偽装離婚とは?別れるつもりはないのに離婚を装うことの危険性を解説
偽装離婚とは
偽装離婚とは、実際には夫婦関係にあって別れるつもりはないものの、あえて離婚届を出して体外的に離婚を装うことです。
協議離婚の要件
夫婦が協議離婚をするためには、前提として夫婦双方に意思能力が必要です。
そして、協議離婚を有効に成立させるためには、実質的な要件として離婚意思の存在が、形式的な要件として離婚の届出が必要となります。
離婚意思
離婚の届出(離婚届の提出)
つまり、協議離婚の要件のうち、形式的要件である離婚の届出はなされているものの、実質的要件である離婚意思が欠けている状況をいいます。
離婚意思
離婚の届出(離婚届の提出)
このような偽装離婚が利用されるのは、例えば、夫に多額の借金があるが、債権者からの強制執行を逃れたいといったケースが考えられます。
すなわち、債務者である夫に対して強制執行をする場合、夫名義の財産に対して強制執行をする必要があり、夫婦であることを理由に妻名義の財産に強制執行をできるわけではありません。
そのため、離婚に伴う財産分与を利用して妻に財産を移転させ、夫名義の財産をなくすことで債権者が強制執行をする対象となる夫の財産をなくすということが考えられます。
また、公的支援を目的に偽装離婚をするケースも考えられます。
すなわち、子どもがいる家庭において、偽装離婚をして母子家庭、父子家庭を装うことで、児童扶養手当の給付を受けたり就学支援を受けたりする等の公的な支援を受けようとするものです。
偽装離婚は有効なの?
実質的要件である離婚意思が欠けている場合にそもそも離婚はできないのではないかとも考えられます。
しかしながら、役所は、離婚届について一定の形式的な確認をした後、特に問題がなければ、わざわざ夫婦に離婚意思の確認をすることなく離婚届を受理してしまいます。
つまり、実際には夫婦の双方又は一方の離婚意思が欠けていても、離婚届の提出があれば戸籍上離婚の記録がされてしまうのです。
このような場合、実質的要件である離婚意思が欠けているため、法的には離婚は無効であるといえますが、戸籍上離婚の記録がされている以上、法的に無効であることを主張するためには、別途家庭裁判所を通じて協議離婚無効確認調停を起こす必要があります。
協議離婚無効確認調停について詳しくは裁判所HPをご覧ください。
引用元:協議離婚無効確認調停|裁判所
偽装離婚はキケン!
これらは一見、理にかなった方法のように思えますが、偽装離婚が原因で争いに発展した例は少なくありません。
例えば、以下のような場合があります。
- 当初の目的を達成したら再婚することになっていたにも関わらず、夫婦の一方が他の人と再婚してしまった
- 再婚する前に夫婦の一方が死亡してしまい、遺産相続ができなくなった
- 借金を免れるために離婚を装ったことがばれて、強制執行妨害罪に問われた
- 公的支援を受けるために離婚を装ったことがばれて、既に受給した児童扶養手当の返還を求められた
偽装離婚であっても正式に離婚として成立した以上、「離婚の無効」を裁判所に申し立てても無効になることはほとんどありません。
このように、安易に離婚という制度を悪用すると、のちのち痛い目を見ることになりかねません。
偽装離婚だけでの問題ではありませんが、離婚する意味をしっかりと考える必要があるでしょう。
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