国選弁護人の解任により保釈・執行猶予付き判決を獲得した事例
罪名 | 児童福祉法違反 |
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解決までの期間 | 1ヶ月 |
弁護活動の結果 | 保釈・執行猶予付判決 |
Hさん(40代男性 / 福岡市博多区)
※実際の事例を題材としておりますが、事件の特定ができないようにイニシャル及び内容を編集しております。
なお、あくまで参考例であり、事案によって解決内容は異なります。
目次
身体解放を求めるも、拘束が続いていたHさん
Hさんは、派遣業を営む経営者です。
Hさんは、17歳の少女を、22時以降も客に接する業務に従事させるキャバクラ店に派遣したとして、児童福祉法違反の疑いで逮捕され起訴されるに至りました。
起訴後、身体解放を求めていましたが、保釈請求を国選弁護士がしてくれずに、身体拘束が続いていました。
身体拘束の苦痛が大きく、本人も限界のようであるとして、私たちの元に、Hさんのご家族が相談に来ました
すぐに保釈申請をし、翌日には釈放に
弁護人は、すぐに接見に行きました。
Hさんから犯罪事実の内容、認否、Hさんの前科関係等を聞き、保釈請求が認められる可能性が十分にあると判断した私たち弁護人は、即日で保釈請求書を裁判所に提出しました。
その際、保釈の可能性を高めるべく、裁判に必ず出頭する旨の本人の誓約書及び家族の身元引受書を併せて提出しました。
裁判所は、翌日保釈を認める旨の決定を出し、Hさんは2ヶ月ぶりに釈放されました。
丁寧な示談交渉、適切な証拠収集、模擬裁判での練習により、執行猶予付きの判決に
Hさんは、保釈はされましたが、執行猶予が確実な事案ではありませんでした。
そこで私たち弁護人は、まずは被害児童の両親との示談を成立させることが重要であると考え、謝罪に出向き、示談を成立させました。
さらには、Hさんが派遣を主導したのではなく、派遣先会社がHさんに未成年児童を引き渡すように強く求めてきていたことを示す証拠を収集しました。
その他、有利な証拠として、Hさんと被害児童が良好な関係にあったことを示すLINEのやり取り、Hさんが被害児童を派遣する際には必ず送迎をしていたことを示す領収書・LINEのやり取り、Hさんが自らの意思で派遣をやめ、違法状態を解消していたことを示す日誌等を証拠として確保しました。
そして、事務所内の模擬法廷で、来たる裁判に向けて被告人質問及び情状証人尋問のリハーサルを行いました。
裁判では、有利な証拠を提出するとともに、被告人・情状証人の反省供述を引き出しました。
リハーサルの甲斐があり、反省を裁判官にしっかり伝えることに成功したHさんは、執行猶予付の判決を獲得することができました。
児童福祉法違反とは
児童福祉法は、児童の健全な育成のために制定された法律です。
児童福祉法違反として最も典型的かつ、厳罰の対象とされているのは、同法第34条1項6号の違反です。
児童福祉法第34条1項6号は、「児童に淫行させる行為」を禁止しています。
この違反に対しては、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされています(児童福祉法第60条1項)。
児童は、心身ともに成長段階にあり、未熟です。そのような児童に対して、事実上の影響力を及ぼして淫行をさせるという行為は、児童の判断能力の低さを利用した悪質な行為です。
児童福祉法第34条1項では、その他に以下のような行為も禁止されています。
- 身体に障害又は形態上の異常がある児童を公衆の観覧に供する行為
- 児童にこじきをさせ、又は児童を利用してこじきをする行為
- 公衆の娯楽を目的として、満15歳に満たない児童にかるわざ又は曲馬をさせる行為
- 満15歳に満たない児童に戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で歌謡、遊芸その他の演技を業務としてさせる行為
- 4の2 児童に午後10時から午前3時までの間、戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示若しくは拾集又は役務の提供を業務としてさせる行為
- 4の3 戸々について、又は道路その他これに準ずる場所で物品の販売、配布、展示、若しくは拾集又は役務の提供を業務として行う満15歳に満たない児童を、当該業務を行うために、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第4項の接待飲食等営業、同条第6項の店舗型性風俗特殊営業及び同条第9項の店舗型電話異性紹介営業に該当する営業を営む場所に立ち入らせる行為
- 満15歳に満たない児童に酒席に侍する行為を業務としてさせる行為
- 児童に淫行をさせる行為
- 前各号に掲げる行為をする恐れのある者その他児童に対し、刑罰法令に触れる行為をなす恐れのある者に、情を知って、児童を引き渡す行為及び当該引渡し行為のなされる恐れがあるの情を知って、他人に児童を引き渡す行為
- 成人及び児童のための正当な職業紹介の機関以外の者が、営利を目的として、児童の養育をあっせんする行為
- 児童の心身に有害な影響を与える行為をさせる目的をもって、これを自己の支配下に置く行為
引用元:児童福祉法|電子政府の総合窓口
児童福祉法違反に時効はある?
