借金を繰り返し、返済が厳しくなってくると、どうしても「借金を踏み倒すことができれば…」という考えが頭をよぎってしまうことでしょう。
しかし、借金を踏み倒すということはリスクを伴いますから、いくら苦しくとも借金から逃げることはおすすめできません。
この記事では、借金の踏み倒しとはどのようなものを指すのか、そして借金を踏み倒すことにどのようなリスクがあるのか、借金を踏み倒せないのであればどう行動するべきなのかということについて、詳しくまとめています。
特に、安易に借金を踏み倒そうと考えている方はこの記事をじっくりと読んでリスクを理解して頂けることを願います。
借金の踏み倒しとは
詐欺のケース
借金の問題は基本的には民事上のトラブルですから、詐欺罪に問われるケースは極めて稀です。
しかし、個別の事情によっては詐欺罪に該当する可能性もありますから、注意が必要です。
詐欺罪が成立するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
要件を分かりやすくまとめると、次のようなものになります。
- ① 借主が貸主に対して嘘をつく
- ② 借主の嘘に貸主が騙される
- ③ 騙された貸主が借主にお金を貸し、借主がお金を受け取る
①借主が貸主に対して嘘をつく
詐欺罪は、人から財産を騙し取る犯罪ですから、当然借主が嘘をついている必要があります。
ここでの嘘は、どんな小さなものでもいいという訳ではありません。
貸主がお金を貸すかどうかを判断するために普通は必要だと考えられる事項について嘘をついている必要があります。
②借主の嘘に貸主が騙される
借主が嘘をついていたとしても、借主が騙されていなければ、「騙し取った」ことにはなりませんから、詐欺罪は成立しません。
③騙された貸主が借主にお金を貸し、借主がお金を受け取る
お金という財産が貸主から借主に移転したことで詐欺罪が完成するということになります。
さて、それでは借金を踏み倒そうとしたケースで詐欺罪に該当するのは、どのような場合でしょうか。
例えば、借主が全くお金を返すつもりがない、最初から借金を踏み倒そうと考えていたような場合はどうでしょうか。
人がお金を貸してもよいと考える場合、当然、貸す相手がお金を返してくれるということが前提となっているはずです。返してもらえないことが分かっているのにお金を渡すというのであれば、それはお金を貸したのではなく、あげたということになりますね。
そうすると、「借主がお金を返すつもりがあるかどうか」という事項は、貸主がお金を貸すかどうかを判断するために重要な事項と評価することができますから、この点について嘘をついていた場合には上記①の要件を満たすことになります。
そして、借主がお金を返してくれると信じて貸主がお金を貸した場合、②と③の要件も満たすことになるでしょう。
そのため、初めから借金を踏み倒すつもりで借金をしたというケースは詐欺罪に該当するということになります。
返済しないケース
詐欺罪に該当するような場合のほか、単純に債権者への返済をしなくなるという踏み倒しの方法も考えられます。
返済をしないまま消滅時効まで逃げ切ることを狙うケースは、この踏み倒し方法といえるでしょう。
消滅時効については後でも触れますが、民法で認められているものですから、消滅時効を主張すること自体は違法というわけではありません。
ただし、当然ながら債権者も返済がない状態をそのまま放置するわけではありませんから、消滅時効まで返済をしないまま踏み倒すのはそう簡単にできることではありません。
例えば、居場所が分かっているのであれば、連日のように督促の電話や郵便物がくるようになりますし、電話で債務があることを認めてしまうと時効の起算日が一からやり直しになります。
それでは転居を繰り返して居場所を分からなくしてしまえばいいと考える方もいるかもしれませんが、債権者がその気になれば、そのような場合でも裁判を起こして判決を取ることが可能になります(詳しくは後述します)。
そうすると時効が成立するのは判決取得時から10年先ということになりますから、長期間債権者から逃げ続けなければなりません。
返済をするか、真正面から債務整理を行なった方がどう考えても負担は少ないといえるでしょう。
借金の踏み倒しが許されない理由
借金の踏み倒しは道徳的に許されないことはもちろん、債務者本人にも様々な悪影響が生じます。
以下、具体的に生じる悪影響についての解説を通じて、社会的に許されることではないということを理解してください。
信用情報機関に登録される
借金を一定期間滞納していると、貸金業者から信用情報機関へ滞納の事実が報告されます。
信用情報機関はこのような情報を受け取ると、いわゆるブラックリストというものに債務者を載せてしまい、この情報は借金が完済されて5年ほどが経つまでは消えることがありません。
ブラックリストに載るだけであれば大したことはないと考えるのは大きな間違いです。
貸金業者や金融機関などは、信用情報機関のブラックリストを必ずチェックし、ブラックリストに載っている人との間では信用取引を一切してくれません。
そのため、一度ブラックリストに載ってしまうと、その情報が消えるまでは新しく借金をしたり、クレジットカードを利用したり、ローンを結んだりといった行為ができなくなってしまいます。
もちろん家族などがいる場合には、必要な借金は家族にしてもらうなどの対処法はありますが、自分名義で信用取引ができないということはやはり不便です。
借金を踏み倒すことによって得られると思い込んでいるメリットよりもはるかに大きいデメリットといえます。
警察に被害届が出てしまう可能性
先ほどの解説で挙げたように、借金を踏み倒そうとしていると、債権者が騙されたと感じ、警察に詐欺として被害届を出そうとすることが考えられます。
実際に詐欺罪が成立するのは、借金をする時点で既に踏み倒そうと考えていた場合くらいですが、あまりにも借金を返していないままだと、警察が捜査に動き出すことも十分考えられます。
最終的に詐欺罪で処罰を受けることがなかったとしても、警察の取り調べに対応するのは精神的にもかなりきついですし、取り調べのために仕事も休まなければならなくなります。
無駄な手間をかけたり、警察の取り調べで怖い思いをしたりするくらいであれば、借金を踏み倒そうとせず、真っ当な方法で債務整理を行うべきです。
返済義務額が増えてしまう
借金を返していない状態が続くと、当初は分割払いが認められていたところ、期限の利益を喪失して一括払いをする必要が出てきます。
同時に、借金の残高に対して高額な遅延損害金が付されていきます。
多くの貸金業者では年14%前後の遅延損害金が定められていますから、例えば100万円の借金を踏み倒そうとした場合であっても、年間で14万円も借金の総額が増えるということになってしまいます。
長期間逃げ続けたとしても、この遅延損害金の計算が止まることはありませんから、気付いたときには元本よりも利息・遅延損害金の方が高額になっているということも珍しくありません。
時効までなんとか耐えようと思っていたとしても、債権者が訴訟を提起し、判決を得た場合には時効が更に10年ほど伸びてしまいます。
借金の総額をいたずらに増やすだけという結果になりかねませんから、この観点からも借金の踏み倒しは全くおすすめできません。
差し押さえのリスクがある
借金を踏み倒し続けた場合、債権者が訴訟を提起して債務者の財産を差し押さえようと試みることが起こり得ます。
債務者の居場所が特定されていないケースであっても、条件さえ満たせば公示送達という方法で無理やり裁判を開くことも可能ですし、現住所に届いている裁判所からの送達を無視し続けたとしても付郵便送達という方法で手続きを進めることも可能です。
こうして裁判所からの連絡を無視しているとすぐに判決は出てしまい、差し押さえが可能になってしまいます。
勤務先が判明している場合であれば、給与を差し押さえられると共に、勤務先に借金のトラブルが発覚してしまうことになりますし、主に使っていた口座が知られていれば預金が全額差し押さえられてしまいます。
債権者に財産のありかも勤務先も知られていないから安心できるかというと、そういうわけにもいきません。
現在は、債権者の権利実現の実効性を確保するために、財産開示手続という裁判所を利用した制度が定められており、債務者は財産状況を報告しなければなりません。
財産開示手続に応じない場合には、罰則が予定されており、6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(民事執行法第213条1項5号・6号)。
参照:民事執行法|e-Gov
そのため、財産を差し押さえられると分かっていても、財産開示手続が開かれれば裁判所に出頭しなければならず、財産のありかを債権者に伝える必要があります。
債権者が差し押さえをやると決めた場合には、そこから逃れることは簡単ではありませんから、そうなる前に踏み倒しではなく、正規の方法で債務整理を行うべきです。
連帯保証人に迷惑がかかる
踏み倒そうとしている借金に連帯保証人を付けている場合、債権者はあなたの代わりに連帯保証人に借金を返してもらうために請求を行う可能性があります。
連帯保証人は奨学金や各種ローンなどで要求されることが多く、親などの身内が引き受けてくれていることでしょう。
そのため、自分が借金を踏み倒そうとすることで連帯保証人となっている身内に迷惑がかかってしまうということは理解しておかなければなりません。
借金減額の方法とは?
それでは借金を返せない場合には、踏み倒さずにどのように対応するべきなのでしょうか。
以下で考えられる選択肢について順に説明をしていきます。
借金の時効を主張する
意図せず長期間借金の返済を行なっておらず、債権者も裁判などは起こしていないという場合には、その借金について時効を主張するという方法が考えられます。
お金の貸し借りについては、消滅時効という制度が認められています(民法166条1項柱書)。
参照:e-Gov法令検索|民法
消滅時効とは、貸金業者等が債務者に対して一定の期間請求等をせず、法律上決められた期間が経過した場合に、貸金業者等の権利を消滅させられるというものです。
貸金業者への借金について消滅時効を利用できるまでの期間は5年間となっていますから、最後に返済してから5年間、請求も返済もしていなければ消滅時効を援用することが可能になります(同条1項1号)。
時効の援用は借金をゼロにできるという点で自己破産と同じ効果を得られますが、手続きの手間やその後の信用情報への影響などは全く異なります。
ただし、時効の援用を行う際には注意点もいくつかありますので、時効ではないかと思った際には、一度弁護士に相談をするようにしましょう。
借金の時効について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
債務整理を行う
時効が成立している場合は簡単に借金全額を帳消しにすることができますが、多くのケースでは債権者も時効が成立しないように立ち回っています。
そのような場合には、法律上返さなければならない借金があることを前提に動く必要がありますから、債務整理といわれる方法を取る必要があります。
債務整理には任意整理、自己破産、個人再生という3つの方法がありますから、それぞれの特徴について説明をしていきます。
任意整理とは
任意整理とは、弁護士が債務者の代理人となって借金の減額や毎月の支払額・支払回数などの調整を図り、無理のない範囲で借金を返していく手続きのことです。
取引期間が非常に短い場合などを除いて、任意整理後の返済は原則無利息となります。
また、任意整理の最大の特徴は、整理したい借金を自分で選んで整理することができるという点です。
例えば、A銀行、B社、C社から借り入れを行なっているものの、A銀行は給与の振込先であるというような場合には、B社とC社の借金だけを任意整理の対象とすることでA銀行との取引に影響を与えないようにすることが可能です。
任意整理は各債権者と裁判所外で交渉を行う手続きですから、国の記録に残るということもなく、基本的に誰にも知られることなく手続きを行えるという点も魅力の一つです。
他方、デメリットも存在します。
任意整理は、裁判外の交渉によって各債権者と返済額や回数を調整する債務整理の方法です。
毎月の返済額を抑えることはできるかもしれませんが、個人再生や自己破産などと異なり、借金の総額が大きく減免されることはありません。
そのため、借金を安定して返していけるだけの資力はどうしても必要になってきます。
目安として、3年から5年の間で借金を完済できるだけの資力がないという場合には、任意整理を行なってもいずれ破綻するということになりかねません。
例えば、借金の総額が300万円ほどあり、毎月の返済に回せる資金が3万円しかないというような場合には、100回払い(8年以上)という計算になってしまいますから、任意整理の利用は現実的ではないということになります。
もちろん不要な支出が多いようであれば、家計のやりくりによって返済に回せる資金を捻出することが可能になることもあるでしょうが、無理な節約は長続きしませんから、自分の収支状況とよく相談して決める必要があります。
任意整理は、交渉の中で過払い金の存在が明らかになったような例外的な場合は別ですが、基本的に個人再生や自己破産のように借金が大きく減額されることがありません。
多くのケースでは将来利息を取られることがなくなりますから、任意整理をしなかった場合と比べると返済総額はそれなりに変わってきますが、既に発生している借金の減額という意味では、せいぜい利息を若干カットしてもらえる程度になります。
そのため、大幅な借金の減額を希望するのであれば、他の手続きの方がよいかもしれません。
任意整理はあくまでも裁判所を利用しない手続きであり、債権者との話し合いによって解決を目指す方法です。
債権者側にも当然都合がありますから、取引状況などによっては債権者の希望とこちらの希望が大きく離れていることもありえます。
例えば、取引期間が1年にも満たず、利息による儲けがほとんど出ていないような場合には、管理コストなども考えると債権者が長期間の返済を受け入れるとは到底思えません。
そのような場合には交渉が不成立となってしまい、任意整理ができないということが起こることがあります。
あまりにも頑固な債権者が含まれている場合には、任意整理ではなく、裁判所を利用して強制的に借金を減額してもらった方がよいでしょう。
任意整理を行う場合の解決までの流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
自己破産とは
自己破産は借金を返済できる見込みがない状態であることを裁判所に認めてもらい、借金を帳消しにする手続きになります。
自己破産が認められれば、借金を返す必要がなくなりますから、これまで借金の返済に充てていた収入を生活費に回すことができるようになります。
自分の年収を超えるような借金を抱えてしまい、生活を立て直したいと考える場合には、自己破産の手続きを選択するとよいかもしれません。
他方、自己破産をする場合には、一定の価値がある財産は手放す必要があります。
不動産なども原則としてお金に換えられて債権者に分配されることになりますから、家族と同居している家を所有しているような場合には、自己破産をするとその家に住み続けることができなくなる可能性があります。
そのため、どうしても手放したくない財産があるという場合には、自己破産の手続きを取ることは控えるべきでしょう。
また、自己破産は借金を帳消しにするという極めてメリットが大きい制度ですから、どんな借金についても無条件で認められるわけではありません。
例えば、ギャンブルや名義貸しなどによって作った借金(免責不許可事由に該当する場合)については帳消しとされない可能性もありますから、注意が必要です。
他にも、自己破産のデメリットとしては、職業や資格を制限されたり、官報に掲載されたりといったものも挙げられます。
自己破産は簡単な手続きではありませんが、借金を踏み倒そうとするところまで追い込まれているのであれば、一度は検討するべき方法ではないかと思います。
自己破産の流れについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
個人再生とは
個人再生とは、裁判所を利用して借金を大幅に減額してもらう手続きです。
抱えている借金の金額にもよって減額幅は異なりますが、以下のとおり、かなりの減額が見込めます。
借金の総額 | 減額後の金額 |
---|---|
100万円未満 | 減額は無し |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 5分の1の金額 |
1500万円以上3000万円以下 | 300万円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 10分の1の金額 |
個人再生はこのように大幅な借金の減額が見込める上、自己破産よりもデメリットが少ない手続きです。
例えば、自宅を所有している方は、自己破産であれば自宅が売却されることになります。
これに対し、個人再生であれば、住宅資金特別条項という制度を使って、住宅ローンを払いながら他の借金だけを圧縮して自宅を残すことが可能になります。
また、自己破産をすると資格が制限されてしまう仕事に就いている方も、個人再生であれば資格制限を受けることはありません。
そのため、個人再生は、任意整理では支払いきれないような借金を抱えており、なおかつ自己破産は避けたい事情があるという場合に適している手続きといえます。
他方、個人再生は借金が減額されるだけで免除されるわけではないにもかかわらず、利用条件の厳しさや手続きの煩雑さなどは自己破産と変わりありません。
自己破産を避けたい理由が特に無い場合には選択する必要があまり無い手続きともいえます。
個人再生を選択した場合の流れについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
NGな行動とは?
ここまで解説したように、借金の踏み倒しは避けなければなりません。
借金を踏み倒さなければならないほど追い込まれている状況なのであれば、ほとんどのケースでは自己破産や個人再生を検討すべき事案であると思われます。
特に自己破産は法律上認められている借金の踏み倒しともいえる一方、NG行動を取っていると認めてもらえない可能性が出てきてしまいます。
以下では、適切に借金の処理をするために避けるべきNG行動について解説をしていきます。
債務承認
まず避けるべきNG行動の1つ目は、債務承認を行うことです。
債務承認とは、自分が返すべき借金があることを債権者に対して認める行為のことであり、時効が中断されてしまいます。
時効が完成するのが当分先であるという状況であれば、特に問題はありませんが、既に時効が完成している、自己破産の手続きを進めていく中で時効が完成する見込みがあるといった借金については、絶対に債務承認をしてはいけません。
自己破産の免責不許可事由の一つに、「特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと(破産法第252条1項3号)」というものがあります。
参照:破産法|e-Gov
とても簡単に説明すると、払う必要がなくなっている借金について、時効を中断させてしまうと自己破産を認めないことがあるという意味です。
時効によって消滅している借金は本来返す必要が無くなっていますから、他の債権者はその借金が無いものとして財産を分配されることを期待します。
債務者の勝手な行為によって他の債権者の期待を裏切ることは許されませんから、免責不許可事由となっています。
全ての債務承認がNGという訳ではありませんが、負担する必要が無くなっている借金がまた降りかかってくることにメリットは1つもありませんので、基本的に債務承認は避けるようにしておきましょう。
また、偏頗弁済という行為も避けなければなりません。
偏頗弁済とは、特定の債権者にだけ返済を行うような行為をいいます。
例えば、貸金業者などからの借金の他に、友人からの借金もあるような場合、心情としては友人の借金だけでも返しておきたいと考える方は少なくありません。
しかし、自己破産は全ての債権者を平等に取り扱うことが前提となっている手続きですから、このような優遇は友人などであっても許されません。
先ほど説明した免責不許可事由は偏頗弁済にも当てはまってしまいます。
不当な財産流出
次に避ける必要がある行動は、不当な財産流出と見られる行為です。
例えば、自分の持っている車や家を他の人の名義に変えたり、格安で売却したりといった行為などが挙げられます。
このような行為も破産法の中で免責不許可事由とされています。
「債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。(破産法第252条1項2号)」
参照:破産法|e-Gov
自己破産をしなければならない状況にある人の財産は、手元に残しておいても問題ない財産を残して、全て債権者に平等に分配される対象になります。
不当に財産を流出させる行為があると、当然ながら債権者が受け取ることのできる財産が減ってしまうことになります。
借金を帳消しにする以上、そのような債権者を害する行為を認めるわけにはいかないという趣旨で、不当な財産流出行為も免責不許可事由に当たるとされています。
これらのNG行為を避けておけば、自己破産という適法な方法で借金を帳消しにすることができるようになりますから、NG行動だけは取らないように注意しておきましょう。
借金の踏み倒しに関するQ&A
生活保護を受けていても踏み倒しはできない?
生活保護は、財産がほとんどなく、収入もかなり少ないという人が受給するものです。
生活保護を受給するために必要な条件の中には「借金が無いこと」などは含まれていませんから、借金がある人でも生活保護を受給することはできますが、生活保護を受給していたとしても、借金の返済義務が無くなるというわけではありません。
他方で、生活保護費はあくまでも日常生活に必要な支出などをサポートするためのものですから、借金の返済に充てることは許されていません。
もしも借金の返済に生活保護費を使ったことがバレてしまうと、生活保護が打ち切られる可能性もあります。
ここまでの説明を見て、生活保護を受けている間は借金から逃れることが不可能に近いということは理解してもらえたのではないでしょうか。
借金を抱えたまま生活保護を受ける人が借金から逃れるためには、自己破産を行うしかありません。
友人の借金を踏み倒すとどうなる?
債務整理の相談や刑事事件の被害者からの相談を受ける弁護士としての経験上、友人からの借金は少額であることが多いように思います。
しかし、借金を踏み倒そうとしたときにトラブルになる可能性が高いのは、貸金業者ではなく友人の方です。
個人間での金銭トラブルの場合、相手に騙されたと感じる人が多く、いきなり警察に被害届を出そうとしたり、周囲に借金を踏み倒されたことを言いふらしたりといった行動に出られる可能性があるからです。
友人の借金を踏み倒そうとすると、このような無用なトラブルを招き、周囲からの信用も一気に失うことになりかねません。
友人からの借金が返せないという状況になってしまった場合には、資金繰りが厳しいことを誠意を持って説明し、返済を猶予してもらうなどの誠意ある対応を心掛けましょう。
それでも返済が難しければ、他の借金と一緒に自己破産などの手続きをとることも検討するべきです。
まとめ
借金の踏み倒しがおすすめできない理由について、ご理解いただけたでしょうか。
詐欺罪に該当するような方法は論外ですが、どうしても返済ができない状況になったときに「ふみ倒すことができないか」という考えは頭をよぎってしまうかもしれません。
しかし、借金を踏み倒そうとするとかえって借金が増えてしまったり、生活への影響が大きくなってしまったりというリスクがある場合が多いです。
返済に困っているのであれば、一度債務整理を取り扱っている弁護士に相談をし、自分の状況に応じてもっとも適切な方法を選択してもらうべきです。
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