SNS等で「借金救済制度」という言葉が取り沙汰されています。
確かに、自己破産、個人再生、任意整理などの債務整理を行えば、借金が免除ないし減額されることがあります。
しかし、これらの手続きを行うためには法律に基づく条件をクリアしなければなりません。
また、ウェブサイト上、借金救済制度について「国が認めた」などの表現が目につきますが、簡単に借金減額ができる印象を与えており、語弊があると感じます。
ここでは、借金問題に注力する弁護士が借金救済制度について、正しい情報をわかりやすく解説していきます。
借金救済制度とは?
SNS等で借金救済制度という言葉を見かけますが、実は法律上の言葉ではありません。
借金救済制度というのは、ご自身の借金の整理を行う債務整理のことを意味していると考えられます。
一部の業者が「国が認めた借金救済制度」などと紹介しているため、どんな場合でも借金が減額できるような印象を持たれるかもしれません。
債務整理には、任意整理、個人再生、自己破産の方法があり、法律上の条件をクリアすれば借金のリスケジュール、減額や免除等を行うことができます。
状況によっては借金が減額できない場合もあるため、誤解がないように注意してください。
ここでは、債務整理の概要について、それぞれ簡単に解説していきます。
なお、以下の「借金救済制度」という言葉は、債務整理のことを指すものとして解説していきます。
借金救済制度の2つのデメリット
ブラックリストにのる?
今ご紹介したような借金救済制度を利用した場合、ブラックリストに登録されます。
ブラックリストにのるとは、個人信用機関(個人の支払能力や借入の返済状況などを管理している機関)に事故情報や延滞情報がのることをいいます。
ブラックリストに登録された場合、新たな借入やローンを組むことができなくなります。
もっとも、ブラックリストについては、永久的に登録されるものではなく、どの借金救済制度(任意整理、個人再生、破産)を利用するかによって、登録される期間が異なります。
例えば、任意整理については、5年から7年、個人再生や破産については、5年から10年になります。
ブラックリストに登録されると、永久に登録されるわけではないため、過度に心配する必要はありませんが、一定期間、新たな借入やローンを組むことができなくなる点には注意が必要です。
クレジットカードが使えなくなる?
借金救済制度を利用した場合、個人信用機関に事故情報が登録されるため、クレジットカードは使えなくなります。
また、個人信用機関に登録されている間は、新たにクレジットカードを作ることは難しいです。
もっとも、ブラックリストに登録された場合であっても、個人の信用力が向上すれば、クレジットカードの審査が通る場合もあります。
また、ブラックリストへの登録期間についても、5年から10年と期限があるため、生涯にわたりクレジットカードが作れなくなるわけではありません。
国による借金救済制度
ここまでご紹介してきた制度は、借金の整理の方法でしたが、国が用意している貸付制度というのもあります。
国からお金を借りることにより生活を維持するための制度として、生活福祉資金貸付制度を利用することが考えられます。
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者、高齢者、障害者などが、安定した生活を送れるよう、都道府県の社会福祉協議会が資金の貸付けと必要な相談や支援を行う制度です。
生活福祉資金の種類としては、以下のものがあげられます。
- ① 総合支援資金
- ② 福祉資金
- ③ 教育支援資金
- ④ 不動産担保型生活資金
①総合支援資金
総合支援資金とは、生活再建までの間に必要な生活費用や、敷金、礼金など住宅の賃貸契約を結ぶために必要な費用についての資金です。
②福祉資金
福祉資金とは、生業を営むために必要な経費、病気療養に必要な経費、住宅の増改築や補修などに必要な経費についての資金です。
なお、新型コロナウイルス感染症に関する緊急小口資金については、令和4年9月30日に申請が終了しています。
③教育支援資金
教育支援資金とは、教育支援資金については、低所得者世帯の子どもが高校や高専、大学などに入学・修学するために必要な経費についての資金です。
④不動産担保型生活資金
低所得の高齢者世帯や要保護の高齢者世帯に対し、一定の居住用不動産を担保として生活資金を貸し付ける資金です。
借金救済制度にかかる費用
弁護士費用とは
弁護士費用とは、弁護士を利用するうえで、必要となる費用のことです。
借金救済制度(任意整理、個人再生、自己破産)を利用するためには、基本的には弁護士に依頼する必要がありますが、弁護士に依頼するうえで、弁護士費用が必要となります。
弁護士費用については、法律相談料、着手金、報酬金、実費等があります。
法律相談料
借金救済制度を利用する場合、法律事務所に問い合わせてみて、初回の法律相談を行います。
このとき発生する費用が、法律相談料になります。
法律相談料については、借金救済制度に関する法律相談については、初回無料の事務所が多いです。
着手金
法律相談後、弁護士にご依頼される場合は、通常、着手金が必要となります。
着手金は、弁護士が事件を処理するために最初に必要となる費用であり、報酬の前金のようなものといえます。
成功報酬
成功報酬とは、弁護士が仕事を終えた後に支払うお金のことです。
成功報酬については、借金救済制度によって算定方法が異なり、自己破産については、報酬金は0円になったりする場合もあります。
弁護士費用の相場
任意整理
任意整理について、法律相談料は、初回無料の法律事務所が多いです。
着手金については、多くの事務所は、「交渉相手1社につき〜万円」という報酬の決め方をしています。
したがって、着手金については、借入先の数によって異なってきます。
成功報酬については、過払い金の回収の場合、回収額の2割前後、借金の減額場合、当初の借金額から減った金額の1割前後になることが多いですが、減額について報酬は発生しないという事務所もあります。
項目 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
法律相談料 | 任意整理に関する法律相談料 | 0円~1万円 |
着手金 | 任意整理を依頼するときに最初にかかる費用 | 交渉相手1社につき5万円程度 |
成功報酬 | 任意整理の結果に応じて発生する費用 | 過払い金回収額の2割前後、借金減額分の1割前後 |
実費 | 事件処理を行うために発生する費用(コピー代、郵送費用等) | 数千円程度 |
個人再生
個人再生についても、法律相談料については、無料の法律事務所が多いですが、着手金については、25万円〜50万円前後になることが多いです。
個人再生については、住宅を残したり、負債額によって事件の難易度が変わってくるため、このように着手金の設定に幅があります。
成功報酬については、0円にしている事務所もありますが、10万円〜20万円に設定している法律事務所もあります。
また、個人再生については、弁護士費用以外にも、裁判所へ納める予納金等が必要となり、3万円から25万円前後の費用がかかります。
項目 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
法律相談料 | 個人再生に関する法律相談料 | 0円~1万円 |
着手金 | 個人再生を依頼するときに最初にかかる費用 | 30万円~50万円 |
成功報酬 | 個人再生の結果に応じて発生する費用です。 | 0円~10万円 |
実費 | 事件処理を行うために発生する費用(コピー代、郵送費用等) 個人再生については、裁判所を利用するため、郵券等の費用がかかります。 |
3万円~25万円 (個人再生委員が選任された場合は実費が高くなります。) |
自己破産
自己破産についても、法律相談料については、無料の法律事務所が多いですが、着手金については、25万円〜50万円前後になることが多いです。
もっとも、自己破産については、同時廃止事件、少額管財事件、管財事件になるかによって、事件の難易度が変わってくるため、着手金の額に幅があります。
一方で、報酬金については0円に設定している法律事務所が最も多いです。
項目 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
法律相談料 | 自己破産に関する法律相談料 | 0円~1万円 |
着手金 | 自己破産を依頼するときに最初にかかる費用 | 30万円~50万円前後 |
成功報酬 | 自己破産の結果に応じて発生する費用 | 0円~20万円 |
実費 | 事件処理を行うために発生する費用(コピー代、郵送費用等) 自己破産については、裁判所を利用するため、郵券等の費用がかかります。 |
3万円程度 (管財事件になる場合は50万円以上) |
借金救済制度についてのQ&A
借金救済制度に本当にリスクはないの?
