詐欺で逮捕|逮捕の条件・その後の流れ・逮捕されないポイントを解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー


詐欺罪とは、刑法第246条に定義されており、を「欺いて」金銭などの財物を交付させた場合あるいは財産上不法の利益を得た場合に成立します

この記事でわかること

  • 詐欺罪がどのような犯罪であるか
  • 詐欺罪で逮捕される条件
  • 詐欺罪で逮捕・勾留される確率
  • 詐欺罪で逮捕された場合の手続きの流れ
  • 逮捕・勾留されると職場などへの発覚のリスクが高い
  • 有罪となる場合の刑の内容・重さ
  • 詐欺罪での逮捕・勾留を防ぐ手段

詐欺はどのような犯罪?

詐欺罪については、刑法第246条に規定されています。

詐欺罪
(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

引用元:刑法|e-Gov法令検索

詐欺罪は、人を「欺いて」金銭などの財物を交付させた場合(1項)あるいは財産上不法の利益を得た場合(2項)に成立します。

判例によれば、人を「欺く」(欺罔行為)とは、被害者にとって「交付その他の財産の処分の基礎となり得るような重要な事項」に関する錯誤を生じさせうる行為と説明されます。

以上のような事実関係からすれば、搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して本件係員らに対してその搭乗券の交付を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これによりその交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかである。

引用元:裁判所ホームページ

要するに、被害者が真実を知っていればお金や財物を渡したりしないような、重要な事実について嘘をつくなどして被害者を騙すことが該当するものとご理解ください。

上記の判例の事案では、真実は他国への不法入国を考えている中国人が飛行機に乗る計画であったにも関わらず、あたかも搭乗券の発行を受けた本人が飛行機に乗るかのように嘘をついて、中国人の身代わりとなって飛行機の搭乗券の発行を受けたという行為につき、詐欺罪が成立するかどうかが争われました。

この判例では、飛行機に誰を乗せるかという事実は安全管理等の観点から航空会社にとって極めて重要であり、別人が乗るとわかっていれば搭乗券を発行することはなかったとして、詐欺罪の成立を認めています。

詐欺罪の法定刑は、「10年以下の懲役」となっています。

罰金刑などは定められていないことから、略式起訴による簡素な手続を使用することはできず、検察官が処罰を与えるのが相当であると判断した場合は、必ず公判請求(刑事裁判にかけること)されることになります。

詐欺罪について、詳細はこちらをご覧ください。

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詐欺について

 

 

詐欺で逮捕される場合とは?

逮捕される法律上の条件

捜査機関が人を逮捕するには、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逮捕の必要性」が認められる必要があります(刑訴法第199条第1項・第2項)。

第百九十九条

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。…(以下略)

② 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、…(略)前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

(以下略)

引用元:刑法|e-Gov法令検索

①罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由

「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」とは、客観的な証拠に基づき、罪を犯した合理的な疑いがあることをいいます。

②逮捕の必要性

逮捕のもう一つの条件として、逮捕の必要性が認められることが挙げられます(刑事訴訟規則143条の3)。

(明らかに逮捕の必要がない場合)

第百四十三条の三

逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

逮捕の必要性とは、逃亡又は罪証隠滅のおそれがあるため、身体の拘束が相当であるといえることを指します。

仮に、被疑者について「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が認められる場合であっても、「被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情」を踏まえ、「被疑者が逃亡する虞(おそれ)」も「罪証を隠滅する虞(おそれ)」もない場合は、被疑者を逮捕することはできません。

逮捕について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

詐欺で逮捕される確率

では、詐欺にあたる行為を行ってしまった場合に、逮捕される可能性はどの程度あるのでしょうか。

令和3年度犯罪白書によれば、令和2年に検察庁にて認知された詐欺事件は1万3364件であり、このうち逮捕された者の数は全部で7451名でした。

これらの数字を前提とすると、詐欺罪で逮捕される確率(身柄率)は54.9%ということになります。

詐欺で逮捕される確率

また、逮捕された後に検察官が勾留請求を行う割合は、逮捕者の99.3%に上ります。

逮捕された者のうち、実際に勾留された者は、逮捕された7451人中7239人であるというデータが残っています。

そのため、詐欺で逮捕された上で勾留される確率は約97.15%に上ります。

詐欺で逮捕された上で勾留される確率

引用元:令和3年犯罪白書

 

実際に逮捕されるケースとは?