時効は、法定刑の重さに応じてその期間が決まっています。
児童福祉法違反のうち、第34条1項6号違反(児童に淫行をさせる行為・以下「児童福祉法違反の罪」とします。)に対する法定刑は、既に取り上げたとおり10年以下の懲役となっています。
そうすると、児童福祉法第34条1項6号違反の罪に対する時効は、7年となります(刑事訴訟法第250条2項4号)。
児童福祉法違反で実刑となる場合とは
児童福祉法違反の罪は、児童に影響力を持つ立場の者が、児童の未熟さにつけ込んで淫行をさせる極めて悪質な犯罪です。
そのため、前科前歴がないいわゆる初犯の場合でも、実刑となる可能性は十分にあります。
以下では、初犯で実刑となった裁判例を紹介します。
判例 初犯で実刑となった裁判例【大阪地裁令和元年10月15日】
■事件の概要
被告人は、当時の交際相手の娘であるAが18歳に満たない児童であることを知りながら、Aの実母の交際相手であり、同居して生活を共にしている立場にあったことを利用し、平成22年7月頃から平成24年4月頃までの間、多数回にわたり、当時の被告人方において、Aと性交をした。
■判決の内容
懲役5年の実刑
■判決の理由
当時中学生であった被害者に1年9か月にわたって、繰り返し性交をさせたという点で、被害は甚大であり、性欲を満たすためだけに犯行を繰り返した被告人の責任は重大である。
謝罪の言葉を述べていること、前科がないことを考慮しても主文の刑に処するべき事案である。
もちろん、直ちに全ての事件で実刑となるわけではありませんが、繰り返しの犯行であったり、別の犯罪も成立するような事案であったりという事情があれば、初犯でも実刑となる可能性があるということが分かってもらえたのではないでしょうか。
児童福祉法違反で不起訴を獲得するためには?
児童福祉法違反の罪は、被害者に与えた被害が大きいことが量刑上大きく考慮されています。
そのため、不起訴を獲得するためには、被害者である児童やその親権者から許してもらう必要があるといえます。
弁護士を通じて示談交渉を行い、示談を獲得することで、不起訴となる可能性を作り出すことが出来るかもしれません。
児童福祉法違反で予想される量刑
児童福祉法違反の罪は、上で紹介した裁判例のように、初犯であっても相当年数の懲役刑に服することもあり得ます。
そのため、起訴された場合は、個別事情によって執行猶予付きの判決から5、6年程度の実刑まで、幅広い量刑が予想されます。
まとめ
これまで見たとおり、児童福祉法違反の罪は非常に重く、起訴前からの弁護活動無しに望ましい結果を得ることは難しいといえます。
児童福祉法違反の罪を犯して悩まれている方は、弁護士に相談し、早期に示談交渉を開始することをお勧めします。
弊所には刑事事件に注力している弁護士が在籍しております。
児童福祉法違反について、詳しくはこちらのページもご覧ください。
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか