任意整理をした場合、信用情報機関に「延滞した」「債務整理を行った」などの事故情報が登録され、いわゆるブラックリストに載った状態になります。
この状態は、借金を完済してから5年程度で解消していきます。
「ブラックリストに載る」というと、何か大きな社会的不利益を被りそうに思い、それを恐れるがあまり、任意整理などの債務整理をためらう人も少なくありません。
しかし、そうしているうちに、より苦しい状況に陥ってしまうこともあります。
今回は、「ブラックリスト」の実態を知っていただくため、以下について解説していきます。
この記事でわかること
- 「ブラックリストに載る」ことの意味
- 任意整理をしたことでブラックリストに登録される期間
- ブラックリストに載ることによる生活への影響
- ブラックリストに載ったとしても任意整理をすべき理由
任意整理とは何かについて知りたい方は、以下のサイトをご参照ください。
目次
任意整理をするとブラックリストに登録される?
借金を返せなかったり、債務整理をしたりすると、「ブラックリスト」に載る、ということがよく言われます。
「ブラックリスト」については、実態を知らず、実際以上に怖がっている方も多くおられます。
まずは、この「ブラックリスト」についてご説明していきます。
ブラックリストとは
「ブラックリスト」というと、対象者の名前が連ねられた名簿のようなものを思い浮かべる方もおられるかと思いますが、実際にはそのようなものはありません。
一般に「ブラックリストに載る」と言われるのは、信用情報機関の信用情報に事故情報(返済が遅れた、破産や個人再生の申立てをしたなど)が登録された状態のことです。
信用情報は一人一人について別々に作られているので、名簿のようなものは存在しません。
信用情報機関には、以下の3つがあります。
- 株式会社日本信用情報機関(JICC)
- 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
これらの機関は、それぞれ独自に信用情報を記録しています。(ただし、一部の情報について情報交流も行っています。)
情報が残る期間も、それぞれの信用情報機関で異なります。
ブラックリストに登録される理由
信用情報に事故情報を登録される(ブラックリストに登録される)のは、貸金業者が安全かつ速やかに貸出しを行えるようにするためです。
信用情報を管理している機関がないと、貸し出しをする際には、その都度貸金業者が「相手は返済をできる人かどうか」を確認しなければならず、業者側にも借入れをする側にも手間や時間がかかります。
そのような負担をなくすため、信用情報機関が信用情報を管理し、貸金業者などの金融機関に提供しているのです。
任意整理によるブラックリストへの登録期間とは?
一度登録された信用情報は、ずっと残り続けるわけではありません。
それぞれの機関が定めたルールに従って信用情報は消され、新しいものに書き換えられていきます。
そのため、一度任意整理などの債務整理をしたり、延滞してしまったりして、信用情報に記載されてしまった(ブラックリストに載ってしまった)場合でも、一定の期間が経てばその情報は消えていきます。
信用情報から債務整理に関する情報や延滞したとの情報が消えれば、再びクレジットカードを作ったり、ローンを組んだりできる可能性が出てきます。
なお、個人再生や自己破産をした場合のブラックリストへの登録期間は、以下のサイトで解説しております。
任意整理はいつからブラックリストに登録される?
信用情報機関にもよりますが、早いところだと、弁護士などから受任通知を送ると、信用情報に「債務整理を始めたこと」「弁護士が介入したこと」などが登録されます(JICCの場合)。
ただ、信用情報機関によっては、弁護士が介入したことは記録されない場合もあります(詳しくは、次の項の表をご覧ください)。
また、支払い期限までに返済ができないことが3か月以上続いた場合は、延滞した、という情報が信用情報に登録されます。
延滞情報は、どの信用情報機関でも登録されます。
任意整理はいつまでブラックリストに登録される?
