自己破産を申し立てる場合、申立人について、さまざまな調査がなされることになります。
調査される事項は、概ね下記のとおりとなります。
- ① 申立人が持っている財産に関する調査
- ② 借金の総額や借入れ先、滞納の有無などに関する調査
- ③ 免責不許可事由の有無に関する調査
調査に対して嘘をついたり、財産を隠したりした場合のペナルティについても解説します。
自己破産の調査の意味
自己破産を申し立てる場合、申立人について、さまざまな調査がなされることになります。
それぞれの調査事項について、気を付けておくべきポイントが異なってきますので、どのような調査がなされるかを事前に把握しておくと、「なぜこんなことを聞かれるのか」などといった疑問や不安を持つ必要がなくなります。
また、必要な事項をしっかりと理解しておけば、申立てのための資料を集める際にも漏れがなくなるようにできますし、申立てから手続の終了までスムーズに進めることもできるかもしれません。
以下では、自己破産を申し立てた方が、どのような調査を受けることになるのかについて解説していきます。
なぜ調査が行われるの?
自己破産とは、借金に苦しむ方の借金を全て帳消しにする(免責)という、非常に強力な効果がある手続きになります。
こうした強力な効果をもたらす手続きであることから、借金に苦しむ方の中には、自己破産を希望される方も多くいらっしゃいます。
しかし、借金で苦しむに至った経緯を見てみると、ギリギリの生活の中でなんとかやりくりを続けてきたものの、体調を崩したりして仕事ができなくなり、収入が減少したことで生活費のための借入れをせざるを得ず、次第に返済が滞って限界を迎えてしまったという方もいれば、ギャンブルや浪費によってお金が足りなくなってしまったという方もいらっしゃいます。
後者のようなケースは、借金の帳消しが認められない、いわゆる「免責不許可事由」があると考えられる事案です(破産法第252条)。
そのため、本来であれば免責は認められないのですが、申立人についてよく調べることなく、裁判所が安易に免責を認めてしまうと、金融機関をはじめとする債権者にとっては大きな不利益を与える可能性があります。
また、本当は借金を返せるだけの財産があるにも関わらず自己破産を申し立て、裁判所がこれを安易に認めてしまった場合も、債権者にとって大きな不利益をもたらしてしまいます。
そのため、自己破産の申し立てがなされた際は、借金をするに至った経緯や、申立人の財産状況などについて、詳細に調査を行うことが義務付けられています。
誰が調査するの?
自己破産を申し立てた場合、まず裁判所の書記官によって、提出資料に関する詳細なチェックが行われます。
さらに、事案によっては、借金を帳消しにして良いか(免責を許可して良いか)についてより詳細に調査するため、裁判所が「破産管財人」を選任し、調査を命じることがあります(破産法第74条1項、第83条1項)。
破産管財人がついた場合、申立人及びその代理人は破産管財人による調査及び破産管財人からの質問に応じる義務を負うことになります(破産法第40条1項1号・2号)。
第七十四条 破産管財人は、裁判所が選任する。
(略)
(破産管財人による調査等)
第八十三条 破産管財人は、第四十条第一項各号に掲げる者及び同条第二項に規定する者に対して同条の規定による説明を求め、又は破産財団に関する帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
(略)
(破産者等の説明義務)
第四十条 次に掲げる者は、破産管財人若しくは第百四十四条第二項に規定する債権者委員会の請求又は債権者集会の決議に基づく請求があったときは、破産に関し必要な説明をしなければならない。ただし、第五号に掲げる者については、裁判所の許可がある場合に限る。
一 破産者
二 破産者の代理人
(略)
自己破産の調査の具体的な内容
自己破産の際に調査される事項は、概ね下記のとおりとなります。
- ① 申立人が持っている財産に関する調査
- ② 借金の総額や借入れ先、滞納の有無などに関する調査
- ③ 免責不許可事由の有無に関する調査
以下、順にご説明いたします。
①申立人が持っている財産に関する調査
自己破産は、申立人の財産の一部をお金に換え、債権額に応じて債権者に平等に分配することと引き換えに、残りの借金を全て0にする手続きです。
最低限の生活に必要なお金や家財道具一式に加え、お金に換えようとしてもほとんど価値がないものについては、「自由財産」として引き続き手元に置いておくことができますが、自由財産から外れた財産については、基本的に処分しなければならなくなります。
なお、申立人がどのような財産をどれくらい持っているのかどうかについては、申立人自身の自己申告が基本になります。
ですが、長い生活の中で全ての財産について把握できているとは限りませんので、申告の際に漏れがあったりすることもありますし、あるいは意図的に財産を隠したりするケースもあります。
破産手続が全て終わった後、処分が漏れていた財産が判明してしまうと、債権者にとってさらなる不利益を招いてしまうことになります。
そのため、財産の処分漏れがないよう、申立人の財産がどれだけあるかについて、裁判所や破産管財人による調査がなされることになります。
具体的な調査の内容としては、下記のようなものが挙げられます。
- a 申立て時に提出した書類(財産目録)の確認
- b 申立人への聞き取り調査
- c 現地調査
- d 郵送物の確認
自己破産を申し立てるにあたって、裁判所に対し提出する書類は数多く存在します。
その中に、申立人の財産状況を費目ごとにまとめた、「財産目録」というものがあります。
財産目録には、手持ち現金や預金残高をはじめ、さまざまな種類の財産を漏れなく記載することになります。
この財産目録は、基本的には申立人の自己申告に基づき作成されることになりますので、提出段階で裁判所において、明らかな漏れや不自然な点がないかどうかが精査されることになります。
財産目録のチェックを経た後も、財産状況の調査は続きます。
特に、破産管財人がついてより詳細な調査を行う管財事件においては、破産管財人が申立人とアポイントを取り、破産に至るまでの経緯などについて聞き取り調査を行います。
破産管財人は、破産事件に関して一定以上の経験を積んだ弁護士の中から裁判所が選任するものであるため、破産手続について熟知しているといえます。
ですので、財産の有無について不用意に嘘を述べたりしてしまった場合、すぐに嘘であることを見抜かれてしまい、破産管財人の印象が悪くなった結果、不利な判断がなされてしまう可能性もあります。
発覚の可能性は高く、発覚した場合のリスクも非常に高いため、破産管財人の聞き取りに対しては正直に回答する必要があります。
さらに、必要に応じて、破産管財人や裁判所の職員が、自宅などを訪れ、財産の状況について調査を行う場合もあります。
全ての破産申立事件で現地調査がなされるわけではありませんが、調査を行う場合、事前に日程の調整が行われることになりますので、その場合は必ず立ち会う必要があります。
特に、自宅を所有している場合は、財産調査のために職員が不動産鑑定士を伴って現地調査を行うことはほぼ確実です。
仮に持ち家がない場合でも、状況次第ではこうした現地調査が行われる場合もあります。
財産を隠して破産を申し立てたり、破産管財人に嘘をついたりすることは発覚のリスクが高く大変危険ですので、絶対にしないようにしてください。
加えて、破産管財人がついた場合のほとんどの事案においては、申立人宛に届いた郵便物について、破産手続が継続している間の一定の期間、申立人ではなく破産管財人に届けられることになります(破産法第81条1項)。
破産管財人は、申立人宛に届いた手紙を開封し、中を確認することができます(破産法第82条1項)。
郵便物を見られることによって、例えば「隠していた株の配当が〇〇円あった」「届け出ていない借入れ先からの督促が届いた」「車を持っていないはずなのに、高級車のオーナー向けの案内が届いた」など、さまざまな事実が明るみに出ることがあります。
こうした経緯からも隠し事などが発覚する可能性があるので、やはり虚偽の申告は現実的にできないと考えた方が良いでしょう。
なお、破産手続に関係のない手紙についてもまとめて破産管財人のところに届けられることになりますが、必要に応じて郵便物を返してもらうことができます(破産法第82条2項)。
第八十一条 裁判所は、破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは、信書の送達の事業を行う者に対し、破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律(平成十四年法律第九十九号)第二条第三項に規定する信書便物(次条及び第百十八条第五項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
2 (略)第八十二条 破産管財人は、破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは、これを開いて見ることができる。
2 破産者は、破産管財人に対し、破産管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる。
