借りた本人が自己破産した場合、連帯保証人は債権者から返済をすぐに請求されることとなります。
支払えないと連帯保証人本人も自己破産しなければならない場合もあるなど、影響は決して小さいとはいえないでしょう。
この記事では、自己破産した場合に連帯保証人にどういう問題が生じるおそれがあるのか、また問題が生じたときにはどういう対処をする必要があるのかを分かりやすく解説していきます。
連帯保証人とは?
連帯保証人とは、借金した本人(主債務者)が返済する・しないにかかわらず、借金をした本人と同じ責任を負う人のことを指します。
これを読んで、「借金をした本人と同じ?保証人だから、本人が返済できないときにはじめて返済しなければならなくなるんじゃないの?」と疑問を持たれた方もおられると思います。
しかし、連帯保証人と単なる保証人とでは責任の大きさが全く違います。
したがって、責任の大きさだけを見れば、「連帯保証人=主債務者」というふうに考えておきましょう。
ただの保証人と「連帯」保証人との違い
どうして連帯保証人の責任は借りた本人と同等といえるのでしょうか。
それは、連帯保証人には、ただの保証人と違っている部分があるからです。
その一つが、連帯保証人がローン会社などの債権者から借金を返すように言われたときに、「先に本人に請求してください。」といっても、ローン会社がこれを拒否したら法的には支払わなければならないということです。
もう1点は、借金をした本人に財産がある場合に、「まずは本人の財産から借金の返済に充ててください。」といっても、ローン会社がこれを拒否したら法的には連帯保証人の財産から支払わなければならないということです。
このように、法律上は、ローン会社などの債権者が借りた本人と連帯保証人のどちらに先に借金の返済を請求しても問題がないですし、請求された連帯保証人は請求されたら返済しなければならないというわけです。
連帯保証人の責任の重さを分かっていただけたのではないでしょうか。
通常の保証人と連帯保証人とでは、ここまで責任の重さに違いがあるのです。
もっとも、実際上は、債権者から連帯保証人に対して本人よりも先に請求するというケースはほとんどありません。
法的にはできるけどしていないのが現状といえるでしょう。
自己破産で連帯保証人にどんな影響がある?
では、連帯保証人となっていた借金について、借りた本人が自己破産した場合、連帯保証人にはどういう影響が及ぶのでしょうか?
債権者から返済をすぐに請求される
自己破産をすると、債権者から連帯保証人に対して借金の返済を請求されます。
連帯保証人は、これに応じて返済する義務があるため、何も対処しなければ支払いをしなければなりません。
ちなみに、自己破産手続が終わると破産をした本人の借金がゼロになるから、連帯保証人である自分も返す必要がなくなると考えている方もおられるかもしれませんが、それは誤りです。
たしかに、自己破産手続が終了すれば、基本的にはこれまでの借金が帳消しになります(これを専門用語で「免責(めんせき)」といいます。)。
しかしながら、免責によって借金が帳消しになるのは破産をした本人だけです。
つまり、借りた本人の借金だけが帳消しになり、連帯保証人は依然として返済しなければならない状態が続くということです。
支払えないと連帯保証人本人も自己破産しなければならない場合も
借りた本人が自己破産し、連帯保証人が債権者から請求を受けた場合、連帯保証人には返済すべき義務があるので、請求から逃れることは出来ません。
どうしても資力的に返済ができない場合、連帯保証人も自己破産を検討しなければなりません。
仮に自己破産するとなると、連帯保証人自身に持ち家や車、更には高価な貴金属類などがある場合には、それも全て売却しなければならなくなります。
特に持ち家については、連帯保証人にご家族がおられる場合にはそのご家族も住んでいる自宅を出ていかなければならなくなりますから、影響は決して小さいとはいえないでしょう。
もっとも、自己破産以外の債務整理手続を選択した場合には、自宅をそのまま残すことが出来る場合があります。
もし今この記事を読まれている方で実際に誰かの借金の連帯保証人となっていて、債権者からの請求がきて困っているという方がおられましたら、自己破産以外の債務整理手続を選択することができるかどうかも含め、一度弁護士に相談されることを強くおすすめいたします。
問題への対処法
ここまでは、借金をした本人である主債務者が自己破産する場合に連帯保証人に生じる問題について説明してきました。
次は、以上で紹介した問題への対処法をご紹介します。
弁護士に依頼して代理人(窓口)になってもらう
まずは何より、弁護士に相談することです。
弁護士に代理人となってもらって、ローン会社などの債権者と示談交渉をしてもらえれば、自己破産をしなくても分割で返済を続けていくことが出来るかもしれません。
連帯保証人が払えない場合は一緒に自己破産してもらう
もし、連帯保証人の方も支払えないという場合には、借りた本人と一緒に自己破産してもらうことになります。
例えば、奨学金を借りているお子さんの保証人にご両親がなられていて、何らかの理由でお子さんが自己破産をする場合、お子さん本人から前もって破産するということを聞き、その弁護士に一緒に破産の手続を依頼するということも一つの対応策でしょう。
本人が破産以外の方法(任意整理など)を検討する
ここまで繰り返し述べてきたとおり、借りた本人が自己破産すれば、連帯保証人に対して請求されることになります。
自分のために連帯保証人となってくれた人にこのような迷惑をかけたくないという本人の方には、破産が回避できるのであれば、任意整理など他の手続をとることをおすすめいたします。
任意整理とは?
