保護観察とは?処分の内容をわかりやすく解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


保護観察とは、犯罪を犯した人や非行少年に科される処分の一種で、保護観察所の指導の下、社会の中で更生を図る処分のことをいいます。

刑務所や少年院のような施設に収容されることなく、通常の社会生活を送りながら更生を目指すことから、「社会内処遇」と位置づけられています。

保護観察は、対象者や事件の性質に応じて種類があり、その内容も変わってきます。

この記事では保護観察について、制度の趣旨や、どのような内容なのか、何をしたら保護観察になるのかなどについて、弁護士が解説します。

保護観察とは?

保護観察とは、犯罪を犯した人や非行少年に科される処分の一種で、保護観察所の指導の下、社会の中で更生を図る処分のことをいいます。

保護観察では、刑務所や少年院のような施設に収容される「施設内処遇」と異なり、自宅で通常の社会生活を送りながら更生を目指していくことができるため、「社会内処遇」と呼ばれます。

 

なぜ保護観察があるの?

保護観察は更生保護法という法律に基づいて実施され、同法の目的は、犯罪者や非行少年を社会内で適切に処遇することにより、その改善更生を図ることにあるとされています(更生保護法1条)。

参考:更生保護法|電子政府の総合窓口

刑務所や少年院のような施設内での処遇は、たしかに矯正効果は高いと思われるものの、運営のために社会的なコストが発生します。

また、そこに入所する当人にとっても、いったん社会から隔離され、生活環境が変わる点で、負担が大きいものといえます。

施設内処遇は、効果と副作用がともに強い、いわば劇薬と見ることができ、これによらずに更生という目的が達せられるのなら、それに越したことはありません。

そこで、犯罪傾向や非行の程度がそこまで深刻でなく、施設収容の必要性が高くない場合の選択肢として、社会内で更生を図るための保護観察という制度が整備されているのです。

 

 

何をしたら保護観察となるの?4つのケース

保護観察の対象となり得るのは、犯罪を犯した人と、非行少年です。

それぞれ、初めから保護観察になる場合と、刑務所や少年院から仮釈放・仮退院する際に保護観察が付される場合とがありますので、合計で4つのケースが考えられることになります。

これらは更生保護法48条の1号から4号までに規定されていることから、1号観察、2号観察、という風に呼ばれることもあります。

参考:更生保護法|電子政府の総合窓口

 

保護観察処分少年(1号観察)

保護観察処分少年とは、非行少年で、少年審判によって保護観察処分の決定を受けた少年をいいます。

少年審判において非行を矯正する必要があると判断されると、「保護処分」という処分を科されます。

保護処分は、少年院のような施設に送致するものと、保護観察に大別することができます。

保護処分として保護観察となるのは、一定の非行傾向が認められるため不処分とすることはできないが、少年院送致まではしなくても矯正を図ることが可能と判断された場合です。

 

少年院仮退院者(2号観察)

少年院に入院後、本来の収容期間が満了する前に仮に収容を解くことを「仮退院」といいます(更生保護法41条)。

少年院を満期前に仮退院する場合、仮退院の期間中は必ず保護観察に付されることになります(更生保護法42条、40条)。

少年院を仮退院するとともに保護観察に付されることになることから、「少年院仮退院者」と呼ばれます。

少年院では、期間満了まで収容されるのは稀であり、ほとんどのケースでは満期前の仮退院が許されます。

とはいえ、仮退院はあくまで収容期間が満了していない「仮」での退院ですので、本当に退院させても問題がないかを見定める必要があります。

そこで、少年が少年院を仮退院する際は、スムーズに社会復帰できるように保護観察を付すこととされているのです。

そのため、保護観察中の素行次第では、仮退院を取り消されて少年院に逆戻りすることもあり、「戻し収容」と呼ばれています。

 

仮釈放者(3号観察)

仮釈放者は、刑期より前に刑務所から釈放されるにあたって保護観察に付される者をいいます。

仮釈放者に保護観察が付されるのは少年院仮退院者と同じ趣旨であり、社会復帰に向けた準備のための措置といえます。

 

保護観察付執行猶予者(4号観察)

刑事裁判で執行猶予付きの有罪判決を受ける場合に、保護観察に付されることがあります。

これが「保護観察付執行猶予者」です。

執行猶予とは、有罪として懲役などの刑を言い渡しつつ、刑の執行自体は一定の期間猶予するというものです。

たとえば、懲役3年・執行猶予5年であれば、判決上は3年間の懲役を科されているものの、5年間はその執行が猶予されることになります。

「執行が5年間猶予される」とは、5年後から服役が開始するということではなく、5年間再犯などすることなく過ごすことができれば、服役が免除されるということです。

執行猶予は、それ自体が施設収容も視野に入れつつの社会内処遇といえますが、執行猶予中の生活を特に注意深く見守りたい場合に保護観察がつけられることがあり、これが4号観察と呼ばれるものです。

 

 

保護観察処分とはどのようなもの?

