少年審判とは?手続きの流れや対応法を解説
少年審判とは、犯罪などの非行を行った少年に対する処分を決めるための、家庭裁判所での手続きをいいます。
成人が犯罪を犯すと刑事裁判にかけられて刑罰を科せられますので、その少年バージョンと考えると、近いイメージかもしれません。
ただし、少年審判は一般の刑事裁判と異なり、刑事訴訟法ではなく少年法に基づいて実施されます。
少年法は少年の特徴に配慮した法律であり、少年審判は刑事裁判と異なっている点も多くあります。
そこでこのページでは、少年審判について、目的や特徴、刑事裁判との違いや手続きの流れなどについて、弁護士が解説します。
目次
少年審判とは?
少年審判とは、犯罪などの非行を行った少年に対する処分を決めるための、家庭裁判所での手続きをいいます。
少年審判は非行少年への処分を決める手続きであり、少年法に基づいて行われ、少年の特徴に対する配慮が見られます。
そこでまずは、一般の刑事裁判との比較も交えながら、少年審判の特徴について解説していきます。
少年法の基本原則
少年法は、少年の健全な育成を期し、非行少年に対して性格の矯正や環境の調整に関する保護処分を行うことを目的としています(少年法1条)。
成人の刑事事件の場合は、犯罪に対する制裁として刑罰を科し、処罰することが基本的な目的となりますが、少年法では少年の処罰ではなく、非行傾向を解消するために矯正教育を施すことが目的とされています。
少年法に基づいて少年に科される処分を「保護処分」といい、前述のような処罰ではなく教育を目的とする少年法の考え方を、「保護主義」といいます。
少年審判は、処罰ではなく教育を原則とする保護主義の考え方に基づいて設計されていることを念頭に置いておくと、審判の仕組みを理解しやすくなると思います。
少年審判の目的
少年審判は、犯罪等の非行に及んだ少年の処遇を決定するための手続きです。
位置づけとしては、成人の犯罪における刑事裁判に相当します。
ただし、少年法は少年の処罰ではなく非行傾向を矯正することを目的としていることから、審理のあり方も異なります。
容疑者の処罰を目的としている刑事裁判では、容疑者が本当に犯罪を行ったのか、すなわち犯罪事実の有無を中心に審理します。
これに対して少年審判では、非行事実の有無も重要ですが、これとならんで、少年の非行傾向がどの程度進んでおり、どの程度矯正教育を施す必要があるかについても審理の対象となります。
この非行傾向の進行度合いや、矯正教育の必要のことを、少年を保護する必要性という意味で、「要保護性」といいます。
少年審判は非行事実の有無だけでなく、要保護性について審理することも目的としているのです。
非行事実
非行事実とは、少年が行った具体的な非行の事実のことであり、成人の刑事裁判でいう犯罪事実に当たります。
少年審判では、保護処分として保護観察や少年院送致などの処分が科されることがあります。
少年法がいかに教育を目的にしているといっても、非行がまったくの事実無根である場合にまでこのような保護処分を科すことは許されません。
そこで少年審判では、本当に非行事実があったのかについて審理し、もし非行事実が確認できなければ、不処分として審判は終了します。
要保護性
少年審判で特徴的なのは、非行事実だけでなく「要保護性」についても審理される点です。
「要保護性」とは、非行を繰り返す危険性や、矯正の可能性などを意味します。
少年法の基本理念は、非行少年を罰するのではなく、教育によって非行傾向を解消するという保護主義でした。
刑罰であれば、犯罪行為に対する制裁であるため、その重さは犯行内容の悪質性に比例するのが基本です。
他方で、保護処分は少年の非行傾向の解消を目的としているため、処分の決定にあたっては、非行事実とともに少年の要保護性についても考慮されることになります。
そのため、審判の原因となっている非行事実だけを見ると軽微な事案であっても、少年の要保護性が高く矯正の必要性が強いと判断されると、少年院送致などの厳しい処分を受けることもあり得ます。
逆に、非行事実が比較的重い事案において、審判までの過程における調査官や弁護士などの働きかけによって要保護性が解消ないし低下したことが認められると、軽い処分で終わることも考えられます。
少年審判の特徴
少年審判は、「懇切を旨として、和やかに行う」とともに、少年の「内省を促すものとしなければならない」とされています(少年法22条1項)。
少年に対して威圧的な態度で臨んだり、少年のことを頭ごなしに否定したりしてしまうと、少年は余計に心を閉ざし、大人に対する不信感をさらに強めてしまうといったことにもなりかねません。
