【養育費】子どもが2人いる場合の相場は?計算方法も解説

  
弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

離婚する際、その後の子どもの生活を支えるために重要な役割を果たすのが養育費です。

養育費は、子どもが成人したり大学を卒業したりするまでの長期間にわたって子どもの生活を支えます。

支払う側にとっても受け取る側にとっても重要なものであり、よく考えて取り決めなければいけません。

今回は、子どもが2人いる場合の養育費の相場と計算方法その他の注意点について解説します。

 

養育費とは

子どもが成人するまで(場合によっては、大学を卒業するまで)に必要とされる生活費などの費用のことを、養育費といいます。

離婚をする夫婦の間に未成熟の子がいる場合、その子どもにかかる養育費は、子どもを引き取らない親も負担します。

いくら負担するかは、多くの場合、裁判所が公表している標準算定方式・算定表(以下では単に「算定表」といいます。)を参照して計算します。

参考:裁判所|標準算定方式・算定表

 

 

子どもが2人いる場合の養育費相場【年収別】

算定表から導き出される子どもが2人いる場合の養育費の相場は、以下のとおりです。

なお、以下でいう「年収」は、

会社員の場合

年末に会社からもらう源泉徴収票に記載されている「支払金額」(税金等が控除されていない金額)

自営業者の場合

確定申告書の「課税される所得金額」に実際に支出されていない各種控除(基礎控除、青色申告控除、支払がされていない専従者給与など)を加算した金額

になります。

なお、支払う側は多くの場合は夫なので、以下では便宜上「夫」といいます。

同様に、受け取る側は多くの場合妻なので、以下では「妻」といいます。

 

年収300万円の場合

子どもの年齢 妻の年収(給与収入) 養育費(月額)
会社員の場合 自営業者の場合
2人とも14歳以下 なし 4~6万円 6~8万円
125万円 2~4万円 4~6万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 6~8万円 8~10万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円
2人とも15歳以上 なし 6~8万円 8~10万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 2~4万円 4~6万円
300万円 2~4万円 4~6万円

 

年収400万円の場合

子どもの年齢 妻の年収(給与収入) 養育費(月額)
会社員の場合 自営業者の場合
2人とも14歳以下 なし 6~8万円 10~12万円
125万円 4~6万円 6~8万円
200万円 4~6万円 6~8万円
300万円 4~6万円 6~8万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 8~10万円 10~12万円
125万円 6~8万円 8~10万円
200万円 4~6万円 6~8万円
300万円 4~6万円 6~8万円
2人とも15歳以上 なし 8~10万円 10~12万円
125万円 6~8万円 8~10万円
200万円 4~6万円 8~10万円
300万円 4~6万円 6~8万円

 

年収500万円の場合

子どもの年齢 妻の年収(給与収入) 養育費(月額)
会社員の場合 自営業者の場合
2人とも14歳以下 なし 8~10万円 12~14万円
125万円 6~8万円 10~12万円
200万円 6~8万円 8~10万円
300万円 6~8万円 8~10万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 10~12万円 12~14万円
125万円 8~10万円 10~12万円
200万円 6~8万円 10~12万円
300万円 6~8万円 8~10万円
2人とも15歳以上 なし 10~12万円 14~16万円
125万円 8~10万円 10~12万円
200万円 6~8万円 10~12万円
300万円 6~8万円 8~10万円

 

年収600万円の場合

子どもの年齢 妻の年収(給与収入) 養育費(月額)
会社員の場合 自営業者の場合
2人とも14歳以下 なし 10~12万円 14~16万円
125万円 8~10万円 12~14万円
200万円 8~10万円 10~12万円
300万円 6~8万円 10~12万円
1人は15歳以上、1人は14歳以下 なし 12~14万円 14~16万円
125万円 10~12万円 12~14万円
200万円 8~10万円 12~14万円
300万円 8~10万円 10~12万円
2人とも15歳以上 なし 12~14万円 16~18万円
125万円 10~12万円 14~16万円
200万円 8~10万円 12~14万円
300万円 8~10万円 12~14万円

 

注意点~算定表より養育費が増額・減額することもある

上記の表は、あくまでも一般的な相場です。

各家庭の事情に合わせて金額が変わる場合もあります。例えば、

  • 私立学校の学費
  • 習い事の費用
  • 子どもに病気があることによる高額の医療費

がかかっている場合などです。

このような費用については、夫にも負担させるべきか、負担させる場合にはどのような割合にするか、といってことについて、専門的な見地からの検討が必要です。

他にも、妻が専業主婦である場合でも、将来的にパートなどで収入を得ることになることを見込んで、収入をゼロとせずに算定する場合などもあります。

養育費の算定の仕方がよくわからない場合は、一度弁護士に相談してみてください。

あわせて読みたい
ご相談の流れ

以下のページでも、算定表の見方、養育費を決めるときの注意点などについて解説しています。

参考にしてください。

当サイトでは、手軽に養育費の相場を参照できるよう、養育費算定シミュレータを提供しております。

ぜひご活用ください。

養育費シミュレーター

 

 

養育費算定表を用いた計算方法

次に、算定表の使い方について解説します。

①表を選ぶ

算定表には、子どもの数と年齢に応じて

「養育費・子1人表(子0歳~14歳)」
「養育費・子2人表(第1子及び第2子15歳以上)」

など複数の表があります。

子ども3人まで対応する表がありますので、自分のお子さんの人数、年齢に合う表を選びましょう。

まだ離婚が成立していない場合は、自分の生活費も含めた婚姻費用を請求できます。

婚姻費用についても、養育費と同様、子どもの数と年齢に応じた算定表がありますので、離婚前の場合には、婚姻費用の表を選んでください。

算定表は、以下のページから確認できます。

 

②義務者と権利者の年収を照らし合わせる

使う表は見つかりましたか?

見つかったら次は、支払う側(義務者)と受け取る側(権利者)の年収がいくらかを確認します。

先ほども申しましたが、「年収」は、

会社員の場合
年末に会社からもらう源泉徴収票に記載されている「支払金額」(税金等が控除される前の金額)
自営業者の場合
確定申告書の「課税される所得金額」に実際に支出されていない各種控除(基礎控除、青色申告控除、支払がされていない専従者給与など)を加算した金額

になります。

年収の確かめ方について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

両者の年収を確認したら、算定表を見てみましょう。

算定表は、縦軸に義務者(支払う側)の年収、横軸に権利者(受け取る側)の年収が記載されています。

自営業の場合と給与収入の場合とで欄が分けられていますから、当てはまる方の欄の数字を見てください。

見つかったら、権利者の年収のところから上に線を延ばし、義務者の年収のところから右に線を延ばしていきましょう。

二つの線の交わったところに記載されている金額が、あなたの場合の養育費の相場になります。

試しに、養育費・子2人表(第1子及び第2子0~14歳)を見てみましょう。

義務者(夫)の年収は450万円
権利者(妻)の年収は150万円

とします(いずれも給与収入)。

縦軸の給与欄の「450」のところから右に線を延ばし、横軸の給与欄の「150」のところから上に線を延ばしていきます。

そうすると、両者から延ばした線が交わったところに「6~8万円」と書かれています。

これが、この場合の養育費の相場となります。

ただ、先にも申しましたとおり、私学の学費、習い事の費用、高額の医療費などについて加算される場合もあります。

 

③相手方も子どもを監護している場合について

算定表は、一方の親が全ての子を監護していることを前提として作られています。

そのため、相手方も子どもを監護する場合には算定表を使うことはできず、自分で養育費を計算しなければなりません。

計算には、算定表を作るのにも用いられた標準算定方式を使います。

その手順を簡単に解説します。

1.基礎収入の算出

標準算定方式では、年収をもとに、総収入から「公租公課」、「職業費」及び「特別経費」を差し引いた「養育費を捻出する基礎となる収入(基礎収入)」を算出します。

算出するには、年収ごとに定められた割合を用います。

割合など基礎収入の算出方法の詳細については、以下のページを参照してください。

2.子の生活費

次に、子どもにかける生活費を算出します。

子どもの生活費は、大人を100として、0~14歳では62、15歳以上では85とするとの指数が決められています。

これらの指数を基に、

子の生活費 = 義務者の基礎収入 × (子全員の指数の合計)÷(義務者の指数 + 子全員の指数の合計)

という式を用いて、子の生活費を算出します。

3.養育費の算出

子の生活費を算出できたら、

子の生活費 × 義務者の基礎収入 ÷ (義務者の基礎収入 + 権利者の基礎収入)

