中学生が逮捕されたら?その後の流れ・リスクや対処法を解説
中学生が逮捕されたら、学校を退学処分となったり、高校進学や就職にも影響したりするおそれがあります。
「中学生であれば少年法が適用されるから逮捕されないのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは誤解です。
たとえ中学生であっても、ケースによっては逮捕されることがあり、逮捕に伴うさまざまなデメリットを被るおそれがあります。
この記事では中学生の逮捕について、逮捕されるケースや実際の事例、逮捕のリスクとその軽減方法などについて、弁護士が解説します。
目次
中学生は逮捕されない?
中学生でも、犯罪を行えば逮捕される可能性があります。
少年法における「少年」とは、20歳未満の者を指します(少年法2条1項)。
一方、刑法では、14歳未満の行為は罰しないと定められています(刑法41条)。
参考:刑法|電子政府の総合窓口
14歳未満は善悪の判断能力が十分でないため、たとえ犯罪とされる行為を行っても、処罰されることはないのです。
14歳未満は刑事責任を問うことができないという意味で、「刑事未成年」と呼ばれます。
つまり中学生は、20歳未満であるため少年法が適用されますが、14歳以上の年齢であれば刑事未成年には当たらないため、処罰や逮捕の可能性があるといえます。
中学生が逮捕されるケースとは?事例で解説
中学生であっても、14歳に達していれば刑事未成年ではなく、犯罪を犯せば逮捕されることがあります。
たとえば、喧嘩で相手に怪我を負わせたような場合には傷害罪となる可能性があります。
実例1 中学生の髪切りたばこ押しつけた疑い 女子中学生ら2人逮捕
令和5年11月、15歳の女子中学生ら2人が、遊び仲間の13歳の中学生の髪の毛をはさみで切ったり、火の付いたたばこを手に押しつけたりするなどの暴行を加えけがをさせたとして傷害の疑いで逮捕されました。
逮捕されたのは、名古屋市中川区の15歳の女子中学生と、瀬戸市の16歳の無職の少女の2人です。
警察によりますと、2人は令和5年11月、名古屋市東区の路上で、江南市に住む13歳の女子中学生の髪の毛をハサミで切ったり、火の付いたたばこを手に押しつけたりするなどの暴行を加え、3週間のやけどなどのけがをさせたとして、傷害の疑いがもたれています。
実例2 中学生を傷害容疑で逮捕 14歳に殴る蹴るの暴行、頭部を縫うけが負わせる SNSで動画拡散、あおる周囲の姿も 宜野湾署
宜野湾署は1日、本島中部の屋外で男子中学生(14)に殴る蹴るの暴行を加え、頭部を複数針縫うけがを負わせたとして、傷害容疑で本島中部の中学3年の少年(15)を逮捕した。
署は捜査に支障があるとして認否を明らかにしていない。
現場には少年以外にも複数人の中学生らがいて、署は関連も視野に少年らから話を聞くなどし、詳しく調べている。
関係者によると、交流サイト(SNS)で少年が一方的に中学生を暴行する様子を撮影した動画が拡散されていた。
引用元:2024年2月2日 琉球新報
中学生が逮捕されたらどうなる?その後の流れ
中学生が逮捕された場合、次のような流れで事件は進行します。
成人の刑事事件でも同じような流れとなりますが、中学生は少年法が適用されるため、成人の場合と手続きが異なってくる場面もあります。
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- 1
- 逮捕
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- 2
- 送検
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- 3
- 勾留又は観護措置
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- 家裁送致
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- 5
- 審判
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- 6
- 処分
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- 7
- 刑事裁判(検察官送致の場合)
