養育費の減額調停とは?費用・手続の流れ・ポイントを弁護士が解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士  


養育費が取り決められた後に、収入の減少、扶養家族の増加など、当時予測できなかった事情の変更があった場合、養育費を減額することができます。

養育費の減額調停とは、過去に取り決められた養育費を減額することについて、裁判所で話し合いをする手続きです。

ここでは、養育費の減額調停に関して、概要、流れ、必要書類、費用などについて解説していきます。

 

養育費の減額調停とは

養育費とは

養育費とは、子どもが社会人として独立自活できるまでに必要とされる費用です。

養育費の内容としては、子どもの衣食住のための費用・健康保持のための医療費・教育費が含まれます。

 

減額調停とは

養育費の減額調停とは、過去に取り決めた養育費を減額することについて裁判所で話し合い、合意による解決を目指す手続きです。

養育費が取り決められた後、その当時予測できなかった事情の変更(収入や扶養家族の変動など)があった場合には、養育費を減額することができます。

減額調停では、養育費を減額できるか、いくら減額するか等について話し合い、合意を成立させることを目指していきます。

調停とは

調停とは、当事者間の紛争について、調停委員会(裁判官1名と調停委員という裁判所の職員2名から構成される裁判所の組織)の仲介によって、当事者が互いに譲歩し合い、合意による解決を目指す手続きです。

簡単に言うと、「裁判所での話し合い」です。

調停のメリットとデメリットを簡単にまとめると次のようになります。

メリット デメリット
  • 相手と直接顔を合わせる必要がない
  • 相手と直接顔を合わせる必要がない
  • 柔軟な解決の可能性がある
  • 時間がかかる
  • 負担が大きい(裁判所に出頭する必要)
  • 相手が応じないと成立しない

 

 

養育費の減額調停の流れ

養育費の減額調停の流れは以下のとおりです。

養育費の減額調停の流れ

①養育費の減額調停の申立て

養育費の減額調停を始めるためには、まず家庭裁判所に申立てをする必要があります。

申立てをしてから約1か月後の日時に、第1回目の調停(初回期日)が設定されます。

初回期日の日程調整は、裁判所と申立人側で行われます。

初回期日の日時が決まると、裁判所から相手方に調停期日の日時等が記載された通知書が送付されます。

 

②初回期日

調停は、「法廷」ではなく、会議室のような部屋(調停室)で開催されます。

当事者は最初は別々の待合室で待機しています。

初回期日では、まず申立人の方から調停委員に呼ばれますので、申立人は呼ばれたら調停室に入り、調停委員に言い分を話していきます。

その後、申立人が退出し、今度は相手方が調停委員に呼ばれ、相手方が調停室に入り調停委員に言い分を話していくことになります。

このように、交互に調停委員に話しをしていくスタイルで話し合いが進められていきます。

 

③第2回目~数回の調停期日

1回の調停の所要時間は2時間程度であり、その時間内に話し合いがまとまらなければ2回目、3回目と合意がまとまるまで(又は、まとまる見込みがないとして終了するまで)期日が重ねられていきます。

調停期日の回数はケースバイケースですが、平均的には3回~5回程度です。

通常、次の期日は1か月ほど後に指定されますが、裁判所の諸事情で2か月ほど後に指定されることもあります。

 

④調停の終了

話し合いの結果、合意がまとまれば調停は成立して終了します。

その際には、裁判所によって合意内容をまとめて記載した「調停調書」という書類が作成されます。

他方、話し合いの結果、合意がまとまらなければ調停は不成立となって終了し、その後引き続き「審判」という手続きに自動的に移行することになります。

「審判」とは、裁判官が当事者双方の言い分や提出資料を検討して一定の結論を出す手続きです。

 

 

養育費の減額調停の必要書類

養育費の減額調停を申し立てるには、次の書類が必要となります。

必要書類

  • 申立書及びその写し1通

申立書の書式は、裁判所の窓口でもらうこともできますし、ホームページでダウンロードすることもできます。

参考:養育費請求調停の申立書|裁判所

  • 標準的な申立添付書類
    対象となる子の戸籍謄本(全部事項証明書)
    申立人の収入に関する資料(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書写し等)

戸籍謄本は、子どもの本籍のある市区町村役場で取り寄せます。

また、養育費の金額は父母の収入額に応じて算定されますので、収入に関する資料が必要になります。

  • その他裁判所に求められている書類(事情説明書、進行に関する照会回答書、連絡先等の届出書など)

標準的な書類の他に、調停を円滑に進める目的などから、各裁判所ごとに提出を求められている書類があります。

詳しくは、申立先の家庭裁判所の窓口やホームページでご確認ください。

東京家庭裁判所で利用されている書式については、こちらをご覧ください。

参考:家事調停の申立て|裁判所

 

調停を申し立てる場所

養育費の減額調停を取り扱う裁判所(管轄裁判所)は、原則として、相手方の住所地を担当する裁判所となります。

また、申立人と相手方が「この裁判所でやりましょう」と合意した場合は、その合意された裁判所でも取り扱うことができます。

管轄裁判所は、裁判所のホームページで調べることができます。

引用元:裁判所の管轄区域|裁判所

なお、支部や出張所については合意管轄の対象とはならないので注意してください。

 

 

養育費の減額調停の費用

養育費の減額調停にかかる費用は、弁護士に依頼しない場合は実費のみ、弁護士に依頼する場合は実費に加え弁護士費用がかかります。

実費

裁判所に納める費用として以下の実費がかかります。

項目 金額 注意点
申立手数料 1200円 子ども1人につき1200円分の収入印紙を申立書に貼付する。
郵便切手代 1000円程度 裁判所によって異なる。
戸籍謄本取得費用 450円 子どもの戸籍謄本を取得するための費用。納付先は各市区町村役場。
その他 数千円程度 交通費、調停調書の交付手数料など。

 

弁護士費用の目安

弁護士に調停対応を依頼する場合、上記の実費に加え、弁護士費用が必要となります。

具体的な金額については、法律事務所によって異なるため、相談時にお見積もりを出してもらうようにするとよいでしょう。

ここでは、一般的な目安についてご紹介いたします。

弁護士費用の内訳と相場

以前は、弁護士の報酬に関して、弁護士会としての基準がありました(旧日本弁護士連合会弁護士報酬基準)。

現在、弁護士費用は自由化されており、各法律事務所が独自に定めていますが、旧報酬基準を踏襲している事務所も多いかと思いますので、相場としてはこの旧報酬基準が参考となります。

旧報酬基準(調停事件)の弁護士費用の内訳と相場は以下のとおりです。

項目 内容 支払時期 旧報酬規程相場
法律相談料 法律相談の費用 相談時:正式な依頼前 30分5000円〜1万円
着手金 弁護士に依頼するとき最初に支払う費用 依頼時 20万円〜50万円程度
報酬金 結果に応じて支払われる費用 終了時 10万円〜50万円程度(※)
日当 弁護士が事務所を離れたときの費用 終了時またはその都度 半日3万円・1日5万円程度
実費 弁護士が事件処理をするうえで必要になった費用 終了時またはその都度 数千円程度(交通費などで高額になる場合もある)

根拠:(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準

(※)養育費の減額に関しては「減額できた金額の○年分の○%」(3年分〜5年分の10%〜16%程度のことが多い)という形で定められていることが多いです。たとえば、「減額できた金額の2年分の11%」という定めの場合、月額5万円の減額ができた場合は、報酬金は5万円 × 24か月 × 11% = 13万2000円となります。

 

養育費の減額調停のよくあるQ&A

調停を欠席したらどうなりますか?

調停での話し合いはできませんので、最終的には審判に移行し、審判で欠席した人に不利な内容の判断がされてしまう可能性があります。

また、法律(家事事件手続法)では、正当な理由なく調停に出席しない場合は5万円以下の過料に処するとされています(258条1項、51条2項・3項)。

なお、事情があってやむを得ず欠席をする場合は、直ちに不利益な扱いを受けることはありません。

無断で欠席せずに、裁判所に事情を話すようにしましょう。

参考:家事事件手続法|e-Gov法令検索

 

調停ではどのようなことが聞かれますか?

申立人に対しては、養育費の減額を必要とする事情や、いくらの減額を求めるかについて聞かれます。

減額を必要とする事情とは、申立人の収入の減少、相手方の収入の増加、再婚・養子縁組などによる扶養家族の変動などのことです。

減額を必要とする事情は、減額調停のポイントとなるため、具体的に聞かれることが想定されます。

相手方に対しては、減額についての意向や、申立人が主張する事情の変更に関する意見などが聞かれます。

 

弁護士なしでも大丈夫ですか?

弁護士なしでも手続きを行うことができます。ただし、弁護士に依頼することで手続き全般のサポートを得ることができ、適切な解決にもつながるので、依頼のメリットは大きいといえます。

なお、当事務所では、いきなり調停を申立てるのではなく、「弁護士による代理交渉」による解決をおすすめしています。

代理交渉とは、裁判所を利用せず、弁護士が直接相手と交渉する方法です。

相手と直接顔を合わせずに済む、柔軟な解決が可能という調停同様のメリットを得ながら、裁判所を利用しないので短期間で解決できる可能性があり、弁護士費用も抑えることができます。

このように、弁護士に相談することにより調停以外の手段で早期に適切な解決につながることもありますので、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

まとめ

以上、養育費の減額調停に関して、概要、流れ、必要書類、費用などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。

養育費の減額については、手続き面だけでなく、減額を求められるかどうか、減額に応じなければならないのかなど、内容面でも難しい問題があります。

養育費の減額調停をお考えの方や、相手から減額を求められている方は、養育費の問題に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

当事務所では、離婚事件を専門に扱うチームがあり、養育費の問題について強力にサポートしています。

LINE、Zoomなどを活用したオンライン相談も行っており、全国対応が可能です。

養育費の問題については、当事務所の離婚事件チームまで、お気軽にご相談ください。

この記事が養育費の問題についてお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。

 

 

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