一方的な離婚を迫る妻へ養育費や婚姻費用は払うべき?対処法解説

  

一方的に離婚を迫られたとしても、相手方よりもご自身の収入が多い場合、離婚成立後に、養育費を支払う義務が生じます。

また、婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を継続するための費用をいいますので、離婚が成立するまでは、婚姻費用を支払う義務があります。

このページでは、一方的に離婚を迫る相手からの請求であっても、養育費や婚姻費用を支払いに応じるべきなのか、離婚を同意すべきなのかなどの対処法を弁護士が相談事例をもとに解説いたします。

一方的な離婚を迫られた相談事例

離婚について相談があります。

私には結婚して一ヶ月で妊娠五ヶ月の妻と妻の連れ子で五才の女の子がいます。

先日、離婚してほしいと言われました。

理由は私の収入が少ないのと喧嘩したときに妻が実家に帰ると言うのでつい力ずくで嫁の肩を押さえて止めようとしてしまい、かっとなり、妻の携帯を投げて壊してしまったことらしいです。

妻は精神的に弱いところがあり、なにか気にくわない事があると、大声で怒ったり、奇声をあげたり、ひどいときには物を投げ、硝子を割ったりしていました。

日々の続く喧嘩と、妻の私への態度でストレスがたまっていて、爆発してしまったのかもしれません。

私の収入は手取り20数万程度で、神奈川に親が暮らしている私名義の持ち家があるのでその住宅ローン代で8万円、結婚して車を購入したのでそのローンが5万円、その他家賃などを払うと、10~15万程度残ります。

妻は連れ子の養育費として、4~6万毎月もらっています。

貯金はなく、お互い知人から借金があり、妻は同居する前にすんでいたところの滞納していた家賃もあります。

この場合、相手への当面の生活費、出産費用、子どもが生まれてからの養育費はどの程度払うのが相場なのでしょうか?

また、慰謝料は払わないといけないのでしょうか?

借用書はないものの、結婚するまえに妻の家賃や携帯代、生活費を立て替えて、貸してる部分もあります。

出産費用については国からの補助があるのに全額負担しなければいけないのでしょうか?

今、別居中なのですが、妻がお金を全部持っていってしまって、私に手持ちがないのに食費、検診代、その他でお金が必要なのでお金を振り込めと言われます。

妻はもう手持ちがないとかいうのですが、使用用途も私はわからないのですが、親や知人からお金を借りて振り込んでる状況です。

妻は子どもが生まれても面会させないと言っており、協議離婚では難しいのかと考えております。

私は離婚問題に詳しくないので、専門家のお話を聞きたいと思い、メールしました。

私には預金がないので着手金を一括で払う能力がないので、代理人をたてたり、弁護士さんに頼むのも難しいのかと考えております。

もし、調停離婚になった場合、損をしない、円満に解決出来る方法があれば教えて頂きたいです。

 

 

養育費や婚姻費用の支払い義務はある?離婚には同意すべき?

相談者様こんにちは。

メールでのご相談ありがとうございます。

まず、全体として、

  • 相談者様の税込みの年収
  • 相手方の連れ子さんと相談者様が養子縁組しているか
  • 相手方の収入の有無

などの事情がメールからは分かりかねますので、具体的金額をお示しすることまではできません。

その点はご了承ください。

ここでは、概要についてご説明させていただきます。

 

相手方の当面の生活費(婚姻費用)

婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を継続するための費用をいいます。

したがって、別居中は婚姻関係にありますので、相手方の当面の生活費として婚姻費用を支払う必要があります。

婚姻費用の分担は、その資産、収入、その他一切の事情を考慮してその程度や内容を決める(民法760条)ので、通常、収入の多い方から収入の少ない方に金銭を支払うことで行われます。