逮捕されると身柄が拘束されます。
その後、48時間以内に検察庁に送検されます。
容疑者の送致を受けた検察官は、24時間以内に容疑者の勾留を請求するか判断します。
勾留されると、10日間にわたって身柄の拘束が続きます。
また、勾留は10日間を上限に延長される可能性があるため、最長で20日間の拘束となります。
ただし、少年事件では「やむを得ない場合でなければ」勾留できないとされており、勾留は例外的な扱いとなっています(少年法43条3項)。
そこで少年事件では、「勾留に代わる観護措置」という措置が執られることがあります(少年法43条1項)。
観護措置も、「逮捕に続く身体拘束」という点では勾留に類するものですが、収容場所が留置所ではなく少年鑑別所となり、期間としても10日間に限られ延長が認められないなど、勾留と異なる点もあります。
捜査が終わると、事件は家庭裁判所に送致されます。
成人の事件では検察官の判断で起訴するか否かを決定されるのに対し、少年事件では、事件の全てを家庭裁判所に送致するものとされており、「全件送致主義」と呼ばれています(少年法41条、42条1項)。
事件の送致を受けた家庭裁判所は、審判の開始又は不開始を決定します(少年法21条、19条1項)。
審判は、成人の事件での刑事裁判に当たるものですが、少年の処罰を目的とするものではなく、非行傾向を矯正するためにはどのような働きかけが効果的かという観点で行われます。
審判の結果、裁判官は少年に対する処分を決定します。
審判の結論としては、少年を処分しない「不処分」、少年院送致や保護観察処分などの「保護処分」、刑事罰相当との判断である「検察官送致」などがあります。
少年審判の結果検察官に送致(「逆送」といいます。)された場合、原則として起訴されることになり、手続きは刑事裁判に移行します(少年法45条5号)。
刑事裁判になると成人の事件と同様に扱われるため、有罪判決が出れば刑罰を科されることになります。
少年事件の流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
中学生が逮捕されたときのリスク
中学生には少年法が適用されますが、14歳以上であれば刑事未成年ではなくなるため、逮捕される可能性があります。
逮捕されると、その後保護処分や刑事罰などを科される可能性があるほか、逮捕それ自体によって生じるリスクもあります。
私立の場合、学校を退学処分となる
中学生が逮捕されると、私立の学校であれば、退学処分となるリスクがあります。
学校教育法では、教育上の必要があるときは、学校は学生に対して懲戒を与えることができるとされています(学校教育法11条)。
所定の懲戒事由に該当するときは、退学処分とすることも可能です(学校教育法施行規則26条3項)。
① (略)
② 懲戒のうち、退学、停学及び訓告の処分は、校長(大学にあつては、学長の委任を受けた学部長を含む。)が行う。
③ 前項の退学は、市町村立の小学校、中学校(略)に在学する学齢児童又は学齢生徒を除き、次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。
一 性行不良で改善の見込がないと認められる者
二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
三 正当の理由がなくて出席常でない者
四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者
④・⑤ (略)
誤認逮捕等でない限り、逮捕は「性行不良」や「学生又は生徒としての本分に反した」といった項目に該当する可能性があります。
事案によっては、訓告や停学といった軽い処分では済まされず、退学処分が選択されるおそれがあるほか、自主退学を勧められる形で、実質的に学校をやめざるを得なくなることもあります。
前科や前歴が付くおそれ
中学生であっても、逮捕されると前科や前歴がつくおそれがあります。
犯罪の容疑者として捜査の対象となった履歴のことを、「前歴」といいます。
逮捕された場合、犯罪の容疑者として捜査対象になっているといえますので、たとえ中学生であっても、逮捕されればそれが前歴として残ることになります。
前歴は前科と異なり、あくまで捜査対象となったという事実上の履歴にすぎないため、前歴があること自体が何かの不利益になることは、基本的にありません。
とはいえ、前歴が付くことが望ましいものでもありませんので、つかずに済むのであればそれに越したことはないといえるでしょう。
一方、前科は前歴とは異なるもので、起訴されて有罪判決を受けたことを意味します。
中学生は少年法の適用対象であり、たとえ14歳以上で犯罪が成立する場合であっても、刑罰を科すのではなく、保護観察や少年院送致のような保護処分が基本となります。
保護処分は、あくまで刑罰ではなく、矯正教育の一種として実施されます。
そのため、たとえ少年院送致のような処分を受けても、それで前科が付くことにはなりません。
ただし、人を死亡させるなど、法に決められた一定の重大犯罪については、たとえ中学生であっても、14歳を超えていれば刑事処分が原則となり検察官送致となります。
このようなケースでは、刑事事件として成人の場合と同様の取り扱いとなるため、起訴されて有罪判決が確定すると、前科が付いてしまいます。
高校進学や就職活動に影響する
中学生が逮捕されてしまうと、高校進学や就職活動に影響するリスクもあります。
高校進学については、逮捕歴があるとしても、そのことで高校の入学自体が不可能になるわけではありません。
しかし逮捕されると、手続きの流れでご紹介したとおり、その後少年審判が開かれたり、保護処分を受けたりといった事態が想定されます。
そうなると少年にとってもかなりの負担が生じ、受験勉強に支障が出たり、日程によっては入試を受けること自体が難しかったりということにもなりかねません。
また、進学ではなく就職を希望する場合でも、逮捕が悪影響を及ぼす可能性があります。
そもそも、高校進学率がきわめて高い現代の日本では、最終学歴が「高卒以上」であることを求める求人が多く、中学卒業での就職となると、一気に選択肢の幅が狭まることは否めません。
そこに逮捕という負担まで加わるとなると、就職のハードルもさらに高いものになるといえるのではないでしょうか。
中学生というのは、高校進学や職業訓練など、どのような道に進むとしても、将来を見据えて行動すべき大事な時期です。
たった一度の逮捕で後の人生にいつまでも悪影響が及ぶとなると、非常にもったいないことです。
成人年齢が18歳に引き下げられるなど、中学生は大人になる一歩手前の段階にあります。
法律上は少年法が適用されるとしても、責任感を持って行動することが大切といえます。
ニュース等で報道される
たとえ中学生であっても、逮捕されるとニュース等で報道される可能性があります。
少年の事件では、少年の氏名や、年齢、職業、住居、容ぼう等の本人を推知できるような記事を新聞等に掲載することは、少年法によって禁止されています。
これは、少年を推知できるような報道、すなわち「推知報道の禁止」と呼ばれます。
第六十一条 家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。
引用元:少年法|電子政府の総合窓口
少年法は、非行少年の更生を図ることを目的としていることから、本人が特定されることでその妨げとならないよう、推知報道を禁止しているのです。
法律の条文上では、上記のとおり「新聞紙その他の出版物」が規制の対象ですが、テレビやラジオといった他の媒体で報道されてしまえば、意味がありません。
そこでこれらのメディアについても、法の趣旨を尊重して、自主規制の形で推知報道を控えています。
ただし、推知報道の禁止は、あくまで少年を推知できる情報の報道を禁止するものです。
つまり、個人の特定につながらない範囲であれば、事件そのものが報道されることはあり得るということです。
実際、実例としてご紹介したように、逮捕されたのが中学生であっても、少年の氏名は伏せた上で、事件の内容や場所、少年の年齢などの概要が報道されるのは一般的です。
たとえ氏名が伏せられていたとしても、このような形で事件が報道されると、場合によっては個人が特定されることもあり得ますので、ニュース報道は逮捕されるリスクのひとつといえます。
SNSで拡散される
中学生が逮捕されると、その情報がSNSによって拡散されるリスクもあります。
少年法が推知報道を禁止しているのは「新聞その他の出版物」であるため、ネット配信のニュース記事は対象外と考えられます。
基本的には、大手メディアであれば、法の趣旨をふまえた自主規制が期待できますが、一部の週刊誌のオンライン記事などでは、直接の規制対象ではないということで、実名報道をするケースもあるようです。