保護観察は「観察」というとおり、その期間中の生活態度や素行を観察し、社会の中での更生を支援してくものになります。

保護観察では、施設収容のように皆が同じ環境で生活するわけではなく、各人の生活環境の中で更生を図っていくことになります。

そこで保護観察は画一的なものではなく、措置を受ける者の性格や年齢その他の経歴などを十分に考慮した個別処遇が原則とされています(更生保護法3条)。

参考:更生保護法|電子政府の総合窓口

 

保護観察は誰が行う?

保護観察は、保護観察所の指導・支援の下で実施されます。

「保護観察所」というと、刑務所や少年鑑別所のような収容施設の一種であるかのように思えるかもしれませんが、保護観察はあくまで社会内処遇ですので、保護観察所という施設に入所するわけではありません。

保護観察所は、保護観察の事務を管轄する役所であり、実際の保護観察の実務は、保護観察所に所属する保護観察官と、法務大臣の委嘱を受けた保護司が協働して行います。

 

保護観察官とは?

保護観察官は、心理学や教育学などに関する高い専門性を有する国家公務員であり、保護観察、調査、生活環境の調整等をその職務とします(更生保護法31条2項)。

保護観察官は、保護観察の実施計画を策定したり、保護司に対する助言などを行ったりするスーパーバイザーのような役目を果たすほか、実際に対象者と面談することもあります。

 

保護司とは?

保護司は、犯罪や非行からの立ち直りを支援する民間のボランティアです。

保護司は法務大臣から委嘱されており、非常勤の国家公務員という位置づけではありますが、給与は支給されておらず、実質的には民間人といえます。

一般の会社員・公務員や、住職や神父などの宗教家、定年退職ですでに現役をリタイアした方などが、社会貢献の一環として保護司を務めています。

対象者の立ち直りを最前線で支える伴走役のような存在で、保護観察期間中は保護司と面談する機会も多くあります。

 

保護観察の内容とは?

保護観察の内容は、「指導監督」と「補導援護」の2本柱となっています。

 

指導監督とは

指導監督は、面談などを通じて対象者の生活状況を把握し、遵守事項を遵守するよう指示を出すなど必要な措置を講じることによって、犯罪傾向を解消し再犯の防止を目指すものです(更生保護法57条)。

薬物事案や性犯罪など、犯罪傾向の改善に特別な矯正が必要な場合は、「特定の犯罪的傾向を改善するための専門的処遇」が実施されることもあります(同条1項3号)。

たとえば薬物犯罪であれば、依存症からの回復のための医療機関を受診するような指示が出ることがあります(同法65条の3)。

 

補導援護とは

補導援護は、対象者が社会の中で自立した生活を営めるように、住居や職業などの生活全般にわたってサポートするものです(更生保護法58条)。

生活環境の乱れが犯罪を引き起こすことも多いため、犯罪傾向の矯正だけでなく、日々の生活を整えることも、更生を図る上で大切になってくるのです。

 

保護観察の種類

保護観察の内容は、交通違反事件と、それ以外の一般的な刑事事件で異なります。

また、両者にそれぞれ短期のものが存在しますので、全部で4種類となります。

 

一般保護観察

一般保護観察は、交通事故以外の一般事件で付される保護観察です。

 

一般短期保護観察

一般短期保護観察も、同じく交通事故以外の事件で付されますが、一般保護観察に比べて期間が短くなっています。

反社会集団に加入していない、非行の程度が深刻でないなどの要件を満たし、短期間の保護観察での更生が期待できる場合には、短期の保護観察となります。

 

交通保護観察

交通保護観察は、交通違反事件の場合に限って付されるものです。

交通関係の事件は、非行や犯罪傾向の程度もさることながら、交通法規に対する理解度や運転技能など、更生と言っても、一般の犯罪とは違う観点からのアプローチが必要となってきます。

そこで、交通事故事件については一般事件と区別して交通事故に特化した保護観察制度が用意されているのです。

 

交通短期保護観察

交通短期保護観察は、交通保護観察の観察期間が短いものです。

一般短期保護観察のように非行の程度が深刻でないなどの要件を満たした場合に、交通短期保護観察となることがあります。

交通短期保護観察では、集団講習を受講するなどの集団処遇が中心となります。

担当の保護司が指定されることもありませんので、個別処遇を原則とする他の保護観察とはイメージが異なるかもしれません。

 

試験観察とは?

試験観察とは、「試験的に保護観察を行うこと」をいいます。

少年院などの施設内処遇は劇薬のようなもので、効果は高いが回避できるならそれに越したことはないというものでした。

保護処分を決定する裁判官も、少年院送致があり得る事案であっても、なんとか保護観察で対応できないかという可能性について検討します。

そこで、判断が微妙な事案については、まず試験観察という形で試験的に保護観察を試行してみて、その結果をもって、施設収容の要否を判断するのです。

試験観察は、最終的な結論を出す前の中間的な措置であることから、「中間処分」とも呼ばれます。

 

保護観察の期間とは?