②借金の総額や借入れ先、滞納の有無などに関する調査
また、借金に関しても、金額や借入れ先、滞納の有無などについての調査がなされます。
自己破産を申し立てる際の提出書類の一つに、借入れ先及び金額などをまとめた「債権者一覧表」というものがあります。
この債権者一覧表には、企業からの借金か個人からの借金かを問わず、全ての借金を漏れなく記載しなければなりません。
ですが、自己破産を行う場合、複数社からの借り入れを行うなどして金銭的にも困窮し、生活が立ち行かなくなってしまっている方が多く、「どこからいくら借りたのか」がもはや把握しきれなくなっている方もいるかもしれません。
申立て後の通知がなく、債務者が破産手続を行ったことを知らないまま自己破産の手続が集結し、手続に参加できなかった債権者の債権については、免責されることがなく、帳消しの対象からは外れてしまいます。
そのため、せっかく自己破産をしたとしても、結局借金を返さなければならなくなる可能性があります。
また、勤務先・友人からの借入れがある事案においては、「会社に迷惑をかけたくない」「友人にだけは少しずつでも返していきたい」など、さまざまなお考えをお持ちの方もいらっしゃいます。
そうした思いから、一部の借入れについては裁判所に報告せず、こっそり返済を続けてしまうケースもごく稀に存在します。
これは、破産法上禁止された、一部の債権者を優遇して返済をしてしまう「偏頗弁済」(へんぱべんさい)に該当してしまう、絶対に許されない行為であるといえます。
最悪の場合は免責許可が下りず、借金を帳消しにできなくなる可能性すらあります。
そうした事態を防ぐため、自己破産申立てを行った場合、借金についても以下のような調査を行うことになります。
- a 申立人や債権者への聞き取り・書類提出
- b 信用情報の開示による借入れ状況の確認
- c 通帳の入出金に関する明細の確認
まずは、借入れ先及び金額などについて、債権者一覧表にて申告した内容に誤りがないかどうか、申立人や借入れ先である債権者に連絡を取り、両者の申告する借金の額にズレがないかどうかを確認することになります。
具体的には、債権者に対し、「破産債権届出書」を送付し、返送してもらいます。
債権者は、申立人に対して有する債権の金額を破産債権届出書に記載しますので、これらを集めることにより、申立人が申告した借入れ額と実際の借入れ総額とのズレがこの段階で明らかになります。
そのため、印象を良くしようとして金額を少なく申告しても意味がありませんので、そのようなことのないようにお気をつけください。
また、破産管財人がついた場合、CICやJICC、全国銀行個人情報信用センター(全銀協)などといった信用情報機関に対し、申立人の信用情報の開示請求を行い、借入れ状況等についての調査を行うこともあります。
信用情報機関から開示された資料には、個人からの借入れを除いたほぼ全ての金融機関からの借入れに関する情報が記載されていますので、信用情報の開示請求により、借入れ先の漏れについてはこの段階でほぼ明らかになります。
意図的に債権者を除外した場合はもちろんのこと、うっかりミスで債権者を漏らしてしまっていた場合でも、破産管財人の印象を悪化させ、後々不利な判断がなされる可能性を高めることにもつながります。
信用情報の開示請求はご自身でもできますので、自己破産を検討される場合、事前に信用情報の開示手続きを行い、借入れ先の漏れをなくしておくようにすると、申立ての準備もスムーズに行うことができます。
さらに、自己破産の申し立てを行う際には、手持ちの銀行口座全ての通帳につき、過去1〜2年分の入出金の履歴を記帳したものを提出する必要があります。
例えば、個人から借金をしている場合は、信用情報の開示では借入れの事実を明らかにできませんが、指定された個人名の口座に定期的に送金をしている場合、どういった理由での送金なのかを確認されることになります。
なお、通帳に関しては、先ほどご説明した財産隠しとも関係しますが、個人からの借入れに関する事実のほかにも、さまざまな点で事実確認を受けることがあります。
例えば、10万円前後の大きな出金がある場合などに、その使い道を聞かれたりすることもあります。
このように、通帳は申立人の借入れや生活に関する情報の塊であることから、通帳に関しては想像以上に細かくチェックされることになります。
数多くの破産事件を処理してきた破産管財人や裁判所の職員は、不自然なお金の動きを見つけることに長けているため、あまり知られたくないお金の使い道についても、隠し通すことは困難だと考えた方が良いでしょう。
③免責不許可事由の有無に関する調査
