妻が知らない間に消費者金融からお金を借りていたり、クレジットカードのリボ払いで借金が膨らんでしまっていたことが発覚した場合、夫である自分の財産を差し押さえられてしまうのではないかと、不安になってしまう方もいるのではないでしょうか?
借金を返済する義務は本人にのみ認められるのが原則です。
妻が作った借金であれば、今まで通り妻が借金を返済していけば何の問題もありません。
しかし、妻が借金の返済をできなくなってしまった場合には、夫の生活にも影響が出てしまうことがあり、正しい対処法をおこなわないと、取り返しのつかないことにもなりかねません。
この記事では、妻の借金が夫に与える影響や、影響を最小限に抑えるための対処法について、弁護士がわかりやすく解説していきます。
妻の借金が夫に与える影響とは?
消費者金融からの借入であっても、クレジットカード会社からの借り入れであっても、借金の返済義務は、名義人である妻に認められるのが原則です。
そのため、妻が自分名義の借金を滞納したとしても、夫には何ら直接的な影響はありません。
しかし、妻が借金の返済を滞納することで、夫に対して影響が出てしまうケースも存在します。
たとえば、次のようなケースでは、夫を含む家族に影響が出てしまう可能性があるでしょう。
- 夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合、夫にも借金の返済義務が生じる
- 持ち家を強制競売にかけられてしまうおそれがある
- 車を売却しないといけなくなる
- 不動産などの財産を差し押さえられる可能性がある
- 生活で使っている妻名義のクレジットカードや預金口座を差し押さえられてしまう可能性がある
- 妻の給与が差し押さえられ家計に響いてしまう可能性がある
- 妻名義の家族カードが使えなくなる
- 生命保険や子どもの学資保険など、妻名義の保険が強制解約になる
- 妻が家族の保証人になれなくなる
借金の返済ができなくなってしまうと、信用情報に傷がついてしまい、一定期間ローンを組んだり、他人の保証人になったりすることができなくなります。
いわゆるブラックリストに掲載されてしまうと、本人名義のクレジットカードも使用できなくなってしまうため、もし日常生活で妻名義のクレジットカードを使用していた場合には、日常生活に影響が出てしまう可能性があるでしょう。
また、持ち家などの不動産に関しては、妻名義の場合はもちろん、夫婦共有名義で購入していた場合であっても差し押さえの対象となります。
もちろん、夫の持分については差し押さえられることはありませんが、妻の持分だけ強制競売にかけられ、落札された場合には、落札者と夫との共有状態になります。
この場合、買い取った持分をどのように処理するのかを、夫と落札者で話し合うことになるでしょう。
このように、借金の名義人である妻名義の財産を差し押さえられることで、夫の生活に影響が出てきてしまうケースがたくさんあります。
自分の借金ではないから、夫婦といえども夫である自分に影響はないだろうと安易に判断すると、生活が立ち行かなくなってしまうおそれもあるのです。
夫の借金を妻が返済しなければならないケースとは
妻名義の借金は、妻本人が返済しなければならないのが原則で、たとえ夫婦であっても、夫には返済義務が認められません。
しかし、なかには妻の借金を夫が返済しなければならないケースが存在します。
たとえば、次のようなケースでは、妻の借金を夫が肩代わりする必要があるといえるでしょう。
- 夫婦の生活費のために仕方なく借金をした場合
- 夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合
それぞれのケースについて、詳しく解説していきます。
夫婦の生活費のために仕方なく借金をした場合
妻の借金の理由が、家賃や水光熱費の支払い、食費や日用品の購入など、夫婦が共同生活を送るうえで必要なものを購入した場合であれば、その借金は、妻だけでなく夫も支払う必要があります。
夫婦はお互いに独立して生活している訳ではなく、法律上お互いに協力して生活する義務を負っています。
民法は、夫婦の協力義務について、次のように規定しています。
ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
引用元:民法761条|e-Gov法令検索
家賃や水光熱費の支払い、食費や日用品の購入などは、この「日常の家事」にあたるため、夫はその債務について連帯して責任を負うことになります。
この「日常の家事」について生じた債務のことを法律上は「日常家事債務」と呼びますが、たとえば次のようなものであれば、日常家事債務にあたると判断される可能性が高いです。
- 家賃
- 電気代、ガス代、水道代
- 最低限の食費
- 消耗品や日用品にかかる費用
- 収入などからみて妥当な範囲での家具や家電の購入代
- 火災保険や生命保険などの保険代
