盗撮は懲役刑?それとも罰金刑?盗撮の刑罰や罰金の相場について

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盗撮は懲役刑?それとも罰金刑?

盗撮は、刑法において犯罪として定められているわけではありません。

盗撮の処罰規定については、性的姿態撮影等処罰法又は各都道府県が定めている条例(迷惑防止条例)を確認する必要があります。

 

性的姿態撮影等処罰法違反(撮影罪)に該当する場合

撮影罪については、法定刑が「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」となっています。

引用元:性的姿態等撮影処罰法2条1項1号から4号|e-GOV法令検索

撮影罪について詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

迷惑防止条例違反となる場合

性的姿態撮影等処罰法は法律ですので全国一律の適用があります。

これに対し、迷惑防止条例は各都道府県ごとに定められており罰則も異なります

例えば、東京都や大阪府等は、非常習の場合で「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、常習の場合で「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています(東京都迷惑防止条例第5条1項2号・同条例8条、大阪府迷惑防止条例第6条・同条例15条)。

また、福岡県の場合、その法定刑は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金刑とされています(福岡県迷惑行為防止条例第11条1項、同条例第6条)。

 

 

盗撮で懲役刑になるケースとは

上で紹介したように、撮影罪の場合でも、迷惑防止条例違反の場合でも、法定刑には懲役刑が定められています。

そのため、当然、盗撮で懲役刑となるケースも出てきます。

それでは、どのような場合に盗撮で懲役刑とされる可能性があるのでしょうか。

懲役刑となる可能性がある例
悪質性が高いケース
被害者が大勢いるケース
再犯の場合
① 悪質性が高いケース

まずは、悪質性が極めて高いケースが挙げられます。

盗撮した画像・映像をインターネットで公開したり、他者に販売したりしているケースや、自らの仕事や地位を利用して継続的に盗撮を繰り返していたようなケースは、悪質性が高いと判断され、懲役刑が選択される可能性があるでしょう。

 

② 被害者が大勢いるケース

また、立件される数が一定数以上あるケースも、懲役刑の可能性が出てきます。

これまでの経験上、盗撮が発覚した方で、余罪が全くないというケースはほぼ聞いた記憶がありません。

余罪はあくまでも立件される事件の量刑を決める際の一事情にしか過ぎませんから、余罪があるというだけでは特別処分が重くなるわけではありません。

※一般的なケースと比べて異常なほどの余罪があれば、もちろん話は変わってきます。

これに対し、複数の盗撮行為について立件された場合、それぞれの盗撮行為が直接の処罰対象となります。

そのため、処罰対象となる行為全体を見たときに、1件のみが立件されている場合よりも懲役刑が求刑される可能性も高くなると考えられます

 

③再犯の場合

ここまでは初犯であっても懲役刑となる可能性がある事情を取り上げましたが、やはり最も懲役刑の可能性が高いといえるのは、同種の前科前歴があるにもかかわらず、再犯を繰り返しているケースです。

最初のうちは不起訴(起訴猶予)や罰金刑としてもらえたにもかかわらず再犯に及ぶということは、より重い処罰を与える必要性が高いと考えられてしまうからです。

少しでも刑罰を軽くするために、適切な弁護活動を受けることをお勧めいたします。

 

 

罰金刑になった場合相場はいくら?

盗撮の罰金額をどの程度とするかは、各都道府県によって多少の差はあれど大きな差はないでしょう。

当事務所における取扱事例の傾向としては、初犯であれば40万円程度の罰金額となることが多く、初犯でなければ70万円となった事例もあります。

このように盗撮の罰金額は高額です。

罰金を支払ったとしても、示談が出来ていなければ被害者から慰謝料を請求される可能性も残っていますから、かなりの支出を強いられるでしょう。

盗撮は、決して軽い気持ちで行っていい行為ではないということがよく分かって頂けるのではないでしょうか。

 

 

盗撮が罰金刑になった場合、前科はつく?

