高校生が逮捕されたら?手続きの流れ・リスクや対処法を解説
高校生が逮捕されたら、高校を退学処分となったり、大学進学や就職にも影響するおそれがあります。
高校生が刑事事件を起こした場合、逮捕されることもあります。
高校生は少年法の適用対象ですが、少年法が適用されるからといって、逮捕されないということはありません。
犯罪の状況によっては、高校生でも逮捕されることはありますし、逮捕されると、それに伴って様々な不利益が生じてくることも心配されます。
この記事では、高校生の逮捕について、逮捕されるケースや実際の事例、逮捕された場合の流れや逮捕のリスクなどについて、弁護士が解説します。
目次
高校生でも逮捕される?
高校生でも、犯罪を行えば逮捕される可能性があります。
少年法における「少年」とは、20歳未満の者を指します(少年法2条1項)。
成人年齢が18歳に引き下げられた関係で、18歳及び19歳については少年法上「特定少年」と位置づけられ、より成人に近い取扱いとなりましたが、少年法の適用対象から外れてはいません。
したがって、高校生であれば、18歳の誕生日以降は特定少年に当たることにはなるものの、基本的には少年法の適用対象となります。
一方、刑法では、14歳未満の行為は罰しないと定められています(刑法41条)。
参考:刑法|電子政府の総合窓口
つまり高校生は、少年法の適用対象ではあるものの、刑事罰を受ける可能性があり、逮捕の可能性もあることになります。
高校生が逮捕されるケースとは?事例で解説
犯罪を犯せば、高校生であっても逮捕される可能性はあります。
この点は、成人の場合と異なりません。
高校生が逮捕される事件としては、遊ぶ金欲しさの窃盗・強盗や、喧嘩やいじめがエスカレートしての暴行・傷害などのほか、悪ふざけでの迷惑行為が犯罪に発展するようなケースがよく見られます。
実例1 高1女子に集団暴行、16~18歳の少女3人を強盗致傷容疑で逮捕…暴行の様子をSNSに投稿
高校1年の女子生徒(16)に集団で暴行を加えて重傷を負わせたとして、神奈川県警がいずれも川崎市内の16~18歳の女子高校生3人を強盗致傷容疑で逮捕していたことが捜査関係者への取材でわかった。
捜査関係者によると、5人は昨年11月20日午後、同市多摩区の河川敷に女子生徒を呼び出し、腹を殴るなどの暴行を加えて肝損傷などの重傷を負わせたほか、電子決済サービス「PayPay(ペイペイ)」の残高から6000円を送金して奪った疑い。
実例2 マンション駐車場から消火器3本盗んだ疑い、同じ高校に通う4少年逮捕 交番前で使用か 神戸
消火器を盗んだとして、兵庫県警少年課と神戸西署は10日、窃盗の疑いで、神戸市西区や垂水区、同県明石市に住む15〜16歳の少年4人を逮捕した。
「マンションに置いてあった消火器を盗んだことに間違いない」と容疑を認めているという。
同署によると、4人は同市内の同じ高校に通う同級生で、防犯カメラの捜査などから特定した。
高校生が逮捕されたらどうなる?逮捕後の流れ
高校生が逮捕された場合、次のような流れで事件は進行します。
大きな流れとしては成人の刑事事件に準じた形ですが、少年法が適用されるため、成人と異なる取り扱いとなる場面が出てくる点に注意する必要があります。
-
- 1
- 逮捕
-
- 2
- 送検
-
- 3
- 勾留又は観護措置
-
- 4
- 家裁送致
-
- 5
- 審判
-
- 6
- 処分
-
- 7
- 刑事裁判(検察官送致の場合)
逮捕されると身柄が拘束され、48時間以内に検察庁に送検されます。
容疑者の送致を受けた検察官は、24時間以内に容疑者の勾留を請求するか判断します。
勾留されると、10日間にわたって身柄の拘束が続きます。
また、10日間を上限に勾留延長される可能性があります(最大で20日間の拘束)
ただし、成人と異なり少年事件では、「やむを得ない場合でなければ」勾留できないとされており、勾留は例外的な扱いとされています(少年法43条3項)。
そこで少年事件では、「勾留に代わる観護措置」という措置が執られることがあります(少年法43条1項)。
観護措置では、収容場所が留置所ではなく少年鑑別所となり、期間としても10日間に限られ延長が認められないといった点で勾留と異なります。
捜査が終わると、事件は全て家庭裁判所に送致されます。
成人の事件では検察官の判断で起訴するか否かを決定しますが、少年事件では、事件の全てを家庭裁判所に送致するものとされており、「全件送致主義」と呼ばれています(少年法41条、42条1項)。
家庭裁判所は、事件の送致を受けると、審判の開始又は不開始を決定します(少年法21条、19条1項)。
審判は成人の事件での刑事裁判に相当しますが、少年の処罰ではなく、非行を矯正するためにどのような働きかけが効果的かという観点から行われます。
審判の結果、裁判官は少年に対する処分を決定します。
審判の結論としては、少年を処分しない「不処分」、少年院送致や保護観察処分などの「保護処分」、刑事罰相当との判断である「検察官送致」などがあります。
少年審判により検察官に送致(「逆送」といいます。)された場合、原則として起訴され、刑事裁判になります(少年法45条5号)。
刑事裁判になると成人の事件と同様に処理されるため、有罪判決が出れば刑罰を科されることになります。
少年事件の流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
