公然わいせつで逮捕|その後の流れ・逮捕されないポイントを解説
公共の場でわいせつな行為をした場合、公然わいせつ罪として罪に問われることがあります。
このページでは、どのような場合に公然わいせつ罪が成立するのか、公然わいせつ罪で逮捕される可能性などについて弁護士がわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 公然わいせつ罪の成立条件
- 公然わいせつ罪で逮捕されるケース
- 公然わいせつ罪で逮捕されないためのポイント
目次
公然わいせつとはどのような犯罪?
公然わいせつとは、刑法上、公然とわいせつな行為をすることとされています。
引用元:刑法|e-GOV法令検索
特定の被害者に対し直接危害を加える他の性犯罪と異なり、公然わいせつ罪は、公然とわいせつ行為を行うことにより社会の風紀を乱す罪といえます。
具体的にはどのような行為を意味するのかについて、以下で詳しく解説します。
公然わいせつ罪が成立する場合
公然わいせつ罪が成立するのは、「公然とわいせつな行為」をしたときです。
すなわち、状況の公然性と行為のわいせつ性という2つの要件をみたした場合に成立する犯罪といえます。
公然性
「公然」とは、「不特定または多数の人が認識することのできる状態」とされています。
駅や公園、路上などの不特定多数の人が行き交う公の場所が典型例です。
実際にだれかに認識される必要はなく、認識される可能性があれば「公然」にあたります。
そのため、不特定多数に見られる可能性のある場所であれば、たまたま通行人がおらず誰にも目撃されなかったとしても、「公然」といえます。
また、不特定「または」多数ですので、「不特定少数」や「特定多数」の場合も公然性の要件をみたします。
たとえば、ストリップ劇場のような場合、その空間にいる人という意味では特定された人ではありますが、不特定の人を勧誘した結果として形成された集団であれば、不特定とされます。
近年でいえば、SNSなどで広く仲間をつのったような場合、最終的には集合して相互に特定されているとしても、呼びかけの段階で不特定者に声をかけているため、公然性の要件をみたすものと考えられます。
逆に、相互に面識があり特定されている人同士であっても、多人数が集まっていれば、「特定多数」として公然性の要件をみたすこととなります。
このように、不特定または多数のいずれかの要件をみたせば公然性をみたしますので、「公然」にあたらないのは「特定かつ少数」の場合のみということができます。
わいせつ性
「わいせつ」とは、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」とされています。
これは簡単に言い換えると、そのときの社会一般の感覚によってわいせつかどうかが判断されるということです。
よって各人がみずからの常識によって判断するしかないのですが、性器の露出を伴うものであれば、基本的にはわいせつ性があると判断される可能性が高いと思われます。
また、臀部等を露出する行為については、軽犯罪法1条20号が「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を処罰対象としています。
公然わいせつ罪の刑罰
公然わいせつ罪の刑罰は「六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金」です。
条文上は「拘留若しくは科料」もあげられていますが、これは懲役・罰金の特に軽いものが別名で呼び分けられているものですので、一般の理解としては「六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金」に含めて考えてかまいません。
公然わいせつで逮捕される場合とは?
公然わいせつで逮捕されるのは、現行犯逮捕のほか、防犯カメラ映像などから容疑者を特定して後日逮捕状により逮捕する通常逮捕などが考えられます。
逮捕される法律上の条件
容疑者を逮捕状により逮捕する場合、逮捕の理由と必要性という要件をみたす必要があります。
逮捕の理由とは、公然わいせつを行った犯人とこれから逮捕しようとする人物がイコールであるといえる根拠のことをいいます。
逮捕の必要性とは、容疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがあることです。
容疑者にこれらのおそれがない場合、逮捕をせずとも、取調べのつど容疑者を呼び出す在宅捜査によっても捜査の目的をとげることができますので、逮捕の必要性はないとされるのです。
公然わいせつで逮捕される確率
公然わいせつで逮捕される確率は、検察統計による資料によれば、30パーセント程度※と考えられます。
※検挙総数2,436件のうち逮捕されたのが765件(わいせつ文書の頒布等を含む。)
半数以上が逮捕されないと考えれば必ずしも高い逮捕率とはいえませんが、3件に1件程度は逮捕されているわけですので、無視できるほど低い確率ともいえないでしょう。
実際に逮捕されるケースとは?
公然わいせつ罪は、公然と行われるという性質上、発覚しやすい犯罪ということができます。
目撃者に通報されて現行犯逮捕される場合のほか、防犯カメラの映像などから容疑者として特定されて後日逮捕されることもあります。
また、SNSで人を集めた場合や、わいせつ行為をインターネットで配信したような場合も、それが痕跡となって逮捕につながる可能性があります。
公然わいせつの後、逮捕されるまでの期間はどれくらい?
公然わいせつで逮捕されるのは、容疑が固まり容疑者を特定できしだいとなります。
したがって、犯行後数日以内に逮捕されることもありますし、相当の期間が経過した後に逮捕されることもあり得ます。
公然わいせつの時効期間は3年ですので(刑事訴訟法250条2項6号)、基本的には最長で3年間は逮捕の可能性が残ることになります。
公然わいせつで逮捕された場合の手続きの流れ
公然わいせつで逮捕された場合、次のような流れで事件は進行します。
-
- 1
- 逮捕
-
- 2
- 送検
-
- 3
- 勾留
-
- 4
- 起訴
-
- 5
- 判決
逮捕
逮捕されると、最大で72時間、留置場の外との連絡・面会が禁止されたまま、身柄を拘束されることとなります。
この間、容疑者(被疑者)が連絡・面会ができるのは、弁護士だけです。
送検
容疑者の送致を受けた検察官は、24時間以内に容疑者の勾留を請求するか判断します。
通常、逮捕から48時間以内に、事件と身柄が検察に送られます。
この手続を「送検」と呼びます。
送検後、検察官は容疑者を取調べて勾留請求を行うかどうかの判断をします。
検察官が勾留の必要がないと判断すれば、その時点で釈放されることとなります。
ただし、釈放されたからといって刑事手続きが終了するわけではなく、在宅事件に切り替えられたうえで、引き続き、取調べなどを受ける可能性があります。
勾留
検察官が、容疑者の身柄の拘束を継続する必要があると判断すれば、裁判所に勾留を請求します。
裁判所は検察から請求のあった勾留を認めるかどうかを判断します。
勾留の要件は、容疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があって、かつ、次の3つのいずれか1つに該当することです(刑事訴訟法60条1項)。
- 定まった住居を有しないとき
- 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
- 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき
引用元:刑事訴訟法|e−GOV法令検索
勾留された場合、10日間にわたって身柄の拘束が続きます。
また、10日間を上限に勾留を延長される可能性があります。
したがって、最大で20日間の拘束となります。
起訴
起訴とは刑事裁判にかけられることを意味します。
起訴前の勾留は最長でも20日間ですが、起訴された場合、保釈されない限り、判決まで勾留が続くことになります。
また、日本の刑事裁判では起訴されると99%以上が有罪となります。
そのため、刑事事件においては、起訴を回避することが最大の弁護活動となります。
判決
犯行を認めている事案の場合、通常、審理は1回だけで終了します。
その次の期日が判決の言い渡しとなりますので、裁判所に出廷する回数は2回ということになります。
公然わいせつで逮捕された場合のリスク
公然わいせつで逮捕された場合、その後起訴されて有罪判決が出ると、上記の懲役や罰金といった刑罰が科されることになります。
さらに、社会的制裁として、次のような事実上の不利益をこうむるおそれがあります。
実名報道のリスク
公然わいせつで逮捕された場合、犯罪の事実を氏名とともに報道されるリスクがあります。
実名報道されるかどうかについては、少年の場合を除いて法律上規制があるわけではなく、各報道機関の自主的な判断ということになります。
そのため、犯行の態様や容疑者の職業などの情報から報道価値があるか判断されるほか、他に優先して報じるべき事件が起こっているかといった偶然の事情によっても左右されることになります。
現代では、一度実名で報じられてしまうと、インターネット上のニュース記事などで長く情報が残りつづけるため、実名報道による不利益は特に大きいと言えるでしょう。
職場に知られてしまうリスク
会社勤めのサラリーマンであれば、逮捕の事実が会社に知られてしまうというのが重大な不利益といえるでしょう。
事件の関係で同僚や上司などの会社関係者から話を聞く必要があるような場合を除いては、わざわざ警察が職場に連絡をいれるということはありません。
しかし、上記のように実名報道がされてしまうと、当然ながら会社の耳にも入ります。
また、逮捕につづいて勾留までされてしまうと、少なくとも10日間は会社を欠勤することになるため、逮捕の事実をつげるかどうかはともかく、なんらかの形で事情を説明せざるをえません。
犯罪それ自体の刑罰はさほど重くはないものの、社会に対する信頼という観点から、懲戒解雇を含めた厳しい処分を受ける可能性も否定できません。
家族に知られてしまうリスク
逮捕された場合、家族に知られてしまうことも、やはり避けるのは困難です。
家族との関係性はそれぞれの家庭事情によるため、社会生活の復帰に向けて協力が得られるという側面がある一方、犯行をきっかけに家族関係が悪化するということも考えられます。
公然わいせつで逮捕されないための2つのポイント
逮捕するための法律上の要件がそろっている場合、逮捕を確実に避ける手段は存在しません。
もっとも、その可能性をできるだけ低下させるためにできることはあります。
また、これらのポイントをおさえておくことで、仮に逮捕されたとしてもそれに次ぐ勾留の確率がさがることが考えられますし、また起訴された場合の判決にも有利な影響をもたらすことが期待できます。
捜査機関に自首をする
捜査機関に自首をすることは、逮捕の可能性をさげるための手段といえます。
容疑者を逮捕するための要件として、逮捕の必要性、すなわち逃亡や証拠隠滅のおそれがあることをご紹介しました。
この要件を欠く場合、すなわちこれらの「おそれ」がないことが明らかとなれば、逮捕はされません。
逃亡や証拠隠滅の意図がある場合、わざわざ自ら出頭するとは考えにくいため、自首をするという事実が、これらの「おそれ」がないことを示す材料となるのです。
自首したということの一事のみをもって逮捕の必要性が完全に消滅するとまではいえないため、逮捕されることもありうるという覚悟は必要ですが、逮捕の可能性を低下させる手立ての一つであるとはいえます。
自首することについて不安がおありの方は、弁護士に自首への同行を依頼するとよいでしょう。
弁護士がついてさえいれば逮捕されないというものではありませんが、弁護士とともに出頭することで、反省や捜査への協力姿勢が真摯なものであることを補強できます。
また、刑事事件の処理を得意とする弁護士であれば、逮捕の必要性がないという事情を理路整然と説明できますので、捜査機関による強引な逮捕への抑止力となることも期待できます。
示談交渉を成功させる
公然わいせつの処罰根拠は社会の風紀を乱す点にあると考えられているため、他の性犯罪と異なり、直接の被害者が存在しない犯罪であるといわれることがあります。
もっとも、たとえば限られた少数の通行人に対して陰部を露出したような事件では、実質的には、それらの人が被害者であるということができます。
そこで、これらの事実上の被害者と示談を成立させることにより、処罰の必要性をある程度緩和させることができます。
ただし、公然わいせつは不特定多数に対する行為であることから、逮捕される以前の段階で被害者を特定して示談をまとめるのは困難という側面があります。
このため、示談によって逮捕それ自体を回避することは難しいかもしれませんが、逮捕後、捜査機関から被害者の情報提供を受けて速やかに示談を成立させることで、不起訴処分などの有利な結果を目指せるという意義があります。
まとめ
このページでは、公然わいせつ罪の成立条件や逮捕されるケースなどについて解説しました。
最後に改めて要点を整理します。
- 公然わいせつ罪は、不特定多数に認識される可能性のある場所でわいせつな行為をすることによって成立する。
- 公然わいせつは公共の場で行われるため発覚しやすい犯罪であり、その場で逮捕される現行犯逮捕のほか、逮捕状により後日逮捕されることもある。
- 逮捕されることにより法律上の刑罰を受ける可能性があるほか、実名報道されたり、職場や家族に知られたりといった社会的制裁を被るリスクがある。
- 自首や被害者との示談によって逮捕の下げられる可能性があり、いずれの場合も、刑事事件を得意とする弁護士に依頼することが有効である。
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