交通違反を行ったときに交通反則金を支払っても前科がつかないことから、罰金は前科にならないと勘違いをしている方も一定数見受けられます。

多くの盗撮事件では、罰金刑とされる場合でも略式起訴という書類のやり取りのみで罰金刑が決定するという手続きが取られますから、交通反則金と同じようなものだと感じてしまい、前科が付いたという実感があまりないのかもしれません。

しかしながら、罰金刑も刑事罰の一種です。

そのため、罰金刑とする旨の判決が確定した場合には、もちろん前科がつきます

罰金刑となり前科が付いてしまった場合でも、以下のような不利益が生じる可能性があります。

前科があるとつけない職業

罰金刑の前科が付いた場合であっても、医師や歯科医師、薬剤師などの資格・職業については一定期間の制限が行われる可能性があります。

いずれも「免許を与えないことがある。」という裁量的な規定になっていますから、必ず資格・職業が制限されるというわけではありませんが、甘い見通しを持つべきではありません。

これらの職業・資格に就いていたり、就くことを望んでいたりする場合には、大きなリスクといえるでしょう。

 

就職活動への影響

職業の制限以外でも、採用への影響が考えられます。

すなわち、就職活動において、前科がある場合は履歴書の賞罰欄に記載をする必要があります

正直に記載をした場合、やはり採用担当者としては採用に慎重になることもあるでしょう。

面接等の評価が同等であれば、前科がある方が不利に働く可能性は否定できません。

また、仮にこの記載を偽って入社した場合、その場は切り抜けられるかもしれませんが、後から虚偽記載が発覚してしまうと、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。

 

親族の就職等への影響

可能性としてはそれほど高くはありませんが、企業や官公庁が、応募者の身辺調査の一環として、親族を調査することもあります。

例えば、防衛省では、一定の階級や立場に応じて、親族の調査を行うことがあります。

そのため、犯罪の内容にもよりますが、親族の前科が発覚した場合、採否のマイナス評価となる可能性があります。

前科がつくことで、親族にまで悪影響を及ぼしかねないということは気をつけておきましょう。

 

海外渡航

前科がついた場合、就労ビザを取得する場面で問題が起こり得ます。

就労ビザの取得において、無犯罪証明書の提出を求められることがあるからです。

無犯罪証明書は、罰金刑を受けた場合には5年間、執行猶予付きの判決を受けた場合には執行猶予期間満了まで発行されません。

犯罪の内容にもよりますが、無犯罪証明書の代わりに、判決謄本を受け取り、訳文添付の上で大使館に提出することでビザが取得できる可能性があります。

観光などの短期滞在の場合は、日本人はほとんどの国にビザ無しに行くことが出来ますので、問題となることはほとんどないといえます。

前科がついた場合の不利益について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

盗撮で懲役刑にならないための3つのポイント

盗撮で懲役刑にならないようにするためには、次のことが重要になると考えます。

懲役刑を回避するために
  1. ① 被害者との示談を成功させる
  2. ② 二度と盗撮をしない
  3. ③ 経験豊富な弁護士へ相談する

被害者と示談をすること

盗撮事件で懲役刑とならないためには、被害者と示談を成立させることが必要になります。

悪質な事案や再犯をしてしまった事案など、通常であれば懲役刑も想定される事案であったとしても、被害者が許している状態であれば、懲役刑を科す必要まではないと検察官に考えてもらえる可能性があるからです。

 

再犯防止に取り組むこと

被害者の示談と合わせて、盗撮をしてしまった原因を正しく分析し、周囲の協力を得ながら再発防止に取り組むことも必要です。

場合によっては、治療機関に通院して長期的な解決を模索することも必要です。

きちんとした再発防止策に取り組み、再犯可能性が低いことを示すことで、懲役刑を科す必要性が低くなっていると検察官に考えてもらえる可能性があります。

 

盗撮事件の経験豊富な弁護士を探すこと

盗撮事件は、示談交渉等の弁護活動によって、処分の内容が比較的変化する可能性が高い事件類型です。

そのため、盗撮事件で懲役刑を避けるためには、上記のような活動を適切に行う必要があります。

しかしながら、被害者との示談交渉を本人が行うことは出来ないのが現状であり、再犯防止策についてもどのような取り組みが効果的かを本人が判断することは難しいでしょう。

刑事事件に意欲的に取り組んでおり、盗撮事件の経験も豊富な弁護士に弁護活動を任せることで、懲役刑を回避出来る可能性を上げるための適切なサポートを受けることができます。

まとめ

以上、盗撮が懲役刑となる場合やその回避方法について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

盗撮であっても、個別の事案によっては懲役刑となる可能性があることはご理解頂けたと思います。

軽く考えることはせず、盗撮を行ってしまった場合には弁護士に相談の上、適切な解決方法を模索されるべきです。

盗撮を行ってしまった方は、刑事事件に注力している弁護士に相談することを強くお勧めいたします。

そのほか、盗撮事件についてもっと詳しく知りたいという方は、こちらのページも合わせてご覧ください。

 

 


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