高校生が逮捕されたときのリスク
高校生には少年法が適用されますが、逮捕を含め、刑事責任を問われる可能性があります。
また、仮に刑事罰を科されずに済んだとしても、逮捕に伴ってさまざまな不利益を被るおそれもあります。
高校を退学処分となる
高校生が逮捕されると、高校を退学処分となるリスクがあります。
学校教育法では、教育上の必要があるときは、学校は学生に対して懲戒を与えることができるとされています(学校教育法11条)。
所定の懲戒事由に該当するときは、退学処分とすることも可能です(学校教育法施行規則26条3項)。
① (略)
② 懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。
③ 前項の退学は、市町村立の小学校、中学校(略)に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。
一 性行不良で改善の見込がないと認められる者
二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
三 正当の理由がなくて出席常でない者
四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者
④・⑤ (略)
逮捕されたということは、誤認逮捕のような場合を除いて、何らかの悪事を働いたということでしょうから、「性行不良」や「学生又は生徒としての本分に反した」といった項目に該当すると判断される可能性があります。
懲戒には退学だけでなく、訓告や停学といった軽い処分もありますが、事案によっては、訓告や停学では済まされず、退学処分が選択されるおそれもあります。
また、退学処分となると経歴に傷がつくことや、学校としても手続き面で負担となることなどから、自主退学を勧められることもあります。
前科や前歴が付くおそれ
高校生であっても、逮捕されると前科や前歴がつく可能性があります。
前歴とは、犯罪の容疑者として捜査の対象となった履歴のことを指します。
逮捕の時点で、犯罪の容疑者として捜査対象になっているといえますので、逮捕されれば必然的に前歴が残ることになります。
前歴とは、あくまで捜査対象となったという事実上の履歴にすぎず、前科とは異なります。
前歴があること自体で何か不利益があるということはありませんが、捜査機関には記録として名前が残ることになりますので、前歴がつかずに済むのであれば、それに越したことはありません。
一方、前科は前歴と異なり、起訴されて有罪判決が出ることによって付くものです。
高校生は基本的に少年法が適用されるため、犯罪に対して、刑罰ではなく保護観察や少年院送致のような保護処分が科されることも多いです。
保護処分は、刑罰ではなく矯正教育の一種ですので、たとえ少年院送致となったとしても、それが前科となることはありません。
ただし、人を死亡させるなどの一定の重大犯罪については、たとえ高校生であっても刑事処分が原則となり、検察官へ送致(逆送)されます。
この場合は、刑事事件として成人の場合と同様に処理されるため、起訴されて有罪判決を受けると、前科がつくことになります。
大学進学や就職活動に影響する
高校生が逮捕されると、大学進学や就職活動に影響することもあります。
大学進学については、逮捕歴があるからと言って、大学進学自体が不可能になるわけではありません。
しかし、指定校の推薦を受けられなかったり、一般受験の場合であっても、受験勉強に遅れが出たりといったことで、不利な立場になることが心配されます。
また、進学ではなく就職を希望する場合でも、逮捕の時期によっては、就職活動自体が行えないといった事態も想定されます。
高校生というのは、進学するにしても就職するにしても、将来を左右する大切な時期です。
そのような時期に逮捕されてしまうと、たった一度の過ちによって、人生設計に大きなマイナスを及ぼすことにもなりかねません。
高校生は、たとえ少年法上は少年として扱われるとしても、責任感を持って行動することが求められているといえるでしょう。
ニュース等で報道される
たとえ高校生であっても、逮捕されるとニュース等で報道されることがあります。
少年の犯罪については、少年法上、少年の氏名や、年齢、職業、住居、容ぼう等の本人を推知できるような記事の掲載を禁止しており、「推知報道の禁止」と呼ばれます。
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
引用元:少年法|電子政府の総合窓口
少年法は、教育によって非行少年の更生を図ることを目的としていることから、その機会が奪われることのないよう、本人の特定につながる情報の報道を禁止しているのです。
法律上は「新聞紙その他の出版物」が対象ですが、テレビやラジオなどの他のマスメディアについても、自主的にこの原則に従っています。
以上は、あくまで少年を推知できる情報の報道を禁止するものですので、個人の特定につながらない範囲で、事件そのものが報道されることはあります。
事件自体が報道されてしまうと、たとえ推知情報が伏せられていたとしても、事実上個人を特定可能というケースもあり得ますので、報道は逮捕のリスクとして無視できません。
また、推知報道の禁止は、特定少年が刑事処分相当として起訴された場合には、適用されません(少年法68条)。