任意整理とは、弁護士が代理人となって、ローン会社や銀行、クレジットカード会社などの債権者と交渉して借金の減額や返済期間に無理のない変更を行う手続のことをいいます。
この交渉にあたっては、弁護士は引き直し計算(引き直し計算については後で説明します。)を行って減額した元本額を提示したり、金利をカットできないか交渉をします。
また、返済期間も3年から5年ほどに見直します。
この交渉により、あなたの月々の返済額を減額することができます。
任意整理は誰もが利用できるわけではありません。
「任意」という言葉に現れているように、債権者と任意の交渉により借金の額や内容を変更するものですから、任意整理に債権者が応じてくれなければなりません。
そのため、月々の返済額があまりに少なかったり、あなたが減額後の借金を毎月きちんと返済し続ける確率が低そうだったりした場合には、債権者は任意整理には応じてくれないでしょう。
そういった意味で、任意整理を利用するためにはいくつかの条件があるといえます。
任意整理ができる主な条件は以下のとおりです。
任意整理できるかについては、以下の式によってチェックしてみてください。
ただし、以下の式はあくまで目安です。
借金の総額(減額後)<月々の返済額 × 36 ⇒ 任意整理できる余地あり
借金の総額(減額後)>月々の返済額 × 36 ⇒ 任意整理できない可能性も(民事再生や自己破産をとった方が適切な場合が多い)
任意整理は、3年~5年間、一定の金額を分割して支払うことになりますから、安定して収入が得られる職業に就いていることが望ましいです。
安定した職業に就いていると、債権者も任意整理に応じてくれる可能性は高くなるでしょう。
任意整理の条件については、過去に詳しく解説した記事もありますので、そちらもご覧ください。
連帯保証人についてのQ&A
連帯保証人が死亡したらどうなるの?
連帯保証人が死亡した場合でも、保証人の地位は相続されます。
ですので、相続人が連帯保証人の地位を継承することとなります。
連帯保証人に迷惑をかけたくないので、連帯保証人がついている借金だけ先に優先的に返済しても問題ない?
絶対にいけません。
連帯保証人に迷惑をかけたくないという気持ちは分かりますが、そのような返済は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、法律上明確に禁止されており、違反した場合にはあなたの自己破産手続において借金を帳消しにしてもらえなくなるおそれがあります(破産法252条1条3号)。
したがって、自己破産を進める前に、連帯保証人がいる借金があるかどうか、ある場合には本当に自己破産をするのか、するとしてどのタイミングで連帯保証人に話をするのかについて、弁護士に相談してしっかりと検討するようにしましょう。
まとめ
以上、ここまで借金をした本人の自己破産が連帯保証人に与える影響などについて解説してきました。
この記事が、自己破産するかで悩まれている方、請求を受けてしまった連帯保証人の方のお役に少しでも立てれば幸いです。
デイライトでは、破産再生部を設けており、借金問題に精通した弁護士が皆様を強力にサポートしています。
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