盗撮の証拠とは?弁護士がわかりやすく解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  

盗撮の証拠とは、盗撮をした犯人であることを示すあらゆる痕跡のことです。

過去に盗撮をしてしまい、いったい何が盗撮の証拠となるのか、自分の盗撮が発覚するのかといったことがご心配な方もいらっしゃるかもしれません。

盗撮の証拠といえば盗撮した画像のデータが典型的ですが、それはほんの一例であり、証拠としてはさまざまなものが考えられます。

そして盗撮の証拠によって犯行が明らかになると、刑罰を科されるにとどまらず、さまざまなリスクが伴います。

この記事では盗撮の証拠について、そもそも盗撮の証拠とは何か、どのようなものが盗撮の証拠となるのか、盗撮のリスクや対処法などについて、弁護士が解説します。

盗撮の証拠とは?

盗撮の証拠とは、盗撮をした犯人であることを示すあらゆる痕跡のことをいいます。

容疑者と犯行を結びつけ、確かにその容疑者が犯行を行ったことを証明できる根拠と言い換えることもできます。

盗撮行為の場合では、証拠としては盗撮した写真や動画が典型的なものではありますが、証拠はこれらにとどまらず、実に多様なものが考えられます。

盗撮のために設置したカメラや、防犯カメラの映像も盗撮の証拠となりますし、またこれらのような証拠物(物証)だけでなく、被害者や目撃者による証言(人証)も証拠の一種といえます。

以下では、盗撮の証拠として特によくあるものをいくつか取り上げて解説します。

 

盗撮犯が撮影した写真や動画

盗撮は、カメラやスマートフォンなどの撮影機器を用いてスカート内の下着などを撮影する犯罪であることから、犯行の性質上、撮影機器には撮影された写真や動画などのデータが残ることになります。

このような画像は偶然映り込むようなものではなく、狙ってカメラを差し向けない限り撮れないのが通常ですから、データが残っていれば盗撮したことを示す有力な証拠となります。

スマホの写真や動画は証拠となる?

スマートフォンで盗撮を行った場合、盗撮の写真や動画がスマホに残っていれば、かなり有力な証拠となります。

特に近年のスマートフォンは高機能化が著しく、写真や動画を撮影した日時や位置情報などを自動的に記録する機能がオンとなっている場合もあり、いっそう犯行を特定しやすくなっています。

一度盗撮により撮影した画像データは削除しない限り機器に記録されたままですので、たとえ現行犯で発覚しなかったとしても、後日職務質問などでデータを発見されて犯行が発覚するというケースも見られます。

また、これらのデータはデバイスから削除したとしても専門的な解析により復元できる場合もあるため、消せばそれで分からなくなるということもできません。

 

盗撮に用いた道具

機器を用いて撮影する犯罪である盗撮では、撮影した画像データだけでなく、撮影に用いた道具自体も犯行の証拠となり得ます。

隠しカメラは証拠となる?

トイレや更衣室などに隠しカメラを設置するタイプの盗撮の場合、その隠しカメラ自体が証拠となることもあります。

カメラを設置する際に自身が映り込んでいるケースが多くあるほか、カメラに付着した指紋や、カメラの購入履歴などから犯人として特定されることもあります。

カメラ以外の道具も証拠となる?

最近の盗撮は手口が巧妙化しており、鞄や靴などに穴を開け、そこにスマートフォンやカメラなどの撮影機器を忍ばせて盗撮するというケースも散見されます。

このような手法で盗撮した場合、犯行に使用した鞄や靴も盗撮の証拠となります。

もちろん、盗撮とは無関係に、単なる劣化で鞄や靴に穴が開いているということもあり得ますので、穴が開いていればそれだけで盗撮ということではありませんが、目撃状況やカメラの忍ばせ方など他の証拠と併せて、犯行が認定されることがあり得るのです。

盗撮の手口や機材別の逮捕例については、こちらをご覧ください。

 

