめ

ここまで、盗撮の再犯率の高さとその原因、治療方法や弁護士に依頼するメリットを説明してきました。

既に再三述べましたが、病気が原因であることも少なくない以上、繰り返す盗撮を自分の力だけで止めることはかなり難しいです。

万が一、自分や自分のご家族が盗撮で逮捕されてしまった、或いは捜査対象になってしまったという場合には、すぐに弁護士に相談されることをおすすめします。

弁護士は、その事件に対する法的な助言だけでなく、仮に本当に盗撮をしてしまっていた場合であれば、どうすれば二度と同じ過ちを繰り返さないか、という将来へ向けての助言もできます。

最近は、初回相談が無料という法律事務所も多くなっていますので、皆さんも比較的相談しやすいと思います。

当事務所では、刑事事件を専門に扱うチームがあり、盗撮問題について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており全国対応が可能です。

盗撮問題については、当事務所の刑事事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、盗撮問題にお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

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