大麻事件の弁護士費用は?相場や弁護士選びのポイントを解説!

大麻取締法違反とは何か

大麻は、覚せい剤と同様に薬物犯として分類されます。

被害者がおらず、大麻が合法とされている国もあることから、罪悪感なしに大麻取締法に違反する人が大勢います。

大麻取締法は、大麻の栽培・輸出入について、7年以下の懲役に処すると定めており(大麻取締法第24条1項)、営利目的の場合は10年以下の懲役、又は情状によって300万円以下の罰金も併科されます(大麻取締法第24条2項)。

また、大麻の所持・譲り受け・譲渡しについては、5年以下の懲役に処することとされており(大麻取締法24条の2第1項)、営利目的での所持等については、7年以下の懲役又は情状によって200万円以下の罰金が併科されます(大麻取締法24条の2第2項)

なお、使用は処罰対象から外されていますが、使用の前に所持や譲り受け等の行為があることが大半であり、多くの場合その点を捉えて大麻取締法違反とされます。

使っただけだから大麻取締法には反していないという主張は現実的に認められない可能性が高いといえます。

【 根拠条文 】
第24条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦もしくは外国に輸入し、又は本邦もしくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役および三百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。
第24条の2 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

引用:大麻取締法|e-Gov法令検索

大麻で逮捕された場合の詳細は、こちらをご覧ください。

 

 

大麻事件の弁護士費用の相場

大麻事件で弁護士に依頼した場合、事件の性質により額が変わるため幅がありますが、総額ではおよそ20万円から100万円程度の費用がかかることが予想されます

弁護士費用の内訳は?

弁護士費用の内訳は次のとおりです。

項目 内容
着手金 依頼時に支払う金銭
報酬金 終了時に出来高に応じて支払う金銭
実費 事件処理のために必要となる実費費用
例:切手代、交通費など
預り金 事件処理のために今後必要となる見込みの費用で事前に預かる場合に支払う金銭
例:保釈金を弁護士を通じて支払う場合

 

弁護士費用は法律事務所によって異なる

弁護士の費用については、現在は自由化されているため、法律事務所によって異なります。

しかし、弁護士費用が自由化される前、弁護士会において、報酬基準(旧報酬基準といいます。)が示されていました。

したがって、現在も旧報酬基準をそのまま踏襲している法律事務所は多いと思われます。

以下、弁護士費用の相場の参考として、旧報酬基準をご紹介します。

 

起訴前及び起訴後(第一審及び上訴審をいう。以下同じ)の事案簡明な刑事事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
着手金 それぞれ20万円から50万円の範囲内の額
報酬金 起訴前 不起訴 20万円から50万円の範囲内の額
求略式命令 上記の額を超えない額
起訴後 刑の執行猶予 20万円から50万円の範囲内の額
求刑された刑が軽減された場合 上記の額を超えない額

 

起訴前及び起訴後の1以外の事件及び再審事件
報酬の種類 弁護士報酬の額
着手金 それぞれ20万円から50万円の範囲内額の一定額以上
報酬金 起訴前 不起訴 それぞれ20万円から50万円の範囲内額の一定額以上
求略式命令 それぞれ20万円から50万円の範囲内額の一定額以上
起訴後 無罪 50万円を最低額とする一定額以上
刑の執行猶予 20万円から50万円の範囲内額の一定額以上
求刑された刑が軽減された場合 軽減の程度による相当額
検察官上訴が棄却された場合 20万円から50万円の範囲内額の一定額以上

旧報酬基準は、事案簡明な刑事事件とそれ以外の刑事事件とで着手金が異なります。

これは、弁護士の労力がまったく異なるからです。

また、報酬金についても、その出来高(成功の度合い)に応じて、かなり幅があることがわかります。

では、この基準を大麻事件に当てはめるとどうなるでしょうか?

以下、ケース別でシミュレーションしたいと思います。

※いずれも事案簡明な事件を前提としています。

【 捜査段階 】

不起訴を獲得できた場合

着手金 報酬金 合計
20万円から50万円 20万円から50万円 40万円から100万円

 

不起訴を獲得できず、起訴されてしまった場合

着手金 報酬金 合計
20万円から50万円 0円 20万円から50万円

 

 

【 裁判段階 】

起訴後に刑事裁判を依頼し、執行猶予を獲得できた場合

着手金 報酬金 合計
20万円から50万円 20万円から50万円 40万円から100万円

 

起訴後に刑事裁判を依頼し、執行猶予や減刑を獲得できなかった場合

着手金 報酬金 合計
20万円から50万円 0円 20万円から50万円

 

以上から、旧報酬基準を前提とした場合、概ね20万円から100万円の幅になることがわかります

実際にどの程度の弁護士費用となるかは、依頼される内容(捜査段階の弁護活動のみか起訴後の訴訟活動まで含むか)、成果(不起訴や執行猶予の獲得の有無等)で異なります

したがって、弁護士費用については、ご相談時にお見積りを出してもらうようにお願いされると良いでしょう。

明朗会計の法律事務所の場合、お見積りをお願いすると、見積書を用意して渡しくれると思われます。

あわせて読みたい
お見積書について

 

 

大麻事件は弁護士費用以外にもお金がかかる

弁護士に事件処理を依頼した場合上記の費用がかかってきますが、大麻事件の場合、それ以外にも下記の費用が発生する可能性があります。

保釈金

保釈を請求する場合、保釈金を納める必要があります。

保釈は、勾留中の容疑者が起訴された場合に、その身柄拘束を一時的に解くための制度です。

勾留とは、逮捕に続く容疑者の身体拘束を指します。

起訴前の勾留は最長でも20日間という期間の制約があるのに対し、起訴された場合の勾留は判決が出るまで継続し、軽微事案でも2~3か月程度は拘束されます。

そこで起訴後の勾留については、逃亡のおそれがないなどの要件はあるものの、保釈金を納付することで勾留を解く保釈という制度が設けられています。

保釈金は、判決まで逃亡することなく出廷していれば、最終的には返還されます

逆にいうと、保釈金は逃亡すると没収されるものであり、容疑者の身体拘束を解いても逃亡することなく出廷させるための保証金としての性質をもちます。

保釈金は逃亡抑止を目的に納付させるものですから、容疑者にとって「没収されると困る」額である必要があります。

保釈金の具体的な金額は容疑者の資力を考慮して決定されるため、実際にいくらをおさめるのかは、保釈を決定する裁判官の判断が出るまで確定しません。

もっとも、容疑者が無資力に近い場合でも実務上150万円程度は求められることが多く、このあたりが保釈金の下限の金額となってきます。

逃亡せずに出廷していれば最終的には返還されるものであるため、厳密には費用とは異なりますが、保釈を請求する場合、少なくとも一時的には用意する必要のある金銭といえます。

 

治療費やカウンセリング費用

大麻は依存性のある違法薬物ですので、事件の処理費用とは別に、依存症を治療するための治療費やカウンセリング費用を要する場合があります。

常習者でなければ必ずしもこのような治療までは必要ないかもしれませんが、専門的な治療を受けることで依存症を克服でき、更生へとつながります。

また、このような治療を受けているという事情が考慮されて、起訴猶予や執行猶予といった有利な処分で終わることも考えられます

依存が重度の場合だけでなく、刑事処分としてはできるだけ軽く済ませた上で、社会生活を送るなかで更生を図っていきたいという場合にも、積極的に利用を検討されるとよいでしょう。

 

 

大麻事件の弁護活動の流れ

大麻で逮捕された場合、事件は次のような流れで進行します。

事件の流れに沿って、弁護活動のポイントを解説します。

①逮捕
逮捕されると身柄が拘束され、48時間以内に検察庁に送検されます。
②送検
容疑者の送致を受けた検察官は、24時間以内に容疑者の勾留を請求するか判断します。
③勾留
勾留されると、10日間にわたって身柄の拘束が続きます。また、10日間を上限に勾留延長される可能性があります(最大で20日間の拘束)
④起訴
起訴とは刑事裁判にかけられることを意味します。起訴前の勾留は最長でも20日間でしたが、起訴された場合、保釈されない限り、判決まで勾留が続くことになります。
⑤判決

 

逮捕

突然逮捕され、警察でどのように供述すべきかを含め、適切な対応や事件の流れがわからず、不安な方がほとんどかと思います。

早期に弁護士に相談することで、取り調べへの対応、今後の事件の流れ、処分の見込みなどについて的確な助言が得られ、不安を解消することができます。

 

勾留

勾留の決定に対しては、「準抗告」という不服申し立てが可能です。

認容率は高いとはいえませんが、身体拘束による不利益が大きい場合には申し立てる価値があるでしょう。

勾留は延長を含めても最長で20日間であるため、準抗告の申し立ては時間との勝負になってきます。

刑事事件の処理に慣れている弁護士に依頼することで、速やかな申し立てが期待できるでしょう。

また、弁護士に依頼しておけば、仮に勾留が続くとしても、接見を通して捜査の状況を伝えて適宜助言を得ることが可能となってきます。

 

起訴

起訴されるかどうかは、事件の大きな分かれ目のひとつです。

刑事事件では、起訴されれば99.9パーセントの割合で有罪判決となるのに対し、不起訴になれば前科も付きません

弁護士であれば、検察官に対し不起訴とするよう働きかけるといった弁護活動が可能です。

身元引受人の存在や治療の状況などを弁護士が説明し、刑事処分を科すことなく更生可能であると検察官にわかってもらうことで、不起訴処分となる可能性がいっそう高まります。

 

判決

以上のような弁護活動にもかかわらず起訴された場合、検察官としては不起訴では済ませられない悪質な事案と見ているといえます。

そのような事案で寛大な判決を得るためには、法廷での弁護活動が重要となってきます。

上記のとおり、起訴されると99.9パーセントの確率で有罪となることは避けられないのですが、おなじ有罪判決でも、実刑判決と執行猶予判決では天と地ほどの差があります

実刑判決であれば判決で宣告された期間は刑務所で実際に服役しなければならないのに対し、執行猶予付きの判決になれば、ひとまず服役は猶予されるからです。

早期に弁護士に依頼していれば、弁護士の方でも犯行の詳細や容疑者の生活環境を細かく把握できているでしょうから、充実した弁護活動が可能となります。

弁護活動を通して実際に執行猶予判決を得た事例については、こちらをご覧ください。

 

 

大麻事件で良い弁護士を選ぶポイント

大麻事件を弁護士に依頼することの重要性はご理解いただけたかと思います。

以上のような弁護活動を適切に遂行し、依頼者にとって有利な処分を勝ち取ってくれる弁護士は、どのようにして選べばよいでしょうか。

大麻事件での弁護士選びのポイントは、専門性です

弁護士はみな法律の専門家ですが、その仕事の幅は広く、それぞれの弁護士によって得意とする分野は異なってきます。

事件の見通しを正確に立てて、それぞれの段階で適切な弁護活動を行うためには、刑事事件を多数取り扱った経験があると有利です。

また、勾留決定に対する準抗告申し立てや、不起訴処分の獲得に向けた弁護活動など、刑事事件では、迅速な対応が必要となってくる場面もあります。

刑事事件に注力している弁護士であれば、迅速な弁護活動の重要性を理解しているでしょうから、専門性の観点から弁護士を選ぶことで、迅速性のある弁護士選びにもつながるでしょう

そして迅速対応のためには、弁護士側の機動性もさることながら、依頼者の方でできる限り早期に弁護士に依頼することも重要となってきます。

上記の弁護活動の流れでお分かりいただけるとおり、事件の手続きが後半に進むにしたがって、弁護士の弁護活動の幅がせまくなってくるのです。

早い段階で依頼いただくことで、弁護士にとっても弁護活動をより充実させることが可能となりますので、結果的に依頼者の方の利益にもつながります。

 

 

まとめ

この記事では、大麻事件における弁護活動や、弁護士の選び方について解説しました。

最後にもう一度、記事の要点をまとめます。

  • 大麻取締法では、栽培、輸出入、所持、譲受け、譲渡などが処罰対象とされている。
  • 大麻事件の弁護士費用は100万円程度であり、内訳は相談料、着手金、報酬金、日当や実費などである。
  • 弁護士費用のほか、保釈金や治療費・カウンセリング費用などを要する場合もある。
  • 大麻事件はでは、適切な弁護活動を通して、不起訴処分や執行猶予付き判決などを獲得できる可能性がある。
  • 不起訴処分や執行猶予付き判決を得るためには、刑事事件の処理を得意とする弁護士に早期に相談することが重要である。


なぜ刑事事件では弁護士選びが重要なのか

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