防犯カメラの映像

防犯カメラの映像も、盗撮の証拠となります。

社会全体の防犯意識の高まりもあり、現代では至るところに防犯カメラが設置されています。

特に盗撮はその性質上、駅や商業施設などの公共の施設で行われることが多く、そのような場所には基本的に防犯カメラが備えられているといっても過言ではありません。

犯行の瞬間が直接的に記録されていれば当然盗撮の証拠となりますし、それ以外にも、改札や店舗に出入りする姿などから、逃亡した犯人を特定するといった使われ方をすることもよくあります。

防犯カメラで犯人が特定できるかについての解説は、こちらをご覧ください。

エスカレーターでの盗撮

エスカレーターは、女性の背後に立っていても不自然でないことから、盗撮被害の発生しやすい場所となっています。

エスカレーターが設置されているのは、通常駅や商業施設のような公共の場所であり、多くの場合、防犯カメラが設置されています。

公共のトイレでの盗撮

盗撮はカメラを用いて直接的に撮影行為に及ぶだけでなく、公共のトイレなどに隠しカメラを設置して行われることもあります。

トイレですので、当然その内部にまで防犯カメラが設置されているということはありませんが、トイレに出入りするところが防犯カメラに記録されていることは十分考えられます。

この場合、防犯カメラによって証明できるのはあくまで「トイレに侵入した」という事実だけですので、盗撮行為そのものが立証されるわけではありません。

しかし、たとえ単体で盗撮を立証できないとしても、盗撮行為を裏付ける1つの材料ということはできますので、その意味において、このような映像も盗撮の証拠といえるのです。

 

現場の痕跡

以上のほか、現場に残った痕跡も、犯人を特定するための証拠となります。

たとえば、逃亡の際に身分証のような身元を特定できるものを落としていれば、そこから犯人として特定されますし、また、犯行が駅構内で行われていれば、ICカード乗車証の履歴から身元が判明することもあります。

 

関係者の証言

画像や防犯カメラのような物的証拠だけでなく、事件関係者の「証言」も証拠の一種とされており、「物証」に対して「人証」という言い方をします。

盗撮の事案でいえば、被害者や目撃者の証言が証拠の中心となります。

盗撮被害者の証言

盗撮事件では、被害者が犯行に気づいて被害を申告するという形で事件が発覚することがあります。

スマートフォンなどで盗撮しようとすると、どうしても撮影対象に接近する必要があり、気配で感づかれるというケースが多く存在します。

そのまま現行犯逮捕されることもあるほか、これまで解説してきた防犯カメラなどの痕跡から身元を特定され、後日逮捕に至るというケースもあります。

盗撮で被害届を出された場合の対応については、こちらをご覧ください。

盗作を目撃した者の証言

盗撮では被害者だけでなく、犯行を目撃した第三者の証言が証拠となることもよくあります。

盗撮はターゲットを見つける必要があることから公共の場で行われやすく、そうなると、必然的に被害者以外の人通りも多くなってきます。

また、被害者に気づかれずに盗撮しようとするとどうしても挙動が不自然になり、自分では気づかれていないつもりでも、端からみると丸わかりということもよくあります。

このような点からも、盗撮は第三者に目撃されやすい犯罪といえるのです。

盗撮行為を目撃されてしまった場合の対応については、こちらをご覧ください。

【ワンポイント:証拠の考え方 証拠の「証明力」とは】

ここまで証拠の種類についてご紹介してきましたが、それぞれの証拠には「証明力」というものがあります。

イメージとしては、犯行を裏付ける強力な証拠であれば証明力が強く、決め手に欠けるものであれば証明力としては弱いと捉えることができます。

ただし、証明力の強い証拠が重要で、証明力の弱い証拠は使い物にならないかというと、そういうわけではありません。

たとえば、盗撮の画像は一般的には証明力が強い部類の証拠といえますが、「自分で撮影したものではなく、インターネットからダウンロードしたものだ」と弁解されてしまうと、その弁解を別の証拠によって覆す必要があります。

他方で、公共トイレにおける防犯カメラでは盗撮行為それ自体を立証することはできないと解説しましたが、これが上記のような弁解を覆す決定的な根拠となることもあり得ます。

刑事裁判では冤罪を防ぐため、検察側には高いレベルでの立証活動が求められています。

ですので、通常は証明力の強い証拠の一本槍で裁判に挑むということはなく、証明力の強いもの、弱いものを幾層にも積み重ねて、犯行が確実であることを丁寧に立証していくのです。

このような視点で見てみると、証明力の強弱にかかわらず、ここまでご紹介してきた証拠のすべてが重要なものであることをご理解いただけるのではないでしょうか。

 

 

盗撮のリスク

盗撮は犯罪行為ですので、万が一盗撮に及んでしまうと、多くのリスクを抱えることになります。

以下はほんの一例ですが、代表的なリスクをご紹介します。

 

盗撮で逮捕される

盗撮は犯罪行為ですので、発覚した場合、警察により逮捕される可能性があります。

犯行の場で取り押さえられれば現行犯逮捕となりますし、また、その場で逮捕されなかったとしても、防犯カメラの映像などから身元を特定されて後日逮捕されることもあります。

逮捕された場合、最長で72時間にわたり身体拘束されることになります。

また、逮捕に続いて「勾留」という手続きが取られれば、そこからさらに最長で20日間の拘束となります。

つまり逮捕と合せて、最大で23日間は自由が奪われる可能性があるということです。

逮捕それ自体は刑罰ではありませんので、逮捕されたことで前科が付くわけではありませんが、身体拘束がそれだけの期間続くとなると、仕事や学業など、生活のさまざまな面への影響が避けられません。

盗撮により逮捕されるケースや逮捕後の流れについては、こちらをご覧ください。

 

事件が報道される

盗撮をした場合、特に逮捕された場合などは、マスコミにより事件が報道される可能性があります。

事件が報道されるか、報道されるとして実名が出るかは原則として各報道機関の裁量であり、他にもっと大きなニュースがあるかといった偶然の事情にも左右されます。

特に現代は、新聞やテレビだけでなく、ネットニュースが一般的になったことであっという間に情報が拡散する時代であり、事件が報道されることの重みは従前とは比較になりません。

実際、盗撮で会社員や公務員が逮捕されたといった記事をよく見るようになったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

自身の犯行が広く周知されてしまうという意味で、報道のリスクは非常に重大なものといえるでしょう。

事件が報道されるか否かについては、こちらの解説を合わせてご覧ください。

 

盗撮で処罰される

検察官が事案を起訴相当、すなわち刑事裁判によって容疑者に刑罰を科すべきだと判断した場合、起訴されて刑事裁判が開始します。

その結果有罪となった場合、判決において所定の刑罰が科されることになります。

盗撮は従前、各都道府県の迷惑防止条例によって規制されていましたが、現在では性的姿態撮影等処罰法という法律が制定され、より重い「撮影罪」として処罰される可能性もあります。

盗撮で処罰される際の刑罰についてのさらに詳しい解説は、こちらをご覧ください。

 

民事上の損害賠償を請求される

盗撮は犯罪であり、撮影罪が成立すれば「三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金」という罰則が科されるおそれがありますが、それだけにとどまらず、別途民事事件として責任を問われる可能性があります。

盗撮は無断の撮影行為によって相手に精神的苦痛を与えているといえるので、刑事罰とは別に、民事上の損害賠償責任も発生し、被害者から慰謝料の支払いを求められることがあるのです。

最大で300万円の罰金を科せられる可能性があり、さらに民事上の損害賠償まで発生するとなると、経済的な面での打撃も計り知れません。

盗撮事件における慰謝料・示談金の相場については、こちらをご覧ください。

 

 

盗撮をした場合の対処法

ここでは、もし誤って盗撮をしてしまった場合の対処法を解説します。

心当たりがある場合は、特に丁寧に目を通していただければと思います。

 

自首をする

自ら警察に出頭して犯行の事実を申告することを、自首といいます。

もし捜査機関が盗撮の事実を認知していなければ、自首によって自らこれを明るみに出すことになるわけですので、不利になると思われるかもしれません。

たしかに、わざわざ犯行の発覚を招くという点だけを見れば得策ではないようにも思えますが、そうであるからこそ、自首したという事実が真摯な反省の表れとして有利に考慮されるのです。

