出資法に違反するとどうなる?弁護士がわかりやすく解説
みなさんは出資法という法律をご存知でしょうか?
出資法とは、出資の受け入れや、預り金、金利などを取り締まるための法律です。
出資法に違反すると、犯罪として刑事事件に発展する可能性があります。
昨今、投資詐欺集団などが、出資法違反で逮捕されるケースなども少なくありません。
違反内容によって刑の内容は異なりますが、例えば、年109.5%(うるう年は109.8%)を超える高金利で金銭を貸し付けた場合、「5年以下の懲役」と「3000万円以下の罰金」のいずれか、又は両方が科されます(出資法第5条3項)。※
※「業として」行った場合
このページでは、馴染みのない方も多い出資法について、これに違反する主なケースや、出資法違反に関するポイントなどを解説しています。
出資法とは?
出資法とは、正式名称「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といいます。
その名の通り、出資を受け入れること、お金を預かること、金利を取ることなどを取り締まるための法律です。
他にも、借金を媒介するときの媒介手数料や、高額な保証料なども取り締まっています。
出資法で規制されている主なケースを以下の通り表にまとめましたのでご覧ください。
規制される行為 | 内容 | 条文 |
---|---|---|
出資金の受入 | 不特定多数の人から、後日出資の払い戻しとして出資金の全額若しくはこれを超える金額に相当する金銭を支払うことを示して、出資金の受入をしてはならない。 | 1条 |
預り金 | 特別の許可なく、業として預り金※をすることが禁止。 ※不特定かつ多数の者からの金銭の受入れで、法律に定める場合に限定。 |
2条 |
浮貸し | 金融機関の従業者等が、その地位を利用して、自己又はその金融機関以外の第三者の利益を図るために、金銭の貸付けや金銭の貸借の媒介や債務の保証をしてはならない。 | 3条 |
金銭貸借等の媒介手数料 | 金銭の貸借の媒介や、金銭の貸借の保証の媒介を行う者は、所定の割合で計算した金額を超える手数料の契約をしたり、受領してはならない。 | 4条 |
高金利 | 金銭の貸付けを行う者が、年109.5%(うるう年は109.8%)※を超える高金利の契約をすることが禁止。 ※金銭の貸付を業として行う者の場合は、年20%を超えることも禁止。年109.5%(うるう年は109.8%)を超えると法定刑が重い。 |
5条 |
高保証料 | 金銭の貸付け(金銭の貸付けを行う者が業として行うものに限る)の保証(業として行うものに限る)を行う者が、所定の割合以上の保証料の契約をすることが禁止。その保証料を受領し、又はその支払を要求することも禁止。 | 5条の2 |
出資法に違反する主なケース
具体的に、出資法に違反するのはどのようなケースでしょうか。
実際に刑事裁判になっているケースを例に、主な事例を紹介します。
ケース1:投資詐欺の事例
なお、さらに約定どおりの返還が不能になった後も勧誘を続けており、4名から合計945万円をだまし取った詐欺も行われた事案。
この事例では、懲役4年の実刑という重い判決が言い渡されています。
このように、いわゆる投資詐欺的な行為の場合、詐欺罪と合わせて出資法違反の罪にも問われることがあります。
ケース2:債権譲渡の代金名目の取引が「預り金」とされた事例
この事例でも、出資法が禁止している「預り金」を業として行ったと認定され、東京地裁により、「懲役2年6か月及び罰金200万円に処する。」との有罪判決が出されています。
このように、「債権譲渡」などの名目を理由としていても、配当金の支払いなどを約束して不特定多数者から出資金を受け入れるような実態があると、出資法違反になることが少なくありません。
出資の名目ではない場合でも、出資法違反が問われる可能性がありますので注意してください。
ケース3:高金利の貸付が罰せられたケース
この事例では、懲役1年10月及び罰金250万円の実刑が言い渡されています。
出資法違反となる高金利でヤミ金を営んでいたという典型的なケースです。
出資法に違反したらどうなる?
出資法に違反してしまった場合、どうなるのでしょうか?