また、メディアだけでなく、近年ではSNSへの個人の投稿であっても、内容によっては大きく注目を集めることもあります。
インターネットへの投稿は、きっかけはたった1件の書き込みであっても、引用や再投稿による拡散が相次ぐと、瞬く間に情報が知れ渡ることも考えられます。
インターネットの特性上、情報がいったん出回ると、これを完全に消去することは難しく、不名誉な情報がいつまでも残り続けるという意味で、「デジタルタトゥー」などと呼ばれることもあります。
現代では、逮捕されるとSNSによって情報が拡散されるというリスクがあるのです。
逮捕のリスクを軽減する方法
中学生であっても逮捕される可能性があり、もし逮捕されるとさまざまなリスクが発生します。
もっとも、刑事事件を起こした場合でも、その全てが逮捕されるわけではありません。
容疑者を逮捕するには、逮捕の必要性などの満たすべき条件があり、事案によっては逮捕されないケースも多く存在します。
事件後の対応によって逮捕を回避できることもありますので、以下では逮捕のリスクを軽減する方法をご紹介します。
親に相談する
もし逮捕される可能性のある事件を起こしたときは、できるだけ早く親に相談しましょう。
中学生が犯罪行為をした場合、これをひとりで解決することは困難であり、両親をはじめとする身近な大人の力を借りる必要があります。
親に犯罪の話を打ち明けることは気が引けるかもしれませんが、もし逮捕されることになれば、結局親に知られることは避けられません。
それならば、少しでも早い段階で親に相談して、一緒に解決への道を考えてもらうのがベストな対応といえるのではないでしょうか。
自首を検討する
中学生が逮捕の可能性を下げたい場合、自首を検討することも有力です。
自首は、自ら捜査機関に名乗り出て犯罪事実を申告する行為です。
これによって犯行が発覚するため、むしろ逮捕されてしまうのではないかと心配になるかもしれません。
実際、そのようなケースもあり得るため慎重に検討すべきではあるのですが、中学生などの若年者であれば特に、自首することによって逃亡のおそれがないと判断されて、逮捕を回避できることが期待できます。
もし自首に関して心配なことがおありであれば、弁護士にご相談されることをおすすめします。
自首を弁護士に依頼することのメリットについては、こちらの記事をご覧ください。
刑事弁護に強い弁護士に相談する
逮捕のリスクを下げるためには、刑事事件に強い弁護士に相談することも重要です。
中学生は少年法が適用されるため、中学生の事件は少年事件となります。
少年事件は少年法の定めに従って処理されることから、成人の刑事事件とは異なる点も少なくありません。
そのため、中学生の刑事事件の相談は、少年事件について高い専門性を有する弁護士にすべきといえます。
刑事弁護に強い弁護士であれば、少年事件の経験も豊富であり、少年事件の特殊性をふまえた専門的な助言が可能です。
刑事事件における弁護士選びの重要性については、こちらをご覧ください。
中学生の逮捕に関するよくあるQ&A
警察に捕まるのは何歳からですか?
たとえ中学生であっても、14歳以上であれば、逮捕の可能性があります。
少年院に入るのは何歳からですか?
処罰を目的とする刑務所と異なり、少年院は非行を解消するための教育施設とされています。
このため、犯罪が成立しない14歳未満であっても、少年院に入ることはあります。
まとめ
この記事では中学生の逮捕について、逮捕されるケースや実際の事例、逮捕のリスクとその軽減方法などについて解説しました。
記事の要点は次のとおりです。
- 犯罪成立の基準年齢は14歳であることから、14歳以上であれば、中学生であっても逮捕される可能性がある。
- 中学生が逮捕されると、少年審判によって保護処分を科される可能性があるほか、重大事件については検察官に送致されて刑事裁判になる可能性もある。
- 中学生が逮捕されると、前歴が付くほか、情報の拡散や進学・就職への悪影響など、さまざまなリスクがある。
- 中学生が逮捕のリスクを軽減するためには、親に相談し自首を検討するなどのほか、刑事事件に強い弁護士に相談することも有効である。
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