- 家族の医療費
- 子どもの塾代や習い事、その他教育にかかる費用
これらはあくまでも一例であり、実際のケースで「日常家事債務」にあたるかどうかは、夫婦の職業やそれぞれの年収、貯金や不動産などの資産、夫婦の社会的地位や対象となる行為の具体的な態様や性質、夫婦が共同生活をしている地域社会の慣習などを、総合的に考慮して決定することになります。
たとえば、夫の月収が30万円前後で、子どもの学習教材を購入する行為は日常家事債務に該当しますが、夫の月収が7万円前後なのにもかかわらず、42万円の太陽熱温水器をクレジットカードで購入する行為は、日常家事債務の範囲外とした裁判例があります。
このように、日常家事債務にあたるかどうかは、それぞれのケースで具体的な判断が必要になってくるため、一概には判断できません。
借金の内容によっては、思わぬものが日常家事債務であると判断されてしまう可能性があるため、妻の借金に関して揉めてしまった場合には、借金を支払う必要はないと自己判断してしまうのではなく、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合
夫が妻の借金の連帯保証人になっている場合、基本的にどのような理由でした借金であっても、妻が借金を返せなくなったら、夫が肩代わりして返済する義務を負います。
連帯保証人とは、借金をした本人と連帯して返済していくことを保証する人のことを指します。
妻の借金の連帯保証人として夫がサインをしている場合には、借金の理由が「日常家事債務」にあたるかどうかは関係なく、返済する義務を負ってしまいます。
たとえば、妻が高級バッグや高価なネックレスなどを購入するためにクレジットカードを使用した場合、夫が、そのクレジットカードの連帯保証人になっているのであれば、夫にも返済義務が生じてしまうことになります。これは、パチンコや競馬などのギャンブルに使うための借金であっても同様です。
妻が毎月の返済ができなくなってしまった場合、妻と借金の返済について相談することなく、いきなり夫に対して返済を迫ることができるのが、連帯保証人の特徴になります。
そのため、債権者からいきなり妻の借金について返済するよう連絡がきた際に、まずは妻に対して連絡してくれという要求はできないことになります。
よくあるケースでは、妻が勝手に夫の印鑑を持ち出して、契約書や借用書の連帯保証人の欄に勝手に夫の名前で記名・押印をしてしまい、知らない間に連帯保証人になっていた、というようなケースです。この場合、業者から返済の連絡がきてはじめて自分が連帯保証人であったことに気づくでしょう。
もちろん、妻が勝手に記名・押印した契約書や借用書は本来無効であるため、筆跡鑑定等で自分のサインではないことを、法的に争うことができないわけではありません。
しかし、契約書や借用書のサインが自分のものではないことを証明しなくてはいけないのは夫側であり、筆跡鑑定等を利用するにしても、相当な手間や時間、費用がかかってしまいます。裁判で立証するのも簡単ではなく、最悪の場合、サインは有効なものであるとして、夫に支払い義務が認められてしまう可能性もあります。
契約書の有効性を自分1人で争っていくのは難しいため、お困りの際はまずは一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
なお、連帯保証人についてはこちらの記事もご参照ください。
妻の借金に対して夫はどのように対処すべき?
妻に高額な借金があることが判明した場合、夫はどのように対処するのがベストなのでしょうか。
対処法を間違えると取り返しがつかなくなってしまう可能性があるため、あらかじめ有効な対策をとっておく必要があります。
妻の借金が判明した場合に夫がすべき対処法は、おもに次の2つです。
- 借金の内容を確認する
- 債務整理により借金問題を解決する
それぞれの対処法について、具体的に確認していきましょう。
借金の内容を確認する
妻の借金が発覚した場合、まずは妻の借金の内容を確認してください。
消費者金融、銀行、クレジットカード、ローン契約など、どの業者にどれくらい借り入れがあって、毎月いくら返済しなければいけないのか、どれくらい滞納しているのかなど、とにかく具体的に借金の全容を把握するようにしましょう。
妻に直接話を聞くのが早いですが、夫に借金を隠そうとして、全ての借金について話してくれない可能性がないとはいえません。
また、借金が膨らんでしまうと、妻本人も借金の内容について把握できていない事もあり、口頭だけでは確認漏れが出てきてしまうおそれもあります。
そのため、借金の内容を把握する際は、できる限り契約書や直近で届いた明細書、通帳の履歴などから客観的に確認するようにしてください。
また、友人や会社の同僚などからお金を借りている場合や、数年前にお金を借りたけど、返済をせずに放置していた業者などがあるかもしれません。
