会社の私的整理・任意整理とは
会社の私的整理とは、裁判所の関与を受けずに、債権者と話し合いを行い、債務免除や支払猶予を行う手続きをいいます。
私的整理は、民事再生法等の債務整理のための法律に基づくものではなく、債権者に対する強制力はありありません。
債権者の任意の和解契約に基づいて進めるものなので、「任意整理」とも呼ばれています。
私的整理のメリット・デメリット
同じ再建型であっても、民事再生などの法的整理は、金融機関だけでなく、仕入先などの取引上の債務(買掛金)も基本的には対象となり、返済が停止されてしまう。
これに対して、私的整理は、取引先を対象外として債務整理を進めることができるため信用を保つことができ、事業価値の毀損を防止できる。
例えば、一部の少額の取引先には、弁済して取引関係を維持するなど、個別の事案に応じた再建計画の策定が可能。
民事再生等の法的整理は裁判所に対して予納金を納めなければならない。
また、この予納金は、民事再生の場合最低150万円から、会社更生の場合は数千万円にも上り、高額である。
私的整理は裁判所を通さないため予納金を支払う必要がないというメリットがある。
民事再生などの法的整理は、債権者全員の同意を得なくても、多数決で可決される。
これに対して、私的整理は、あくまで債権者の任意による話し合いであり、すべての債権者が同意してくれるか不明である。
私的整理は、裁判所が関与せずに行うため、手続の透明性と債権者の公平性について懸念される。
また、私的整理のプロセス、内容等の情報開示が不十分である。
私的整理に関するガイドラインとは
私的整理の「透明性・公平性」に関する問題点を克服するために、全国銀行協会、日本経団連によって策定されたのが「私的整理に関するガイドライン」です。
このガイドラインは、主要債権者(メインバンク)が手動で行う企業債権の手続です。
主要債権者が債務者とともに再建計画を策定し、主要債権者が他の債権者からも再建計画について同意を得なくてはならないため、主要債権者の負担が重いものとなります。
そのため、対象となる債務者は、主要債権者がそのような重い負担をしてでも、事業再生するに値する規模の大きい会社であることが想定されます。
私的整理の方法
私的整理として利用される基準や制度としては、上記の私的整理に関するガイドラインのほか、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会による私的整理手続、整理回収機構によるRCC企業再生スキームといったものがあります。
下表は、それぞれの概要や特徴等を比較したものです。
事業再生ADR | 中小企業再生支援協議会 | RCC企業再生スキーム | |
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概要 | 債権者と債務者との紛争を公正・中立な第三者(事業再生実務家協会)が仲介し、解決する手続。 ADRは裁判外紛争解決手続きのこと。 |
業績が悪化した企業の再生支援を図るため、全国47都道府県に設置されている公正中立な公的機関 | 整理回収機構(RCC)が行う私的整理手続(企業再生の対象、手続、再生計画案の要件をまとめたもの) |
対象 | 企業 | 中小企業 | 企業 |
主導 | 債権者と債務者 | 第三者機関 | 第三者機関 |
経営陣への影響 | 原則として退任 | 責任の明確化 | 原則として退任 |
株主への影響 | 株主の権利は原則として一部消滅 | 責任の明確化 | 株主の地位の低下 |
特徴 | 弁済は3年以内をめど |
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私的整理が成功する3つのポイント
POINT①専門家のサポートで段取り良く進める
会社を再建するための方法は、私的整理のほか、法的整理である、民事再生や会社更生があります。
また、私的整理については、上述のいくつかの制度があります。
これらの制度から、企業の実情に応じた適切な手段を選択するためには、倒産や再生に精通した専門家に相談し、サポートを受けることが有益です。
POINT②早いタイミングでの相談が重要
また、事業再生のためには、スピードが重要です。会社の業績が悪化し、資金繰りは困難となった状態では、事業再生をするための体力が残されていない場合があります。
この場合、事業再生を断念し、破産を検討しなければならなくなります。
POINT③弁護士に債権者と交渉してもらう
任意整理には様々なタイプがあります。
規模が小さなものは、社長が銀行等を訪問して交渉する程度のものもありますが、ある程度の負債額となると、それでは不十分です。
負債額が大きくなった場合、弁護士に依頼して債権者と交渉し、支払猶予や負債の一部カットなどを行う必要があります。
私的整理のご相談について
私的整理については倒産・再生問題に関する専門的な知識・経験が必要となるため、当事務所では破産再生チームに所属する弁護士がサポートしております。
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