家族に知られる可能性
借金救済制度の中でも個人再生と自己破産については、家族に知られる可能性があります。
個人再生については、①家族があなたの借金の保証人になっている場合、②家族から借金をしている場合、③同居の家族がいる場合、④官報への掲載により家族に知られる可能性があります。
特に、①家族があなたの借金の保証人になっている場合については、債権者は保証人である家族に対して借金の返済を求めるため、家族に知られる可能性は非常に高いといます。
また、②家族から借金をしている場合についても、裁判所は、債権者である家族に対して連絡事項を送るため、家族に知られる可能性は非常に高いといます。
③同居の家族がいる場合については、手続きを進めていくうえで、郵便等を見た家族に知られる可能性があります。
④官報については、見ている人がかなり少ないため、官報からバレる可能性は低いといえるでしょう。
自己破産については、①家族があなたの借金の保証人になっている場合、②家族から借金をしている場合、③持ち家がある場合、④自動車などの高額な資産がある場合、⑤同居の家族がいる場合、⑥官報への掲載により家族に知られる可能性があります。
①家族があなたの借金の保証人になっている場合、②家族から借金をしている場合、については、個人再生と同様に、家族への借金返済の督促、裁判所からの通知により、家族に知られる可能性が非常に高いです。
また、③持ち家がある場合、④自動車などの高額な資産がある場合については、自己破産した場合、持ち家や自動車などの高額な資産については、差し押さえや競売にかけられたりするため、家族に知られる可能性が非常に高いです。
⑤家族と同居している場合については、手続きを進めていくうえで、郵便等を見た家族に知られる可能性があります。
⑥官報については、個人再生と同様に、官報を見ている人がかなり少ないため、官報からバレる可能性は低いといえるでしょう。
最後に、任意整理については、個人再生や自己破産とは異なり、裁判所を介さず、官報にも掲載されないため、家族に知られる可能性は低いと言えます。
また、郵便物等の受渡しについても、法律事務所を介して行うことができるため、郵便物等から家族に知られる可能性は低いでしょう。
職業等の制限
職業等の制限について、任意整理や個人再生については、職業等の制限はないですが、自己破産については、欠格事由(その仕事に就くことが出来ない理由という意味です。)に当たるため、職業等が制限されます。
例えば、自己破産した場合、警備業に一定期間就くことができなくなります。
もっとも、職業等が制限されたとしても、制限期間は、破産手続開始決定から免責許可決定が出るまでの間で、多くの場合は半年前後です。
なお、この際に資格を再度取り直す必要はありません。
ただし、会社に自己破産を隠して仕事を続けることはできませんので、資格制限のある仕事についている場合には慎重な判断が必要になります。
職業等の制限や期間について、詳しいことを知りたい方は、自己破産に詳しい弁護士に相談されることをおススメします。
借金救済制度の口コミを紹介!
当事務所には債務整理についてたくさんの依頼者様のお声を頂戴しております。
今回はそのうちの一部について紹介します。
「初めて相談させて頂いた時、とても不安な気持ちでありましたが、先生の力強いアドバイスで、何とか解決に向けて進んでいくことが出来ました。弁護士に相談したら、もうそ次の日から返済しなくていいとは話で聞いては居ましたが、実際にその通りでした(Googleビジネスプロフィール、一部抜粋)」
上記の口コミから、借金救済制度を利用した場合、借金の返済を止めることができるということが分かりますね。
借金の返済について困っている場合、まずは借金の問題に詳しい弁護士に相談されることをおススメします。
借金救済制度を怪しいと感じたらどうすればいい?
借金救済制度とは、任意整理、個人再生、自己破産によって、借金の減額、免除を目指す制度のことをいいます。
インターネット広告等では、借金救済制度とは国が認めた借金救済制度で、徳政令の如く、リスクなしで借金を減らせるかのように宣伝しているところもあります。
しかし、借金救済制度には、それぞれデメリットがあり、それぞれのデメリットを理解したうえで、手続きを進めていくことが重要になります。
また、個人再生と自己破産については、法律で定められた手続きであるのに対し、任意整理については、法律上の制度ではなく、借金の元本を減らすものではありません。
さらに、借金救済制度については、手続きの選択を間違えると、結果的に多くの支出が生じてしまうことがあります。
そのため、借金救済制度を利用する場合、適切な制度を選び、確実に手続きを進めて行く必要があります。
借金救済制度を利用する場合は、借金問題に詳しい弁護士に相談されることをおススメします。
まとめ
- 借金救済制度とは、任意整理、個人再生、自己破産のいずれかの方法により、借金の減額や免責等を進めていくことである。
- ブラックリストについては、永久的に登録されるものではなく、どの借金救済制度(任意整理、個人再生、破産)を利用するかによって、登録される期間が異なる。
- 借金救済制度を利用した場合、個人信用機関に事故情報が登録されるため、クレジットカードは直ぐに使えなくなる。
- 国による借金救済制度として、生活福祉資金貸付制度を利用することが考えられる。
- 借金救済制度(任意整理、個人再生、自己破産)を利用するためには、基本的には弁護士に依頼する必要があるが、弁護士に依頼するうえで、弁護士費用が必要となる。
- 借金救済制度の中でも個人再生と自己破産については、家族に知られる可能性がある。
- 借金救済制度には、それぞれデメリットがあり、それぞれのデメリットを理解したうえで、手続きを進めていくことが重要になる。