夫婦で作成した誓約書の効力とは?離婚への影響は?【弁護士が解説】
夫婦間の誓約書であっても基本的には有効であり、内容によっては離婚に影響します。
以下、具体的な相談事例をもとに解説します。
ご相談内容
結婚して12年になります。中学1年と小学5年の子供がいます。
二人目が産まれた10年前に不貞行為をしてしまい、親同士と私達夫婦で話し合いを行い、その時は許してもらい、離婚をしないという事になりました。
それからは、不貞行為は一切ありません。
何年後かに別の女性とサーフィン関係で知り合い、相手にも家庭があり、友達関係という事で、メールをしたり、年に1~2くらい海に行ったりしていました。(7年くらいの付き合いだと思います)
その7年くらいの間でその女性とメールをしていることが妻に3回バレました。
友達関係ですが、冗談で「好きだよ」といったような内容のやりとりなどを行なったこともありました。
本当に友達だという事も妻に伝えましたが、10年前の不貞行為の事もあり、信じてもらえません。
バレるたびに、もうメールをしないと約束しながら、メールのやりとりを続けていました。
その女性とは、体の関係は一切ありません。趣味の上での関係、お互いに子供の年齢も近いために、子供の事などの相談をするような話し仲間です。
何年か前に誓約書を書きました。
内容は、その女性とのメールや関係を一切絶ちきります。法律に関係なく、妻が不貞行為だと認める行為をした場合は、離婚し、親権や慰謝料は妻の言いなりになる。といったような内容だったと思います。
私も文章をはっきりとは覚えていません。今は、誓約書を妻が持っているので詳しくわかりません。
妻が作った誓約書にその女性と会ったりメールをしたりする行為を不貞行為と判断するといった内容があるので、この誓約書に効力があるのであれば、民法にもある、離婚理由の中の不貞行為にあたるのでしょうか?
もしくは、離婚事由の婚姻を継続し難い重大な事由になり、妻がそれを強行すれば、離婚しなければならないのでしょうか?
民法にもある不貞行為は絶対にしていませんが、妻が不貞だと思う行為(メールや会ったり)をしてしまったという事は、誓約書に基づいた正当な離婚理由になりうるのでしょうか?
もしくは、他の離婚事由にあてはまるのでしょうか?
誓約書の約束を破った場合、やっぱり誓約書通り離婚しないといけないのでしょうか?
現在、妻は下の子供を連れて出て、別居5カ月になります。
妻のメールの注意にも背いた行為、メールの内容、妻に内緒で、2人で海に行く行為というのは、不貞行為になるのでしょうか?
この場合、離婚となった時に誓約書の効力は大きいのでしょうか?
知人などに相談すると、公正証書じゃないから、証拠にはなるけど、効力はないのでは?と言ってましたが、不安です。
今、妻は離婚をしたいと言っています。私は絶対に離婚をしたくありません。妻にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。
誓約書と公正証書の違いや効力についても教えてもらいたいです。
10年前の不貞行為の件も話しに絡んでくるのでしょうか?
10年前からは、その女性のメールの件もありましたが、一戸建ても購入し、二人でローンも組んでます。
本当に長々と質問も多くすみません。よろしくお願いいたします。
離婚が認められるか?
メールでのご相談、ありがとうございます。
まず、誓約書の内容に反する相談者様の行為が、法律上の離婚原因に該当するかというご質問について、解説いたします。
裁判で離婚をする場合、協議離婚や調停離婚のような場合と違い、「離婚原因」と呼ばれる、下表の5つの要件のいずれかに該当することが必要となります(民法770条1項)。
- ① 相手方に不貞行為があった
- ② 相手方の生死が3年以上明らかでない
- ③ 相手方から悪意で遺棄された
- ④ 相手方が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な理由がある
引用元:民法|電子政府の窓口
不貞行為にあたるか?
奥様は、上記①の「相手方に不貞行為があった」に該当すると主張してくることが考えられます。
しかし、この要件には該当しないと考えられます。
なぜならば、同条項にいう「不貞行為」とは、自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをさしますので、メールをする行為や一緒に海へ行く行為は該当しないからです。
そのため、奥様が強引に離婚手続を推し進めても、離婚訴訟において「不貞行為」という離婚原因が認められることはないでしょう。
婚姻を継続し難い重大な事由にあたるか?
ただし、別居されて5ヶ月が経過しており、奥様は離婚を希望されているようですので、今後別居期間がさらに長期化することも予想されます。
そうすると、後述するように誓約書が有効なものと認められる場合には、誓約書の存在とそれに反する行為を相談者様がなさった事実、別居期間をふまえ、いずれ、上記⑤の「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、訴訟において離婚が認められる可能性はあります。
また、10年前の不貞行為も、「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無を判断するひとつの事情として考慮される可能性はあります。
誓約書と公正証書違い
次に、誓約書と公正証書の違いと、誓約書の効力についてお答えします。
公正証書とは
公正証書とは、公証人が作成する、当事者間の合意内容を記した文書のことを指し、強度の証明力と執行力をもちます。
執行力とは、当事者が、合意の内容に基づいた支払い義務などを履行しない場合、預金差押え等の強制執行ができることをさします。
誓約書とは
誓約書は、当事者双方の合意内容を記載した書面という点では公正証書と同じですが、あくまで当事者が作成したものですので証明力は公正証書よりも劣る場合が多く、執行力は有しません。
相談者様が署名された誓約書についても、証明力は公正証書と比べると低く、執行力はありません。
しかし、その効力については、相談者様が自らの意思で、任意に署名されたものであれば、記載内容に合意したものとして有効となる可能性が高いです。
そのため、誓約書の内容通りの離婚条件が必ずしも認められるわけではありませんが、裁判での「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無の判断や、離婚条件を決める際に、奥様側に有利な一事情として考慮される可能性はあります。
誓約書の無効となる場合
ただし、誓約書の内容を拝見していないので断言はできませんが、誓約書が相談者様にあまりにも過大な義務・債務を課すものである場合には、その内容が公序良俗に反すると認められる場合には無効(民法90条)となる可能性はあります。
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
引用元:民法|電子政府の窓口
不倫の誓約書の書き方
当事務所では、不倫等があった場合の誓約書のサンプルをホームページ上で公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。
相談者様が離婚を拒否され続けても、このまま別居期間が長期化していくと、判決で離婚が認められるなどして離婚に至る可能性は高くなるので、早く手を打つ必要があるといえます。
離婚問題に強い弁護士に相談されると、現状に即した適切な助言を得られるのではないかと考えます。
まとめ
以上、夫婦間の誓約書の効力や離婚への影響について、具体例をもとに、詳しく解説しましたがいかがだったでしょうか。
夫婦間の誓約書であっても、公序良俗に反する等の例外的な事情がない限り合意の効力は認められます。
また、状況によっては法律上の離婚原因に該当する可能性があります。
これらについては、個別具体的な状況をもとに判断しなければならないため、離婚専門の弁護士へのご相談をお勧めいたします。
この記事が離婚問題でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。
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