会社を破産する場合には、株主総会は必要ありませんが、取締役会設置会社の場合、原則として取締役会を開くことが必要です。
そのうえで、取締役全員の署名、押印した議事録を裁判所に提出しなければなりません。
会社を破産する場合と株主総会
会社を破産するというのは、株主にとっては大きな影響があります。
すなわち、破産=会社がなくなるわけですので、株主が保有している株式が無価値になることを意味します。
そのため、配当などがそれまでになければ、出資した金額の損失を被ることになります。
会社法においては、株式会社の意思決定機関として、株主総会を重要な機関として位置づけています。
取締役の選任や解任、重要な会社財産の処分などについては、会社法で株主総会を経る必要があります。
それでは、会社を破産させる場合にも、株主総会は必要なのでしょうか?
この点、破産手続を進めるに当たって、株主総会は法律上要求されていません。
したがって、株主に事前に通知することなく破産を進めることも可能です。
万が一、株主総会が必要とすると、株主は多くの人がいることもあり、それぞれの利害が対立して、なかなか破産手続が進められないというリスクもありますし、招集手続も必要なので、時間がかかってしまいます。
何より、事前に破産することを株主が知ってしまうと、誰もが破産する前に株式を処分しようとするため、インサイダー取引の問題も生じ得るわけです。
もっとも、中小企業の場合、株式を上場していないことがほとんどで、株主も取締役だけといったことも多く、この場合には株主総会を開催しなくてもよいということはそれほど影響ありません。
会社を破産する場合と取締役会
他方で、会社を破産するという重大な決断をする以上、株主総会において専任された取締役及び取締役会では、決議をしなければなりません。
取締役が1名の場合、その人が代表取締役であるわけですので、代表取締役が破産することを決定すれば、破産手続を進めることが可能です。
他方で、取締役が複数の場合には、取締役会を設置している会社かどうかで手続が変わってきます。
取締役会設置会社の場合、基本的には取締役会を開催しなければなりません。
そして、取締役会で全会一致で破産を承認し、議事録を作成します。
この議事録には、取締役全員の署名と押印が必要になっており、破産申立てに当たって、議事録を裁判所に提出しなければなりません。
この場合には、取締役会ではなく、個別に取締役の同意を取り付け、同意書を作成することが必要です。
取締役会が開催できない場合
上述のとおり、会社の破産には取締役会における議決と取締役全員の署名、押印が必要になります。
しかしながら、取締役として登記がなされているものの、実質的には経営に全く関わっていないというケースがあります。
この場合、取締役会を開催できなかったり、署名、押印を取り付けることができないということがありえます。
そのような場合に、破産が全くできないということになると、債権者にとっても大きな影響が出ますし、破産すべきである会社をそのまま存続させておくことも問題になってしまいます。
そこで破産法は、個々の取締役に破産申立ての権限を認めています。
それが準破産です。
すなわち、何らかの理由で全員の同意が得られない場合には、破産手続開始の原因となる事実を疎明することで、個々の取締役が破産を申し立てることができるのです。
ここでいう破産手続開始の原因となる事実ですが、会社が支払不能もしくは債務超過の状態にあるということです。
疎明というのは証明よりもレベルの低いもので、支払不能や債務超過の事実が一応確からしいということを示せば足りることになっています。
取締役の中に反対者がいる場合
会社を破産することに対して、取締役の中でも意見が割れることがあります。
この場合、反対する取締役が取締役会議事録に署名、押印を拒否することも予想されます。
このように取締役の中に反対者がいる場合でも、取締役会を開催できない場合と同じく、準破産という方法により、会社の破産手続を進めることが可能です。
もっとも、反対する取締役にも、なぜ破産をすべきでないかという理由があるでしょうから、すぐに準破産を選択するよりも、協議をある程度行っておいたほうがよいでしょう。
その中で、反対する取締役を説得するという作業も必要になってきます。
いつ取締役会を行うか
破産をするということに対する取締役会をいつ開催しなければならないかという明確なルールはありません。
しかしながら、裁判所に破産申立てを行う段階では、取締役会議事録か取締役全員の同意書を提出する必要があります。
そのため、申立ての前までには取締役会を開催しておくことが必要です。
破産するかどうか悩んだらどうすべき?
会社の破産を考えた場合には、今回解説した手続など、しなければならないことが非常に多くあります。
したがって、取締役だけで処理をしようとしてもとても対応できません。
やはり、日頃から会社の破産手続を取り扱っている弁護士に相談し、議事録の作成など手続面のサポートを受けるべきでしょう。