詐欺罪は、そもそも逮捕されてしまう可能性が高い類型の犯罪です。

しかしながら、お金がないにもかかわらず、支払能力があると偽って食事やサービスの提供を受けるなどの単純な類型の詐欺行為については、逮捕を回避できるか、逮捕されたとしても勾留まではされずに在宅での捜査となるケースもあるようです。

一般論としては、詐欺による被害額が高額である場合や、振り込め詐欺などを行う組織に所属して協力しながら詐欺行為を行なっており、共犯者が複数存在するなどの場合は、犯罪行為の悪質性が高く、共犯者間での口裏合わせや証拠隠滅の可能性が高いと判断され、逮捕・勾留される可能性が高まると考えられます。

特に、振り込め詐欺の受け子(お金を取りに行く役割)については、被害者が騙されたふりをするなど、捜査機関が被害者と協力して犯人をおびき出し、被害者からお金を受け取った瞬間に、詐欺罪の現行犯として逮捕されるケースもあります。

 

 

詐欺で逮捕された場合の手続きの流れ

詐欺で逮捕されてしまった場合、まずは警察署内の留置施設に収容されます。

その後、警察から検察庁に対し、48時間以内に詐欺事件について送致がなされます。

検察官は、送致を受けてから24時間以内に被疑者を勾留するかどうか判断します。

詐欺事件の場合、事案の内容にもよりますが、特に組織的な詐欺行為が行われていた場合などは、捜査機関による全容の解明に相当な時間がかかる可能性が高いといえるでしょう。

そのため、捜査中の逃亡・証拠隠滅を防ぐため、高い確率で検察官から勾留請求がなされることになります。

検察官からの勾留請求を裁判所が認めた場合、最長で20日間にわたって警察署内で留置されることになります。

ですので、逮捕の期間である72時間(3日間)と合わせ、最長で23日間、警察署内の留置施設で過ごさなければならなくなる可能性があります。

捜査の結果、被疑者が罪を犯したことを立証できるだけの十分な証拠が揃ったと検察官が判断した場合は、当該事件について起訴され、刑事裁判が開かれることになります。

詐欺罪の場合、法定刑は「10年以下の懲役」のみであり、罰金刑が定められていません。

そのため、略式起訴によって簡易な手続で事件を終結させることはできませんので、起訴されることを回避できなければ、裁判所において刑事裁判が開かれることになります。

刑事裁判を受け、手続の中で言い渡された判決が確定すれば、判決内容どおりの刑を受けることになります。

 

 

詐欺で逮捕された場合のリスク

家族や職場に知られてしまう

既に見たとおり、詐欺罪の容疑で逮捕されてしまうと、高い確率で勾留されることになります。

勾留を回避できれば、逮捕の期間である3日間で釈放されますが、勾留決定がなされると、上述したとおり、最長で23日間にわたって身体拘束を受けることになります。

そして、事案の内容にもよりますが、特に組織的な詐欺行為が行われていた場合などは、捜査機関による全容の解明にかなりの時間がかかることが予想されます。

また、例えば逮捕されたのが詐欺グループの一人に過ぎないのであれば、他にも共犯者が多数存在しており、共犯者についてはまだ逮捕されていない可能性もあります。

そのような場合に、逮捕した詐欺グループの一員を釈放した場合、共犯者に働きかけて証拠を隠滅するようアドバイスしたり、逃亡を促したりすることも想定されるでしょう。

そのため、捜査機関が捜査段階である23日間より早い時期に被疑者を釈放する可能性は、現実的には乏しいと考えられます。

なお、勾留された状態で起訴されてしまった場合は、起訴前段階の勾留から起訴後の勾留に自動的に切り替わります。

起訴後の勾留期間は起訴された日から2か月とされており、多くのケースでは裁判が終わるまで1か月ごとに延長されていきます(刑事訴訟法第60条第2項)。

そのため、引き続き身体拘束を受けることになり、保釈請求が認められない限り、裁判が終わるまで釈放されません。

以上の理由から、詐欺罪で逮捕・勾留された場合の現実的な釈放のタイミングとしては、起訴後に保釈請求を行い認容された場合が想定されます。

ですが、状況によっては裁判手続のほとんどが終了し、判決の言渡しを残すのみとなった段階まで保釈が認められず、勾留が続くこともあります。

さらには、判決を言い渡すまで勾留され続けるケースもあり得ます。

逮捕の期間である3日間程度であれば、家族に対しては出張と伝えたり、勤務先に対しては家族を通じて体調不良などと伝えてもらったりなどすることで、逮捕された事実を隠すこともできるかもしれません。

しかしながら、勾留されてしまうと、起訴前の段階でも最長23日間、起訴されてしまうと保釈請求が認容されるまでの間、警察署の留置施設か、拘置所で過ごさなければならなくなります。

これだけの長期間にわたって自宅に帰ることができず、職場にも出勤できない場合、逮捕・勾留された事実を隠し切ることは難しいと言わざるを得ません。

そのため、家族や職場への発覚を防ぎたい場合は、勾留されることを回避するための早期の弁護活動が重要になるといえます。

特に職場や学校に知られたくない場合の対処法について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

逮捕・勾留中は家族との面会を制限される可能性がある

加えて、共犯者が複数いる詐欺の類型では、「接見禁止」の決定がなされることがあります。

被疑者の家族や事件の関係者が面会に来ることで、自宅に残っている証拠品の処分を頼んだり、まだ逮捕されていない共犯者への伝言を頼むなどして間接的に働きかけることで、証拠隠滅や逃亡を図ったりすることを防ぐために、面会できる人間に制限がかかることがあるのです。

この接見禁止の決定がなされた場合、原則として勾留中は弁護人以外との面会ができなくなってしまいます。

ですが、早期に弁護人を選任すれば、家族など一定の関係性がある人間については、事件に一切関係がないこと、証拠隠滅と疑われることを一切しないことを誓約する書面を作成して裁判所に提出し、接見禁止の一部解除を申請することができます。

 

起訴されて有罪判決を受けると前科がついてしまう

また、詐欺罪で起訴されてしまい、有罪判決を受けてしまうと、前科がつくことになってしまいます。

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」と定められています(刑法第246条1項)。

詐欺罪の場合、罰金刑が定められていないことから、詐欺罪で前科がついてしまう場合、執行猶予がつくかどうかはさておき、懲役刑の前科がついてしまうことになります。

懲役刑の前科がついてしまうと、仮に執行猶予がついていたとしても、職業によっては資格を停止させられてしまったり、海外旅行に行きにくくなったりと、様々な面でのデメリットがあります。

前科について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

事案によっては初犯でも実刑判決の可能性もある

詐欺罪の場合、被害の総額がどれくらいか、組織的な犯行であるかどうかによって、刑の重さが変わってくることになります。

執行猶予がつけられるのは、懲役3年以下の判決が言い渡される場合に限られます(刑法第25条第1項)。

刑法第25条第1項
(刑の全部の執行猶予)
第二十五条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮…の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
(以下略)

引用元:刑法|e-Gov法令検索

そのため、例えば「懲役5年」の判決が言い渡される場合、執行猶予がつく余地はありません。

被害金額が極めて高額になる場合や、振り込め詐欺のグループの主犯格として指示を出していた場合などは、悪質性が高いとして、初犯であっても懲役3年を超える刑罰が科される可能性も十分にあります。

ですので、初犯であっても詐欺の態様や被害の程度によっては、いきなり実刑判決が言い渡されることもあります。

執行猶予について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

逮捕されないための2つのポイント

①自首

詐欺罪にあたる行為をしてしまった場合に、逮捕される可能性を下げるための手段として、自首をすることが考えられます。

捜査機関に発覚する前に自首をして、自らの行いにつき深く反省していること、今後は誠意を持って被害弁償を行う意向があることなどを伝え、警察の方で記録に残しておいてもらうことが望ましいでしょう。

「わざわざ自分から正直に警察に自首した人間が、今後逃亡したり証拠を隠滅したりする可能性は低い」と考えてもらえれば、逮捕されることを防げるかもしれません。

自首について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

②早期の示談交渉

自首の検討と並行して、弁護士を通じた被害者との一刻も早い示談交渉も、捜査機関への発覚や逮捕・勾留を防ぐ上では極めて重要であるといえます。

詐欺罪のような、お金を騙し取られた被害者が存在する事案においては、被害者にお金を返し、誠心誠意謝罪をすることで許してもらう(示談を成立させる)ことが、処分を決定する上で非常に大きな意味を持ちます。

示談を持ちかける上で、被害者の心情を考えると、少なくとも被害金額については、全額を返金しない限り許しを得られる可能性は下がると言わざるを得ません。

ですが、全額を返せないからといって返金する意味がなくなるわけではありません。

足りない分については、今後社会復帰を果たした後に少しずつでも働いてお返しすることを約束するなど、誠意を持って謝罪をし、反省を伝えるべきです。

仮に起訴されてしまい、有罪判決を受ける可能性が高まったとしても、一部でも被害者に対して返金を行なっていたり、被害者からの許しを得られていたりすれば、裁判では有利な事情として考慮してもらえますので、懲役の期間を短くできる可能性、さらには執行猶予付判決を獲得できる可能性を高めることができます。

被害金額が高額になるにつれ、示談金を工面することも大変になりますし、被害者の怒りも強くなってくると考えられますが、被害者のお気持ちに寄り添いつつ、粘り強く交渉していく必要があります。

詐欺罪の場合は逮捕・勾留がされているケースが多く、自分で被害者に連絡をとって交渉することは難しいため、基本的に示談交渉は弁護士に任せることになります。

刑事事件に精通した弁護士を選任し、示談交渉を任せれば、刑事事件に関する豊富な経験に基づき慎重に交渉を行いますので、示談成立の可能性を高めることができるといえます。

示談交渉について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、逮捕について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

まとめ

以上、詐欺で逮捕される場合の条件や、逮捕を回避する方法等についてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。

近年では、振り込め詐欺や給付金詐欺、国際ロマンス詐欺など、多様な類型の事案が発生しており、日々新たな詐欺の手口が生まれています。

「良い儲け話がある」などといった甘い言葉に乗ってしまい、軽い気持ちで組織的な詐欺に加担してしまうケースも散見されます。

冒頭でも記載しましたが、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役となっており、罰金刑が定められていない重大な犯罪です。

事案の内容が悪質である、被害金額が多額に上る、被害弁償ができていない、組織的な犯行であるなどの場合、初犯でも実刑判決を受けてしまう可能性があります。

「良い話ほど裏がある」ことを肝に銘じ、絶対に詐欺の片棒を担ぐことのないようお気をつけいただければと思います。

仮に、詐欺の片棒を担いでしまったなどの場合であっても、早期に弁護士をつけた上で、捜査機関への自首に弁護士を同行させたり、弁護士を介して被害者との示談を成立させたりすることで、逮捕の可能性を下げるとともに、前科がつくことも回避できるかもしれません。

詐欺罪で逮捕・勾留された場合、国選弁護人を選任することもできますが、国選弁護人制度を利用する場合、弁護士を選ぶことはできず、弁護士と合わないからといって解任することも簡単にはできません。

詐欺事件の解決実績が豊富な弁護士を自ら選任することで、示談成立の可能性、執行猶予付判決を獲得できる可能性をより高めることができるといえます。

万一、詐欺罪にあたる行為を行ってしまい、今後についてご不安を抱えている方は、可能な限り早期に刑事事件に精通している弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

 


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