万引きは逮捕されない?|逮捕の条件・流れ・回避方法を弁護士が解説

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランナー


万引きであっても、逮捕される可能性はあります。

ここでは、逮捕の条件、万引きで逮捕されるケース、逮捕後の流れや逮捕のリスクについて、弁護士がわかりやすく解説しています。

最後まで読んでいただくことで、万引きの重大さや対処法がわかりますので、ぜひ参考になさってください。

万引きとは

他人の物を窃取すると成立する窃盗罪(刑法235条)の中でも、万引きは、多く見られる類型の事案であるといえます。

引用元:刑法|電子政府の窓口

軽い気持ちで行ってしまったという方から、常習的に繰り返してしまう方まで、様々な類型が見られるのも、万引き事案の特徴といえるでしょう。

 

 

万引きで逮捕される条件とは?

万引き事案において逮捕される場合、想定されるのは、犯罪を行った瞬間を現認した際に行いうる「現行犯逮捕」(刑事訴訟法212条1項、213条)と、後日になって捜査機関が正式に逮捕令状の発付を受けた上でなしうる「通常逮捕」(刑事訴訟法199条1項)の二つです。

現行犯逮捕の場合

現行犯逮捕については、捜査機関のみならず一般人でも行うことができます。

そのため、万引き行為を現認された場合、店舗内を巡回する私服警察官のみならず、万引きGメンなどによっても現行犯逮捕される可能性があります。

 

防犯カメラで逮捕される可能性

他方、通常逮捕については、店舗からの被害申告をきっかけとして、警察が防犯カメラ映像を解析するなどして捜査を進めていき、嫌疑が固まったところで逮捕令状を請求し、裁判官からの発付を受けて被疑者を逮捕する、という流れになります。

現行犯で捕まらない限り、万引きで後日になって逮捕されることは少ないと思われがちです。

しかし、現在は防犯カメラの性能が上がっており、犯人の特徴や被害品の特定が容易になっていることに加え、街中に数多く設置された防犯カメラの映像を繋ぎ合わせることで、犯人の退店後の足取りまで追うことが容易になったことなどもあり、後日の通常逮捕も珍しくなくなってきています。

 

 

万引きで逮捕されたときのリスク

万引きで逮捕されたときには、様々なリスクが考えられます。

逮捕されたときのリスクとして主要なものは下記のとおりとなります。

会社を解雇される

逮捕後、釈放されることなく勾留が続くと、長い期間身柄の拘束が続いてしまいます。

当然会社にも行けなくなるため、ご家族等から職場に対して、「会社を欠勤する」との連絡が必要となるでしょう。

その際、理由を尋ねられ、逮捕されていることが会社に発覚します。

万引きは、殺人や強盗などと比べると、軽微な犯罪ですが、会社としては軽視しないと思われます。

また、犯罪行為を度外視するとしても、欠勤が続いてしまうことで、解雇理由※に該当する可能性が出てきます。

※解雇理由は、会社の就業規則に定めてあります。例えば、「正当な理由なく7日以上欠勤した場合」などが典型です。

 

離婚を請求される

逮捕されると、配偶者はとてもショックを受けるでしょう。

人によっては、「万引き程度であれば」と寛容に受け止めてくれる方もいます。

しかし、犯罪行為を犯したことに対して、重く受けとめて離婚を選択する方もいます。

そのため、ご状況によっては離婚を請求される可能性もあります。

※話し合いで離婚とならない場合、最終的には離婚裁判となります。

離婚裁判において、裁判官ら万引きしたことを理由に離婚判決を出すかは一概には言えません。

しかし、少なくとも相手から離婚を請求されるリスクがあることはおさえておいた方が良いでしょう。

 

学校を退学になる

万引きをしたのが学生(高校生や大学生)であれば、校則違反を理由に退学処分となる可能性もあります。

 

信用を失う

職業等のご状況にもよりますが、万引きが新聞・ニュース等で報道される可能性は高くないです。

しかし、会社、家族、親族、友人などの狭い範囲では、逮捕の事実が知れ渡ってしまい、社会的な信用を失うリスクがあります。

 

 

子供が万引きをしたらどうなる?

