旦那が出て行った。帰ってこない夫に生活費を請求できる?
旦那様が出て行った場合の生活費について、別居中であっても、婚姻期間中、主たる収入がある配偶者は、他方配偶者を扶養する義務が法律上ありますので、請求することはできます。
請求できる額については、旦那様と相談者様の年収額等により適正額は変わってきます。
このページでは、生活費となる婚姻費用の請求額や請求のポイントについて、弁護士が相談事例をもとに解説します。
ご相談内容
結婚してすぐ、夫の借金が100万円以上あるとわかりました。
そのことで話し合いをしていたのですが、夫が2013年2月に私とはやっていく自信がない、やっていこうと思わないと荷物をまとめ家を勝手に出ていきました。
私が話し合いを求め週に1度は帰ってきていたのですが、3月を最後に全く帰ってこなくなり、連絡もメールを都合いい文に返してくるだけで電話は無視をされ続けている状況です。
夫は夫の実家の仕事をしており、実家で暮らしているとは思うのですが、はっきりしていない状況です。
こちらは同居を希望しているのですが全く聞き入れてもらえません。
私は今20週の妊婦ですが、子どもができたとわかって少しして中絶を夫に求められています。
夫の母親からも産まれてくる子は幸せになれないと遠回しに中絶を求められました。
最近は全く連絡がとれません。
4月25日に5万が生活費として振り込まれていたのですが、家賃35000円、5才の息子(前夫との子、現在の夫とは1月に養子縁組をしている)の保育料16400円を払うと食費や光熱費がなく生活が困難です。夫の給料は18万円です。
夫の実家に連絡を入れ本人と電話を代わってもらい話したのですが、話しに帰ってきてと言っても酒を飲んでると言う理由で断られ、こっちは早く話がしたいと言われる始末です。
そして次の日にメールで、「固定電話、母への電話は強くお断りします。(ストーカー行為)」と言われてしまい、本人に連絡をしても前と同様無視されます。夫の母親へ連絡を入れても返事すらありません。
この場合、夫の実家へ出向いても大丈夫でしょうか?
直接本人に婚姻費用の請求をしてきていいものでしょうか?養育費ももらえるのでしょうか?
長くなり申し訳ありません。回答よろしくお願いします。
旦那が出て行った場合の生活費について弁護士の回答
メールでのご相談、ありがとうございます。
まず、婚姻費用についてですが、別居中であっても、婚姻期間中、主たる収入がある配偶者は、他方配偶者を扶養する義務が法律上ありますので、直接本人に請求することはできます。
ただし、請求できる額については、ご主人と相談者様の年収額等により、適正額は変わってきます。
いただいたメールからは、相談者様の収入状況や、ご主人のボーナスの有無などがわからないため、正確な適正額をお伝えすることができません。
仮に、相談者様が専業主婦で、ご主人にボーナスがなく、給与が月額18万円(税込み。)ということであれば、適正額は、裁判所から出されている算定表を基準にすると、適正額は、4〜6万円ほどになると思われます。
しかし、長男さんの保育料は特別な出費であると主張して、婚姻費用額に上乗せできる可能性もあります。婚姻費用算定表は、こちらからご覧になれますので、よろしければご利用ください。
また、養育費については、離婚後に発生するものですので、ご主人と離婚する前に請求することはできません。
結婚期間中のお子さんと相談者様の生活費は、婚姻費用に含まれています。
ご参考までに、養育費の適正額を見るための算定表も、こちらからご覧になれますので、よろしければご利用ください。
生活費(婚姻費用)を遡って請求することができるか?
今回のご相談では、別居した後、妻が夫にこれまで生活費(婚姻費用)を請求していないようです。
このような場合に、生活費(婚姻費用)を遡って請求することはできるのかを補足説明します。
婚姻費用の始期
婚姻費用の始期というのは、いつの時点からの生活費(婚姻費用)を請求できるのかという問題です。
婚姻費用の始期(請求できる時点)については、様々な見解があり得るところですが、一般的には請求の意思を明確にした時点と解されています。
請求の意思を明確にしたといえるのは、例えば、
- 義務者(本件では夫)に対して、内容証明郵便を送り受領された場合
- 家庭裁判所に婚姻費用分担調停を申し立てた場合
などが考えられます。
婚姻費用請求に関して、相談者様が取るべき対応
本件では、夫は相談者様からの連絡を無視し、何も返事を返してもらえない状況であるため、仮に婚姻費用を請求するために内容証明郵便を送ったとしても、受け取ってもらえない可能性もあります。
そうなると、仮に、後々争いとなったときに、果たして請求の意思を明確にしたといえるのかについて疑義が生じることも考えられます。
そのため、本件のような状況下では、場合によっては、すぐにでも婚姻費用分担調停を申し立ててしまうことも1つの方法といえます。
こうした判断においては、専門家の助言が必要と思われますので、婚姻費用に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。
最後に、ご主人の実家に出向いても大丈夫か、というご質問についてですが、ご主人に同居、婚姻費用の支払いを望み、夫婦関係修復の話し合いのために、ご主人の実家に出向くだけであれば問題はないと考えられます。
ご主人は、「ストーカー」などと述べておられるようですが、ご相談内容からは、ストーカー規制法のストーカーには該当しないと考えられますので、処罰されることもないでしょう。
夫婦には同居義務がありますので、自宅に戻られないご主人は、同居義務を履行していない状態です。
詳しいお話を伺わないと断言はできませんが、別居に正当な理由も認められなければ、ご主人の行為は、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)という離婚原因にもあたりえます。
相談者様が同居を望まれて、ご主人が応じないのであれば、家庭裁判所に、同居を求める調停というものを申し立てることもできます。
頑なに同居、修復を拒んでいる様子のご主人は、離婚調停を申し立ててくることも考えられますので、相談者様はその対応をしなければならない可能性もあります。
ご来所いただきますと、弁護士が、詳しいお話を伺い、より適切な助言をさせていただきます。疑問点などございましたら、妊娠中でいらっしゃるようですのでご体調のよいときにでも、一度ご相談にいらしてください。
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