離婚を考えたときに準備すべき5つのこと|弁護士が徹底解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

離婚の準備は極めて重要です。

離婚の準備をしていれば、依頼者が望む結果を得られる可能性が高くなります

しかし、いったい何から準備すればよいのかわからないという方がほとんどではないでしょうか。

ここでは、離婚問題について経験豊富な弁護士が離婚準備の重要性や離婚前に準備すべきことについて、わかりやすく解説いたします。

離婚の準備は極めて重要!

このページをご覧の方の中には、離婚する前に準備が必要なのか、疑問を感じている方もいらっしゃるかと思います。

また、何となく準備した方がいい、と感じていても、その必要性を正しく認識している方はとても少ないです。

結論から申し上げると、離婚の準備は極めて重要です。

当法律事務所の離婚専門チームは多くの離婚相談を受けており、離婚問題の問い合わせ件数は累計で1万件を超えております。

多くの離婚事案を解決する中で、常に実感していることは「準備をしていたケース」と「準備していなかったケース」では、結果に大きな差が生じているということです。

「準備をしていたケース」は依頼者が望む結果を得られる可能性が高くなります。

これに対して、「準備していなかったケース」は不本意な結果に終わる可能性が高くなります。

そのため、離婚を検討されている方は、できるだけ初期の段階(離婚を相手に切り出す前の早い段階)から離婚専門の弁護士へのご相談をお勧めしています。

離婚問題に精通した弁護士であれば、離婚というゴールに向けて、具体的に何をすればよいかを助言し、離婚準備に漏れがないようにサポートしてくれるでしょう。

 

 

離婚するときに準備すべき5つのこと

離婚するときに準備すべき5つのこと

離婚の準備が極めて重要であるとして、いったい何をどう準備すればよいのでしょうか。

以下では、離婚するときに準備しておくべき5つの内容について、解説します。

 

①財産分与、慰謝料などの離婚条件について考える

離婚後の生活を安定したものとするためにも、財産分与でしっかりと財産を確保することが大切です。

結婚後に夫婦で築いた財産は、原則として、双方で均等に分けることになります。

これは、妻が専業主婦であったとしても変わりありません。

夫婦の財産を全部洗い出して、ご自分の分を確保するようにしてください。

慰謝料も、数十万円から数百万円と多額になりますので、離婚後の生活のために大切です。

慰謝料が得られそうな事情(不貞行為、DV、精神的虐待など)があれば、しっかりと証拠を集め、慰謝料を勝ち取れるようにしましょう

財産分与、慰謝料等について合意した内容は、離婚協議書にまとめましょう。

 

②子供がいる場合に考えておくべきこと

子供がいる場合は、親権者、養育費、公的扶助、面会交流、学校の転校について検討しましょう。

 

親権者を決める

子供がいる場合、離婚届を提出する際に、親権者を決めなければなりません。

子供がどちらの親と暮らすのが幸せかを考えて、決める必要があります。

自分が親権を得たいと考えている場合、子供を手放さないということがとても重要です。

調停、裁判などに進んで家庭裁判所が親権者を決める場合、これまで子供を世話してきた状況(監護状況)が考慮されますので、離れて暮らしてしまうと、親権を取ることが難しくなるからです。

別居するときは、相手方と話し合った上で子供を連れて行き、逆に相手方が家を出る場合は、子供を連れて行かせないようにしましょう

 

養育費を決める

子供がいる場合、子供を育てるためのお金(養育費)が必要となります。

養育費を支払う側(通常は父親側)にしても、養育費の適正額を知っておくことはとても重要です。

養育費は一度合意すると、途中での変更が難しいため、無理な金額を支払う約束をしないようにすべきだからです。

子どもの生活にもかかわることなので、養育費の金額、支払方法、多額の医療費や学費が発生した場合の分担についても、しっかり考えておきましょう。

 

公的扶助を調べる

離婚してひとり親になった場合、いくつかの公的扶助を受けられる可能性があります。

 

1. 児童扶養手当(母子手当)

児童扶養手当は、離婚後の母子家庭の生活を支える手当です。

子供が18歳に到達して最初の3月31日(年度末)まで(子供が特別児童扶養手当を受給できる程度の障害にある場合、20歳に到達するまで)の間、受給可能です。

離婚が成立していなくても、相手方配偶者から引き続き1年以上遺棄されている場合は、受給することができます。

また、裁判所からのDV保護命令が出た場合も受給できます

児童扶養手当については、離婚後住む予定の自治体の制度を確認してください。

参考:東京都|児童扶養手当

 

2. 児童手当

児童手当は、離婚の有無に関係なく、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方に対して支給される金額をいいます。

支給額は、下表のとおりです。

子供の数 全部受給できる場合 一部受給できる場合
1人 45,500円 45,490円から10,740円
2人 56,250円 56,230円から16,120円
3人 67,000円 66,970円から21,500円
4人以降一人につき 10,750円を加算 10,740円から5,380円を加算

※2024年11月1日現在

 

3. 特別児童扶養手当

特別児童扶養手当は、身体や精神に障害のある20歳未満の児童について、支給されます。

児童扶養手当とは別の目的で支給されるものですので、同時に受給することが可能です。

支給額は、月5万5350円(1級)又は3万6860円(2級)です(所得制限があります。)。

参考:特別児童扶養手当について|厚生労働省

 

4. 就学援助

就学援助とは、経済的理由によって、就学困難と認められる児童等に対して、市町村が学用品費、給食費、通学費などを援助する制度です。

自治体ごとに条件や内容が異なりますので、詳しくは、住む予定の自治体にお問い合わせください。

参考:東京都|就学援助

 

5. 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

母子父子寡婦福祉資金とは、母子家庭等の経済的自立と、その扶養する20歳未満の子供の福祉の増進を図るため、原則無利子で、各種資金の貸付を受けられる制度です。

借り入れの条件等について、くわしくは最寄りの役場へお問い合わせください。

そのほかにも、税の減免、医療費助成などがあります。

更に、それぞれの市町村で独自のひとり親への支援制度を作っている場合もありますから、一度窓口に行って相談されるとよいと思います。

具体的な金額等の詳細は、以下のページをご覧ください。

 

面会交流の頻度や方法を決める

両親が離婚した後でも、子供には、離れて暮らす親と面会し、交流する権利があります。

子供にとってマイナスになる場合(子供に暴力をふるう、連れ去りのおそれがあるなど)でなければ、原則として面会交流を拒むことはできません

頻度、連絡方法、場所、ルール(プレゼントについて、祖父母との面会など)などについて、できるだけ具体的に離婚前に話し合っておくと、離婚後もスムーズに面会交流が実施できるでしょう

子供が成長してくると面会交流のあり方も変わってくるので、そうした場合の話し合いの方法も決められるとよいでしょう。

子供と相手方だけで会わせるのが不安であったり、相手方と面会交流のことで直接連絡したり顔を合わせたりすることに抵抗がある場合もあるでしょう。

そうした場合に、面会交流について、きめ細やかにサポートしてくれる弁護士もいますので、必要であればご相談なさってみてください。

 

転校について検討する

離婚に伴って転居する場合、子供の転校・転園の手続が必要です。

未就学児については、保育園・幼稚園を探す必要があります。

ひとり親家庭であれば保育園へ入園しやすい場合がありますが、地域や時期によっては、待機児童が多く、すぐに入園できない場合もありますので、事前に確認しましょう。

また、就職していないと入園できない場合もありますので、専業主婦の方は、就職の準備も進めましょう

小学生であれば、長期休みや放課後の預け先が必要な場合もあります。

ご近所の方や実家の両親が頼れると頼もしいですが、そうはいかない場合もあります。

学童保育所やファミリーサポートなどの有無を、事前に調べておきましょう。

 

③離婚後の戸籍を考える

離婚後の戸籍をどうするかについては、以下の3つの選択肢があります。

 

1. 婚姻前の姓に戻り、自分を戸籍筆頭者とした戸籍を新しく作る。

離婚届を提出する時に、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄で、「新しい戸籍をつくる」をチェックし、新戸籍地を記載すれば、新しい戸籍を作ることができます。

しかし、子どもは、そのままでは、新しい戸籍に移ってはくれません。

新戸籍ができたら、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立てをします。

そして、許可の審判を得て、市町村役場で子供の入籍手続をすると、子どもが自分の戸籍に入ります。

この手続は親権者でなければできませんので、ご注意ください。

 

2. 婚姻中の姓を継続して使用し、自分を戸籍筆頭者とした新しい戸籍を作る。

婚姻中の姓を継続使用したい場合は、離婚後3か月以内に、本籍地の市町村役場に「氏の継続使用届」を出す必要があります。

この届出をし忘れると、居住地の家庭裁判所に氏の変更許可の申立てをすることが必要になります。

ただし、許可が得られない場合もあるので、注意が必要です。

名乗っている姓は結婚時と変わらなくても、戸籍自体は、1と同様に、配偶者とは別れた新戸籍となります。

そのため、子どもを新戸籍に移すには、1と同じく、子の氏の変更許可の申立て、入籍手続が必要です。

 

3. 婚姻前の戸籍と姓に戻る。

結婚前の状態に戻り、両親の戸籍に戻ることになります。

この戸籍には、自分の子供(両親からみると孫)は入ることができません。

自分と子供を同じ戸籍に入れたい場合には、改めて分籍の手続をし、自分を筆頭者とする戸籍を作る必要があります。

新戸籍ができたら、1の場合と同じく、子の氏の変更許可の申立て、入籍手続をします。

以上をまとめると、以下の表のようになります。

婚姻前の姓に戻り、新戸籍を作る 婚姻中の氏を使い、新戸籍を作る 婚姻前の戸籍に戻る
新戸籍作成の有無 ×(新戸籍を作るには分籍が必要)
離婚後の姓 旧姓 結婚後の姓 旧姓
子供と同じ戸籍に入るための手続 子の氏の変更許可申立て
入籍手続
子の氏の変更許可申立て
入籍手続
分籍
子の氏の変更許可申立て
入籍手続

 

④住む場所を考える

離婚後に生活する場所を検討しましょう。

この場合、①引っ越しをする、②現在の自宅に継続して住む、という2つの選択肢があります。

それぞれ分けて解説します。

 

①引っ越しをする

離婚して引っ越しをする場合の選択肢としては次の方法が考えられます。

 

1. 実家に戻る

実家に戻ることができるのであれば、一般的には、それが経済的にも生活面でも一番負担が少ない方法といえます。

長期的に同居することが難しい場合でも、一時的に身を寄せることができるだけでも助かります。

 

2. 賃貸住宅を借りる

実家に頼れない場合、賃貸住宅を探すことになるでしょう。

賃貸住宅に入る場合、引っ越し費用に加え、敷金、礼金、家具の購入費用などの初期費用がかかります。

場合によっては、最初に数十万円が必要となることもあります。

専業主婦の方や収入が低い方は、賃貸住宅を借りにくい場合があります

ただ、これは物件によりけりですので、色々な物件について調べてみて、入居できそうなところを探してみましょう。

保証人が必要となることもありますが、保証会社に料金を払って保証人になってもらえる場合もありますので、不動産会社で聞いてみましょう。

 

3. 公営住宅

公営住宅などに入居できる場合もあります。

一般的に家賃が安く、ひとり親世帯が優先的に入居できる場合もありますので、お住いの役場に問い合わせをしてみましょう。

 

4. シェルター

DVなどがあり早急に別居したい場合、民間団体が運営しているシェルターに避難することもできるかもしれません。

地域の相談窓口や警察に相談してみましょう。

 

②現在の自宅に継続して住む

相手に引っ越しをしてもらい、自分は現在の自宅で生活するという方法もあります。

この場合、現在の自宅が賃貸か、持ち家かで検討すべきことが異なります。

 

1. 賃貸の場合

賃貸借契約の契約締結者(名義人)があなたの場合は契約者の変更は不要です。

ただ、相手が保証人になっている場合、貸主側から保証人の変更を求められる場合があります。

賃貸借契約の契約締結者が相手となっている場合、契約者の変更が必要となることが多いです。

契約内容にもよりますので、離婚専門の弁護士に契約書を見てもらうとよいでしょう。

 

2. 持ち家の場合

持ち家の場合、財産分与の問題となります。

すなわち、自宅の査定や住宅ローンが残っている場合の対応等が必要となります。

持ち家があるケースでは、適切に対応するために財産分与の専門知識やノウハウが必要となるため、離婚専門の弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

⑤修復の可能性を考える

離婚の準備を整えたら、最後に、もう一度夫婦関係を修復できないか話し合うのもよいでしょう。

DVや精神的虐待があるようなケースでは難しいかもしれませんが、性格の不一致が離婚したい理由、という場合には、再度の話し合いで改善する場合もあります。

「離婚することになってもよい」との覚悟をもった上で話をすると、その覚悟が相手方に伝わり、相手方も自分の態度を真摯に反省してくれることもあり得ます。

そうして、「雨降って地固まる」の言葉通り、良い夫婦関係を取り戻せる場合もあるでしょう。

もし話し合いがうまくいかなければ、そのときは準備した通りに離婚に向かって進んでいけばよいのです。

相手方の性格や状況にもよりますが、離婚の準備をした上で、そのことは言わずに、最後の話し合いをすることも、検討してみても良いと思います。

 

 

離婚の準備に関してよくあるQ&A

男性が離婚準備で気をつけることはありますか?

男性の場合、女性よりも収入が多く家計を支えていたり、自分名義の財産の方が多かったりすることが多いと思われます。

それを踏まえ、男性の場合は次のような離婚準備をしておくようにしましょう。

自宅をどうするか

自宅不動産がある場合、財産分与でその自宅をどうするのかを考えておくべきです。

具体的には、①自分が取得するのか、②妻が取得するのか、③それとも売却するのか、の3つが選択肢となります。

また、男性名義の住宅ローンが残っている場合で②妻が取得する場合、住宅ローンの支払い義務を妻に負わせるのか、の検討が必要です。

別居中の生活費(婚姻費用)の支払い

離婚前に別居する場合で妻よりも収入が多い場合、妻側から婚姻費用を請求されると、基本的には支払い義務が生じます

この場合、婚姻費用の適正額について検討する必要があります。

 

女性で離婚を決めたらする事とは?

女性の方でも、特に専業主婦やパートタイマーの女性の場合、離婚後の生活に不安を感じている方が多い傾向です。

離婚後の生活に不安があれば、様々な公的扶助の内容について、押さえておくことが重要となります。

公的扶助は、上で解説したように、児童扶養手当、児童手当、就学援助などがあります。

また、子供がいるご家庭では親権者、養育費や面会交流についても検討しておきましょう。

 

専業主婦が離婚準備で気をつけることはありますか?

現在専業主婦である方の場合、上記の公的扶助に加えて、就職についても検討するとよいでしょう。

現在は人手不足の傾向ですので、職種や待遇等に強いこだわりがなければ、専業主婦の方であっても就職するのは以前より簡単になってきているようです。

 

熟年離婚を考えていますが準備すべきことはありますか?

離婚を検討されている方で、50代、60代の方については、結婚してからの期間が長年に及んでいる場合が多いです。

このような年代層の場合、特に、財産分与と年金分割が大きな影響を及ぼします

財産分与については、相手の財産を漏れなく調査し、適切に評価することが重要です。

例えば、退職金制度がある会社に相手が勤めている場合、退職までまだ何年も期間があったとしても、退職金の見込額を財産分与の対象とできる可能性があります

このような判断は、離婚問題の専門家でないと難しいため、離婚に精通した弁護士へのご相談をお勧めいたします。

 

離婚の準備は相手にバレないようにした方が良いですか?

状況(目的)にもよりますが、現時点で離婚の意志が固まっていないような場合、基本的には軽々と離婚を口に出すべきではないです。

例えば、相手が不倫をしており、相手が不倫を否定する可能性がある場合、相手の不倫の証拠を集めているとは言わないほうがよいでしょう。

他方で、相手に改善してほしいことがある場合、あなたが深刻に悩んでいることを打ち明けるべき場面もあります。

具体的な状況で判断したほうが良いため、くわしくは離婚問題に強い弁護士へ相談なさってください。

 

離婚は言った方が負けというのは本当ですか?

離婚を切り出した方が不利になるというわけではありません

大切なことは、離婚するかどうか迷っている段階で、軽々に離婚を口にすると、もとに戻れなくなる可能性があるということです。

また、上で解説したように、離婚の準備は極めて重要です。

後悔しないようにするためにも、離婚するかどうかはよく検討し、離婚を決意したらしっかりと準備するようにしてください。

 

離婚前にやってはいけないこととは?

ご状況にもよりますが、離婚前にやってはいけないこととして、①適切な条件を調べずに離婚する、②証拠を集めずに行動する、③不利な状況で別居する、が挙げられます。

 

 

まとめ

以上、離婚準備について、ケース別にくわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

離婚準備として検討すべき事項はとても多く、適切に判断するためには専門的な知識や経験が必要となる場合があります。

また、具体的に何をすべきかは状況によっても異なります。

そのため、離婚を検討されている方は、離婚問題に強い弁護士への早い段階でのご相談をお勧めいたします。

この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てば幸いです。

 

 


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