この記事で解説したとおり、盗撮は証拠として多くの痕跡が残りがちな犯罪ですので、後日発覚することが稀ではありません。

そこで盗撮をした場合には、発覚に先立て自らの意思で出頭するということが大事になってくるのです。

盗撮で自首をすることのメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

 

被害者と示談交渉をする

自首することのほか、刑事事件では被害者と速やかに示談することも重要です。

示談とは、加害者側が謝罪を申し入れて、被害者の許しを得るという和解のようなものです。

示談の際には一般的に、示談金としていくらかの金銭を支払います。

特に盗撮のような性犯罪では、検察官が処分を決定するに当たって、被害者の意向(処罰感情)が重視されますので、それまでに示談が成立していることは非常に重要な意味を持ちます。

示談が成立した場合、謝罪することで被害者から許しが得られており、示談金の支払いによって損害も償われていますので、処罰の必要性が大きく低下するといえるのです。

もっとも、盗撮された被害者は精神的に大きなショックを受けているのが通常であり、被害者に示談を受け入れてもらうのは容易ではありません。

法律の専門家であり交渉を得意とする弁護士であっても、示談交渉が難航することも珍しいことではなく、丁寧な対応が必要となってきます。

刑事事件における示談交渉の詳細は、こちらをご覧ください。

 

刑事事件にくわしい弁護士に相談する

自首や示談の重要性はご理解いただけたかと思いますが、いずれについても、刑事事件にくわしい弁護士に相談し、その助言の下で進めるのが最善といえます。

自首については、警察署に出頭するわけですので、通常はそのまま取り調べを受けることになります。

そもそも自首すべきなのかどうか、自首するとして、取り調べにはどのような対応をするべきなのかといったことについて、自分では判断がつかないというのは、普通のことです。

そこで、もし自首をお考えであれば、刑事事件にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。

刑事事件にくわしい弁護士であれば、上記のような疑問や不安に適切な助言をすることができますし、また、刑事事件に注力している弁護士の中には、自首へ同行するという依頼を受けている弁護士もいます。

自首への同行を依頼することで、以上のような不安を極力解消した状態で出頭することができるでしょう。

また、被害者と示談するに当たっても、弁護士の協力はほとんど必須といって過言ではありません。

示談は和解という一種の契約の性質をもっており、そもそも法律の専門家でなければ、適切な内容で示談すること自体が困難です。

ましてや示談交渉の過程に特に困難が伴う盗撮事件の示談では、刑事事件にくわしい弁護士に依頼することがベストの選択といえるでしょう。

刑事事件における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。

 

 

盗撮の証拠に関するQ&A

盗撮の証拠となる画像を削除したら逮捕される?

自身の盗撮の証拠であれば、削除しても証拠隠滅罪に当たることはありません。

証拠隠滅についての詳しい解説は、こちらをご覧ください。

 

盗撮は現行犯以外での逮捕は難しい?

現行犯のほか、後日逮捕されることも十分考えられます。

詳しい解説はこちらでご確認ください。

 

 

まとめ

この記事では盗撮の証拠について、そもそも盗撮の証拠とは何か、どのようなものが盗撮の証拠となるのか、盗撮のリスクや対処法などについて解説しました。

最後に改めて記事の要点を確認します。

・盗撮の証拠とは、盗撮をした犯人であることを示す痕跡のことをいい、容疑者と犯行を結びつけて、犯行を証明するものである。

・盗撮の証拠には、盗撮した画像等のデータや犯行の場面を捉えた防犯カメラの映像のような物証のほか、被害者や目撃者による証言も証拠となる。

・盗撮のリスクには、逮捕や刑罰のような刑事手続き上の不利益のほか、民事上の損害賠償を請求される可能性もある。

・盗撮をした場合、自首や被害者との示談をすすめることが適切な対応といえる。

・盗撮事件では、刑事事件にくわしい弁護士に相談することが重要である。

当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。

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