少年審判の目的は、少年を断罪することではなく、少年の抱えている問題点を見極めて、これを解消するための処遇を決定することです。
そのためには、少年を萎縮させることなく、少年なりの言い分に丁寧に耳を傾ける必要があります。
懇切を旨とするという少年法の規定は、このような配慮に基づくものです。
場所としても、裁判官が高所に着座する法廷ではなく、ラウンドテーブルが配置された審判廷と呼ばれる部屋で実施され、裁判官と少年が目線の高さを合わせられるような環境となっています。
少年審判は、少年の成長を見守る暖かい視点と、少年だからと言って甘やかすことなく、犯罪に対しては厳しい姿勢で臨むという、少年法の基本的な理念に基づいて営まれるものとされているのです。
少年審判と刑事裁判の違い
少年審判は、成人の刑事事件における刑事裁判に当たると捉えると、位置づけが理解しやすくなります。
一方で、少年の犯罪についてはあえて刑事裁判と区別して少年審判という特化した手続きを設けているのであり、具体的な内容の面では、随所に違いが見られます。
審判は非公開
少年審判は、非公開で行われます(少年法22条2項)。
裁判手続については、公開の法廷で行うことが憲法上求められています(日本国憲法82条1項)。
裁判の結果には拘束力や強制力があるため、審理の過程をブラックボックス化してしまうと、公正さを欠く判決や、ひいては国家による人権侵害を招くおそれがあります。
そこで、裁判は公開の法廷で行うことが求められているのです。
一方、少年審判については、刑罰を与える目的ではなく、教育による非行の解消を目的としているため、非公開で手続きを進めたとしても、人権侵害の危険はそこまで大きくないといえます。
むしろ、審判が公開されると人の目にさらされることになりますので、少年にとって精神的な負担にもなり、かえって更生の妨げになることも懸念されます。
また、少年審判では非行事実だけでなく要保護性も審理対象となることから、少年の生い立ちや生育環境などのセンシティブな問題に踏み込むことも時に必要となります。
そのような場面では、手続きを非公開とした方が、より本質に踏み込んだ充実した審理が可能となります。
このように、審判を非公開としても問題は少なく、利点の方が勝ることから、裁判と異なり少年審判は非公開で行うものとされているのです。
少年審判の傍聴は例外的
少年審判は非公開とされているため、傍聴できる者も限定されています。
少年審判を傍聴できるのは、具体的には、被害者を死亡させ、あるいはその生命に重大な危険を生じさせるような一定の犯罪の場合における被害者等に限られます(少年法22条の4第1項)。
さらに、傍聴は許可制となっているため、被害者等であれば無条件に傍聴が認められるわけではなく、少年の状態や事件の性質等の事情を考慮して、少年の健全な育成を妨げるおそれがなく相当と認めるときに限って傍聴は認められます。
犯罪の被害者が少年に対する処分が決まる過程を知りたいと思うのは、当然の感情ではあります。
前述のように、審判を効果的に実施するために非公開を原則としていますが、完全に密室化してしまうと被害者の不信感を招き、ひいては司法への信頼を損なうといったことが危惧されます。
そこで、少年の更生と被害者の知る権利のバランスを取るために、審判を非公開としつつ、一定の重大事件でかつ傍聴を認めても弊害がない場合に限って、被害者の傍聴を認めるものとされているのです。
検察官の不存在
少年審判では、検察官を関与させる旨の決定(少年法22条の2第1項)が出た事件を除き、原則として検察官が関与しません。
刑事裁判では、弁護側と検察側が対立し、中立の立場にある裁判官が判断を下すという三角形の構造をしています。
一方、少年審判は有罪立証を目的とする手続きではないため、その役割を担う検察官が不在となります。
審判は、判断者である裁判官が少年に対して積極的に質問するなどして、自ら真相解明に努めるという形になります。
虞犯事件も対象
少年審判では、犯罪だけでなく「虞犯事件(ぐはんじけん)」も審判の対象となります(少年法3条1項3号)。
「虞犯」とは、今後少年が犯罪を犯す可能性があるという「虞れ(おそれ)」を意味します。
成人の場合は、まだ事件を起こしていないにもかかわらず、「犯罪を起こしそうだ」という将来の予想だけで刑事裁判にかけられるといったことは、あり得ない話です。
しかし少年法では、犯罪行為への制裁ではなく、少年の非行傾向を解消することを目的としていることから、まだ犯行に至っていない少年であっても、そのおそれが認められた段階で少年審判の対象となり得るのです。
虞犯少年についての詳しい解説は、以下をご覧ください。
少年審判の対象となるのはどんなケース?