14歳未満の万引き

14歳未満の場合、万引きを犯しても犯しても、刑事責任を問われません。

したがって、逮捕されることはありません。

しかし、児童相談所の手続を受けることがあります。

また、一定の場合は警察からの調査を受ける可能性があります。

 

14歳以上の万引き

14歳以上の場合は、法律上、刑事責任を問うことが可能です。

したがって、万引きをした場合、逮捕される可能性があります。

しかし、本人が反省していれば基本的には逮捕までされるケースは少ないでしょう。

 

 

万引きで刑務所に行くケースとは?

万引きは、刑法上は「窃盗罪」という犯罪であり、刑罰は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」と定められています。

参考:刑法|e-GOV法令検索

したがって、万引きは刑務所に行く可能性がある犯罪と言えます。

しかし、万引きにも様々なケースがあります。例えば、「100円の商品を1回だけ万引きした」という事案では、刑務所に行く可能性はほとんどありません。

ケース・バイ・ケースでしか判断できませんが、一般的には次のようなケースでは、刑務所に行く可能性もあるかと思われます。

  • 常習的に万引を行っているケース
  • 被害の程度が重大なケース
  • 本人がまったく反省していないケースなど

 

 

万引きで逮捕された後の流れ

万引きにより逮捕された場合、多くのケースでは48時間以内に検察官に事件送致がなされ、検察官は事件送致を受けてから24時間以内に、勾留請求するかどうかを判断します。

検察官が勾留請求を行い、裁判官がこれを認めれば、最長で20日間にわたり勾留されることになります。

万引き事案の場合、前科・前歴がなく、万引きの事実を素直に認めていて、定職に就いており身元引受人なども存在していれば、勾留請求自体なされず、72時間以内に釈放されるケースが多いといえます。

なお、明らかに不起訴(起訴猶予)処分が相当であると認められる事件であれば、警察の判断で、検察官に事件送致を行う前に、「微罪処分」として事件処理を終了する場合があります。

明らかに不起訴処分が相当であると認められる場合として想定されるのは、被害額が僅少で被害弁償もなされており、被害者が処罰を望まず、犯行の悪質性が低いといえるような場合です。

その後、捜査機関による捜査が進んでいき、最終的に検察官が、不起訴処分とするのか、それとも略式起訴により罰金刑を科して終了とするのか、あるいは正式に起訴をするのかを決定します。

そのため、示談交渉など、処分の軽減のため有利な事情を揃えようと考えるのであれば、検察官が処分を決定するまでに済ませておかなければなりません。

在宅事件の場合、多少の時間的猶予はありますが、勾留されている場合は勾留期間が満了するまでの間、すなわち最長でも逮捕されてから23日間の間に示談交渉を全て終了させなければならず、時間的制約が極めて厳しいといえます。

不起訴処分の場合、その時点で事件処理は終了となり、前科はつきません。ただし、捜査の対象となったことを示す前歴は残ることになります。

略式起訴の場合、後日に裁判所から送られてくる書類に従い、指定された金額の罰金を期限内に収めれば、その時点で事件は終了となります。

正式に起訴された場合、裁判所から指定された期日に出頭し、裁判を受け、判決の内容に従った刑が科されることになります。

 

 

万引きで逮捕される確率

一般的に、前科・前歴がない場合、万引き事案においては、逮捕・勾留に至らないことも多いです。

しかし、後日の通常逮捕の場合、在宅捜査の事件に比べ、被害金額が高額であったり、複数回にわたる余罪が判明していたりといった事情が加わっていることが想定され、後の処分が厳しくなる可能性があります。

また、現行犯逮捕の場合と異なり、一度現場から逃亡してしまっていることになりますので、逃亡のおそれがあるとして、検察官からの勾留請求が認容される可能性も、若干ながら上がる可能性があります。

 

 

万引きで逮捕されないためには?

