Q:任意整理の場合、家族にバレないようにできますか?
A:通常の場合はご家族にバレる心配はありません。
当事務所には、このようなご相談が多く寄せられています。
◎ 家族に余計な心配はかけたくない
◎ 借金問題がバレると離婚されるかもしれない
◎ 借金問題を知られずに負債を整理したい
借金問題を知られることのデメリット
家族に借金問題について知られたくないという方は多くいらっしゃいます。
これは、多重債務に対するネガティブなイメージを持っている方が多いことが原因です。
例えば、「借金を返せない」と聞くと
◎ 借金取りからの過酷な取り立てがなされるのではないか
◎ 家を出ていかなければならないのではないか
◎ 本人だけでなく子どもたちにも悪影響があるのではないか
などの漠然とした不安感があります。
実は、任意整理の場合、上記のような心配はほとんどありません。
しかし、法的に大きなデメリットがなかったとしても、「借金問題を弁護士に依頼している」こと自体で「お金にだらしない」というレッテルが貼られてしまう可能性があります。
そのため、できることなら借金問題を知られたくないというのは自然な考えだと思います。
任意整理がバレる場合とは
では、どのようなケースで任意整理がバレてしまうのか、以下、具体例を出して解説します。
債権者からの通知・連絡がくる
借金の返済が滞ると、債権者は登録されている債務者の住所に督促状等を送付します。
そして、ご家族がこの書面を見ると、あなたの借金が発覚します。
また、債権者が債務者に電話をかけるなどして、家族に発覚するケースもあります。
対応策
【弁護士から受任通知を送付してもらう】
任意整理を弁護士に依頼すると、弁護士は債権者に対して「受任通知」を送付します。
受任通知を送付すると、債権者(貸金業者や債権回収会社)は取り立てができなくなります。
なお、貸金業者や債権回収会社からの直接の取立てが停止するのは、れっきとした法律上の効果です。
すなわち、貸金業法は、次のとおり、弁護士からの受任通知後の貸金業者による取立て行為を規制しています。
(取立て行為の規制)
第21条 貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
(中略)
⑨債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があつた場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。
また、債権回収会社(サービサー)については、債権管理回収業に関する特別措置法に規定されています。
第18条8項
債権回収会社は、債務者等が特定金銭債権に係る債務の処理を弁護士又は弁護士法人に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとった場合において、その旨の通知があったときは、正当な理由がないのに、債務者等に対し、訪問し又は電話をかけて、当該債務を弁済することを要求してはならない。
貸金業者や債権回収会社は、上記の法律に違反すると重いペナルティがあります。
すなわち、貸金業者は2年以下の懲役、300万円以下の罰金、あるいは、その両方の刑罰を科すものと定めており、さらに、業務停止や貸金業登録取消しなどの行政処分の対象となる場合もあります。
また、債権回収会社の場合も同様に、債権回収会社の許可の取消し等の行政処分を受ける場合があります。
そのため債権者はペナルティを恐れて、受任通知後の取り立てがなくなり、その結果、家族にバレる可能性が低くなるのです。
なお、受任通知によって、法的に禁止されるのは直接の取り立て行為であり、裁判手続による債権回収までも禁止されるわけではありません。
もっとも、通常の場合、債権者は一定期間、訴訟を提起しないので、事実上は訴訟提起の可能性も低いといえます。
クレジットカードやローンを利用できない
消費者がクレジットやローンなどを利用する際、会員会社は消費者の信用力を判断するために信用情報機関に登録されている消費者の信用情報を確認しています。
信用情報機関は、日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)、シー・アイ・シー(CIC)の3つがあり、これらの機関は互いに信用情報を共有しています。
任意整理を行うと、5年間、信用情報機関に「事故情報」として登録されることとなります。
そのため、任意整理を行うと、5年程度はクレジットカードを作ったり、住宅ローンや自動車ローンを組むことができなくなります。
なお、債務整理には、任意整理のほか、個人再生、破産があります。
信用情報機関が事故情報として掲載するのは、手続きによって異なりますが、これをまとめると下表のようになります。
過払いについては、返しすぎたお金を返してもらう手続きですので、信用情報機関に掲載はされません。
任意整理 | 個人再生 | 破産 | 過払い | |
---|---|---|---|---|
日本信用情報機構(JICC) | 5年間 | 5年間 | 5年間 | 掲載されない |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 5年間 | 10年間 | 10年間 | 掲載されない |
シー・アイ・シー(CIC) | 5年間 | 5年間 | 5年間 | 掲載されない |
日常生活において、クレジットカードやローンを利用できないと、家族から怪しまれます。
ご家族から、「なぜローンが通らないの?」などと問いただされると、そこから過去の任意整理が発覚する可能性があります。
弁護士とのやり取り
弁護士に任意整理を依頼すると、法律事務所から依頼者の自宅に書類が送付されることがあります。
もちろん、書類は封筒(通常は「親展」になっています。)に入っているので開封しないと中を確認することはできません。
しかし、ある日突然、法律事務所から封筒が届くと、ご家族はびっくりされます。
ご家族から、「なぜ法律事務所から文書が届くの?」と問いただされると、そこから任意整理を依頼していることが発覚する可能性があります。
対応策
【弁護士には自宅に郵送しないようにお願いする】
ご依頼の際に、弁護士に対して、家族にバレたくないと伝えると、多くの弁護士は、バレないように配慮してくれると思います。
当事務所では、家族にバレたくないという方には、以下のサポートを行っています。
・自宅へ郵送しないように弁護士が担当秘書に周知徹底します。
・原本などを郵送する必要がある場合、「弁護士」や「法律事務所」の記載がない封筒で送付します。
・事務連絡等についてはメールでのやり取りを基本とします。
家族が保証人になっている場合
あなたの借金をご家族が保障(連帯保証や連帯債務など)している場合、任意整理がバレる可能性があります。
なぜならば、債権者は、あなたの返済が滞ると、保証人に対して返済を求めるからです。
対応策
【弁護士に、家族が保証人になっている負債については任意整理の対象にしないでほしいと伝える】
任意整理は、破産や個人再生などの法的整理と異なり、すべての債権者の債務整理を依頼する必要がありません。
家族が保証人になっている負債があれば、その分については任意整理の対象から外しますし、これまでどおり返済することで、家族に発覚しないようにすることが可能です。
お悩みの方はお気軽にご相談ください
以上から、任意整理については、弁護士にご依頼されることで、ご家族にバレるリスクを減らすことが可能です。
もっとも、クレジットカードやローンを利用できないことで、将来、ご家族に怪しまれる可能性もあります。
このような後ろめたさを感じるよりも、ご家族に正直に話すことも検討されても良いのではないでしょうか。
債務整理と聞くと、ネガティブなイメージをお持ちの方が多くいらっしゃいますが、任意整理はもちろん、他の法的整理も、世間一般で考えられているような不利益はありません。
当事務所では、ご希望であれば、ご家族の方も同席のもと、債務整理の影響等についてわかりやすく解説いたしますので、ご家族の方にも安心していただけるかと存じます。
任意整理については、当事務所までお気軽にご相談ください。