個人再生の手続中、何度か官報に名前などの情報が載ってしまいます。
この記事では、官報とは何か、官報にはどういった情報が掲載されるのか、掲載されるタイミングやデメリットなどについて解説していきます。
目次
個人再生すると官報に掲載されるの?
個人再生をすると、借金は減額されます。
一方で、個人再生の手続中、何度か官報に名前などの情報が載ってしまいます。
官報とは?
官報は、法律、条約、府省令などの法令のほか、国の広報、公告類等を掲載する国の機関紙のことをさした名称です。
引用元:官報(法令情報)の調べ方|リサーチ・ナビ|国立国会図書館
なぜ官報に掲載されるのか?
では、なぜ個人再生した場合にそれが官報に掲載されてしまうのかというと、それは再生債務者(個人再生する人のことをいいます。)にお金を貸している人達に対して個人再生手続が始まるということを知らせて、債権者が手続に参加する機会を与えるためです。
債権者が個人再生手続に参加すれば、全額ではありませんが一定の割合に応じて借金が返ってくる可能性があります。
しかし、参加自体していないとなれば、一切返ってこないおそれがあります。
個人再生の申立てのときに裁判所に提出する「債権者一覧表」(どの債権者からどれだけ借りているのかを、自身が自己申告したものをいいます。)に記載があった債権者に対しては、裁判所から個別に通知がされるので個人再生手続に参加しそびれるということはないのでしょう。
しかし、この債権者一覧表に記載がなかった債権者については、個人再生手続が開始されることが一切知らされないまま手続が進んでしまい、少しはお金が受け取れたかもしれないのに、気が付けば全く参加できないまま借金が帳消しにされてしまっているということになります。
そのような状況になることを未然に防ぎ、債権者に個人再生手続への参加の機会を与えるために、官報に掲載することにしているのです。
官報にはいつ、どのような情報が掲載される?
いつ、何回掲載される?
官報には、
- ① 個人再生手続開始決定時
- ② 借金の返済計画(専門用語で「再生計画案」といいます。)の決議をすることを決定(専門用語で「付議決定」といいます。)した時
- ③ 再生計画が認可された時
- ④ 個人再生手続が終了したとき
に掲載されるというイメージです。
ですから、回数としては大抵の場合は3〜4回です。
法律の根拠はあるのか?
官報への掲載ですが、民事再生法という法律に根拠があります。
なお、これからいくつか紹介する条文に記載されている「公告」という言葉が官報に掲載されることを意味しています。
例えば、個人再生手続開始時の官報掲載の根拠は、以下のとおりです。
この官報掲載のタイミングとしては、手続が始まる一番最初となります。
他の具体例として、再生計画案の付議決定をしたときの官報掲載の根拠は以下のとおりです。
「公告」とは、ある事柄を一般に知らせることをいいます。
引用元:民事再生法|e-Gov法令検索
このように、個人再生について官報に載るというのは法律に従った運用のため、載らない方法ということは残念ながらありません。
官報にはどのような情報が掲載されるのか?
では、官報にはどういった情報が掲載されるのか、実際の記載例をご紹介します。
令和5年(再イ) 第◯◯号
◯◯県◯◯市◯丁目◯◯番地◯
再生債務者 出井来斗
1 決定年月日時 令和5年4月28日午後3時25分
2 主文 再生債務者について小規模個人再生による再生手続を開始する。
3 再生債権の届出期間 令和5年5月18日まで
4 一般異議申述期間 令和5年5月25日から令和5年6月12日まで
◯◯地方裁判所
見ていただければ分かるように、官報に掲載される情報のうち個人が特定されうる情報としては氏名・住所くらいです。
生年月日や年齢などは官報に掲載されません。
同姓同名も世の中には沢山いますから、あなたの現住所を知っている人でない限り、あなたが個人再生したことを知ることはないといえるのではないでしょうか。
したがって、官報からあなたが個人再生したことが周囲にバレる確率自体がかなり低いですので、官報に掲載されることを過度に心配する必要はないです。
官報の掲載内容の調べ方
インターネットで調べる
個人再生の名前検索ができる?
「インターネットで調べれば個人再生したことは簡単に調べがついてしまうのではないか。」と思っている方もおられるのではないでしょうか?
