のぞきをしてしまった場合の刑罰は?【弁護士が解説】
軽い気持ちでのぞきをしていたら見つかってしまいました。
私は何の罪に問われるのでしょうか。
まず、各都道府県において、迷惑行為防止条例というものが定められており、この条例に違反する可能性があります。
その他、軽犯罪法違反やのぞくために他人の家の敷地内に無断で立ち入ってしまった場合には、住居侵入罪が成立してしまいます。
のぞきがどのような犯罪に当たるのか
迷惑行為防止条例違反
条例違反となる場合
まず、各都道府県において、迷惑行為防止条例というものが定められており、この条例に違反する可能性があります。
福岡県迷惑行為防止条例違反の場合、「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」で「公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見」することが処罰の対象とされています(福岡県迷惑行為防止条例6条2項柱書、同条3項)。
例えば、電車やバスの中で近くに座っている女性のスカートの中をのぞきこんだり、女子トイレに入って中をのぞいたりする行為が条例違反となります。
他方、公共の場所におけるのぞきが処罰対象とされているため、部屋の中をのぞいたような場合は迷惑行為防止条例違反にはなりませんが、後述の軽犯罪法違反に当たります。
また、自然に目に入ってしまったような場合には、直ちに迷惑行為防止条例違反となるわけではありませんが、周囲の人に疑われるような行動は避けたほうがよいでしょう。
法定刑
福岡県迷惑行為防止条例の場合、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が法定刑とされています。
また、常習性があると認められる場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が法定刑となっており、刑が加重されています。
軽犯罪法違反
窃視の罪とは?
軽犯罪法1条23号(窃視の罪)では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所、その他の他人が通常衣服をつけないでいるような場所を密かにのぞき見た者」に対して、拘留または科料が法定刑として定められています。
拘留とは、1日以上30日未満の身体拘束を受ける刑罰であり、科料とは、1000円以上1万円未満を支払うこととされる刑罰です。
窃視の罪は、プライバシーを侵害する抽象的危険性のある行為を禁止し、合わせて性に関する風紀の維持向上を図ることを目的として制定されたものであり、目視するだけでなく、遠くから望遠鏡等を用いてのぞく場合も含めて処罰の対象となります。
「正当な理由なく」とは、違法であることを意味します。
具体的にどのような場合が当たるかは、社会通念や常識によって決められますが、犯罪捜査のために、密かに伺う必要があるというような場合以外では、正当な理由が認められることはほぼないと考えてよいでしょう。
「その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」とは、人が通常隠している身体の部分を露出している可能性のある場所の内部のことをいいます(最高裁昭和57年3月16日付判決)。
現実に人が衣服をつけていないかどうか、人がいるかどうかは関係ありません。
例えば、女性用トイレを覗き見たものの、洗面台の部分しか見えず、中に人はいなかったというような場合であっても、この要件を満たすことになります。
ただし、軽犯罪法は、「場所」をのぞくことを禁止している規定ですから、エスカレーターや階段で上の方にいる女性のスカートの中をのぞいたり、逆に下の方にいる女性の胸元をのぞいたりする行為は、「場所」をのぞいているわけではないので、軽犯罪法違反には当たりません。
もっとも、このような場合には、先に述べた迷惑行為防止条例違反に該当する可能性がありますので、注意が必要です。
「密かに」とは、「見られないことに関して利益を有している人の承諾ないし推定的承諾なしに」という意味であると考えられています。
そのため、のぞくことを直前に宣言してからのぞいたとしても、のぞかれる人からの承諾や推定的承諾がない場合であれば、本罪が成立することに変わりありません。
住居侵入罪
住居侵入罪とは、「正当な理由がないのに、人の住居…に侵入」したものに対して成立する犯罪であり、法定刑は3年以下の懲役または10万円以下の罰金とされています(刑法130条)。
他人の家の浴室や室内をのぞくために他人の家の敷地内に無断で立ち入ってしまった場合には、住人の承諾がないまま立ち入っているということになりますから、住居侵入罪が成立してしまいます。
その後のぞき行為を行なってしまうと、迷惑行為防止条例違反や軽犯罪法違反の罪と合わせて処罰を受けることになってしまいます。
住居侵入罪については、詳しくはこちらをご覧ください。
のぞき事案は弁護士への早期相談が重要
のぞきが発覚し、警察の捜査を受けることになった場合、不起訴処分を獲得するためには被害者との示談が重要となります。
示談を進めるためには、当然ですが、被害者の方の連絡先を知ることが必要です。
被害者の連絡先については、警察等の捜査機関が把握していますので、弁護士を通じて、捜査機関に被害者の方の連絡先情報を教えるよう求めることが出発点となります。
通常は、のぞきを行った犯人から、警察や検察官に被害者の連絡先を教えてもらうよう頼んでも、開示はされません。
なぜならば、のぞきの被害者の心情として、自分をのぞいた犯人とは接触したくないと考える場合がほとんどであり、被害者の同意が得られないからです。
弁護士が交渉の窓口となる場合は、被害者の方も安心感があるため、連絡先を教えてくれる可能性があります。
そのため、のぞき事案においては、弁護士への早期相談がポイントとなります。
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか