一度の暴力が与える離婚への影響|慰謝料や親権はどうなる?

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

暴力の時期、程度によっては、一度の暴力で離婚が認められ、慰謝料の支払い義務が発生する可能性もあります。

親権については、これまでの監護実績が重要視される傾向ですが、あまりひどい暴力の場合は親権者の適格性判断に悪影響を及ぼします。

以下、具体的な相談事例をもとに詳しく解説いたします。

事例

妻が弁護士を通じて離婚したいと言ってきました。

離婚を認めないなら裁判に持ち込むとまで言われています。

条件は親権を渡すこと、離婚をするまでの間、同居したくないのでアパートを見つけて別居してほしい、と言われています。

また、もしも協議に応じなければ、裁判を起こして、過去の暴力を理由に慰謝料を請求すると言われました。

たしかに、原因は私にあると思います。実は、1年ほど前にけんかをして手を挙げたことがあります。

このことは謝罪をしましたが、許してくれません。

こんな状況で離婚を回避できることはできますか?

また、裁判になったら慰謝料を支払う必要がありますか?

それと、私には子どもが2人(10歳、8歳)います。子供とも離れたくありません。

仮に離婚となった場合、子供は自分が引き取ることができますか?

一度の暴力で離婚が認められるか

まず、相談者の方は離婚をできれば避けたいということです。

相談者の方が離婚に応じれば、協議離婚という形で離婚することができますが、仮に、そうでなければ、相手方がいうように裁判ということになります。

離婚裁判において、裁判所が離婚判決を出すためには、「離婚原因」と呼ばれる、以下の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。

今回問題となるのは、「⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるかどうかです。

民法上の離婚原因

引用:民法|電子政府の窓口

相談者の方のお話ですと、1年前に相手方に手を挙げてしまったことが原因とのことですが、これだけで「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があるといえるかは何とも言えません。

もちろん、この時の暴力の程度やけがの具合にもよりますので、直接お話を聞かせていただければ、具体的なアドバイスができると思います。

 

離婚したくない場合のポイント

また、別居の話を弁護士も交えてしているようですが、相談者の方が離婚したくないのであれば、別居はしない方がよいでしょう。

というのも、別居が長くなればなるにつれて、婚姻関係が破綻しているとして、「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」があると判断され、裁判で離婚が認められる可能性が高まるからです。

 

 

夫婦関係の修復

相談者の方が離婚を回避されたいということでしたら、一度夫婦関係修復のためのカウンセリングを受けてみてはどうでしょうか。

法律事務所の中には、カウンセリングサービスを提供している事務所もあります。

カウンセリングサービスであれば、法律問題だけではなく、夫婦関係を円滑にするためのアドバイスをもらえる可能性があります。

 

 

慰謝料を支払う必要がある?

離婚慰謝料は、相手方の有責行為によりやむなく離婚するに至った精神的苦痛に対する賠償を求めるものです。

例えば不貞行為や暴力行為があったことが原因で離婚に至った場合、慰謝料の支払いが認められる可能性があります。

暴力行為の場合、当該暴力行為と離婚との因果関係や怪我の程度などが慰謝料の有無や金額に影響してきます。

上記事例の場合、具体的な状況は不明ですが、妻側に怪我もなく、入通院もないようであれば、慰謝料の支払い義務は認められない可能性があると考えます。

 

 

暴力が親権に影響する

親権については、子どもの成育歴の中でこれまでの「主たる監護者」が誰かということが重要です。

主たる監護者のこれまでの監護状況に問題が特になければ、主たる監護者が親権者となるのが通常です。

暴力行為が繰り返されていたなどの状況があれば、親権者としての適格性判断に悪影響を及ぼすと思われますが、過去に1度だけで、かつ、大した怪我などもなかったのであれば、その事自体は親権に重大な影響を及ぼすとは考えられません。

 

 

まとめ

以上、過去の暴力行為の離婚、慰謝料、親権への影響について、くわしく解説しましたがいかがだったでしょうか。

暴力行為の程度や相手の怪我の状況しだいでは、離婚原因となります。

また、慰謝料の支払い義務が発生する可能性もあります。

親権については、これまでの監護実績が重要視される傾向ですが、あまりひどい暴力の場合は親権者の適格性判断に悪影響を及ぼすと考えられます。

いずれにしても、具体的な状況によって見通しが異なるため、一度離婚を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。

この記事が離婚の問題に直面されている方にとって、お役に立てば幸いです。

 

 

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