そこで、相談者様の方が相手方よりも収入が多いと仮定すると、離婚が成立するまでは、婚姻費用を支払う義務があるということになります。

相談者様の税込みの年収が 400万円程度で相手方が専業主婦であり、養子縁組をしていないと仮定した場合には、相手方へ支払う婚姻費用の適正額は月額 8〜10万円となります。

婚姻費用についての詳しい説明は以下をご覧ください。

 

婚姻費用算定表(PDF)は以下をご覧ください。

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子どもが生まれてからの養育費

未成年の子どもは、親に対して直接、扶養義務の履行として養育費を請求することができ、離婚後、子どもの親権者となった親も、親権者とならなかった親に対して子どもの監護養育のための費用の分担を請求することができます。

通常は、親権者となった親が他方に対して監護費用の分担として、子どもの養育費の支払いを求めています。

この養育費は、離婚後に支払う義務が生じます。

相談者様の税込みの年収が 400万円程度で相手方が専業主婦であり、養子縁組をしていないと仮定した場合には、養育費の適正額は、月額4〜6万円となる可能性が高いでしょう。

養育費についての詳しい説明は以下をご覧ください。

 

養育費算定表(PDF)は以下をご覧ください。

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出産費用

出産費用は、婚姻費用には含まれない特別の出費といえます。

そして、出産のための費用は国からの一時金が支払われる以上は、まずこれによって支払われるべきものといえます。

しかし、国の手当等は後払いのものもあるため、当面の出産費用について相談者様に頼らざるを得ないということも考えられます。

この部分については、後日手当が入った際に手当の不足分の2分の1を返還してもらうなどの対応を取ることが問題解決に資するかもしれません。

 

面会交流について

相談者様のメールでは、面会交流について相手方が拒否しているとのことですね。

面会交流は、子どもの健全な成長のためにも制限すべき特段の事情がない限りは認められるべきであると考えられています。

面会を制限すべき特別の理由とは、子どもの虐待のおそれや非監護親に対する暴力のおそれがある場合などをいいます。

したがって、今回の相談者様のような場合に、面会交流については、相談者様の方から面会交流を求める調停を申し立てることもできますし、面会交流の条件を定めなければ離婚には応じないとの条件を出すこともできます。

 

離婚原因について

相談者様は相手方の肩を押さえて止めようとして、携帯を壊したことがあるとのことですが、その行為のみをもって裁判で認められるような離婚原因には当たらないといえます。

相談者様の別居期間にもよりますが、このことのみが離婚原因であれば、相談者様が離婚に同意しない限り、相手方は離婚を望んでも離婚をすることはできないことになります。

 

相手方の持ち出した金銭

相手方がお金を持ち出したとのことですが、妻がこれを生活費に当てているのであれば、婚姻費用の前払いとして主張するなどの方法は考えられます。

既に使ってしまっている場合には、婚姻費用に充当することはできないので、財産分与の際に考慮することになるでしょう。

結婚する前に貸しているお金については、相手方に請求すること自体は可能です。

しかし、相手がこれを認めない場合、借用書等がない以上は、立証が困難なので交渉以外で回収することは難しいと思われます。

相談者様は金銭的に弁護士に依頼することは難しいとお考えのようですが、具体的な婚姻費用や養育費の金額や、調停の進め方等については、詳しい事情をお聞かせいただけると、より具体的な助言をさせていただけると思いますので、相談だけでもされてみることをおすすめいたします。

また、ご事情によっては、着手金の支払い方法等についても柔軟に対応させていただくことはできるかと思いますので、来所もご検討されてみてください。

補足

弁護士に離婚の相談に行く際に財産関係の具体的アドバイスを得るためには、以下のようなことを確認してから行くと、より具体的なアドバイスが受けられると思います。

  • 自分の収入(税込みのもの)
  • 相手方の収入(税込みのもの)
  • 保険はどのようなものに加入しているか
  • 相手方の財産(不動産、預貯金、車など)
  • 不動産を所有している場合にはローンがいくら残っているか。

 

 

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