検察庁からの呼び出し|呼び出される理由や対応法
検察庁から呼び出される理由としては、①事件について検察官が取り調べを行いたいと考えている、②検察官が起訴・不起訴の判断を被疑者に伝えようと考えている、の2点が考えられます。
検察庁から呼び出しがあって不安に感じていらっしゃる方は多いです。
または、随分前に警察で取調べが行われたのに、その後検察庁から呼び出しがなく、不安定な状態が継続している方もいらっしゃいます。
このページでは、検察庁からどのようにして呼び出されるのか、なぜ呼び出しの連絡がなかなか来ないのか、呼び出されたときの対応方法や注意点などについて、弁護士が詳しく解説します。
検察庁から呼び出される理由は?
取調べを受ける場合
検察庁から呼び出しを受ける理由の1つ目として考えられるのは、事件について検察官が取り調べを行いたいと考えていることです。
警察での取り調べで不十分な点が見つかったり、検察官が直接確認しておくべき重要な点があったりすると、検察官による取り調べが実施されることがあります。
実際にはほとんどの事件で検察官による取り調べが行われているように感じます。
被疑者が犯行を認めている事件で、検察官が最終確認のために取り調べを実施するような場合であれば、起訴するか否かの判断は固まっている場合もありますが、犯罪の成立が微妙な事件や被疑者が犯行を認めていないような事件であれば、取り調べの内容に応じて、起訴するかどうかを決定しようと考えている場合があります。
そのため、取り調べを行うという理由だけで呼び出されている場合には、「呼び出し=起訴される」というわけではありません。
弁護士と打ち合わせを行った上で、取り調べに臨むようにしましょう。
起訴、不起訴の判断を伝えようと考えている場合
検察庁から呼び出しを受ける理由として次に考えられるのは、検察官が起訴・不起訴の判断を被疑者に伝えようと考えていることです。
こちらは、主に被疑者が犯行を認めている場合に多い理由になります。
被疑者が犯行を認めており、検察官が罰金刑相当であると判断した場合、略式手続という簡易な手続きを利用することがあります。
略式手続は公開の法廷で裁判を受けることなく書類上の手続きのみで判決を出してもらう手続きです。
この手続きを利用する場合、憲法で保障されている公開の法廷で裁判を受ける権利を放棄してもらうことになりますから、被疑者に略式手続の同意書を書いてもらう必要があります。
そのため、被疑者を呼び出して略式手続の説明を行い、同意書を書いてもらうために呼び出すということがよくあるのです。
また、被疑者が犯行を認めていて示談が出来ているような事件では、検察官が不起訴にしても構わないと判断してくれることがあります。
そのような場合、何ら呼び出しもなく不起訴処分が決定することもありますが、検察官によっては直接取り調べを行い、反省していることを確かめた上で、直接不起訴処分を言い渡し、決して再犯をしないように念を押す検察官もいます。
以上のように、検察庁から呼び出しを受けたとしても、その理由は1つではありません。
呼び出しを受けた段階では、起訴・不起訴の判断がどのようになるかを予想することはなかなか難しいでしょう。
もっとも、刑事事件を数多く取り扱っている弁護士であれば、それまでの弁護活動の結果や事件の性質等を踏まえて、検察官の判断をある程度予測することは可能かもしれません。
検察庁からの呼び出しの方法や、期間は?
呼び出し方法
電話
検察庁から電話がかかってきて呼び出しを受けるというケースがあります。
このような場合、電話で日時や場所、持参物等について伝えられることになりますので、忘れないようにメモを取っておいてください。
なお、この電話のときに検察官に色々と事件のことについて聞きたくなることでしょう。
しかしながら、処分結果や証拠関係など事件に関係することについては、残念ながら何も答えてもらえないと思いますので、あまり回答に期待はしないようにしましょう。
手紙
検察庁から自宅宛に出頭要請の手紙が届くという呼び出し方法もあります。
こちらの呼び出し方法の場合、手元に検察庁の場所や取り調べ予定の日時が記載されていますので、その手紙さえ失くさなければ問題ありません。
連絡先も合わせて記載されているはずですので、何か取り調べに関して分からないことや日程の変更希望等があれば、電話で問い合わせましょう。
呼び出しがあるまでの期間
警察で最後の取り調べを受けた際に、「あとは検察庁から呼び出しがあると思う。」とだけ伝えられ、それから一向に連絡が来ず不安に思うという方もいらっしゃると思います。
警察で最後の取り調べを受けてから、検察庁の呼び出しがあるまでどのくらいの期間がかかるかは個々の事件によって全く異なります。
事件を担当する検察官が身柄事件(逮捕・勾留をしている事件)を多く抱えている場合、そちらの事件処理を優先する必要がありますから、必然的に呼び出しが来るまでには時間がかかってしまいます。
場合によっては、警察の取り調べから数か月先になって初めて呼び出しを受けるということもあるでしょう。
他方、警察から検察庁への事件の送致がスムーズに行われ、検察官の時間に余裕があれば、1か月程度で呼び出しを受けることになるでしょう。
呼び出しは何回くらい?
犯行を認めており、証拠も十分に揃っている事件であれば、取り調べを1回行なうだけで処分を決定することが出来ますから、呼び出しも1回で済むことがほとんどです。
一方、犯行を否認している事件であれば、否認している箇所の言い分を詳しく聞いて証拠と擦り合わせる必要がありますので、聞くべきことも多くなります。
また、犯行を認めていたとしても、被害者と言い分が食い違っているような場合は、どちらの供述が正しいのか、勘違い等はないかを確かめるために何度も取り調べを行わなければならないこともあります。
このような場合は、結果として何度も呼び出しを受けるということがあり得ます。
証拠が揃っているか、被害者と供述が一致しているかは被疑者側では確かめられない場合がほとんどですから、複数回呼ばれる可能性は十分にあると考えておくのが無難かもしれません。
検察庁からの呼び出しがなかなか来ない!理由は?
警察での取り調べが終わってからかなり時間が経ったはずなのに呼び出しが一切ないとなれば、不安に思われることでしょう。
呼び出しがない理由には一体どういったものが考えられるでしょうか。
実際に呼び出しが遅い事件において、弁護士が検察官に問い合わせを行ったときには以下のような回答がなされることがあります。
先に送致された別の事件がまだ終わっていない
既に解説したとおり、事件を担当する検察官の都合によって呼び出しが来るまでの期間にはかなりの違いがあります。
呼び出しがなかなか来ない理由として第一に考えられるのは、単純に担当検察官が多忙であり、事件処理の順番待ちの状態であるということです。
基本的に逮捕・勾留を行なっている身柄事件が優先的に処理され、その他の在宅事件は重さが同じくらいであれば先に送致されてきた方から処理されていきます。
この場合、弁護士からある程度急かすことで優先的に処理してもらえる可能性もありますが、本当に多忙である場合は待つしかないということも多々あります。
証拠の収集に時間がかかっている
検察官が証拠を検討した結果、被疑者の取り調べよりも前に収集するべき証拠がまだ残っていることが発覚したような場合も、なかなか呼び出しが来ないということが起こり得ます。
犯行を否認している場合には、被疑者の言い分を裏付ける若しくは否定する証拠がないか、慎重に調べられます。
その結果、警察の取り調べから数か月経過した後にようやく検察庁からの呼び出しが来るということになってしまいます。
また、このようなケースの場合、取り調べ回数も複数回必要となることも想定されますので、最終的な処分の決定まではかなり時間がかかるかもしれません。
不起訴処分となっていた
弁護士や被疑者本人から問い合わせを行わない限り、検察官は不起訴処分としたことを報告する義務を負っていません。
弁護士がついているケースでは、弁護士が定期的に検察官に進捗を確認しますので、不起訴処分となった場合には比較的早く処分結果を知ることができますが、弁護士をつけていないケースだと知らないうちに不起訴となっていたということが起こり得ます。
検察官が呼び出しを1回も行わないまま不起訴処分とすることはそこまで多くはありませんが、あまりにも長期間呼び出しがないという場合は、一度検察庁に処分結果の確認を入れてみてはどうでしょうか。
検察庁から呼び出された時の対応方法
取り調べの注意点は?
検察庁から呼び出しを受けた場合、取り調べに向けて何をすればいいのか悩まれる方もいらっしゃるでしょう。
基本的には警察における取り調べと同じように振る舞えば問題ありませんが、警察での取り調べで事実と異なる供述調書にサインさせられてしまったときは、そのことをきちんと検察官に伝えましょう。
服装も、あまりにもだらしない格好でなければスーツ以外でも構いません。
印鑑は持参した方が良いですか?
持参物についても呼び出しの際に検察庁から教えてもらえると思いますので、言われなかった物は持っていかなくても大丈夫です。
基本的には身分を証明するものと印鑑を持参しておけば十分でしょう。
弁護士にはいつ相談するべき?
検察官は、取り調べが終わったタイミングでどのような処分にするかをほとんど決めていることがあります。
取り調べが終わった後に弁護士に相談したとしても、もう処分が決定しているために、弁護士ができることが残されていないということになりかねません。
そのため、示談交渉が考えられる事案であれば、呼び出しに応じる前に弁護士に相談し、少しだけでも示談交渉の時間をもらえないか、検察官にお願いすることをお勧めします。
示談が成立すれば処分結果が変わる可能性がある事案であれば、検察官も多少待ってくれることが多いですから、呼び出しが来た後であっても諦めずに弁護士に相談されてください。
よくある質問
検察庁からの呼び出しを無視するとどうなりますか?
検察庁からの呼び出しは、あくまでも任意での取り調べを行いたいというものですから、応じる義務があるわけではありませんので、参考人として話を聞きたいというような呼び出しであれば無視しても構いません。
しかしながら、被疑者という立場で呼び出しを受けている場合に限っては、呼び出しを無視することはお勧めしません。
なぜなら、呼び出しを無視したことで逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが高くなったという理由で、逮捕・勾留といった身体拘束に踏み切られる可能性が残っているからです。
身体拘束の手続きは最長23日間続きますから、被疑者が呼び出しを無視し続けることのリスクは高いといえます。
被疑者の立場であれば、呼び出しには応じておきましょう。
任意出頭に応じる義務があるかについて、詳しくはこちらもご覧ください。
呼び出された日の都合が悪い場合変更できますか?
急な呼び出しで仕事を休むことが難しかったり、どうしてもずらすことが出来ない予定が入っていたりという場合もあることでしょう。
そのような場合は、呼び出しを受けた日に出頭できない理由を説明し、代替日を提案するなどの対応をすれば問題ありません。
多少の日程変更であれば可能ですから、何の連絡も入れずに呼び出しに応じないということはやめておきましょう。
取り調べで黙秘権はありますか?
被疑者という立場で呼び出しを受けているのであれば、検察官の取り調べにおいても当然黙秘権があります。
そのため、答えたくないことであれば答える必要はありませんが、犯罪の立証が十分に行えるだけの証拠が揃っている場合、黙秘権を行使することは効果的ではありません。
むしろ反省していないのではないかと考えられ、処分決定において不利になることもあります。
黙秘権を行使するかどうかは、弁護士に相談した上で決めていくとよいでしょう。
供述調書にサインを求められたらサインするべきですか?
検察官の取り調べにおいても、取り調べの内容をまとめた供述調書を作成することになりますが、必ずサインをしなければならないというわけではありません。
読み聞かせられた供述調書の内容が事実に反していたり、重要な事実が抜け落ちていたりといった場合には絶対にサインをしてはいけません。
検察官が作成した供述調書は裁判において証拠として利用されることが多く、裁判の場で供述調書の内容が間違っていると主張したとしても、その主張はほとんど認められません。
そのため、犯行を認めており、なおかつ供述調書の記載に一切不満がないという場合にのみサインをするというくらいの心構えでいいのではないでしょうか。
まとめ
検察庁から呼び出しを受けた場合の対応についての解説は以上になります。
検察庁から呼び出しが来るということは起訴前の手続きが最終段階に入っていることを意味しますが、弁護士が介入することによって結果に影響を与えることができる可能性も残っています。
もしも検察庁から呼び出しを受けた段階でまだ弁護士に相談していないという方がいらっしゃれば、一度刑事事件を多数取り扱っている弁護士に相談されてはいかがでしょうか。