自首を検討する

万引きをしてしまった後で、身体拘束を回避するためには、自首を検討することが考えられます。

発覚前に自ら警察に行き、正直に自身の罪を告白して謝罪と反省の意思を伝えることで、逮捕を免れる可能性があります。

捜査機関が既に犯人を認識していた場合、法律上の自首としては扱われませんが、仮にそうなったとしても、自発的に警察に出頭したという事実はその際、弁護士を伴って自首することにより、逮捕等がされるリスクをより下げることができます。

自首については、こちらをご覧ください。

 

示談交渉を成功させる

逮捕や起訴を回避するためには、被害者(お店側)との示談交渉を成功させることが極めて重要となります。

捜査機関(警察や検察官)は、逮捕や起訴の判断において、被害者の意思を重要視します。

万引き程度の犯罪の場合、被害者自身が処罰を求めていないのであれば、逮捕や起訴する必要性がないとすることが多いのです。

そこで、逮捕や起訴を回避するためには、示談交渉が重要となります。

示談交渉については、刑事弁護に強い弁護士に任せることをお勧めいたします。

万引きの場合、弁護士に依頼せずとも、通常被害者の連絡先はわかります。

しかし、万引きを行った本人やその家族が被害者に連絡を取っても相手にしてくれない可能性があります。

また、仮に交渉できたとしても、示談が成功したときに示談書を作成すべきです。

専門家にご依頼されていれば、適切な示談書を作成してくれるので安心できるでしょう。

 

 

万引についてのよくある質問

警察は万引きの捜査をしないと聞いたのですが本当ですか?
これについては、明確に誤りであるといえます。

店舗から被害届が提出され受理した場合、捜査機関には必要な捜査を行う義務が生じます。

そのため、そもそも店舗が被害について把握しておらず、警察への届出自体行っていないような場合ならまだしも、警察に被害を申告している限り、警察は必ず万引きについての捜査を行います。

捜査にあたっては、防犯カメラ映像の解析など、時間のかかる捜査手法がとられることもあります。

そのため、犯行後しばらく経って忘れた頃になって証拠が揃い、警察が家にやってくる、などといった事態が生じる可能性も否定はできません。

 


万引きで捕まらない方法がありますか?
そもそも警察に届出をしていないのであれば、逮捕されないことになります。

店舗側が被害に遭ったことを認識しておらず、そもそも警察に届出をしていないのであれば、逮捕されないことになります。

しかし、現在は防犯カメラの性能上昇に加え、品物管理システムも発展してきているため、店舗側はレジを通した履歴のない品物が消失しているというデータをすぐに把握できるものと考えられます。

そのため、常に発覚のリスクはつきまとうことになるといえるでしょう。

万引きでの逮捕を避けるためには、上述した自首を行うことに加え、自首をした後は、弁護士を通じて速やかに店舗に連絡を取り、示談を行うことが有効です。

万引きをはじめとする被害者がいる事案については、早期に謝罪し示談をすることで、被害者側から刑事処罰を求めないというお許しをいただき、示談が成立した事実を検察官に連絡すれば、高い確率で不起訴となることが見込まれます。

会社の方針として、事件処理が終了するまでは示談には応じないというスタンスの店舗もありますが、この場合でも被害品を買い取ることを申し出て被害弁償を行うことで、処分を軽減する上で有利な事情を作り出すことができます。

 


高校生などの学生が万引きで逮捕されるとどうなりますか?
基本的には事件が家庭裁判所に送致されることになります。

高校生などの学生が万引きで逮捕された場合、基本的には事件が家庭裁判所に送致されることになります。

その後、家庭裁判所において、少年に対しどのような処分が相当かを決定する少年審判が開かれることになりますが、審判を行う上で少年について調査する必要があると認められる場合、観護措置決定がなされ、少年鑑別所に移送されることもあり得ます。

初めての非行で万引きが発覚したという場合は、審判不開始や不処分など、比較的穏当な処分がなされることも十分にありうる一方、少年が非行を繰り返してしまっているような場合は、被害金額がさほど高額でない場合でも、少年院送致などの処分がなされる可能性もあります。

少年事件に関しては、こちらをご覧ください。

また、学生の場合、事件を起こしたことが学校に発覚してしまうと、退学処分・停学処分など、学校からも重い処分を受けてしまうことが想定されます。

店舗の方針で、学校にも漏れなく報告をすることが決まっている場合もありますが、逮捕された時点ですぐに弁護士に依頼をし、弁護士が店舗との示談を迅速にまとめるなど、最大限の弁護活動をすることで、店舗側が翻意し、学校への連絡を思いとどまってくれる可能性もあります。

こうした観点からも、お子さんが万引きをしてしまった場合は、速やかに弁護士に相談されるべきです。

 


 

万引きで逮捕されて懲役の可能性がありますか?
前科・前歴が一切なく、被害金額もさほど高額ではない場合、懲役刑の可能性は極めて低いといえます。

このような場合は、店舗との間で示談を成立させるか、少なくとも被害額全額につき被害弁償を行うことにより、不起訴となる可能性を高めることができます。

店舗との間で示談ができず、被害弁償を行うほどの資力もないという場合であっても、初犯であれば正式な裁判になる可能性は低く、略式命令による罰金刑で終了するケースが多いと考えられます。

他方、前科・前歴があり、被害額が高額になってくるような場合、略式命令による罰金刑のみでは済まず、公判請求されてしまう可能性があります。

この場合は、裁判所で正式な裁判が開かれ、有罪か否か、及び刑の重さについて裁判官が判断を行うことになります。

初めて公判請求がなされたような場合は、執行猶予付判決により、直ちに刑務所に行かなければならないという事態は回避できるでしょう。

しかし、執行猶予期間中に再度万引きを行ってしまうと、執行猶予が取り消され、猶予されていた服役期間と新たに決定した服役期間を合わせた期間、刑務所に行かなければならなくなってしまいます。

 


万引きで逮捕された場合に釈放される場合とは?
万引き事案の場合、多くのケースでは被害金額がさほど高額にならないこともあり、勾留される可能性はさほど高くはありません。

つまり、逮捕されたとしても、直ちに勾留されてしまうわけではなく、万引き事案に関していえば、逮捕されてもその日のうちに釈放になるケースも多いといえます。

釈放されるパターンとしては、被害が小さいために警察が微罪処分とすることを決定した場合、あるいは在宅事件に切り替わった場合が挙げられます。

裏を返せば、前科・前歴が複数存在したり、被害金額が高額であったり、同居人がおらず監督者がいなかったり、定職に就いておらず単身であって逃亡が容易であるなどの事情があれば、勾留されてしまう可能性もあります。

また、微罪処分となった場合はその時点で事件処理は終了となりますが、在宅事件に切り替わった場合、事件処理が終了したわけではなく、釈放後も捜査機関による捜査は継続しています。

そのため、釈放されたからといって何もせず放置していると、知らないうちに検察官の処分方針が決まってしまい、前科がついてしまうことを避けられなくなったりします。

万引きで警察から事情を聞かれたりした場合、なるべく早期に弁護士に相談されることをお勧めします。

 


 

万引き何回目で逮捕?
上で解説したとおり、逮捕には現行犯での逮捕があります。

現行犯逮捕の場合、万引きの回数は関係ありません。

後日逮捕の場合、万引きを多く行っていれば、それだけ犯人として特定されやすくなる可能性が高くなります。

しかし、防犯カメラの映像などで犯人と特定された場合、1回目であっても逮捕される可能性はあります。

 


 

万引き後の後日逮捕は何日経てば大丈夫?
万引き後、長年月が経過していれば、逮捕される可能性は低くなると言えるでしょう。

しかし、窃盗罪の時効はそう簡単には成立しません。

したがって、一概に何日経てば大丈夫とは言えません。

 

 

まとめ

万引きは日常的に行われる身近な犯罪の一つですが、軽い気持ちで行ってしまったことで、その後の人生に大きな影響を与えてしまう可能性があることを忘れてはいけません。

万引きをしてしまい、まだ捜査機関には発覚していないものの今後どうしたら良いかわからない方、既に警察から事情を聞かれており、前科をつけないようにしたいとお考えの方、身内が万引きで逮捕され、勾留までされてしまった方など、様々なご不安を抱えておられる方もいらっしゃるかもしれません。

そのようなときは、ぜひ一度、刑事事件を中心に扱う弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

 


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