保護観察の期間は、対象者や保護観察の種類によって変わってきます。

 

成人の場合

成人の保護観察では、裁判官によって言い渡された期間が保護観察の期間となります。

 

特定少年以外の少年の場合

少年事件での保護観察の期間は、保護観察の種類に応じて変わり、次のとおりとなっています。

保護観察の種類 期間
一般保護観察 20歳に達するまで(その期間が2年に満たないときは2年)
一般短期保護観察 6ヶ月~7ヶ月で解除を検討
交通保護観察 6ヶ月以降に解除を検討
交通短期保護観察 3ヶ月~4ヶ月で解除を検討

なお、一般保護観察の期間は原則として2年ですが(更生保護法66条)、経過が良好で保護観察を継続する必要がなくなったと認められれば、より早期に解除されます(同法69条)。

 

特定少年の場合

少年事件であっても、特定少年(18歳又は19歳の少年)の場合、保護観察の期間は6ヶ月又は2年のいずれかとなります(少年法64条1項1号、2号)。

参考:少年法|電子政府の総合窓口

 

保護観察中は何をするの?

保護観察中は社会内処遇ですので、自宅に帰って、遵守事項を守りつつ一般的な生活を送ります。

月に数回程度保護司との面談がありますので、そこで近況を報告します。

 

保護観察の遵守事項とは?

保護観察は施設に収容しないものの、社会内処遇によって更生を目指すものであり、保護観察中なんらの制限なく自由に生活できたのでは、何も処分を受けていないのと変わらなくなってしまいます。

そこで保護観察の期間中は、これを守って暮らさなければいけない「遵守事項」という決まりがあります。

遵守事項は、全員に共通する「一般遵守事項」と、個人ごとに内容の異なる「特別遵守事項」の2種類が存在します。

 

一般遵守事項

一般遵守事項は、保護観察処分を受ける人全員が共通して守らなければならない事項です。

全員に共通する事項を定めたものですので、内容としては、非行をなくすよう健全な生活態度を保持することや、保護司との面談に応じることなどの、保護観察を受ける上での一般的な事項となっています(更生保護法50条1項)。

 

特別遵守事項

特別遵守事項は、それぞれの性格や環境、犯行に至った経緯など一人ひとりの事情を考慮し、個別に定められる事項です。

学校や職場へきちんと通うことや、共犯者と連絡を絶つこと、特別な処遇プログラムの受講など、それぞれの対象者の問題点に応じて設定されます(更生保護法51条2項)。

 

保護観察の遵守事項に違反したらどうなる?

保護観察期間中に遵守事項に違反した場合、「不良措置」と呼ばれるペナルティを受けることがあります。

ひとつの例としては、保護観察所長から警告を受け、それでも改善が見られなかった場合に、裁判官の判断によって刑務所や少年院に入所させられるということが考えられます(更生保護法67条)。

遵守事項は、いずれもこれから社会の一員として生活していく上で守って当然のものばかりですので、違反しないよう肝に銘じておく必要があります。

 

 

保護観察についてのよくあるQ&A

保護観察の対象者は?

保護観察の対象者は、保護処分として保護観察処分の決定を受けた少年や、保護観察付き執行猶予判決を受けた者のほか、少年院や刑務所を仮退院ないし仮出所する者などです。

 

保護処分と保護観察の違いは何ですか?

保護処分は、非行少年に対して裁判官が下す処分で、保護観察は、保護処分の一種です。

成人の刑事事件でいえば有罪判決に相当しますが、あくまで刑罰ではなく、少年の非行を矯正するための教育としての処分です。

保護観察は、保護処分の一種として出されるものですので、保護処分の中のひとつの選択肢として、保護観察が含まれているという関係になります。

 

 

まとめ

この記事では保護観察について、制度の趣旨や、どのような内容なのか、何をしたら保護観察になるのかなどについて解説しました。

記事の要点は次のとおりです。

  • 保護観察とは、犯罪を犯した人や非行少年に科される処分の一種で、保護観察所の指導の下、社会の中で更生を図る処分のことをいう。
  • 保護観察は、刑務所や少年院のような施設に収容される「施設内処遇」と異なり、自宅で通常の社会生活を送りながら更生を目指していくことができる「社会内処遇」である。
  • 保護観察の対象となるのは、犯罪を犯した人と非行少年であり、初めから保護観察になる場合と、刑務所や少年院から仮釈放・仮退院する際に保護観察が付される場合の4つのケースが存在する(1号観察~4号観察)。
  • 保護観察は、保護観察所に所属する保護観察官と、民間のボランティアである保護司が中心となって実施する。
  • 保護観察は、面談などを通じて対象者の生活状況を把握し、遵守事項を遵守するよう指示を出すなど必要な措置を講じる「指導監督」と、対象者が社会の中で自立した生活を営めるように生活全般にわたってサポートする「補導援護」の2本柱で実施される。
  • 保護観察には、一般保護観察、一般短期保護観察、交通保護観察、交通短期保護観察の4種類が存在する。
  • 保護観察では、全員に共通する「一般遵守事項」と、個人ごとに決定される「特別遵守事項」が存在し、遵守できなければ、施設収容などの不良措置が執られることがある。

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