少年院とは?収容されるケース・期間や生活状況を解説

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA
  


少年院とは、保護処分として少年院送致の決定を受けた非行少年を収容するための施設です。

少年院という施設が存在することは有名かと思いますが、何をしたら少年院に入るのか、刑務所と何が違うのかといった詳細や実態となると、あまり知られていないのではないでしょうか。

この記事では少年院に関して、少年院の定義や種類、類似施設との違い、少年院に入る条件や少年院での生活などを弁護士が解説します。

 

少年院とは

少年院とは、保護処分として少年院送致の決定を受けた非行少年等を収容し、矯正教育をするための施設です。

 

根拠条文
(少年院)
第三条 少年院は、次に掲げる者を収容し、これらの者に対し矯正教育その他の必要な処遇を行う施設とする。
一 保護処分の執行を受ける者
二 少年院において懲役又は禁錮の刑(略)の執行を受ける者

引用元:少年院法|電子政府の総合窓口

保護処分というのは、非行少年に対して裁判官が決定する処分であり、少年院送致もその一種です。

少年院は法務省が管轄する非行少年のための矯正教育施設であり、全国に分院を含めて44か所存在します(少年院及び少年鑑別所組織規則別表1、別表2)。

参考:少年院及び少年鑑別所組織規則|電子政府の総合窓口

少年院と刑務所との違い

少年院も刑務所も、ともに犯罪に当たる行為をした人を収容する点では共通しています。

執行猶予や保護観察のように施設外での更生を目指す「社会内処遇」と異なり、実際に身柄が拘束されることから、これらの施設に収容する処分は「施設内処遇」と呼ばれます。

両者は、「犯罪行為をした者を拘束して施設に収容する」という点で似通っていることから、少年院は「刑務所の少年版」のようなものとして捉えられることも多いようです。

しかし、少年向けの刑務所は別途「少年刑務所」が存在しており、少年院は根本的に刑務所と性質が異なるものです。

すなわち、刑務所は犯罪に対する制裁として刑罰を科すための施設であるのに対し、少年院は非行少年を立ち直らせるために矯正教育を施す施設です。

もちろん、刑務所にも教育的な側面はありますし、少年院も広い意味では制裁的な性質も有していますが、ウエイトの置き方が大きく異なります。

後に少年院での生活を詳しくご紹介しますが、少年院は刑務所というより、むしろ全寮制の学校のようなイメージの方が実態に近いといえるでしょう。

刑務所 少年院
対象者 懲役・禁錮の実刑判決を受けた者 保護処分で少年院送致を受けた者
目的 犯罪に対する制裁 非行少年の矯正教育
内容 刑務作業 教育課程

 

 

少年院の種類

第1種から第5種までの少年院

少年院には第1種少年院から第5種少年院までの、5種類が存在しています(少年院法4条1項)。

平成26年の改正によって1種から4種までに再編され、令和3年の改正で5種が追加されています。

参考:少年院法|電子政府の総合窓口

それぞれの詳細は、以下のとおりです。

 

第1種少年院

第1種少年院は、保護処分の執行として入所する施設であり、心身に著しい障害がないおおむね12歳以上23歳未満の少年が入所の対象となります。

かつての初等少年院と中等少年院を統合したものです。

 

第2種少年院

第2種少年院も保護処分の執行として入所する施設であり、心身に著しい障害がない少年が対象ですが、犯罪傾向が進んでいるおおむね16歳以上23歳未満のものが入所の対象となる点で第1種と異なります。

第2種少年院は、従来の特別少年院を改称したものとなります。

 

第3種少年院

第3種少年院も、やはり保護処分の執行として入所する施設ですが、心身に著しい障害があるおおむね12歳以上26歳未満のものが対象となります。

従来の医療少年院であり、精神障害や薬物依存などで専門的な治療が必要な少年が入所します。

 

第4種少年院

第4種少年院は、第3種までと異なり、保護処分ではなく刑の執行を受けるために入所します。

少年受刑者が入所するため、少年刑務所に近い施設ではありますが、位置づけとしてはあくまで刑務所ではなく少年院の一種となります。

 

第5種少年院

第5種少年院は、一度保護観察の処分を受けた特定少年が遵守事項を守らず、社会内での改善が難しいと判断された場合に収容される施設です。

令和3年の改正で特定少年というカテゴリーが設けられたため、新たに創設されました。

種別 対象者 従来の位置づけ
第1種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がないおおむね十二歳以上二十三歳未満のもの 初等少年院と中等少年院を統合したもの
第2種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害がない犯罪的傾向が進んだおおむね十六歳以上二十三歳未満のもの 特別少年院を改称
第3種少年院 保護処分の執行を受ける者であって、心身に著しい障害があるおおむね十二歳以上二十六歳未満のもの 従来の医療少年院
第4種少年院 少年院において刑の執行を受ける者 教育課程
第5種少年院 2年間の保護観察処分を受けた特定少年で、保護観察処分を取り消されたもの 新設

 

女子が入る少年院とは?

女子が入る少年院として、女子専用の少年院が全国に9カ所存在します。

「女子少年院」と一般に呼ばれることもありますが、それぞれの名称は「女子学院」や「女子学園」といったものが多くなっています。

 

少年院と類似した更生施設

少年院と少年鑑別所との違い

少年鑑別所は文字通り、少年の鑑別を行うための施設です。

「鑑別」とは、心理学等を修めた技官などによる面談や行動観察、知能検査などを通じて、少年の性格や特徴を把握し、問題行動の背景にある要因を分析することをいいます。

その結果は少年審判においても参考にされ、少年の処遇決定に大きな影響を与えます。

そして、審判において施設内で更生を図ることが適当と判断されると、実際に少年院に入所することになります。

鑑別を行う際には少年鑑別所に入所しますが、あくまで鑑別の必要のために入所するのであって、少年院のように矯正教育のために収容されるわけではありません。

 

少年院と児童自立支援施設・児童養護施設の違い

少年に対する保護処分として、少年院送致ではなく、児童自立支援施設又は児童養護施設に送致するという処分が出ることがあります(少年法24条1項2号)。

これらはいずれも児童福祉法に基づく施設で、家庭環境に問題のある児童などの支援を行うための施設です。

たとえば、ネグレクトのような環境でほとんど食事を与えられていなかった少年が食べ物を盗んだような事案であれば、少年の犯罪傾向を矯正するというよりも、まず環境の方を整える必要があるといえます。

少年院は初めから犯罪少年の更生を目的とした施設であり、少年法に基づく保護処分によって送致される施設であるのに対し、これらの施設は、保護処分以外のルートによって入所することもあります。

少年院は、刑務所と異なるとはいえ、非行少年を収容する施設として逃亡防止のために施錠管理されていますが、前記の2施設は施錠管理のない開放的な環境で運営されています。

施設を所管するのも、法務省ではなくこども家庭庁となっています。

 

 

何をしたら少年院に入る?

少年院送致は、保護処分の一種です。

他に、保護観察や児童福祉施設への送致といった処分もあり得る中で少年院送致が選択されるということは、それだけ矯正教育の必要性が高いと判断されたことになります。

罪名としては、窃盗や傷害での入所が比較的多くなっていますが、窃盗や傷害事件を起こせば即少年院に送られるということではなく、生活環境や日常の素行、非行の程度などを総合的に見て、少年院での教育が必要と判断された場合に送致されます。

他方で、あまりに重い事件を起こすと、刑事処分が相当と判断されて検察官に逆送されることになります。

少年院に入るケースとしては、逆送致になるような重大事件ではないものの、保護観察のような社会内処遇では十分な更生が図れないケースであるということができます。

 

 

少年院に入るのは何歳から?

犯行時に14歳未満の者については、刑法の規定により刑罰が科されることはありません(刑法41条)。

参考:刑法|電子政府の総合窓口

したがって、14歳未満であれば刑務所に入ることはありません。

しかし、少年院は刑務所と異なり、刑罰としてではなく保護処分によって送致されるため、この限りではありません。

少年法では、特に必要がある場合に限っては、14歳未満の者も少年院に送致できるものとされています(少年法24条1項)。

参考:少年法|電子政府の総合窓口

もっとも、いくら少年院送致が刑罰ではなく保護処分であるといっても、あまりに低年齢の少年であると、少年院での教育内容を十分理解できず矯正の効果を期待できません。

そこで少年院法では、少年院の種別ごとに対象者の年齢を定めており、第1種少年院及び第3種少年院では「おおむね12歳以上」となっています。

「おおむね」が多少の幅を認めているとしても、実務上は10歳程度が収容の下限になってくるのではないかと考えられています。

 

 

少年院に収容される期間はどれくらい?

