児童買春の罪と、青少年育成条例違反(淫行条例違反)の違いとは?
児童買春の罪と、青少年育成条例違反(淫行条例違反)の違いを教えてください。
児童買春と青少年保護育成条例は、行為態様、処罰の内容等が異なります。
児童買春とは
児童買春の罪は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律に規定されています。
児童に対して、お金などの対価を支払って、またはその支払いの約束をして、その児童に対し、性交等をすることをいいます。
処罰の内容
児童買春の法定刑は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金となっています。
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
引用元:児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律|電子政府の総合窓口
青少年保護育成条例違反とは
青少年保護育成条例とは、青少年を保護するために、各都道府県が制定している条例のことをいいます。
条例は法律と異なり、国ではなく、各地方自治体が制定することが可能です。
各自治体によって、内容や法定刑が若干異なりますが、大きな目的や処罰される内容は同じ傾向です。
淫行条例とは
淫行条例とは、青少年保護育成条例のうちの、「淫行」「みだらな性行為」「わいせつな行為」などを規制する条例のことをいいます。
したがって、正式な名称は青少年保護育成条例であり、淫行条例は通称名となります。
青少年保護育成条例の内容
福岡県の場合を例に上げると、福岡県青少年健全育成条例は、その31条1項において、「何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。」と規定しています。
処罰の内容
罰則としては、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」とされています。
(いん行又はわいせつな行為の禁止)
第31条 何人も、青少年に対し、いん行又はわいせつな行為をしてはならない。
2 何人も、青少年に対し、前項の行為を教え、又は見せてはならない。
(罰則)
第38条 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に
処する。
(1) 第31条第1項の規定に違反した者
(略)
違いとは
児童買春と、青少年保護育成条例違反の最も大きな違いは、お金などの対価を支払ったかどうかです。
児童買春は、対価の支払いが要件となっていますが、青少年育成条例はそれが要件となっていません。
ですので、例えば、児童に対価としてではなく、食事をご馳走したに過ぎないような場合、児童買春には当たらないと考えられます。
しかし、性交をしている以上、福岡県青少年健全育成条例違反となる可能性は残ってしまいます。
真剣に付き合っている場合はどうなる?
お金などの対価を支払って性交した場合(児童買春に該当する場合)、真摯な交際であるとの主張が認められることはありませんが、福岡県青少年健全育成条例違反に関しては、「真摯な交際である」という主張が認められれば、違反とはいえないことになります。
この点も違いとして挙げることができます。
付き合っているのに逮捕された場合はどうする
真摯な交際であるにもかかわらず、児童買春の罪で逮捕されてしまった場合、まずは対価を支払っていないことを主張し、児童買春の事案ではなく青少年保護育成条例の事案であることを論証します。
そしてさらに、真摯であることを示す証拠を豊富に収集し、真摯な交際であることを主張していくことになります(真摯な交際であることを示す証拠は、同時に対価を支払っていないことを示す証拠にもなります)。
その他注意すべき子供相手の性犯罪
面会要求等の罪
面会を要求する行為
2023年7月の刑法改正によって、16歳未満の子供に対して、下表のいずれかの手段を使って会うことを要求した場合、面会要求罪が成立することとなりました。
手段 | 具体例 |
---|---|
威迫、偽計又は誘惑 | 脅す、だます、甘い言葉で誘う |
拒まれたのに反復 | 何度もしつこく要求する |
利益供与又はその申込や約束 | お金や物を与える、その約束をする |
法定刑は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です(刑法182条)。
参考:刑法|e-GOV法令検索
16歳未満の子供は判断力が未熟であり、性被害に遭う危険性が高いことから、「実際の性犯罪に至る前」であっても、「面会を要求する行為」自体を処罰することとされました。
わいせつ目的で会う行為
面会を要求するだけでなく、実際にわいせつ目的であった場合は、法定刑は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金となります(刑法182条)。
引用元:刑法|e-GOV法令検索
未成年者誘拐罪
パパ活に関しては、その他の犯罪が成立する可能性があります。
相手が子供の場合、状況によっては未成年者誘拐罪なども成立する可能性があります。
これらについては、下記のページでくわしく解説しています。
示談交渉の検討
児童買春にしろ、青少年保護育成条例違反にしろ、犯行自体に争いがなければ、不起訴のためには示談交渉を検討すべきでしょう。
状況にもよりますが、一般的には示談が成立すれば、検察官が起訴をする可能性が低くなります。
この場合、交渉の相手は未成年ではなく、その両親になると考えられます。
両親としては、子供が被害者であることから感情的になり、示談交渉が難航することが予想されます。
性犯罪についての示談交渉のノウハウを有する刑事専門の弁護士に交渉を依頼することがポイントとなると考えます。
まとめ
児童買春 | 青少年保護育成条例 | |
---|---|---|
行為態様 | 性交等をすること | いん行又はわいせつな行為をすること |
お金(対価) | 必要 | 必要ではない |
法定刑 | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 2年以下の懲役又は100万円以下の罰金 |
真摯な交際 | 問題とならない | 争点となりうる |
犯行を争う場合は、証拠の収集や説得的な形での主張が必要となります。
犯行を争わない場合は示談交渉を検討すべきです。
当事務所には、刑事事件の専門チームがあり、容疑者の方をサポートしています。
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