自己破産をすると、債務を免除することができます。
このように債務を免除することを免責(めんせき)といいます。
この免責は、どのような場合でも認められるわけではありません。
例えば、ギャンブルで借金が膨らんだ場合、裁判所は免責を認めない可能性があります。
このような免責を認めない場合を「免責不許可事由」といいます。
例えば、財産隠し、特定の債権者にだけ返済する行為、ギャンブルや浪費、虚偽の債権者名簿提出行為、管財業務妨害行為、7年以内の免責などが挙げられます。
自己破産の手続きでは、この免責不許可事由の有無を調べられることになります。
調査時にやっちゃいけないNG例とペナルティ
調査の内容としてこれまでのご説明の中でも一部触れていますが、調査の際にやってはいけないことがいくつかあります。
行為の内容 | 根拠条文 | ペナルティ |
---|---|---|
債権者を害する目的で、本来なら破産手続の中でお金に換えるべき財産を隠したり破壊したりすること | 破産法252条1項1号 |
|
帳簿などを隠滅したり偽造したりすること | 破産法252条1項6号 | 免責不許可事由に該当 →借金を帳消しにできなくなる |
虚偽の債権者名簿・債権者一覧表を提出すること | 破産法252条1項7号 | 免責不許可事由に該当 →借金を帳消しにできなくなる |
裁判所が行う調査に対して説明を拒絶したり、虚偽の説明をしたりすること | 破産法252条1項8号 | 免責不許可事由に該当 →借金を帳消しにできなくなる |
破産管財人の職務を妨害すること | 破産法252条1項9号 | 免責不許可事由に該当 →借金を帳消しにできなくなる |
破産管財人に対する説明義務・調査協力義務・重要財産開示義務に違反したこと | 破産法252条1項11号 | 免責不許可事由に該当 →借金を帳消しにできなくなる |
債権者を害する目的で、本来なら破産手続の中でお金に換えるべき財産を隠したり破壊したりすること
本来であれば債権者への分配に回せるはずの財産を意図的に隠したり破壊したりすることで、債権者に損害を与えることを防ぐため、こうした行為は免責不許可事由に指定されています。
違反した場合、免責不許可事由に該当するため借金を帳消しにできなくなるばかりか、より悪質な場合は詐欺破産罪(破産法第265条1項1号)に該当し、刑事処罰の対象となる可能性すらあります。
詐欺破産罪の法定刑は10年以下の懲役又は1000万円以下の罰金であり、事案によっては両方とも科されることもあります。
極めて重い犯罪となっているため、絶対にこのようなことをしないようにしましょう。
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。(詐欺破産罪)
第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。
一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為
(略)
帳簿などを隠滅したり偽造したりすること
自己破産手続にとって、帳簿などのお金にまつわる書類は、申立人のお金の流れなどを調べる上で極めて重要であるといえます。
このような書類を隠したり、記載内容を偽造したりした場合、正確な調査が実現できず、破産手続に大きな混乱を招く可能性がありますので、こうした行為も免責不許可事由に指定されています。
帳簿などを隠滅・偽造してしまった場合も、免責を受けられず借金を帳消しにできなくなる可能性がありますので、十分に注意してください。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
虚偽の債権者名簿・債権者一覧表を提出すること
自己破産手続を進めていくにあたり、誰が債権者なのかを調査する上で、債権者名簿・債権者一覧表は非常に大切な書類ですので、正確に記載する必要があります。
これらの書類について、意図的に虚偽の記載を行ったものを提出した場合も、免責不許可事由に該当し、借金を帳消しにできなくなる可能性があります。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
裁判所が行う調査に対して説明を拒絶したり、虚偽の説明をしたりすること
自己破産の手続を進める上で、裁判所は申立人に対し、これまでに見たような様々な調査を行います。
こうした調査を拒んだり、質問に対して虚偽の説明をしたりした場合も、免責不許可事由に該当するとされていますので、回答の際にも注意が必要になります。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