結論を述べますと、個人再生してもインターネット検索で調べることは原則としてできません。
例えば、あなたが個人再生した後に、GoogleやYahoo!であなたの名前を検索したとしても、あなたが個人再生したという情報にアクセスするといったことは出来ません。
もっとも、以下の方法を使えば、条件付きではありますが個人再生の情報を調べることが出来ます。
インターネット官報で調べることができる
官報には現在インターネット官報(インターネット版官報 (npb.go.jp))というものがあります。
このインターネット官報だと、直近30日以内のものであれば誰でも無料で検索することが出来ます。
スマホでもアクセスすることが出来ますので、手軽に官報を閲覧することが出来るようにはなっています。
もっとも、閲覧できるのは直近30日間と限られています。
直近30日以上の分については、有料で閲覧しなければなりません。
そこまでして個人再生者に関する情報を得ようとする人はほぼいないでしょう。
官報を購入して調べる
これは紙の官報を購入して調べるという方法です。
一番確実とはいえますが、毎日発行される官報をくまなくチェックしている人でない限りバレる可能性はないといってよいでしょう。
例えば、一部金融業や不動産業についている人であれば、仕事柄毎日チェックしている場合もあるので、知り合いにそのような職種の人がいればバレる可能性はあるかもしれません。
しかし、仮に知り合いがそのような職業に就いていたとしても、その職業の人全員が毎日官報をくまなくチェックしているというわけではないですから、実際に知り合いが官報を読むとは限りません。
したがって、仮にあなたの周囲にそういった職業の人がいたとしても直ちに心配なさる必要はないでしょう。
次に、今紹介した職種についていない一般人が官報を日常的にくまなく読んでいるケースはほぼないと考えてもらって大丈夫です。
官報自体は誰でも入手できるのですが、どこでも入手できるというわけではありません。
閲覧しようと思えば、官報販売所や限られた書店、図書館にアクセスしなければなりません。
お金を払えば定期購読が出来ますが、官報にはスポーツ面や芸能面はもちろんありません。
官報は法律や政策などを一般に知らせることを目的としていますので、内容も新しい法令の紹介などです。
決しておもしろい内容ではないので、毎日欠かさずに読んでいる人はかなり少ないでしょう。
そもそも、官報という存在の認知度自体が高くないのではないでしょうか。
したがって、官報を通じてあなたの個人再生が周囲にバレることはほぼないと安心してもらって大丈夫です。
自己破産マップに個人再生も掲載される?
自己破産マップとは
破産者マップとは、Googleマップ上に自己破産・個人再生した人の氏名、住所、自己破産した日を掲載して、誰でも無料で破産者の情報を閲覧できるようにしたものです。
破産者マップの運営者は、官報に掲載された破産者の情報をもとに破産者マップを作成していました。
破産者マップの後追い的なものとして、Yahoo‼地図を利用して同じようなサイトが運営されていたこともあるようです。
再生債務者の方からすれば、自分が個人再生したことを不特定多数の人に知られてしまうのはなんとしても避けたいと考えるのが普通です。
そこにつけこんで、情報を消す対価として金銭を要求するといった詐欺などの二次被害も発生しています。
そのため、ニュースなどでもこの破産者マップというものが紹介され社会的に注目を浴びたこともあります。
この破産者マップは、法的には①個人情報保護法違反と②プライバシー侵害という点から問題があるといわれています。
実際、過去には、破産者マップによってプライバシー権と名誉を侵害されたとして、運営者に損害賠償を求めたという事例もあります。
そうした動きを受け、現在では、個人情報保護法が厳格化されたこと、また運営者に対してプライバシー侵害などを理由としたサイトの停止命令が出されたことから、類似のサイトも含め既に閉鎖されてはいます。
仮に、今後あなたの情報がそのようなサイトに掲載されていることに気付いた時には、すぐに弁護士に相談しましょう。
個人再生が官報に載ることのデメリット
個人再生した事実が官報に載ることのデメリットとしては、やはり自分が個人再生したことが周囲にバレてしまう可能性が生じるという点が挙げられます。
しかし既に説明したとおり、官報を日常的にくまなく読んでいる人はかなり少ないでしょうから、官報を通じて個人再生がバレてしまうおそれはほぼありません。
あとから説明する個人再生のメリットと比較すれば、このデメリットを過度におそれずに個人再生へ踏み出すべきといえるでしょう。
個人再生が官報に載らない方法はある?
個人再生手続において官報掲載がなされるのは、前半にも説明したとおり、債権者に手続参加の機会を与えるためです。
簡単にいえば、債権者のために掲載されるということです。
したがって、官報に掲載されてしまう側が「載せないでください。」と要求する権利も手続も認められておらず、官報に載らない方法はありません。
個人再生には大きなメリットがある
個人再生には、大きなメリットがあります。
代表的な2つを紹介します。
借金を減額できる
個人再生をすると、借金を減額することが出来ます。
減額の度合いは借金額によって異なりますが、大抵の場合は5分の1に減額され残りの5分の4は帳消しとなります。
これは個人再生する主たる理由となる非常に大きなメリットです。
借金の理由を問われない
自己破産の場合、借金の理由がショッピングなどの費消やギャンブルだと、借金が帳消しにならないことがあります(専門用語で「免責不許可」といいます。)。
一方で、個人再生の場合には、借金を減額するにあたって借金の理由は大きな問題となりません。
自己破産だと借金が帳消しにならないおそれのある人からすれば、この点も大きなメリットといえるでしょう。
個人再生には以上で紹介したこと以外にもメリットはありますので、気になる方は以下の記事をご覧ください。
まとめ
以上、ここまで、個人再生と官報掲載の関係について説明してきました。
この記事が、個人再生するかで悩まれている方のお役に少しでも立てれば幸いです。
デイライトでは、破産再生部を設けており、借金問題に精通した弁護士が皆様を強力にサポートしています。
借金、自己破産、個人再生に関するご相談は初回無料でご相談いただけます。
当事務所は全国対応を行っておりますので、まずは一度ぜひご相談ください。