少年法上、少年審判の対象となるのは、次の少年とされています(少年法3条1項各号)。
- 罪を犯した少年(犯罪少年)
- 14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年(触法少年)
- 一定の事由があり、将来犯罪を犯すおそれのある少年(虞犯少年)
これら3種の少年は、まとめて「非行少年」と呼ばれることもあります。
非行少年について、家庭裁判所は審判を開始するのが相当であると認めるときは、審判を開始する旨を決定します(少年法21条)。
他方で、調査の結果、審判に付すことができない、あるいは相当でないときは、審判を開始しない旨の決定をしなければなりません(少年法19条1項)。
審判に付すことができないとは、そもそも非行の事実が存在しない場合であり、相当でないときとは、法的には審判を開始することも可能であるが、事案が軽微であるなどの理由で、審判を開始する必要がない場合などです。
つまり少年審判の対象となるのは、非行少年に該当し、かつ審判不開始が出なかった場合ということができます。
それぞれの非行少年の具体的なイメージは、次のとおりです。
犯罪少年
犯罪少年とは、犯罪行為を行った少年のことを指します。
ただし刑法では、14歳未満の者の行為は処罰しないものとされています(刑法41条)。
参考:刑法|電子政府の総合窓口
これは、行為者が14歳未満の場合には、そもそも犯罪行為として扱わないことを意味します。
そして少年法における「少年」とは、20歳未満の者をいいます(少年法2条1項)。
つまり犯罪少年とは、犯罪行為を行った14歳以上20歳未満の者ということができます。
触法少年
触法少年とは、14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為を行った少年のことです。
14歳未満は刑法上犯罪が成立しないことから、犯罪とされている行為を行ったとしても、犯罪少年と呼ぶことはできません。
そこで「法に抵触する行為を行った少年」という意味で、犯罪少年と区別して触法少年という位置づけが設けられているのです。
あくまで、年齢を理由として犯罪が成立しないにすぎませんので、やっている行為の中身を見れば、触法少年も犯罪少年と異なりません。
少し複雑に思えるかもしれませんが、少年が犯罪とされる行為を行った場合、犯罪が成立する年齢である14歳を境として、触法少年又は犯罪少年のいずれかに当たると考えると、理解しやすいのではないでしょうか。
触法少年についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
虞犯少年
虞犯少年は、少年法の定める一定の事由に該当し、その性格や環境から将来犯罪行為や触法行為をするおそれのある少年のことです。
たとえば、家出や深夜徘徊を繰り返す、暴走族に加入するといった非行事由が見られ、将来犯罪を犯すおそれが認められると、虞犯少年に該当します。
虞犯少年は、具体的に犯罪行為や触法行為を行ったわけではない点で、犯罪少年や触法少年と大きく異なります。
ただし少年法は、犯罪に対して制裁としての刑罰を加えるのではなく、非行の解消を目的としているため、まだ犯罪を犯していなくても、そのおそれがあると認められた段階で、少年審判の対象と定めているのです。
虞犯少年についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
少年審判の対象まとめ
少年審判の対象となるのは、犯罪少年、触法少年、虞犯少年であり、これらはまとめて「非行少年」といわれます。
ただし、これらはいずれも通称であり、少年法上の正式な表現とは異なっています。
少年法の条文に直接当たっても、犯罪少年等の文言は見当たりませんので、注意が必要です。
これらの概念を整理すると、次のようになります。
通称 | 法律上の表現 | 意味合い |
---|---|---|
非行少年 | 審判に付すべき少年 | 少年審判の対象となる少年(犯罪少年、触法少年、虞犯少年の総称) |
犯罪少年 | 罪を犯した少年 | 犯罪行為をした少年 (14歳以上) |
触法少年 | 14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年 | 犯罪に当たる行為をした少年 (14歳未満) |
虞犯少年 | 性格又は環境に照して、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年 | 犯罪を犯すおそれが認められる少年(18歳以下) |
少年審判の手続の流れ
一般の刑事裁判であれば、検察官が容疑者を起訴して刑事裁判がはじまり、裁判官が判決を出し、実刑判決であれば刑が執行されるという流れとなります。
少年事件の手続きは、全体的に見ると刑事事件の手続きと似たような制度設計となっていますが、細部においてさまざまな相違点があります。
少年審判に至るまでの手続きのイメージは、次のようになります。
刑事事件との相違点も意識しつつ、まずは全体の流れを把握していただければと思います。
①捜査・調査
犯罪少年を発見した場合、少年であっても14歳を超えていれば犯罪にあたりますので、警察は事件を捜査します。
また、14歳未満の触法少年の場合、犯罪は成立しませんが、警察は捜査に代えて調査を行います(少年法6条の2第1項)。
「調査」は「捜査」ではありませんので、事情聴取などはあくまで任意に実施され、強制的な取り調べは許されません(少年法6条の4第1項、2項)。
ただし必要があれば、証拠物の押収や捜索のように、捜査に類することも認められます(同法6条の5第1項)。
②家庭裁判所への送致
捜査や調査を終えると、事件は家庭裁判所に送致されます。
一般の刑事事件であれば、検察官の判断で事件を不起訴とすることもできますが、少年事件では全件送致主義といって、全ての事件が家庭裁判所に送致されることになります(少年法41条、42条1項)。
③調査官の調査・観護措置
事件が送致されると、家庭裁判所の調査官が少年や保護者等と面談するなどして、事件の調査をします。
また、審判のために必要があるときは、観護措置によって少年を少年鑑別所に収容し、心身鑑別を実施します。
④少年審判の開始又は不開始
調査官の調査や鑑別結果などをふまえ、審判を開始するかを決定します。
調査の過程での教育的な働きかけによって少年の反省が見られ、再非行のおそれがないと判断されると、審判不開始となって、そこで事件は終了します。
⑤処分の決定
審判が開かれると、裁判官は少年に対する処分を決定します。
保護処分として、保護観察や少年院送致などの処分が出る可能性のほか、刑事処分が相当と判断されると、検察官送致となります。
また、処分の必要がないと判断された場合は、不処分となることもあります。
⑥少年審判への抗告
刑事事件で判決に納得できなければ控訴できるのと同様、少年事件でも、保護処分に不服がある場合は「抗告」という手段を取ることができます。
ただし、抗告が可能なのは、法令違反や事実誤認、処分が著しく不当である場合などに限られます(少年法32条)。
少年審判の当日の流れ
少年審判の当日は、次のような流れで手続きが進行します。
手続きは全体でおおむね1時間程度であり、非行が重大でない場合であれば、その場で処分の言い渡しまで終えるのが一般的です。
①人定質問・黙秘権告知
人定質問とは、少年の生年月日や氏名等を質問し、人違いでないことを確認するものです。
続いて黙秘権が告知され、言いたくないことは言わなくてもよいことが告げられます。
②非行事実の告知・少年及び付添人の陳述
どの行為によって少年審判に付されているのか、裁判官から具体的な非行事実が告げられます。
これに対して、少年及び付添人は、事実を認めるか否かの意見を述べます。
③少年への質問
裁判官が少年に対して、なぜこのようなことをしたのか、今後どのように非行を改善していくのかといった、非行事実に関係する質問をします。
これに続いて、調査官や付添人が、裁判官が聞き漏らしたことや、より深く掘り下げたいことなどについて質問します。
④保護者への質問
少年に続いて、保護者へも、裁判官、調査官、付添人が質問します。
⑤調査官・付添人の意見陳述
調査官及び付添人が、それぞれどのような処遇が適切かについての意見を述べます。
⑥少年の意見陳述
最後に、少年に意見を陳述する機会が与えられます。
⑦決定の言い渡し
裁判官が、少年の処遇に対する決定を言い渡します。
少年審判における保護者への質問
少年審判では、少年だけでなく保護者に対しても質問がなされます。
少年の処遇を決定するにあたっては、更生のための環境が整っているかが重視されるため、裁判官は、保護者の姿勢や考え方についても強い関心を持ちます。
もちろん、保護者の回答だけで少年への処分が決まるわけではありませんが、保護者の元で十分な更生が期待できる見込みの有無は、保護観察になるか少年院送致となるかを判断する上での重要な考慮要素となってきます。
そのため、審判で想定される質問とそれに対する答えを、事前に弁護士とよく打ち合わせておくことが重要です。
具体的にどのようなことを聞かれるのかは事件によって異なりますが、次のような質問がよくある例ですので、参考にしてください。
- 保護者からみて、少年はどのような性格ですか
- 少年はふだん、家庭でどのように過ごしていますか
- 今回の非行の原因は、どのようなところにあると考えていますか
- 少年が同じことを繰り返さないために、保護者として何ができますか
少年審判の処分の種類
審判の結果、裁判官が少年に対する処分を決定します。
処分の種類には、次のようなものがあります。
不処分
不処分とは、少年に対して何の処分も科さないことをいいます。
非行事実の存在自体を争ってこれが認められた場合のほか、非行の事実は存在するものの、審判までの過程で少年の問題が解消されたと判断された場合に、不処分決定で事件が終わることもあります。
保護処分
少年に対する処分として中心となるのが、保護処分です。
保護処分は少年の非行を矯正するために下される処分ですが、刑罰ではなく、教育目的の処分とされています。
具体的には、自宅で生活しながら定期的に保護司の面談を受ける「保護観察」や、少年院に入院する「少年院送致」などの処分があります。
また、保護観察と少年院送致のいずれとするかが微妙な事案では、ひとまず保護観察に付して様子を見てから判断する「試験観察」という処分が出ることもあります。
試験観察は、終局的な処分を決定する前の中間的な処分であることから、「中間処分」とも呼ばれます。
検察官送致
事件が悪質であるなど、保護処分よりも刑事罰を科すことが相当と判断された場合は、検察官送致となります。
刑罰を科すためには、正式な刑事裁判の手続きが必要です。
少年審判の場で有罪判決を言い渡すことはできないことから、事件を検察官に送致するという処分を出すのです。
検察官に送致されると、通常の刑事事件と同じように処理されることになります。
少年事件の処分についてのさらに詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
少年の非行が他人に損害を与えるものである場合、保護者は適切な監督を怠ったものとして、被害者に対して民事上の損害賠償責任を負うことがあります。
他方、非行を行ったのはあくまで少年本人ですので、少年審判で保護者に対して何らかの処分が下されるということはありません。
もっとも、保護者は未成年の子供を保護する責任を負っていますし、少年が更生していくための家庭環境を整える点でも、中心的な役割を担うべき存在といえます。
そこで裁判所は、必要があると認めるときは、保護者に対して、訓戒や指導等の「措置」をとることができるものとされています(少年法25条の2)。
措置の具体的な内容としては、少年の監督に関する指導のほか、少年とともに各種の講習に参加することや、親子関係に問題がある場合には親子で社会奉仕活動を行って関係の改善を図るなどの、実践的なものとなっています。
このような措置の規定が設けられているのは、少年にとって保護者が最も身近で影響力の大きい存在であるからに他なりません。
子供が非行少年として少年審判の対象となることは、保護者にとってもショッキングな出来事ではありますが、一緒になって成長する機会と前向きに捉えて、少年の更生を支えていただきたいと思います。
少年審判を弁護士に依頼するメリット
少年審判は刑事裁判ではありませんが、手続きの流れなどの仕組みはこれとかなり似通っています。
また、少年審判では保護処分が科される可能性があり、いくら保護処分が刑罰ではなく教育の手段だといっても、少年院送致などの厳しい処分はできれば避けたいところです。
このようなことから、もし少年審判の対象となりそうであれば、弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼することで、たとえば次のようなメリットがあります。
審判に向けた準備が万全になる
少年審判は、非行少年への処分を決定する手続きです。
少年審判の流れについてはこの記事でご紹介しましたが、文章で読むだけでは、実際の具体的なイメージはなかなか持ちづらいかもしれません。
また、審判の流れ自体はある程度共通であるとしても、事件の内容は千差万別ですので、裁判官がどのような点に注目し、具体的にどのようなことが質問されるのかは、個別の事件によって大きく異なります。
弁護士に相談することで、審判に向けての不安や疑問点を解消することにつながります。
また、事前に弁護士に依頼しておけば、事件や少年の性格などをふまえた上で、当日想定される具体的な問答について打ち合わせた上で審判当日にのぞむことができます。
ネット上の情報収集だけではどうしても限界がありますので、実際に弁護士相談しておくことで、万全の体制で審判の日を迎えることができるのです。
厳しい処分を回避できる可能性が高まる
弁護士に少年審判を依頼することは、厳しい処分の回避にもつながることが期待できます。
付添人に選任された弁護士は、少年に対する働きかけや、周囲の環境調整のような付添人活動を通じて、少年が更生するための基盤を整備します。
このような活動によって再非行のおそれがなくなることを、「要保護性の解消」といいます。
審判で要保護性が解消していると認められると、保護処分をする必要がないため、不処分で審判を終えることができます。
また、仮に要保護性の解消にまでは至っていないと判断される場合でも、更生が期待できる環境がある程度整備されていれば、少年院送致や検察官送致のような厳しい処分ではなく、保護観察処分にとどまることも考えられます。
少年院は教育施設ですので刑務所と同視することはできませんが、一定の間一般の社会から切り離されることに伴う負担は軽くありません。
少しでも少年や周囲の人にとって負担の少ない形で非行から立ち直るためにも、少年審判を弁護士に依頼することは重要な手段のひとつといえるでしょう。
少年審判を依頼するのは刑事事件に強い弁護士が適任
弁護士に少年審判を依頼する場合は、刑事事件に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
少年事件は広い意味では刑事事件の一種ですので、刑事事件のスキルやノウハウが豊富な弁護士に依頼することができれば安心です。
特に少年事件では、ふだん関わることのない弁護士との触れ合いが、少年にとって自身を見つめ直すきっかけとなることも珍しくありません。
その意味でも、少年事件を多く手がけて少年との関わり方を熟知している、専門性の高い弁護士に依頼することがポイントとなってきます。
刑事事件における弁護士選びの重要性について、下記のページをご覧ください。
少年審判のよくあるQ&A
少年審判のときの服装はどんなものがいい?
少年本人は、学校の制服で出席するケースが多くなっています。
保護者については、必ずしもスーツなどの正装である必要はなく、平服でもかまいませんが、あまりにもだらしない格好であると、少年が更生できる家庭環境であるのか、裁判官に不安を与えてしまう可能性があります。
そのことだけで処分が重くなるといったことは基本的にありませんが、一般的な身だしなみとして、常識を踏まえた清潔感のある服装が適しているといえるでしょう。
少年審判の結果通知制度とは何ですか?
通知される内容は主に、少年の氏名や処分の内容及びその理由などです。
審判の日が午前中の場合は少年院になるって本当?
午前中の審判で保護処分が出ることもありますし、逆に午後の審判で少年院送致となることもあります。
審判が長引きそうな事件は午前中に開始する、といった運用がなされている可能性は否定できませんが、審判の時間帯と処分内容については、基本的に無関係とお考えください。
少年審判で刑罰が科されることはある?
審判は裁判所での手続きではあるものの、裁判ではなく、有罪判決を出すことはできません。
刑事罰を科すべきと判断された場合は検察官送致の処分を出しますので、その後の刑事裁判によって刑罰を科される可能性はあります。
まとめ
この記事では少年審判について、目的や特徴、刑事裁判との違いや手続きの流れなどについて解説しました。
記事の要点は、次のとおりです。
・少年審判は、犯罪などの非行を行った少年に対する処分を決めるための手続きである。
・少年審判は一般の刑事事件における刑事裁判と類似しているが、刑事裁判が処罰を目的としているのに対して、少年審判は少年の非行傾向を解消するための矯正教育を目的としている。
・少年審判の対象となるのは、犯罪少年、触法少年及び虞犯少年である。
・少年審判では不処分、保護処分などのほか、刑事処分が相当と判断された場合は、検察官に送致されて刑事裁判に手続きが移行することもある。
・過度に厳しい処分を回避し、良い形で少年の更生を図っていく上では、少年審判は刑事事件に強い弁護士に依頼することが有効である。
当事務所は、刑事事件のご相談の予約に24時間対応しており、LINEなどのオンライン相談を活用することで、全国対応も可能となっています。
まずは、お気軽に当事務所までご相談ください。
なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか