養育費を請求したい|請求できる金額や請求方法を解説【計算機付】

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


養育費は、子どもが生活するために必要なお金です。

離婚後に子どもを育てている親は、他方の親に対し、養育費を請求することができます。

離婚の際に養育費について取り決めをしていなくても、請求することができます。

もっとも、どのくらいの金額を請求できるのか、どのように請求したらよいかについて疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。

そこで、ここでは養育費の請求に関し、請求できる金額、請求方法、まで請求できるのか、請求するための弁護士費用などについて解説していきます。

養育費とは

養育費とは、子どもが社会人として独立自活ができるまでに必要とされる費用です。

養育費の内容としては、子どもの衣食住のための費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。

 

 

請求できる金額はいくら?

養育費の金額については目安となる相場があり、一般的にはこの目安を参考に決めることが多いです。

その相場は、父母の収入や子どもの年齢・人数をもとに、複雑な計算式を使って算出されます。

もっとも、これを逐一計算するのは大変なので、簡易に素早く相場を確認できるよう「養育費算定表」という早見表があります。

家庭裁判所では、この算定表を用いて算出された養育費の金額を、養育費決定の際に重要視する傾向にあります。

したがって、この算定表を参照することにより、請求できる金額の大体の目安を確認することができます。

【 養育費算定表はこちら ⇒ 養育費算定表(PDF) 】

引用元:養育費・婚姻費用算定表 |裁判所

算定表の詳しい見方については、こちらのページをご覧ください。

 

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当事務所では、養育費の目安を素早く確認したいという方のために、オンラインで、かつ、無料で自動計算できるサービスをご提供しています。

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なお、個別の事情に応じて調整が必要になる場合もあるので、シミュレーション結果等はあくまで参考にとどめ、具体的な請求金額については専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

養育費の請求権者

養育費は誰が請求できるの?

母親は請求できる

子どもの親は子どもに対して扶養義務を負っており、子どもを育てるために必要なお金は経済力に応じて父母間で分担するべきとされています(民法766条1項、877条1項)。

引用元:民法|e-GOV法令検索

そのため、離婚した場合、子どもを育てている親(「監護親」といいます。)は、他方の親に対し、養育費の支払いを請求することができます。

離婚後に子どもを育てている親は母親である場合が多く、また、父親の方が経済力がある場合が多いです。

そのため、多くのケースでは、母親が父親に対して養育費の請求をすることができます。

なお、離婚前に別居した場合は、「婚姻費用」として、母親自身の生活費とともに子どもを育てるために必要なお金を請求することができます。

婚姻費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

子どもからも請求できる

子どもの親は子どもに対して扶養義務を負っています(民法877条1項)。

そのため、子どもからも、離れて暮らす親に対して養育費(扶養料)を請求することができます。

もっとも、特別な事情がない限り、養育費の請求は監護親(多くの場合母親)のみからされるのがほとんどです。

 

養育費の請求を弁護士に依頼するメリット

弁護士に依頼して養育費を請求してもらうことにより、早期に、適切な金額の養育費を支払ってもらえるようになる可能性が高くなります。

具体的には、次のようなメリットが得られます。

  1. ① 具体的事情に基づき適正な金額を計算してくれる
  2. ② 相手との交渉を弁護士に任せられる
  3. ③ 先を見据えた解決を図ってくれる
  4. ④ 法的な手続きに移行しやすい
①具体的事情に基づき適正な金額を計算してくれる

先に、養育費算定表を用いた計算方法についてご紹介しましたが、これだけでは適正な金額を算定できない場合があります。

例えば以下のような場合は個別具体的な事情に応じた判断が必要になります。

(ⅰ)養育費算定の前提となる当事者双方の年収をいくらとするかが問題になる場合


例えば副業をしている場合、時期により収入に大幅な変動がある場合、算定表の上限(給与所得者の場合は2000万円、自営業者の場合は1567万円)を大幅に超えている場合などです。

この場合、単純に源泉徴収票や確定申告書にある金額を養育費算定の基礎とすることはできず、個別の事情に沿って検討する必要があります。

 

(ⅱ)算定表では考慮されていない費用がかかる場合


「算定表では考慮されていない費用」とは、私立学校の学費・習い事・通常以上の医療費など(これらを「特別支出」といいます。)のことです。

これら特別支出については、分担対象にするか、いくらを加算するかなど、具体的事案に即した検討が必要になります。

いずれも専門知識がないと判断が難しいですが、弁護士に依頼した場合は、弁護士が具体的事情に基づき検討し、適正な金額を計算してくれます。

それにより、もらえるはずの養育費をもらい損ねるなどのリスクを回避することができます。

 

②相手との交渉を弁護士に任せられる

弁護士に請求を依頼した場合は、弁護士が適切な内容・形式で請求書を出してくれます。

また、相手が請求額に対して減額や免除を求めてきた場合は、弁護士が代理人として相手と交渉してくれます(これを「代理交渉」といいます。)。

当事者本人同士では冷静に、対等に話し合えない場合であっても、弁護士による代理交渉によれば早期に適切な解決ができる可能性もあります。

また、自分で直接相手とやり取りしなくて済むので、精神的・肉体的な負担も軽減することができます。

 

③先を見据えた解決を図ってくれる

養育費は、原則として1回限りの支払いで終わるものではなく、継続的に支払われるものなので、取り決めた後に途中で支払いが滞ってしまったり、金額の見直しが必要になったりする場合も多いです。

専門の弁護士であれば、このような可能性も考慮し、できるだけ後で困らないような解決を図ってくれるでしょう。

例えば、取り決め内容を公正証書にして強制執行できるようにしておいたり、子どもの事故・病気・進学などで出費が必要になった場合は別途話し合う旨約束しておくなど、事案に応じた提案をしてくれるでしょう。

 

④法的な手段に移行しやすい

相手が請求を無視する場合や、交渉によっても解決できなかった場合は、裁判所の手続き(調停・審判)による解決へ進むことになります。

請求の段階から弁護士に依頼していれば、弁護士に引き続き対応を依頼することで、スムーズに裁判所の手続きに移行することができます。

また、裁判所の手続きに移行した後も、弁護士に全面的にサポートしてもらうことができるため、できるだけ早期に、適切な解決ができる可能性が高くなります。

 

⑤相手に対して心理的プレッシャーを与える

自分自身で養育費の支払いを相手に請求しても、支払ってくれないケースがあります。

このような場合、弁護士から請求してもらうことで、相手に心理的なプレッシャーをかけることができるでしょう。

ケースにもよりますが、通常弁護士は、養育費を請求する際、内容証明郵便等の文書を駆使し、その文面には相手に養育費の支払い義務があること、養育費を支払ってくれない場合は法的措置をとるなどの文章を記載します。

このような文面が弁護士名で届くと、これまで支払ってくれなかった相手でも、事の重大性を認識してくれるようになる可能性があります。

 

 

養育費を請求する方法

養育費を請求する方法としては、次のようなものがあります。

  • 自分で請求する(手紙やLINE、内容証明郵便)
  • 弁護士に請求してもらう
  • 養育費の調停を申し立てる

なお、上記の方法は、離婚後に養育費を請求する場合を前提としています。

養育費は、離婚の際に離婚条件の1つとして取り決めることもできます。

この場合は、離婚と一緒に解決されることになるので、別途養育費だけを請求することにはなりません。

すなわち、離婚成立前の状況の場合、養育費のほかに、親権、財産分与、慰謝料、年金分割などのもろもろの条件について相手との協議が必要となります。

離婚の進め方については、こちらをご覧ください。

以下では、離婚後に養育費を請求する場合を前提として解説していきます。

 

手紙やLINEでの請求は効果的?

相手との関係によりますが、普通に連絡を取り合える仲であればある程度効果的である場合もあるでしょう。

手紙やLINEでの請求は、費用がほとんどかからず、簡単な方法ですので、最初のステップとして試すのはよいでしょう。

また、裁判実務では、請求した時点からしか養育費はもらえないと考えられているので、早く請求を出すこと自体が大切ともいえます。

ただし、普通郵便による手紙やLINEは、養育費の請求をした事実を明確にできないことがあります。

そのため、相手に無視されたり、支払いに応じてもらえなかったりした場合は、速やかに次にご紹介する(弁護士による)内容証明郵便の送付等を行うようにしましょう。

なお、誤った計算により適正額よりも低い額を請求してしまい、その金額で合意が成立してしまった場合、後で合意を覆すことは難しくなります。

手紙やLINEは簡単に送れる反面、内容の吟味もおろそかになりがちですので、事前に弁護士に見てもらったりするなど、慎重に対応するようにしましょう。

 

養育費の支払通知書の書式

手紙やLINEで請求したものの、相手が支払いに応じない場合は、速やかに内容証明郵便で養育費の支払通知書を出すようにしましょう。

内容証明郵便とは、「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰に差し出したか」ということを、郵便局が証明してくれる制度です。

先にも解説したとおり、裁判実務では、請求した時点からしか養育費はもらえないとされています。

そのため、いつ養育費の請求をしたかは重要な事項となります。

内容証明郵便で通知書を送れば、「いつ養育費を請求したか」を明確にすることができるので、「いつから養育費がもらえるか」について争いになることを防ぐことができます。

なお、当事務所では養育費の支払通知書(電子内容証明郵便向け)の書式をホームページ上で公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。見本として参考になさってください。

養育費の支払通知書の書式はこちらのページをご覧ください

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養育費の支払い通知書

 

取り決め内容は公正証書にする

相手が請求に応じた場合は、養育費の金額、支払方法などについて、「公正証書」にしておくようにしましょう。

口約束や不適切な書面での約束では後で、守ってもらえない反故にされるおそ恐れがあるので避けましょう。

「公正証書」とは、公証役場で作成する公文書のことであり、高い証明力があります。

また、「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」(支払わない場合は強制執行を受けても異論はないと認めた文言)が入っている公正証書を作成しておけば、相手が養育費の支払いを怠った場合、強制執行(相手の給与等を差し押さえて強制的に養育費を支払わせる手続き)をすることもできます。

公正証書について、詳しくはこちらをご覧ください

 

弁護士に請求してもらう

弁護士に請求を依頼するメリットは先にご紹介したとおりです。

上記に解説した内容証明郵便の作成・送付や、公正証書の作成も、弁護士に依頼することにより適切に行うことができ、ご自身の負担も軽減することができます。

 

養育費の調停を申し立てる

「調停」とは、裁判所において、裁判所(調停委員会)に仲介してもらいながら話し合いをし、合意による解決を目指す手続きです。

養育費の調停を申し立てると、養育費の金額や支払方法などを裁判所で話し合うことになります。

調停で話し合っても解決できなかった場合は、調停は「不成立」として終了し、引き続き「審判」という手続きに移行することになります。

「審判」とは、裁判官が一切の事情を考慮して養育費の金額等を決定する手続きです。

調停のメリットとデメリット

調停は、裁判所が話し合いの仲介をしてくれるので、当事者本人同士よりも冷静に話し合うことができる可能性があります。

また、あくまでも話し合いによる解決を目指すものなので、裁判官が決めるよりも柔軟な解決ができる可能性もあります。

ただし、調停は裁判所のペース(月1回、1回当たり2時間程度)で進められるので、解決までに時間がかかります。

また、話し合いの仲介をしてくれる調停委員のほとんどは法律の専門家ではなく、立場上も一方の当事者に有利になる助言などはできません。

そのため、ご自身でしっかりと状況を把握し、解決案の検討をしなければ、不利な条件で合意がまとまってしまうおそれもあります。

これを回避するためには、調停の対応を弁護士に依頼するのがおすすめです。

しかし、調停は時間・労力がかかる手続きであるため、代理交渉の場合よりも弁護士費用が割高になることがほとんどです。

 

各請求方法のメリット・デメリット

上記にご紹介した各請求方法のメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

請求方法 内容 メリット デメリット
自分で請求する 手紙やLINEで直接請求する
  • 簡単
  • ほとんど費用がかからない
  • あまり効果は効果的ではない
  • 適切な解決とならない可能性
内容証明郵便で直接請求する
  • 手紙やLINEによる請求よりも効果的
  • 請求時点が明確になる
弁護士に請求してもらう 弁護士に請求してもらう、代理人として交渉してもらう
  • 早期かつ適切な解決につながる
  • 調停の対応を依頼するよりも弁護士費用を抑えることができる
  • 弁護士費用がかかる
養育費の調停を申し立てる 裁判所で話し合う。話し合いによる合意ができない場合は「審判」に移行する
  • 冷静に話し合える可能性
  • 柔軟な解決の可能性
  • 時間がかかる
  • 適切な解決とならない可能性
  • 弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかる

※一般的な傾向であり事案によって異なる可能性があります。

これらを踏まえると、弁護士に請求してもらう方法をおすすめします。

まずは弁護士に請求・代理交渉してもらい、それでも解決できない場合に、次善の策として調停の申立てを検討されるとよいでしょう。

 

 

養育費はいつまで請求できる?

養育費の支払終期

基本的に20歳まで

養育費は子どもが独立自活するまでの費用であるため、子どもが独立自活するようになれば請求することはできなくなります。

そして、通常は20歳(平成30年の法律改正以前の成人年齢)になれば独立自活できると考えられているため、裁判で判断される場合は、基本的には20歳までとされるケースが多いです。

大学生や病弱の場合など

もっとも、4年制大学に進学する場合や、病弱であるなどの理由で就労できない場合などもあり、独立自活できる年齢が20歳と一致するとは限りません。

このような場合、合意により実際に独立自活できるようになる年齢(例えば、大学を卒業する22歳)までと取り決めたり、終期を取り決めなかったりすることは、何ら問題ありません。

他方、合意で決められない場合は、最終的には裁判所の判断を仰ぐことになりますが、大学進学のケースでは、養育費を支払う親が大学進学を了承していたか、などの事情が重要となる傾向です。

病気の場合はその病気の程度(回復の見込み)等が重要となります。

もっとも、ケース・バイ・ケースとなります。

また、養育費の支払終期が過ぎている場合でも、子どもからの扶養料の請求は可能なケースも考えられます。

そのため、具体的には養育費の問題に強い弁護士へ相談されることをおすすめいたします。

できる限り早めに請求することが大切

先にも解説したとおり、裁判実務では、養育費は請求した時点からしかもらえず、それより前の期間における養育費をさかのぼって支払ってもらうことは、相手が任意に応じない限り困難です。

そのため、離婚後に養育費の請求をしないまま、子どもが独立自活できる年齢になってしまった場合は、養育費を一切受け取れないことになってしまいます。

したがって、養育費について取り決めをせずに離婚した場合は、できる限り早く請求をすることが大切です。

 

養育費の時効

養育費の取り決めができたとしても、途中で支払いが滞ってしまう場合もあります。

その場合、支払いが滞っている状態を放置すると、養育費を請求できる権利が時効で消滅してしまうので注意が必要です。

養育費は、通常は「毎月末に〇円を支払う」というように月ごとに支払う取り決めがされるため、月ごとに養育費を請求できる権利が発生します。

そして、月ごとに発生した養育費を請求できる権利は、5年が経つと時効によって消滅してしまうことになります。

ただし、裁判所の手続き(調停、審判、訴訟)で決めた養育費については、消滅時効の期間は10年に延長されます。

いずれにしても、期限があることを意識し、未払いがあった場合は早めに対処することが大切です。

時効にかかってしまいそうな場合は、時効の進行をストップさせる手段もあります。

ただ、専門家でないと適切な手段をとるのが難しい場合も多いため、できる限り早めに専門の弁護士に相談するようにしてください。

養育費の時効について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

養育費を請求するための弁護士費用

現在は弁護士費用は自由化されており、各法律事務所が独自に定めているため、依頼する弁護士により費用は異なります。

ただ、以前は弁護士費用に関して弁護士会としての基準があり(旧弁護士報酬基準)、現在においてもこの基準を踏襲している事務所も多いかと思います。

旧弁護士報酬基準を参考にすると、養育費の請求について弁護士に依頼する場合の費用の目安は以下のようになります。

項目 内容 目安
着手金 弁護士に依頼したときに最初に支払うお金 20万円〜50万円(交渉又は調停の費用。ただし交渉の方が割安になっている場合が多い。)
報酬金 事件が終了したときに支払うお金 獲得できた(または減額できた)養育費の2年〜5年分の10%〜16%

根拠:(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準(一部抜粋)

養育費の弁護士費用について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

まとめ

以上、養育費の請求に関し、請求できる金額、請求方法、いつまで請求できるか、請求するための弁護士費用などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

養育費は子どもの生活のための大切なお金ですので、早期に、適切な金額を支払ってもらえるようにすることが重要です。

そのためには、まずは養育費の問題に強い弁護士に相談されることをおすすめします。

当事務所では、離婚事件を専門に扱うチームがあり、養育費の請求について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており、全国対応が可能です。

養育費の請求については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が、養育費の請求をお考えの方にとってお役に立てれば幸いです。

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