盗撮の余罪|発覚の可能性は?余罪のデメリットや対処法を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


盗撮をはじめとする性犯罪は、繰り返しやすく再犯率が高いことで知られています。

盗撮で逮捕された場合、それが人生ではじめての盗撮というケースは多くありません。

盗撮では、一度出来心で手を出した結果、やめられなくなって2度、3度と繰り返す内に逮捕されるというのが典型的な例です。

言い換えると、多くの盗撮事案においては、余罪の存在が問題となるということです。

このページでは、盗撮の余罪について、余罪とはどのようなものか、余罪によってどの処分を受けるのか、どのように対処するべきかといったことについて、弁護士が丁寧に解説します。

 

 

盗撮の余罪とは

盗撮事件は余罪があることが多く、盗撮が発覚すると、余罪の有無についても追及を受けることになります。

そこでまずは、盗撮と余罪の意義について、それぞれ確認しておきます。

盗撮とは

盗撮とは、一般には、相手方の承諾を得ないで勝手に他人の容姿などを撮影することを指します。

ただし、無承諾の撮影すべてが法律上違法とされている盗撮に当たるわけではありません。

盗撮は法律ではなく、各都道府県が定める迷惑防止条例によって罰則が定められており、条例が違法としている行為のみが、法律上の盗撮として犯罪となるのです。

具体的には、スカート内を撮影した場合や、トイレや更衣室のような場所で衣服を身につけていない状態を撮影したような場合などに、犯罪として処罰されることになります。

また、最近は、上記に該当しない後ろ姿などの撮影であっても、撮影行為を全体的に観察してわいせつな意図を認定できるものについては、卑わいな言動として検挙されるようになりつつあります。

実際にどのような行為が盗撮となるかは、各都道府県の制定する迷惑防止条例の定めを確認する必要がありますが、概要としては、以上のようなイメージで捉えていただければと思います。

盗撮について詳しい定義をお知りになりたい方は、こちらをご覧ください。

 

余罪とは

余罪(よざい)の「余」という字には「それ以外」という意味があり、余罪とは、「それ以外の罪」を意味しているということができます。

すなわち、犯罪が発覚した場面において、その発覚している犯罪行為(「本罪」といいます)のほかに別の犯罪行為を行っていれば、本罪以外の罪という意味で、それが余罪ということになります。

盗撮でいえば、今現在発覚して問題となっている盗撮行為以外に別の盗撮を過去に行っていれば、その本罪以外の盗撮が、余罪に該当します。

 

 

盗撮の余罪はどのようにして発覚する?

余罪は、本罪について捜査する過程で発覚するのが通常です。

余罪は本罪があってはじめて余罪となりますので、先行して本罪の捜査が進んでいない限り、余罪というものがありえないためです。

盗撮の余罪は、具体的には次のような経緯をたどって発覚します。

 

盗撮で警察は余罪を調べる?

盗撮事件において、警察は高確率で余罪を調べます。

というのも、盗撮は公共の場で行われる犯罪として発覚しやすい性質を有する反面、盗撮する側も見つからないように工夫を凝らしますので、一回で逮捕されることはさほど多くないからです。

また、盗撮をはじめとする性犯罪は繰り返しやすいという傾向があり、警察も当然そのことをよく知っています。

すなわち、盗撮犯を検挙した場合、確率的にいって、偶然1回目の犯人を逮捕したというよりも、今回以外にも同種のことを複数回やっているのではないかと考える方が合理的なのです。

しかも盗撮の場合、過去に犯行を繰り返していれば、スマートフォンなどに撮影データが残っているなどして、容易に余罪の証拠を確認できることも多いです。

このようなことから、警察が盗撮犯を検挙した場合、余罪についても捜査するのが一般的と考えられます。

 

余罪が発覚するパターン

余罪は本罪の発覚以前に行っているものですので、余罪が発覚するのは、本罪の捜査の過程で余罪の痕跡が発見されたときということができます。

盗撮事件においては、余罪の画像データが発見されて発覚するのが典型的なパターンです。

 

所持品の押収(スマートフォンやカメラなど)

今回の犯行で用いられたのがスマートフォンであれば、当然そこに保存されているデータは確認されることになります。

まずは任意提出を求められるという形が取られることもありますが、これを拒んだとしても差し押さえ令状により強制的に押収されるでしょうから、調べられることは避けられません。

スマートフォンなどであれば撮影の日時なども自動的に記録されているため、余罪のデータが発見された場合には、そちらについても厳しく追及されることになるでしょう。

 

家宅捜索(パソコン、ハードディスク、USBメモリーなど)

本罪で撮影に使用されたスマートフォンなど以外にも、家宅捜索により自宅のパソコン等が押収されることもよくあります。

盗撮においては、撮影した画像データをこれらの媒体に移し替えて保存していることも多いため、これらを押収して、データの有無を逐一確認するのです。

余罪のデータが記録されているかは調べてみなければわかりませんので、電子データを記録できそうな物は一つ残さず押収していく、というやり方が取られることも珍しくありません。

そして押収物を解析して余罪のデータが発見されれば、それで余罪が発覚ということになります。

 

 

盗撮の余罪が発覚するデメリット

盗撮で検挙されると、本罪について逮捕や刑罰などのデメリットが発生することになりますが、さらに余罪が発覚すると、別途余罪特有のデメリットが生じます。

取り調べの期間が長期化する?

余罪が発覚すると、取り調べの期間が長期化するおそれがあります。

そもそも捜査とは、いつ、どこで、誰が、誰に、どのような被害を加えたのかという犯行の詳細、いわゆる「5W1H」を確定させ、犯罪の全容を解明することが目的です。

そうすると、余罪が発覚した場合、そのすべてについてこれらを確定するための作業が必要となってくるため、必然的に取調べの期間が長期化することになります。

刑事事件には、容疑者を逮捕して身柄を拘束した状態で進める「身柄事件」と、逮捕はせずに取調べのたびに容疑者を呼び出すことで対応する「在宅事件」とがあります。

身柄事件の場合、逮捕と勾留を合わせると最大で23日間の拘束がつづきますが、これはあくまでひとつの事件についてです。

盗撮は1回の犯行ごとに1つの犯罪として数えますので、余罪が多ければ、理論的にはそのすべてについて逮捕・勾留が繰り返される可能性があります。

一方、在宅事件の場合、身体拘束はされないものの、いつまでに捜査を終えなければならないという時間制限がないため、長ければ時効成立までの間は捜査が長引くおそれがあります。

盗撮の時効期間については、こちらをご覧ください。

 

押収物が利用できない

スマートフォンやパソコンなどを押収された場合、その間これらを利用できないというデメリットがあります。

押収されたのが盗撮用のカメラなどであれば問題ありませんが、スマートフォンやパソコンの場合、これらが使えないと仕事などに支障がでることもあると思われます。

「還付請求」(かんぷせいきゅう)という手続きを取ることで最終的には手元に戻ってきますが、の発覚により捜査が長期化することも予想され、その分利用できない期間も長引くと生活上の不便も大きくなるでしょう。

 

余罪で逮捕される可能性は?

上記でご説明したとおり、盗撮を多数回繰り返していれば、理論的にはその回数の分だけ逮捕される可能性も否定できません。

実際には、事件の全容が解明されればそれ以上の捜査は必要ないですし、犯行の一部のみを立件することもあり得るため、余罪が多数にのぼる場合などでは、犯行ときっちり同じ回数逮捕されるということは多くないと思われます。

しかし余罪の件数が多ければその分捜査にも時間がかかりますので、結果的に余罪での逮捕が繰り返されることもないとはいえません。

 

余罪で罪が重くなる可能性は?

本罪とは別に余罪がある場合、余罪で罪が重くなる可能性があります。

余罪があるときは、本罪のみの場合と比べてより多くの被害を発生させている点で、より強い非難に値するということができるため、それに見合うだけの刑罰を科す必要があるのです。

起訴されていない余罪の存在を理由として重い刑罰を科すことは原則として許されませんので、余罪で罪が重くなるのは、余罪についても起訴された場合です。

そして余罪が多数あるとしても、そのすべてについて起訴されるとは限りません。

余罪については、画像データだけからでは被害者の身元や犯行の詳細が特定できないことも多いです。

被害者が特定できないからといって起訴できないわけではなく、最近では「氏名不詳者を盗撮した」という形で起訴される例も珍しくない印象もあります。

しかし他方で、被害者が特定できた分だけの起訴で足りると判断される場合もあり、そのような場合は、被害者不特定の事件については起訴されないことになります。

また、日本の法律上、犯行が1件だけでなく2件、3件であったとしても、科される刑罰が単純にそのまま2倍、3倍になるわけではありません。

特に盗撮については、常習犯の場合により重く処罰する規定が置かれていることから、検察官としては、常習性を立証できる程度の件数を立件できればよいとして、把握した余罪全件の起訴にはこだわらないことも多いです。

このように、余罪については立証が困難な面もある一方、立証が可能な程度に証拠がそろっていれば罪が重くなる方向で働くことになります。

盗撮の場合は、常習犯の規定が適用される形で余罪の存在が考慮されることになります。

 

 

盗撮で余罪がある場合の対処方法

盗撮で余罪がある場合、本罪への対応と並行して、余罪の方にも対処する必要があります。

盗撮で余罪がある場合の対処方法

 

被害者と速やかに示談交渉を開始する

盗撮のような被害者のいる事件においては、被害者との示談が重要な意味を持ちます。

被害者と示談が成立していることを理由に不起訴となることも珍しくないですし、仮に起訴されたとしても、示談が成立していれば判決に当たって考慮されることになります。

もっとも、盗撮事件の示談は被害者の処罰感情が強いこともあってただでさえ困難である上、余罪の示談交渉は本罪と同時進行で進めなければならず非常に難易度が高いといえます。

ましてや余罪が複数となると、それらの1つ1つの交渉を迅速かつ丁寧に進めていくことが求められ、きわめて高い交渉スキルや事務処理能力が要求されることになります。

盗撮の余罪で示談交渉をされる場合は、刑事事件について高い専門性を有する弁護士に依頼されることを強くおすすめします。

なお、示談においては、損害賠償の趣旨も含めて、いくらかの示談金を交付するのが通常です。

示談金の相場について詳しくは、こちらをご覧ください。

 

被害者に対して謝罪の意思を伝える

盗撮事件で有利な処分を得るためには、可能な限り示談を成立させたいところです。

しかし他方で、被害者が多数にのぼる場合などには、示談金の支払い目処が立たないなどの理由で、全件の示談は難しいということがあるかもしれません。

その場合は、被害者に対しせめて謝罪文だけでも差し入れるようにするとよいでしょう。

示談する場合であっても、謝罪の気持ちを誠心誠意伝えるべきことは当然ではありますが、示談金を用意できないとなれば、謝罪文をしたためて特に丁寧に謝罪すべきでしょう。

たとえ示談成立に至らないとしても、被害者に対して丁寧に対応してきたという事実は、処分を決める際に有利な事情として考慮されることが期待されます。

盗撮の謝罪文の書き方について詳しくは、こちらをご覧ください。

 

盗撮に詳しい弁護士に相談する

盗撮は性犯罪の一種であり、盗撮事件の弁護は、被害者対応に特に神経を使う繊細な業務です。

ましてや余罪があり多数の示談交渉を進めていくとなると、刑事事件について高い専門性を有し、盗撮事件についても多くの処理経験を持つ弁護士に依頼することが重要となってきます。

刑事事件における弁護士選びのポイントを詳しくお知りになりたいときは、こちらをご覧ください。

 

 

NGな対処方法とは?

盗撮で余罪がある場合のNGな対処方法

盗撮で余罪がある場合、弁護士に依頼し示談交渉を進めていくというのが基本的な対処方針となります。

逆に、状況を悪化させたり、後の処分に悪影響を与えたりするような不適切な対応もありますので、以下でご紹介します。

 

証拠隠滅を図る

証拠隠滅は、やってはいけない行動の代表例といえます。

特に、在宅事件として捜査されている場合、万が一証拠隠滅に当たるような行動をとってしまうと、逮捕される危険性が大幅に高まります。

身柄を拘束せず在宅状態をつづけていると、その間に次々と証拠を隠滅されるおそれがあるわけですので、当然といえるでしょう。

 

警察はデータを復元できる?

盗撮の余罪については、画像データが証拠としてきわめて重要な位置を占めています。

そこで、これを消しさえすれば余罪の発覚を免れるのではないか、といった誘惑にかられることもあるかもしれません。

しかし警察では、コンピューターやインターネットなどを利用した、いわゆる「サイバー犯罪」が多発し、かつ高度化している状況に対応するべく、「デジタル・フォレンジック」という電子機器の解析技術に力を入れています。

このため、たとえパソコンやスマートフォンから画像を消去したとしても、このような技術によって元通りに復元される可能性は十分にあるといえます。

 

逃亡する

逃亡するのも、証拠隠滅と同じく逮捕の危険性を大きく高めます。

身柄を拘束しない在宅捜査は、容疑者が逃亡しないという信頼があって初めて成立するものです。

逃亡によってそのような前提が崩れてしまえば、捜査機関としても身柄を拘束せざるをえなくなります。

そもそも、逃亡したからといって完全に逃げ切ってしまうということ自体非現実的といわざるを得ず、処分の先送りにしかならないのが関の山です。

また、盗撮の余罪が多数あるとしても、その数の分だけ罰則が加算されるわけではなく、常習盗撮罪として、非常習の場合より1段階重い規定が適用されるにすぎません。

このようなことを考えますと、逃亡することは状況を悪化させるだけの誤った選択であり、絶対に控えるべきといえるでしょう。

 

出頭要請に応じない

在宅事件の場合、取調べの必要があると、警察や検察からの呼び出し(出頭要請)があります。

この出頭要請に対し不出頭を繰り返すのも、望ましくない対応です。

たしかに、出頭要請に逮捕のような強制力はなく、あくまで任意の出頭を求めているにすぎません。

しかし、正当な理由なく不出頭を繰り返していると、逃亡のおそれがあるとして逮捕されることはあり得るのです。

せっかく任意捜査として逮捕されずに捜査が進んでいるにもかかわらず、出頭を拒んで逮捕されてしまっては元も子もありません。

気が進まないということもあるかもしれませんが、逮捕されてしまえば有無を言わさず取調べを受けることになるのですから、出頭要請にはできる限り応じておく方がよいでしょう。

出頭の日程については警察の方でもある程度調整してくれることもありますので、どうしても都合がつかないときでも代替案を提示するなどして捜査に協力的な姿勢を見せておくと、捜査機関からの心証を害することもないでしょう。

 

被害者に自ら接触する

逃亡や証拠隠滅のような明らかに不適切な行為以外にも、被害者に自ら接触するといったことも控えた方がよいでしょう。

独断で被害者に接触を試みると、口止めや証言の変更を迫っていると捉えられるおそれがあり、一種の証拠隠滅行為とみなされるリスクがあるのです。

また、被害者の立場からすると、加害者は自身に性的な被害を与えた人物であり、そのような人物と連絡を取り合うということ自体、非常にストレスとなり精神的に苦痛を感じる者です。

被害者に無用な負担を与えないという観点からも、不用意に被害者と接触することは避けるのが望ましいといえます。

謝罪や示談交渉などの正当な理由によりどうしても接触の必要がある場合は、弁護士を通してやり取りするのを原則とすべきでしょう。

 

 

まとめ

この記事では、盗撮の余罪について、余罪とはどのようなものか、余罪によってどの処分を受けるのか、どのように対処するべきかといったことについて解説しました。

最後にもう一度、記事の要点を確認します。

  • 余罪とは、なんらかの犯罪(本罪)を犯した場合において、その犯罪とは別の犯行のことをいう。
  • 盗撮ははじめてでないことが多いことから、警察は高い確率で余罪についても捜査をし、データなどの痕跡によって発覚する。
  • 余罪の存在により捜査が長期化する可能性があるほか、余罪が多数にのぼるときは、常習盗撮罪として処罰される。
  • 盗撮のような被害者のいる犯罪では被害者と示談することが重要であり、余罪がある場合であっても同様である。
  • 余罪があるからといって、逃亡や証拠隠滅を図ると状況の悪化を招くだけので、厳に慎まなければならない。
  • 捜査の初期段階から刑事事件に精通した弁護士に依頼することで、示談交渉や捜査への助言をはじめとした充実した弁護活動が受けられる。

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