そもそも、出資法に違反した場合、犯罪となり、刑事罰を受ける可能性があります。
例えば、預り金の禁止に違反した場合には、出資法上「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」(8条3項)とされています。
そのため、出資法違反をしてしまった場合の動きとしては、一般的な刑事事件の場合と同じく、以下の通りとなります。
-
- 1
- 逮捕・勾留
-
- 2
- 捜査(取調べ等)
-
- 3
- 起訴
-
- 4
- 裁判
-
- 5
- 判決
まず、嫌疑が相当にあると認められ、警察などの捜査機関によって身柄を拘束されます(逮捕・勾留)。
ただし、逃亡の危険が低い場合など逮捕の必要性がないと判断された場合には、身柄が拘束されないまま捜査・起訴に至る場合もあります(在宅による捜査)。
身柄が拘束された後も、取調べを受けるなどの捜査活動が続けられます。
取調べでは、警察官や検察官から、事件に関する事実等を詳しく聴取され、それが調書という記録に残されます。
逮捕されて、身柄を取られている場合には、その期間は限られています。
捜査で得られた客観的な資料や、被疑者や被害者などの調書などが集まったら、検察官が起訴をするかどうかの判断を行います。
起訴をしても、有罪判決を得られる見込みが低いと判断されれば、不起訴になる場合もあります。
起訴された場合には、裁判所において、裁判が行われます。
検察官が有罪に向けた立証を行い、弁護人が無罪や減刑等を求めて議論を交わし、最終的に裁判官が有罪・無罪や、刑の軽重等を判断することになります。
裁判期日は複数日にわたる場合もあります。
被告人も、基本的に法廷で証言を求められます。
最後に、裁判官による判決が行われます。
有罪となり、実刑が言い渡された場合には、刑務所でその刑罰に服する必要があります。
逮捕・起訴を回避するための対処法
続いて、出資法違反をしてしまった場合に、逮捕や起訴を回避できる可能性を少しでも高めるためには、何をすればいいでしょうか。
もちろん、出資法違反である以上、逮捕や起訴されてしまう可能性は高いですが、その後の対応に気を付けることで、逮捕を免れたり、不起訴を勝ち取れる可能性もゼロではありません。
そこで、出資法違反をした場合の望ましい対処法を以下の通り解説します。
違法行為を直ちにストップする
まず、出資法に違反していると思われる行為は、直ちにストップしてください。
違法行為を止めるべきなのは、倫理的にも当然のことではありますが、違法性を意識したまま違法行為を続けていたとなると、悪質と評価される可能性が高まり、逮捕や起訴になる可能性が高まります。
また、被害も拡大してしまうため、不起訴となる可能性はより低くなってしまいます。
自首を検討する
自首することも検討しましょう。
自首とは、捜査機関に発覚する前に、自ら進んで自己の犯罪を認めることです。
最寄りの警察署に自ら出頭し、自分の行ったことを話すことになります。
法律上、自首した場合には減刑を受けられる可能性があります(刑法第42条)。
他にも、逃亡の危険性が低いと判断されて、逮捕を免れる可能性も高まります。
自首についてより詳しく知りたい方は、こちらも合わせてお読みください。
刑事事件にくわしい弁護士へ相談する
もし、ご自身が出資法違反をしてしまった、或いはその恐れがある、と思った場合には、今後の動き方を慎重に検討する必要があります。
その際には、出資法違反は決して軽い罪ではありませんので、できるだけ早期に弁護士に相談して対応されることをお勧めします。
弁護士に相談することで、ご自身の事案に応じて、適確なアドバイスを受けられます。
特に、逮捕や起訴を免れることを目指すのであれば、打てる手は全て打つべきですので、刑事事件に詳しい弁護士へ相談の上で慎重に対応するようにしましょう。
刑事事件での弁護士の賢い選び方についてはこちらも合わせてお読みください。
出資法違反についてのQ&A
最後に、出資法違反についてのQ&Aを見ていきましょう。
初犯の場合でも刑務所の可能性がある?
一般的に、初犯の場合には有罪であっても執行猶予がついたり、罰金刑にとどまるなどして、懲役刑などの実刑にならないことも多いです。
もっとも、それもあくまで犯罪の悪質性などの程度問題によって変わってきます。
特に、出資法違反は、預り金や出資の受け入れ、ヤミ金融など、比較的大きな規模で行われるケースが少なくありません。。
そのため、初犯であっても、違反の態様によっては刑務所の可能性も覚悟しておく必要があります。
実際に受け取っていたお金がいくらであるかなど、問題となっている金額やお金を預かったり、違法な金利で貸していた人の人数などによっても変わってきます。
出資法違反の時効とは?
出資法違反の罪についても、他の犯罪と同じく、時効(公訴時効)があります。
出資法違反の時効は、3年になります(刑事訴訟法第250条2項6号)。
刑事訴訟法 第250条第2項第6号
第二百五十条
② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
なお、これはあくまで刑事事件における時効(公訴時効)です。
これとは別に、民事事件(出資金の返還請求や、損害賠償請求など)については民法上の時効がありますので注意しましょう。
まとめ
このページでは、出資法違反について、基本的な事項から、違反時の注意点まで、幅広く解説しました。
出資法に普段馴染みがない人も多いと思いますが、知らず知らずのうちにこれに違反してしまうことがないよう、日頃から意識しておくことが重要です。
特に、新しいビジネスモデルを考えて、資金を集めようとする場合、これに違反してしまいがちですので注意しましょう。
そして、仮に出資法違反の恐れがあることに気づいた場合には、できるだけ早期に刑事事件に詳しい弁護士へ相談することをお勧めします。
デイライト法律事務所では、出資法違反に関するご相談にも対応しております。
いつでもお気軽にご相談ください。
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