破産管財人の職務を妨害すること
破産管財人は、申立人の財産を適切に処分したり、免責を認めて良いかどうかにつき慎重に調査したりと、破産手続を進行していく上で欠かせない役割を果たします。
そのため、破産管財人の職務を妨害するということは、破産手続そのものを妨害することに直結しますので、そうした行為も免責不許可事由に指定されており、違反すると借金を帳消しにできなくなる可能性があります。
破産管財人の職務を妨害する行為としては、例えば管財人が提出を求めた書類を提出しない、あるいは意図的に破棄するなどが挙げられます。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
破産管財人に対する説明義務・調査協力義務・重要財産開示義務に違反したこと
また、破産管財人が就任した場合、申立人は破産管財人からの質問や調査に対応する義務、及び重要な財産を開示する義務を負います(破産法第40条1項1号、第41条、第250条2項)。
こうした調査などに応じない場合(破産管財人からの呼び出しを拒否して聞き取り調査に協力しないなど)、破産手続を進行することが困難になってしまうため、こうした行為についても免責不許可事由に指定されています。
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。
(破産者の重要財産開示義務)
第四十一条 破産者は、破産手続開始の決定後遅滞なく、その所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければならない。
(免責についての調査及び報告)
第二百五十条 (略)
2 破産者は、前項に規定する事項について裁判所が行う調査又は同項の規定により破産管財人が行う調査に協力しなければならない。
問題があるときの対処法
ここまでお読みいただいた方の中には、「親族や友人、勤務先に迷惑はかけられない」「正直に事情を話すと自己破産ができない」などとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
お気持ちはよくわかりますが、だからといって虚偽の報告をし、そのことが発覚して免責が許可されなかった場合、借金に苦しめられる状況は何も変わりません。
そうなってしまうと、結局親族などへの返済もできず、迷惑をかけてしまうという点では同じ結果になってしまいます。
むしろ、時間が経ってしまったことで利息や遅延損害金がさらにかさんでしまい、余計に苦しい状況に追い込まれることになります。
親族などへの迷惑を抑えたいというのであれば、例えば任意整理を選択して親族や勤務先への返済は引き続き続けるなど、他の方法での債務整理を行うこともあり得ます。
また、自己破産により借金を帳消しにできない可能性がある場合(免責不許可事由がある場合)は、任意整理の他にも、個人再生を選択し、借金を圧縮して返済の負担を軽くすることも考えられます。
債務整理に精通した弁護士に正直に相談することで、何が最善の選択なのかを慎重に検討し、できる限り希望に沿った解決ができる道を見つけることができるかもしれません。
逆に、弁護士に対しても正直に話していただけず、申し立て後に嘘をついていたことが発覚した場合、内容によっては事件処理の途中で弁護士が辞任せざるを得ないケースもあり得ます。
そういったことのないよう、借金を背負った経緯や財産の内容などについては、包み隠さず正直にお話しするようにしてください。
まとめ
以上、自己破産を申し立てた場合にどこまで調査される可能性があるかについて解説いたしましたが、いかがでしたでしょうか。
総じて言えるのは、嘘をついても裁判所や破産管財人の徹底した調査によって発覚する可能性は極めて高いこと、自己破産を申し立てるにあたっては、現在のご自身が置かれた状況について、隠すことなくありのまま報告するべきだということです。
嘘をついていたことが発覚してしまった場合、せっかく費用と手間をかけて自己破産の申し立てを行ったにも関わらず、借金を帳消しにできない可能性が生じてしまいますので、まさに「百害あって一利なし」といえるでしょう。
逆に、誠意ある対応を心がけることで、自己破産の手続きをよりスムーズに進めることができますし、場合によっては免責不許可事由がある場合でも、裁判所からも免責を許可してもらえる「裁量免責」(さいりょうめんせき)となる可能性を高めることができるかもしれません。
自己破産を認めてもらえないのではないかという不安がある方も、生活の立て直しのため、ぜひ一度債務整理に精通した弁護士にご相談ください。