債務整理に関する情報や延滞情報が信用情報に掲載される期間は、多くの場合、契約継続中及び借金を完済した時(契約終了)から5年以内です。
KSCだけは、延滞情報については、延滞解消から5年以内となっています(「成約日/実行日」が平成18年(2006年)10月以後の場合)。
借金の完済には、任意整理を始めて業者との間で減額・支払い期間の延長についての和解ができてから3~5年かかるのが一般的ですので、任意整理を始めてから8~10年程度で事故情報が消えることになります。
それぞれの信用機関で任意整理に関する信用情報が残る期間の詳細は、以下のようになっています。
信用情報機関 | 登録される信用情報 | 信用情報が残る期間 |
---|---|---|
JICC | 債務整理 | 契約継続中及び契約終了後5年以内 *契約日が2019年9月30日以前の場合は、当該事実の発生日から5年を超えない期間 |
延滞、延滞解消 | 契約継続中及び契約終了後5年以内 *契約日が2019年9月30日以前の場合、延滞情報については延滞継続中。延滞解消の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間 |
|
CIC | 異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日等 *過払い金請求の事実、弁護士が介入した事実は登録されない。 |
契約期間中及び契約終了後5年以内 |
KSC | 延滞、延滞解消日 | 契約期間中及び契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間。 延滞は、以下の起算日から5年経過後に「成約」に変更。 *起算日 「成約日/実行日」が平成18年(2006年)10月以前の場合;返済区分(延滞、求償権完済等)の発生日 「成約日/実行日」が平成18年(2006年)10月以後の場合:延滞解消日 |
保証会社による代位弁済 | 契約期間中及び契約終了日から5年を超えない期間 |
上の表から、次のことが分かります。
- 債務整理(任意整理)があったこと(弁護士の介入があったこと)自体を登録するのは、JICCだけである。登録期間は、契約継続中及び契約終了後5年以内である。
*ただし、契約日が2019年9月30日以前の場合は、当該事実の発生日から5年を超えない期間となる。 - KSCでは、債務整理中に保証会社による代位弁済があると、そのことが信用情報に登録される。登録期間は、契約期間中及び契約終了日から5年を超えない期間である。
- 延滞情報は、いずれの信用情報機関でも登録される。
- 延滞情報の登録期間には違いがあり、JICCとCICでは契約継続中及び契約終了(完済)後5年以内、KSCでは延滞解消日から5年経過後となっている。
*ただし、JICCでは契約日が2019年9月30日以前の場合、KSCでは成約日/実行日が2006年10月以前の場合には、取扱いが異なる。
ブラックリストに載らない方法はある?
借金の減額、支払い期間の延長などにより任意整理をする場合、ブラックリスト入りは避けられないと考えた方が良いです。
ただ、過払い金が発生している場合には、ブラックリストに載ることを避けられる可能性もないではありません。
注:平成19年6月ごろから、大手貸金業者は利率を利息制限法の範囲内に引き下げ始めましたので、それ以降の借入れ・返済では過払金が生じていない場合が多いです。
既に完済した借入れについて過払い金がある場合
既に完済した借金について過払い金が生じている場合、ブラックリスト入りを避けられる可能性もあります。
この場合、残っている借金はこれまでどおり返済しながら、既に借金を完済した業者に対してのみ過払い金を請求して取り戻し、取り戻したお金で借金を返済してしまう、という方法が考えられます。
借金を通常どおりに返済していれば延滞情報は掲載されませんし、完済済みの業者に過払い金を請求するのであれば、「弁護士が介入した」「債務整理をした」ということにもならず、信用情報に不利益な情報が掲載されることは避けられるのです。
ただ、この方法にはデメリットやリスクもあります。
まず、過払い金は、全額回収できるとは限りません。
仮にほぼ全額回収できたとしても、最近では貸金業者も財務状態が厳しく、過払い金全額をすぐに支払ってくれるところばかりではありません。
場合によっては、支払いが数か月後になる場合もあります。
そうして時間がかかっている間にも、今ある借金の利息は発生し続け、結局のところ負担は増してしまいます。
さらに、過払い金を回収しようとしている間に借金の支払いができなくなり、3か月以上延滞してしまえば、結局、信用情報に延滞情報が掲載され、ブラックリストにも載ってしまいます。
また、完済済みであっても、過払い金請求をすると、請求相手の貸金業者の社内では、その情報が登録される可能性があります。
そうなると、いわゆる「社内ブラック」の状態になり、その貸金業者と関連会社から借入れをすることは難しくなります。
ブラックリスト入りを避けるために上記のような方法を取れるかは、借金や収入・支出、生活の状況、過払い金を請求したい相手方の貸金業者の状況などを全体的に考慮して検討しなければなりません。
一度、債務整理に詳しい弁護士に相談してみることをお勧めします。
まだ借金が残っている業者について、過払い金がある場合
利息制限法に従った引き直し計算をすると過払い金が発生しており、これがその業者に対して残っている借金より大きい、という場合、ブラックリストに載ることなく(又は短期間載るだけで)債務整理を行えます。
しかし、過払い金が思っていたより少なく、借金額に足りなかった場合には、債務整理と同じ扱いになり、「債務整理をした」として、ブラックリストに載せられてしまう可能性があります。
特にクレジットカードのキャッシングでお金を借りていた場合には、注意が必要です。
この場合、ショッピング枠で利用している額も含めて借金額とされるので、過払い金が、キャッシングで借りている額とショッピング枠で利用している額の合計額に足りなければ、「債務整理をした」とされてブラックリストに載る可能性があるのです。
仮に過払い金で借金を完済できても、いわゆる「社内ブラック」に登録されてしまうことは、前項の「既に完済した借入れについて過払い金がある場合」でご説明したとおりです。
ブラックリストに載らずに過払い金を請求できる場合については、以下のサイトでも解説しています。
完済してもブラックリストからは消えない?
先ほどの表でもご説明したとおり、債務整理をしたという情報も、延滞があったという情報も、借金を完済できてから5年以内の期間は信用情報機関に登録されます。
その間はブラックリストに載った状態が続くので、完済したとしても、ブラックリストに載っている状態はその後5年程度続くことになります。
ブラックリストに登録、生活への影響とは?
ブラックリストに登録された場合、次のような生活への影響があります。
- ローンの審査が通らなくなる
- クレジットカードを使えなくなる
- 連帯保証人になれない
- 信販系・クレジットカード会社系の賃貸保証会社の審査を通過しにくくなる
ローンの審査が通らなくなる
信用情報に延滞情報や債務整理の情報が登録されている(ブラックリストに載っている)間は、新たにローンを組もうとしても、審査に通らなくなってしまいます。
お金を貸す側にとっては、相手が確実にお金を返してくれるかどうかは大切なことです。
信用情報に延滞情報や債務整理の情報が登録されていると、「この人はお金を返してくれない人かもしれない」と判断され、審査が通らなくなるのです。
カードローンや消費者金融だけでなく、車のローンや住宅ローンを組むことも、ブラックリストに載っている間は難しいでしょう。
・クレジットカードを使えなくなる
ブラックリストに載っていると、クレジットカードを使ったり、新たに作ることが難しくなります。
しかし、クレジットカード以外の決済手段を使うことで、大きな支障なく生活することができます。
詳しくは、「デビットカードなどクレジットカード以外の決済方法を利用する」をご覧ください。
連帯保証人になれない
連帯保証人になる際にも信用情報が参照されますので、ブラックリストに載っている間は新たに連帯保証人になることも難しいです。
連帯保証人になってほしいと親族や知人から頼まれた場合は、事前に断らないと、「審査に通らなかった」と業者に言われることでブラックリストに載っていることが知れてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
信販系・クレジットカード会社系の賃貸保証会社の審査を通過しにくくなる
家を借りるとき、近年では保証会社に連帯保証人になってもらうことも多くなってきました。
しかし、ブラックリストに載っていると、信販系・クレジットカード会社系の保証会社の審査を通過しにくくなります。
ただ、知人や親族に連帯保証人になってもらう、信販系・クレジットカード会社系ではない保証会社を探すなどの対策により、家を借りることもできますので、それらの手段を検討してみるとよいでしょう。
ブラックリストに載ることのほか、任意整理をすることのメリット・デメリットについて、以下のページでも解説しています。
ご参照ください。
なお、自己破産をするとできなくなってしまうことについては、以下のサイトで解説しています。
ブラックリストに登録されても可能なこととは?
ブラックリストに登録されたからといって、ローンや借入れをする場面以外で日常の生活に支障が出ることは、実はほとんどありません。
また、ブラックリストに載った状態になってしまうとクレジットカードを作ることができなくなり、支払い手段が限られてしまいますが、代わりに使うことができる方法もあります。
ブラックリストに載っていてもできることについて見ていきましょう。
銀行口座を開設する
銀行口座の開設は、信用情報に事故情報が記載されている(ブラックリストに載っている)状態でも可能です。
銀行口座はお金を預け入れるだけのものであり、口座を開設するだけでは銀行からお金を借りることにはならないからです。
ただし、カードローンやクレジット機能付きのキャッシュカードを銀行で作ろうとすると、他の会社で同様のカードを作る場合と同じく信用情報を照会しますので、ブラックリストに載っている状態だと作ることはできません。
他方、デビットカードであれば、ブラックリストに載っていても作ることができます。
デビットカードは支払い時に即座に銀行口座から支払い分を引き落とすカードで、口座に入金されている金額以上を使うことはできなくなっています。
そのため、返済が滞って銀行などが損害を受ける、ということが起こり得ないので、返済能力について審査されることがないのです。
生命保険を契約する
生命保険の契約にも、ブラックリストは関係ありません。
生命保険は、お金を貸すわけではないので、契約者がお金を払えるかどうかは関係ないのです。
支払うべき保険料が払えなければ、解約返戻金からの振替や保険の失効などの措置をとるだけであり、生命保険会社に損失はないからです。
生命保険の契約者貸付
生命保険では契約者貸付という制度もあります。
これは解約返戻金を担保に取り、その範囲内で貸付をするものです。
もし契約者貸付での借金を返せなくなれば、担保に取っていた解約返戻金と相殺することで回収されますので、保険会社には損失は生じません。
そのため、ブラックリストに載っていても、保険会社の定める枠が残っている限り、生命保険の契約者貸付でお金を借りることはできます。
海外旅行をする
ブラックリストに登録されていても、海外旅行をすることは自由です。
もちろん、海外旅行費用を賄うためにローンを組むことはできませんが、自分で貯めた貯金で海外旅行をするのであれば全くの自由です。
ただ、海外ではクレジットカードを使用する場面が多いのですが、ブラックリストに登録されている間クレジットカードは使えませんので、海外でも使える他の支払方法を用意しておく必要があります。
なお、自己破産の場合は、破産手続中は原則として海外に渡航することはできません。
しかし、自己破産をしても、裁判所での手続が終われば自由に海外に行くことができます。
デビットカードなどクレジットカード以外の決済方法を利用する
クレジットカードはオンラインショッピングなどで便利に利用できるので、「クレジットカードを使えなくなると困る・・・。」と思う方もおられるかもしれません。
しかし、実は、クレジットカードの代わりに支払いに使える手段もあります。
たとえば、プリペイドカード、スマホ決済、デポジット型クレジットカード、デビットカードなどであれば、クレジットカードが使えなくても利用できるものがあります。
これらの中には、オンラインショッピングに利用できるものもあります。
クレジットカード以外の決済手段について、詳しくは以下のページで紹介しています。
就活をする
就職活動時に信用情報が見られることはありませんので、ブラックリストに入っていることは就職活動には影響しません。
自己破産と異なり、任意整理であれば資格制限がかかることもないので、就くことができる職種にも制限はありません。
仕事を続ける
ブラックリストに載っていることが職場で知られることはほぼありませんので、今の仕事を続けることに通常支障はありません。
郵便物を受け取る
自己破産をすると、破産手続中は郵便物を直接受け取れなくなりますが、任意整理ではそのようなことはありません。
ブラックリストに登録されても任意整理をすべき理由
ブラックリストに登録されることを恐れて、任意整理などの債務整理をためらう方も多くおられます。
確かに、ブラックリストに載る(信用情報に事故情報が登録される)と、新たなローンを組めない、クレジットカードを作れないなど不便な点があることは否めません。
しかし、早めに任意整理をすることには、大きなメリットもあります。
早期に任意整理を行うメリットは、次のようなものです。
- 弁護士の介入により取立てが止まる
- 債務整理の間、返済を止めることができる
- 利息のカットなどにより返済額を減らせる
- 過払い金を取り戻せる場合がある
- 持ち家や車を残すことができる
- 親族、友人、職場などへの借金には手を付けなくて済む
- 裁判所を利用しないで済み、手間や費用が少なくて済む
- 自己破産・個人再生をしなくて済む
- 家族など周囲の人に知られずに済む可能性が高くなる
- 保証人への請求や迷惑がかかるのを避けられる
それぞれの点についてみていきます。
なお、任意整理は弁護士等の専門家に依頼して行うことが大半ですので、以下では弁護士に依頼した場合を前提に解説しています。
自分が任意整理をすべきか状況かどうか知りたい方は、以下のサイトで弁護士に相談すべきかわかるチェックシートを掲載しておりますので、一度ご覧ください。
弁護士の介入により取立てが止まる
弁護士に相談して債務整理を委任すると、弁護士から債権者に「受任通知」を発送します。
この受任通知が弁護士から発送されると、貸金業者は、債務者本人に直接取立てをすることができなくなります。
そのため、取立ての郵便、電話、訪問などがなくなります。
借金でお困りの方には、貸金業者の取立てに悩まされている方もおられるでしょう。
そうした場合には、取立てが止まることで精神的負担が減り、改めて借金の返済について落ち着いて考えられるようになります。
債務整理の間、返済を止めることができる
弁護士から受任通知を送ると、債務整理のため、一時的に借金の返済を止めることができます。
そのため、月々の返済に追われる生活が落ち着き、今後の生活を考えることができるようになります。
多くの法律事務所では、返済を止めているこの間に弁護士費用を分割で準備するという方法も取ることが可能です。
利息のカットなどにより返済額を減らせる可能性がある
任意整理をすると、利息や遅延損害金をカットしてもらえる場合もあります。
利息は決して軽く見るべきものではありません。
たとえば100万円を年15%の利率で借りている場合、単純に計算すると、利息が年15万円も発生しているのです。
遅延損害金となると、さらに負担は大きくなります。
利息制限法上、
- 10万円以上100万円未満の借金については、年26.28%
- 100万円以上の借金については、年21.9%
までの遅延損害金を取ることが認められています。
100万円を借りていて21.9%の遅延損害金を取られると、単純に計算すれば、1年間で21万9000円の遅延損害金を取られることになります。
しかも、利息や遅延損害金は借金の完済まで発生し続けるので、意識しないうちに大きな負担となってしまいます。
利息や遅延損害金をカットできる可能性のある任意整理は、返済総額を減らす方法として大きなメリットがあります。
過払い金を取り戻せる場合がある
任意整理のために取引履歴を取り寄せると、過払い金が発生していたことが判明する場合があります。
その場合は、弁護士から貸金業者に請求して、過払い金を取り戻すことができます。
最近は貸金業者も経営状態が悪い場合があり、残念ながら、全額を直ちに取り戻すことができるケースばかりではありません。
しかし、少なくとも、その業者に対する今の借金との相殺はできますし、過払い金を取り戻せれば、他の業者への返済に充て、借金を大きく減らせるチャンスがあります。
持ち家や車を残すことができる
任意整理では、個人再生や自己破産のように「すべての債権者を対象としなければならない」「債権者全員を平等に取り扱わなければならない」との要請はあまりありません。
そのため、持ち家や車を残したい場合は、住宅ローンや自動車のローンは任意整理の対象とせずそのまま返済を続けることで、持ち家や車には債務整理の影響が及ばないようにすることができます。
任意整理をためらっていると、その間に新たな借入れや利息の発生で借金額が増えてしまうかもしれません。
そうなると、もはや任意整理はできず、個人再生や自己破産を選択せざるを得なくなくなる可能性が高まってしまいます。
個人再生をする場合には、住宅ローンの残った持ち家も残せる可能性がありますが、車については、ローンが残っている場合は手放さざるを得なくなる可能性が高いです。
自己破産となると、持ち家も車も処分せざるを得なくなる可能性がさらに高くなります。
持ち家や車を残したい場合は、早いうちに借金問題について弁護士に相談することが特に重要です。
親族、友人、職場などへの借金には手を付けなくて済む
任意整理では、親族、友人、職場などへの借金に関しては手を付けず、通常どおり返済することができます。
他方、個人再生や自己破産では、すべての債権者を対象としなければならないため、これらの人への借金についても裁判所に報告し、減額又は免除の対象としなければなりません。
裁判所に報告した債権者に対しては、裁判所から連絡がいくので、これらの人に自己破産や個人再生をしたことを知られてしまうことにもなります。
裁判所を利用しないで済み、手間や費用が少なくて済む
任意整理は、裁判所を利用せずに、弁護士と貸金業者の間で話し合いをして借金を減らしたり、返済期間を延ばすなどするものです。
そのため、決まった書類の提出や作成なども基本的にはなく、裁判所に出向く必要もないので、裁判所で手続きをする個人再生や自己破産に比べると、手間をかけずに借金を整理することができます。
費用についても、任意整理で済ませられる方が安くて済む場合が多いです。
自己破産や個人再生をしようとすれば、裁判所に支払う費用だけでも数万円から20万円以上、それに加えて弁護士費用も30~60万円程度かかってしまいます。
しかし、任意整理であれば、債権者1社当たり5万円程度の弁護士費用だけで済む場合が多いです。
自己破産・個人再生をしなくて済む
任意整理で借金を整理することができれば、個人再生や自己破産をせずに済みます。
個人再生や自己破産をすると、借金額を減額又は免除してもらえるメリットはありますが、以下のようなデメリットもあります。
- 手続きが煩雑
- 費用がかかる
- 官報に名前が載ってしまう
- 浪費やギャンブルのためにした借金は免除されない可能性がある(自己破産の場合)
- 知人・親戚・職場などへの借金も含めて全て対象にしなければならない
- ローンの残った車を残すのが難しい
- 自己破産をすると持ち家を残すのも難しい
債務整理は早めに着手した方が、ダメージも少なくて済みます。
借金で生活が苦しい時は、早めに債務整理に強い弁護士に相談しましょう。
家族など周囲の人に知られずに済む可能性が高くなる
個人再生や自己破産をすると、手続に時間もかかりますし、書類の受け渡し・作成などのために弁護士と連絡する回数なども増え、家族などにバレるおそれも少し高くなります。
また、個人再生や自己破産をする場合には、知人・親戚・職場に借金があると、そのことも裁判所に報告しなければならず、裁判所からこれらの人に連絡がいくことにもなるので、自己破産や個人再生をしたことが知られてしまいます。
こうした人たちに保証人などになってもらっている場合には、個人再生や自己破産で減額・免除された部分の借金については、貸金業者から保証人に請求がいくことになり、やはり個人再生や自己破産をしたことが知られてしまいます。
しかし、任意整理であれば、家族、親族などに保証人になってもらっている債務は任意整理から外すことができ、保証人への連絡がいかないようにできますし、裁判所などから周囲の人に連絡がいくこともないので、家族などの周囲の人に知られずに済む可能性が高くなります。
家族に知られずに任意整理をできるかについては、以下のサイトもご参照ください。
保証人への請求や迷惑がかかるのを避けられる
上でご説明したとおり、個人再生や自己破産で減額・免除された借金については、保証人に請求されてしまいます。
しかし、任意整理であれば、借金を減額してもらっても、その分が保証人に請求されることはありません。
ただし、任意整理であっても、債権者との交渉中に返済が滞ったり、債権者と合意したとおりの支払ができなくなると、保証人に請求がされる場合がありますので、ご注意ください。
債務整理について弁護士に相談すべきである理由について、以下のサイトでも詳しく解説していますので、ぜひ一度ご覧ください。
まとめ
今回は、「ブラックリスト」と任意整理の関係などについてご説明しました。
ブラックリストにのってしまうと、一定期間ローンを組めないなどの不利益はあります。
しかし、預金口座が作れない、保険にも入れない、海外旅行にも行けないなど、生活全般にわたる制限があるというわけではありません。
ブラックリストにのることのデメリットより、借金を早めに整理することのメリットの方が大きい場合も多いです。
早いうちであれば、メリットの多い任意整理で済ますことができ、個人再生や自己破産をせずに済む可能性が高くなります。
借金で生活が苦しい、という方は、ぜひ一度、債務整理に強い弁護士にご相談ください。
当事務所では、借金問題に注力する弁護士により構成された破産再生チームを設けて対応に当たっております。
お困りの方は当事務所までどうぞお気軽にご相談ください。