借金の返済を放置していると、数年してからいきなり裁判を起こされてしまう可能性があります。
妻の借金の内容をできる限り把握したら、今後の返済についてどうするのかを考えることになりますが、夫婦で解決できないのであれば、法的な手段で解決を図っていくことになるでしょう。
債務整理により借金問題を解決する
妻が借金を払えず、夫もその借金の返済をするのが難しい場合には、債務整理をして、借金を減額もしくは支払いを免除してもらうことをおすすめします。
債務整理には3つの種類があり、自分にあった方法を選択することで、効果的に借金問題を解決する事ができます。
たとえば、任意整理であれば、利息をカットしてもらうことで毎月の返済負担を減らす事ができ、しかも裁判所を通さない手続きなので、複雑な手続きも必要ありません。
また、妻の借金額、任意整理では返済しきれないくらい高額であれば、自己破産をすることで借金の返済を全て免除してもらう事ができます。
妻が自己破産をしたからといって、夫も自己破産をする必要はないため、今後の支払いなどは夫名義でおこなうようにすれば、日常生活に影響が出ることも少ないでしょう。
まずは、妻の借金の総額や滞納状況、世帯収入などから具体的に返済計画を立ててみましょう。
どうしても返済が難しいようであれば、自分に合った債務整理の方法について、債務整理の経験が豊富な弁護士に相談してみることをおすすめします。
債務整理に強い弁護士に相談する
債務整理の相談をする場合、債務整理の経験が豊富な弁護士に相談すると良いでしょう。
任意整理の場合、個人で業者と交渉しても、なかなか利息のカットまでは応じてくれないケースが多く、業者が多ければ多いほど、交渉の負担が重くなります。
また、自己破産や個人再生では、裁判所に提出する書類を収集する作業で挫折してしまうケースが多く、複雑な手続きを夫婦だけでおこなうのは難しいケースが多いです。
その点、債務整理に強い弁護士であれば、債務整理の手続きを効率よく進めるノウハウを熟知しているため、スムーズに借金問題を解決する事ができます。
また、債務整理を弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 業者からの返済の督促が止まる
- 和解交渉がまとまるまでは借金の返済をせずに弁護士費用の支払いや返済に向けた貯蓄に回す事ができる
- 借金を免除・減額できる可能性がある
- 個人再生であれば、家や車を残しながら借金額を減額できる
弁護士に債務整理を依頼した場合、弁護士はまず業者に「受任通知」と呼ばれる書面を送ります。
この書面は、「債務整理をおこなうために弁護士が介入したので、以降の連絡は全て本人ではなく弁護士にしてください」という内容が記載された書面になります。
金融業者は、この書面が届いたら、それ以降本人に連絡することはなくなるため、支払いの督促なども止まることになります。
借金問題に苦しんでいる方の多くは、業者からのしつこい返済の督促に悩んでいる事が多いため、この督促が一切来なくなるだけで、精神的負担がだいぶ軽減されることになるでしょう。
また、弁護士が介入している間は業者がいきなり裁判してくる可能性は低くなるため、妻の財産が急に差し押さえられてしまい、生活に支障を来してしまうおそれもなくなるでしょう。
さらに、弁護士が詳細な債務調査をおこなった結果、昔の借金についてはすでに時効が成立していて、返済義務がなくなっている可能性もあります。
借り入れの内容によっては、借金がなくなり、さらに過払い金が戻ってくる可能性もあるため、まずは妻の債務について、どれくらい借金を減額できるのか、相談してみるのが良いでしょう。
なお、債務整理をする場合の弁護士選びについては、こちらの記事もご参照ください。
夫婦関係が悪化したら離婚も視野に
妻に多額の借金が発覚した場合、まずは今後のことについて、夫婦で話し合う時間を作ってください。
なぜ借金を作ってしまったのか、借金を完済するにはどうしたらいいのか、今後の生活についてどうしていくべきなのかなど、話さなくてはいけないことはたくさんあるでしょう。
もしも、借金が原因で夫婦関係が悪化してしまった場合には、離婚することも視野に入れる必要があるでしょう。
ただし、いざ離婚をするとなると、今後の生活のことや家や車などの財産分与、親権や養育費などの子どもに関することについても決める必要があり、時間も手間もかかります。
妻が借金を隠していたことから怒りが湧き上がってきて、一時の感情で離婚を要求してしまうと、あとあと後悔してしまうかも知れません。
お互いの心のうちをさらけ出ししっかり話し合うことで、離婚せずに一緒に借金完済を目指せるのがベストですが、壊れた夫婦関係を元に戻せないようであれば、話し合いで離婚条件をお互いに出し合って、協議離婚をすることになるでしょう。
もし、離婚条件で折り合いがつかず、話が揉めてしまうようであれば、裁判所を通して調停離婚を目指していくことになるでしょう。