高校生であっても、18歳になれば特定少年にあたりますので、事案によっては実名報道の対象となることに注意してください。
SNSで拡散される
高校生が逮捕されると、その情報がSNSによって拡散されるリスクもあります。
少年法は、推知報道の禁止対象を「新聞その他の出版物」と定めており、ネット配信の記事は対象外と考えられます。
大手メディアの記事であれば、テレビ等と同様に自主規制が期待できますが、一部の週刊誌のオンライン記事などでは、直接の規制対象ではないということで、少年を実名で報道するケースもあるようです。
また、メディアの記事に限らず、近年では個人によるSNSへの投稿についても、内容によっては大きく注目を集めることもあります。
はじまりは1件の投稿であっても、引用や再投稿が相次ぐと、瞬く間に情報が拡散する場合もあります。
インターネットの特性上、一度出回った情報を完全に抹消することは困難であり、不名誉な情報がずっと残り続けるという意味で、「デジタルタトゥー」といった表現も生まれています。
このような情報拡散のおそれも、逮捕に伴う重大なリスクのひとつといえます。
逮捕のリスクを軽減する方法
高校生であっても逮捕される可能性があることや、それに伴うさまざまなリスクについてご理解いただけたでしょうか。
刑事事件を起こしたからといって全件が逮捕されるわけではなく、逮捕の必要性など事案の性質を考慮し、逮捕しないというケースも多く存在します。
以下では、逮捕のリスクを軽減するための方法をご紹介します。
事件後の対応によって 逮捕を含め処遇のあり方が変わってくることもありますので、参考としてください。
親に相談する
逮捕される心あたりがあるときは、できるだけ早急に親に相談することが重要になります。
高校生が犯罪行為をした場合、これを解決するには、両親をはじめとする身近な大人の協力が欠かせません。
自分の犯罪行為を親に打ち明けるのは躊躇する部分もあるかもしれませんが、もし逮捕されてしまえば、結局親の知るところとなってしまいます。
であれば、早い段階で親に相談して、適切な対処法を一緒に考えてもらうのが最善といえるでしょう。
自首を検討する
高校生が逮捕の可能性を下げたい場合、自首することも有力な手段です。
たとえ犯罪が発覚しても、犯人に逃亡や証拠隠滅のおそれがないのであれば、容疑者を逮捕することはできず、在宅事件として捜査を進めることになります。
自首は、自ら犯罪事実を申告して取り調べに応じる意思を示すものです。
したがって、自首は逃亡するつもりがないことを態度で示しているといえ、逮捕の可能性を低下させることが見込めるのです。
自首する場合、その後の流れや取り調べへの対応など、心配なこともあるかと思います。
もし自首を検討しているようであれば、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
自首を弁護士に依頼することのメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。
刑事弁護に強い弁護士に相談する
逮捕のリスクを下げるためには、刑事事件に強い弁護士に相談することもおすすめです。
高校生は少年法が適用されるため、手続きの流れや処遇の決定において、成人の刑事事件と異なる特殊性があります。
そのため、高校生の刑事事件では、少年事件についての高い専門性が求められます。
刑事弁護に強い弁護士であれば、少年事件についても対応経験が豊富であり、少年事件の特殊性をふまえた専門的なサービスを提供できます。
刑事事件における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。
高校生の逮捕のよくあるQ&A
高校生の逮捕は何歳から?
刑法で14歳未満の者は罰しないとされており、14歳未満は処罰の対象でないことから、逮捕されることもありません。
高校生であれば必然的に14歳以上ですので、年齢によって逮捕されるかどうかが変わることはありません。
高校生でも逮捕歴はつく?
逮捕歴とは、逮捕されたという事実の履歴のことですので、逮捕されれば逮捕歴として記録が残ることになります。
高校生は逮捕があり得る年齢ですので、事件を起こして逮捕されれば、逮捕歴がつきます。
まとめ
この記事では、高校生の逮捕について、逮捕されるケースや実際の事例、逮捕された場合の流れや逮捕のリスクなどについて解説しました。
記事の要点は、以下のとおりです。
- 刑事罰が科され得るのは14歳以上であるため、高校生が刑事事件を起こせば逮捕される可能性がある。
- 高校生が逮捕されると、少年法が適用されるため保護処分が原則となるが、重大事案については、刑事罰が科される可能性がある。
- 高校生は、進学や就職などで将来を左右する大切な時期であり、逮捕されることには多くのリスクが伴う。
- 高校生が逮捕のリスクをできるだけ低下させるためには、刑事事件に強い弁護士に相談することが重要である。
当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。
まずは、お気軽に当事務所までご相談ください。
ご相談の流れはこちらをご覧ください。
少年事件のよくある相談Q&A
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか