会社破産をする場合には、多くのケースでテナント契約の処理を行うことが必要になります。
破産申立てを行うだけでは当然、賃貸借契約が終了することにはなりませんので、解除や解約するべきかどうかを検討します。
このとき、敷金や在庫の保管のため例外的に賃料を支払うことがありますが、原則は他の負債と同じく、賃料だけを支払うことはできません。
会社破産とテナント契約
会社の破産を選択する場合、検討しなければならない問題の一つにテナントの契約があります。
通常、会社がビジネスを行うにあたっては、事務所やオフィス、店舗をもっています。
こうしたテナントは、会社が自ら不動産を所有しているケースもありますが、賃貸借契約を締結していることも多くあります。
近年増えているシェアオフィスもレンタルという点では、賃貸借契約と同じです。
会社の破産は、事業活動を清算することですので、こうしたテナント契約についても解除や合意解約するなどして、終了させなければなりません。
解除と合意解約の違い
賃貸借契約の終了方法としては、解除と解約というものが考えられます。
どちらも似たような言葉ですが、賃貸借契約書でも使い分けられているように、両者は違うものです。
解除というのは、契約当事者に何らかの契約違反行為があった場合や契約書に記載している解除事由が発生した場合に認められているものです。
賃貸借契約に関していえば、賃料の不払いであったり、無断で第三者にまた貸し(転貸)していたり、当初の利用目的と異なる利用をしていたりといった事情が解除原因になり得ます。
他方で、解約というのは、先ほどのような解除事由はないものの、賃貸人と賃借人が将来的に契約を解消させるものです。
多くの場合、解約を希望する3か月ないし6か月前に解約したい旨を申し出ることによって解約ができるように契約書で定めています。
破産する場合の賃料
会社が破産を選択した場合でも、賃貸借契約そのものは当然には終了しません。
そのため、先ほどの解除が解約の手続を取らない限り、契約自体は存続するため、賃料の支払義務が生じます。
したがって、負債をできる限り増やさずに破産手続を申し立てるためには、可能であれば、申立て前の段階でテナントの賃貸借契約を解除ないし解約しておくのが望ましいといえます。
しかしながら、先ほど解説したとおり、解約に関しては、多くのケースでかなり事前の予告を要求されているため、現実的に破産申立てを決める時点で解約を申し込んでも遅いということが生じます。
そうすると、一定のテナント賃料が破産申立ての時点で生じてしまうこともやむを得ないといえます。
それでは、こうした賃料を会社は支払ってもよいのでしょうか?
破産の場合の賃料の原則と例外については以下の通りです。
賃料といっても、買掛金や借入金と同じく、会社にとっては支払わなければならないもの=負債ですので、破産をする場合、賃料だけを支払ってしまうことは、それ以外の債権者との平等性に欠けることになります。
ですので、賃料のみを支払うことは偏頗弁済といって、破産申立後に選任される破産管財人が否認権を行使して取消しをする可能性がある問題行為になる可能性があります。
したがって、原則としては、賃料だけを特別扱いして支払いを継続することは控えるべきです。
しかしながら、テナント契約特有の問題としては、敷金のことがあります。
すなわち、賃貸借契約が終了した段階で賃料の未払などがなければ、敷金が会社に戻ってくるケースもあります。
そして、敷金を利用して破産手続にかかる費用を捻出することを考えている場合には、できる限り賃料の不払いをせず、敷金を戻してもらう方がかえって会社の清算のためにはプラスになることもあり得ます。
また、会社が在庫を多数抱えている場合、テナント契約を解除してしまうと、在庫を保管しておく場所がなくなってしまうといった場合、テナントを維持して在庫をしばらくそこに置いておくことが必要というケースもあります。
他にも、賃貸借契約を解除、解約すると本来は原状回復に費用がかかってしまいますが、飲食店などの場合、居抜きでそのまま明渡しをして、次の契約者が決まるのを待つというケースもあります。
このように、賃貸借契約を維持して、賃料を支払うことが必要なケースといえる場合には例外的に賃料の支払を継続することも検討します。
このケースでもむやみに契約を長期化させずにできるだけ早く破産申立てをしなければなりません。
まとめ
このように、会社が破産の申立てを検討するに当たっては、契約しているテナントの清算をどのようにすべきかを考え、速やかに対応しなければなりません。
管財人の処理をスムーズに進めてもらうためにも、のちに否認権を行使されないためにも、申立て前の早い段階で専門家である弁護士に相談、依頼してサポートを受けておくことが必要です。
破産について詳しくはこちらもご覧ください。
また、弊所の相談の流れについてはこちらをご覧ください。