なお、一方のみが離婚を希望しても認められないのが原則で、通常夫婦のお互いが離婚に同意している必要があります。
しかし、民法では、次にあたるようなケースの場合、例外的に、夫婦の一方からの要求であっても、離婚が認められるとしています。
1 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
- ① 配偶者に不貞な行為があったとき。
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第1号から第4号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
妻が多額の借金をしていたことを理由として離婚を要求する場合、「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」にあたる可能性があり、借金の内容や借金額によっては、夫からの離婚の請求であっても、離婚が認められる可能性があるでしょう。
離婚の話し合いがスムーズにいかない場合、妻の借金が法定の離婚事由に該当するかどうかも含めて、弁護士に対応を依頼するのがいいでしょう。
なお、離婚原因に関する詳しい解説については、こちらの記事もご参照ください。
離婚したいときは離婚にくわしい弁護士へ相談する
妻の借金が原因で夫婦関係が悪化し、離婚をすることになった場合には、離婚トラブルに精通している弁護士に相談するようにしましょう。
債務整理についても同様ですが、弁護士にはそれぞれ力を入れて取り組んでいる分野があります。
相続分野に注力している弁護士もいれば、刑事事件に注力している弁護士もいるのです。
その点、離婚トラブルに精通している弁護士であれば、離婚に関する豊富な知識とこれまでの経験から、離婚条件について夫に有利になるよう交渉を進める事ができ、手続き自体もスムーズに進める事ができるでしょう。
財産分与、婚姻費用、年金分割、慰謝料、親権、養育費、面会交流など、離婚の際は決めなくてはならない事が多岐に渡り、個人だけで交渉を優位に進めることはなかなか難しいケースが多いでしょう。
そもそも、当事者同士ではお互いにヒートアップしてしまい、話し合いすらまともにできないケースも少なくありません。
弁護士であれば、第三者としての立場から冷静に交渉進める事ができるだけでなく、巧みな交渉術を駆使してこちらに優位に交渉を進める事ができるでしょう。また、離婚調停や離婚訴訟などの裁判所の手続きもスムーズに進める事ができます。
個人で交渉を進めて、いたずらに時間をかけてしまうようであれば、離婚問題に注力している弁護士に早い段階から相談するのが良いでしょう。
借金問題を解決できる債務整理とは?
妻の借金問題を効果的に解決することができる債務整理とは、今ある債務を整理して、借金問題を解決する具体的な対策を施す手続きのことです。
債務整理には、おもに次の3つの方法があります。
- ① 任意整理
- ② 自己破産
- ③ 個人再生
債務整理ごとにメリットやデメリットが異なり、それぞれの状況に合った債務整理を選択することで、効果的に借金問題を解決する事ができるでしょう。
ここからは、それぞれの手続きについてわかりやすく解説していくので、まずは手続きの特徴について理解するところから始めましょう。
自己破産とは
自己破産とは、借金を全額免除してもらう手続きのことで、裁判所に必要書類を提出することでおこないます。
税金や年金の支払い、一部の債務については自己破産をしても免除されませんが、基本的に妻の借金が全額なくなるため、生活を立て直す事ができるでしょう。
また、自己破産をすると、持ち家や車などを手元に残しておくことはできませんが、妻が自己破産をしても、夫名義の財産を処分する必要はありません。
そのため、家や車が夫名義になっていれば、妻が自己破産をしても、それらを手放すことにはなりません。
また、弁護士に依頼すれば、効率よく必要書類を集める方法について、アドバイスをしてもらえます。
自己破産の場合、手続きそのものよりも、その前段階である必要書類を集める時点で挫折してしまうケースが非常に多いため、自己破産を検討しているのであれば弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
なお、自己破産の詳しい解説については、こちらの記事を参考にしてください。
自己破産の夫への影響
妻が自己破産をしても、夫に直接影響が出るわけではありませんが、すでに解説したように、生活のさまざまな面で、間接的に影響が出てくる可能性があります。
クレジットカードが使えなくなることで日常生活に支障を来たすおそれがありますし、また、家や車を妻名義で購入していたような場合には、手元に残しておくことはできません。
ただし、妻が自己破産をしても夫名義の財産を差し押さえられることはないため、今後の生活では夫名義の家族カードなどを使うことで、日常生活における影響を最小限にすることが可能です。
なお、自己破産においては、同居している夫の収入を証明する書類など、夫に関する書類も必要になる可能性があります。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所に申立てをして、今ある借金を5分の1程度に減額してもらい、残りの金額を3年前後で分割して返済していく手続きのことです。
裁判所を通す手続きで、自己破産と同じように必要書類を提出することになりますが、持ち家や車などの財産を手元に残したまま手続きを進める事ができます。
そのため、任意整理では毎月の返済が厳しいが、持ち家を手放したくないため自己破産は避けたい場合に、選択すべき手続きとなります。
任意整理と自己破産の間の手続きであるとイメージしてもらうとわかりやすいかもしれません。
なお、個人再生の場合、今後返済をしていくことができるかどうかをチェックするテストがおこなわれます。
この「履行テスト」は、数か月にわたり継続的に返済していくことになりますが、返済が滞ってしまうと個人再生を認めてもらえない可能性があるため、注意が必要です。
なお、個人再生の詳しい解説については、こちらの記事を参考にしてください。
個人再生の夫への影響
妻が個人再生の手続きをおこなった場合、同じ裁判所を通す手続きである自己破産と同様に、夫の生活に間接的な影響が出てくるおそれがあります。
ただし、個人再生だからといって、自己破産とはちがう何か特別な影響が出るわけではないため、たとえ履行テストで返済が継続的にできなかったからといって、夫の財産を差押えられたりすることはありません。
家計簿をつける必要がありますので、その際に夫は協力しなければなりません。
任意整理とは
任意整理とは、消費者金融やクレジットカード会社など、借金をしている業者に対して、分割回数や利息のカットなど、返済条件の見直しをしてもらえるように交渉する手続きのことです。
自己破産や個人再生と違い、任意整理は裁判所に申立てをする必要がありません。
そのため、必要な書類もとくになく、弁護士に依頼すれば、あとは弁護士が業者と返済条件に関する交渉をおこなってくれます。
任意整理の特徴は、次の通りです。
- 債権者からの支払いの督促が止まる
- 将来利息をカットし、分割回数を調整することで、毎月の負担額を減らせる
- 契約内容によっては過払い金が戻ってくる
- 最終取引から5年経過していれば、時効で借金が0になる
- 業者によっては5年以上の長期分割に応じてもらえる可能性がある
- 自分で選んだ業者だけ任意整理の対象とする事ができる
- 裁判所を通さないため、提出書類も複雑な申請も不要
- 手続き費用が安い
ただし、任意整理はあくまで弁護士と業者との私的な交渉になるため、これまでの契約状況次第では、交渉に応じてくれない可能性もあるため、詳しくは弁護士に相談してみることをおすすめします。
なお、任意整理の詳しい解説についてはこちらの記事をご参照ください。
任意整理の夫への影響
妻が任意整理をしたとしても、夫に対する影響は原則ありません。
ただし、任意整理で交渉がまとまったあとに返済が滞ってしまうと、まとまった和解の内容が破棄されてしまい、妻に対して強制執行がおこなわれてしまう可能性があります。
返済できなくなってしまうと今までと状況が変わらなくなってしまうため、和解交渉がまとまったあとは、夫も妻の返済を管理していくことをおすすめします。
借金減額をシミュレーターで簡単に診断
任意整理は、減額シミュレーターを利用することで、事前に自分の借金をどれくらい減額できるのかを、チェックする事ができます。
減額シミュレーターに複雑な操作は不要です。
個人情報の入力も不要で、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、診断結果を最短30秒で確認する事ができます。
弁護士に相談する前に、まずは一度減額シミュレーターを使って診断してみると、自分に合っている手続きがどれなのかを、おおまかに知る事ができるでしょう。
まとめ
妻に多額の借金があり、返済が滞っていたとしても、夫がその借金を返済する義務を負うことはないのが原則です。
しかし、借金の理由が「日常家事債務」にあたる場合や、夫が妻の借金の「連帯保証人」になっている場合には、夫も妻の借金を支払うべき義務を負ってしまう可能性があります。
また、借金の滞納が続いてしまうと、業者から財産を差し押さえられてしまう可能性があります。また、夫婦の生活にも影響が出てしまいます。そのため、取り返しがつかなくなる前に、債務整理等で生活を立て直すことを検討してください。
デイライトでは、債務整理に詳しい弁護士たちによる破産再生部を設け、夫婦の借金の整理を検討している方々のご相談に対応しています。
ZoomやSkypeによる相談も受け付けております。
借金でお困りの方は、当事務所までぜひ一度お気軽にご相談ください。