目安としては、1年が標準期間であり、短ければ6月程度、長ければ2年程度となります。

刑法によって科される刑罰であれば、個々の罪ごとに「6ヶ月以上の懲役」「10年以下の懲役」のように罰則の範囲が定められており、この範囲内で実際に科される刑期が決定されます。

一方、少年院の収容期間は、大きく短期と長期に分けられ、標準の収容期間は長期(1年)となっています。

ただし、家庭裁判所は「処遇に関する勧告」を出すことがあり、少年の非行の程度に応じて、収容の期間を長く、あるいは短くすることができます(少年審判規則38条2項)。

懲役刑は犯罪行為に対する制裁として科されますので、罪が重ければ重いほど、服役期間も長くなります。

一方、少年院に入所する場合は、どのような教育課程を履修すべきかという観点から収容期間が決まってくることになります。

非行傾向が進んでいれば、その分より長期の課程を履修する必要があるため、罪の重さと入所期間はある程度相関しますが、刑罰のように単純に比例するわけではありません。

具体的な収容期間のイメージは、次のとおりです。

処遇 収容期間
短期処遇 特修短期処遇 4ヶ月以内
一般短期処遇 6ヶ月以内
長期処遇 比較的短期 10ヶ月以内
長期(標準期間) 1年程度
比較的長期 2年以内
相当長期 2年を超える期間

 

 

少年院での生活とは?

少年院の一日の流れ

非行少年は夜遊びなどで生活が乱れていることも多く、社会復帰するためには、学生であれ社会人であれ、規則正しい生活習慣を身につけることが重要です。

そこで少年院の生活は、少年が健全な生活習慣を身につけることができるように配慮して組み立てられています。

流れは日によって、また院によって異なりますが、一例としては次のようなイメージになります。

7:00 起床
8:00 朝食
9:00 教育活動
12:00 昼食
13:00 教育活動
17:00 夕食
18:00 事故計画学習
20:00 余暇
21:00 就寝

 

少年院の教育内容

少年院では、社会復帰に向けた矯正教育が実施され、その内容は、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導及び特別活動指導の5つの分野からなります。

生活指導

生活指導は、善良な社会の一員として自立した生活を営むための基礎となる知識及び生活態度を習得させるための指導です。

在院者が特定の事情を抱えている場合は、これを改善するため、次のような特定生活指導が実施されます。

  • 被害者の視点を取り入れた教育
  • 薬物非行防止指導
  • 性非行防止指導
  • 暴力防止指導
  • 家族関係指導
  • 交友関係指導

 

職業指導

職業指導は、勤労意欲を高め、職業上有用な知識及び技能を習得させるための指導です。

実施種目は、電気工事科や自動車整備科、情報処理科や介護福祉系など多岐にわたり、土木・建築や、建設機械運転、フォークリフト運転、危険物取扱者等の資格・免許を取得することもできます。

 

教科指導

教科指導は、いわゆる「学校の勉強」です。

学力に応じて、小学校又は中学校の学習指導要領に準じた教科指導が行われ、高等学校への編入を目指すこともできます。

 

体育指導

体育指導は、体力の向上のための指導であり、スポーツ活動を通して、基礎体力の向上のほか、ルールを守る意識や協調性を身につけることが目指されています。

 

特別活動指導

特別活動指導は自主性を養うための活動で、クラブ活動や社会貢献活動などが実施されます。

 

少年院での食事

少年院の一日の流れでご覧いただいたとおり、少年院では1日3食が提供されます。

きちんとした食事を摂って生活リズムを整えることも、更生を図る上では軽視できませんので、少年院では、カロリーや栄養バランスを考えた食事が提供されています。

 

少年院での服装や髪型

服装や髪型などの身だしなみを適切に保つことも、社会の一員として生活していく上で重要なことです。

一般の学校に制服や髪型に関する校則があるように、少年院でもこれらについての決まりがあります。

少年院での服装は、動きやすい作業着のようなものが支給されます。

髪型については、法務大臣が定めるものとされています(少年院法施行規則31条1項5号)。

参考:少年院法施行規則|電子政府の総合窓口

具体的には、男子は丸坊主又はスポーツ刈りとされていますが、運用として一律丸坊主としている院も存在します(在院者の保健衛生及び医療に関する訓令6条1⑴)。

参考:在院者の保健衛生及び医療に関する訓令

一方、女子の髪型は、「華美にわたることなく、清楚な髪型」とされ、カラーやパーマは認められませんが、適切に結ぶなど規則に従っていれば、長髪も認められます。

 

少年院での面会や差し入れ

少年院での面会は、親族や、更生に関係する人物(学校の教員や勤務先の社長など)に限られます(少年院法92条)。

友人や恋人などの面会は、原則として認められません。

参考:少年院法|電子政府の総合窓口

差し入れについては、少年院の規律等を害さず、矯正教育の適切な実施に支障を及ぼすおそれがない場合は、現金や物品を差し入れることができます(少年院法66条1項、2項)。

また、少年院内では「自弁」といって、自分のお金を使って食料品や日用品等を購入することもできます(少年院法61条)。

物品の差し入れについては、ものによって差し入れが認められたり認められなかったりということもありますので、何を差し入れてよいか分からない場合は、とりあえず自弁のための金銭を差し入れておくと良いでしょう。

 

 

少年院はやばい?問題点とは?

少年院は必ずしも実態が広く知られておらず、なんとなく「やばいところ」というイメージを持たれていることも多いです。

ここまで解説したとおり、少年院は刑務所というよりは全寮制の学校のようなもので、厳しい規律の中で学力や職業的技能、社会性などを身につけられる環境であり、怖いところではありません。

ただし、少年院にもいくつか特有の問題があるのも事実です。

せっかくの更生の機会を最大限に活かすためにも、少年院の問題点を把握しておくことも重要です。

悪風感染

少年院は非行少年を収容する施設ですので、当然ながら周囲の入所者は全員非行少年です。

それも、保護観察のような社会内での処遇は十分な改善が見込めないと判断されており、非行の傾向がそれなりに進んだ少年が多いと考えられます。

そのような環境で、共に支え合って更生を図れればよいのですが、残念なことに、かえってお互いに悪事を教え合うというケースが見られます。

これを、悪い風習を身につけるという意味で「悪風感染」ということがあります。

「朱に交われば赤くなる」ということわざもあるとおり、少年院においては、特に慎重に人間関係を構築する必要があるのです。

 

少年院でのいじめ

少年院では、いじめが起こることもあります。

少年院は、ある程度非行傾向が進んだ少年の集まりであることや、24時間共同生活を送るという人間関係の濃密さなど、いじめの起きやすい要素が重なっていると言えます。

また、少年同士のいじめにとどまらず、教官からの「しごき」という形のいじめが起こることもあります。

教官は、少年院内の秩序を維持し、少年たちの非行傾向を矯正するため、少年に対し厳しい態度で臨みます。

そのこと自体は必ずしも悪いことではありませんが、少年院という閉鎖された空間において、時にその厳しさが暴走し、少年に対して暴力が振るわれることがあります。

そのような行為は「特別公務員暴行陵虐罪」という犯罪に当たるのですが、少年の方でその事に気づかず、あるいは当然のものとして受け入れてしまい、発覚が遅れることもあります。

少年が適切にSOSを発信できるよう、注意深く声に耳を傾けることが重要といえるでしょう。

 

 

まとめ

この記事では少年院に関して、少年院の定義や種類、類似施設との違い、少年院に入る条件や少年院での生活などを解説しました。

少年院は非行少年のための矯正教育施設であり、処罰ではなく教育を目的としている点で刑務所と異なります。

また、少年院では非行傾向を矯正するための教育を受けることができますが、いじめや悪風感染などの問題点もあるため注意する必要がああります。

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