という計算式を用いて、義務者が支払うべき養育費を算出します。

4.義務者も子どもを養育している場合

義務者も子どもを養育している場合は、さらに、計算をする必要があります。

まず、算出された養育費を子ども一人ずつに割り振ります。

割り振る際には、子どもの生活費に関する指数に応じて按分します。

そして、子ども全員分の養育費から、義務者が養育している子にかかる養育費を差し引きます。

そうして算出された金額が、実際に支払う養育費の相場となります。

詳しい計算方法についてはこちらをごらんください。

当サイトの養育費算定シミュレータでは、父母双方が子どもを監護している場合についても、養育費の相場を手軽に算出することができます。

養育費シミュレーター

 

 

よくある質問

後から増額や減額はできる?

養育費は、一度取り決めた後も、双方が合意すれば増額したり減額したりすることができます

しかし、話し合っても合意ができないこともあります。

そのような場合には、家庭裁判所に養育費の増額(減額)の調停を申し立てる必要があります。

調停でも合意ができなければ、裁判所に審判で決めてもらうことになります。

裁判所に養育費の減額・増額を認めてもらうには、養育費を取り決めた当時とは事情が変わった(事情の変更があった)ことが必要とされる場合が多いです。

代表的なケースとしては、

  • 会社が倒産して解雇され、再就職も難しい
  • 病気やケガによって働けなくなった
  • 再婚や養子縁組があった

といった場合があります。

単に、「合意した時には養育費が高すぎる(低すぎる)ことに気づかなかった」というだけでは、養育費の変更は認められにくいと思われます。

養育費について取り決めるときは、慎重に考えてください。

義務者(夫)が再婚した場合は、義務者に新たな妻子ができ、扶養する人数が増えることになるので、事情の変更があったとして養育費が減額される可能性があります。

他に、子が養子縁組をした場合(例えば、子どもを養育している親が再婚し、子が再婚相手と養子縁組をする場合など)には、養親も扶養義務を負うことになるので、それまで養育費を支払ってきた義務者の養育費が減額・免除されることもあります。

詳しくは、以下のサイトをご覧ください。


 

養育費を支払ってくれない場合どうしたらいい?

養育費の支払は長期にわたるものです。

そのため、途中で支払いが滞ることも、珍しいことではありません。

厚生労働省の平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告によると、養育費を現在でも受け取っている人は、母子世帯のうちの24.3%となっています。

参考:平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果表

養育費の支払が滞ったときの対応は、以下のようになります。

養育費が支払われない場合の対応

当事者間での交渉・内容証明郵便

まずは、電話やメールで義務者に連絡を取り、支払うよう催促することになるでしょう。

それでも支払われないときは、内容証明郵便を送ってみることもできます。

内容証明郵便自体に法的効力はないのですが、相手に心理的なプレッシャーをかけることはできるでしょう。

なお、弁護士に養育費の請求を依頼すると、通常その弁護士が内容証明郵便を送付してくれるので、心理的なプレッシャーがより大きくなることが期待できます。

交渉も弁護士が実施してくれるので、依頼者としては精神的な負担を軽減できるでしょう。

裁判所での手続~養育費の調停等

それでも支払がないときは、裁判所に関与してもらい、支払を求めることができます。

裁判所に強制執行をしてもらうには、養育費が家庭裁判所の調停、審判、判決又は強制執行認諾文言付き公正証書で定められていることが必要です。

これらがない場合は、まずは家庭裁判所に養育費の調停を申し立て、養育費を定める必要があります。

これらの裁判所ので手続きについても、弁護士にご依頼されれば、通常その弁護士がすべて代わりに実施してくれます。

また、裁判所の期日にも同席してくれるので心強いと感じるでしょう。

履行勧告・履行命令

家庭裁判所の調停、審判、判決で養育費の支払が決められたにもかかわらず養育費が支払われないときは、家庭裁判所に「履行勧告」の申出をすることができます。

履行勧告の申出は、書面でも口頭でもすることができ、電話でもできます。

費用は無料です。

履行勧告の申出があると、家庭裁判所は必要な調査を行い、義務者に対し、養育費を支払うよう勧告します。

ただ、この履行勧告には強制力はありません。

あくまで義務者本人の自発的な支払を促すものです。

履行勧告をしても支払がない場合は、家庭裁判所に「履行命令」の申立てをすることができます。

履行命令では、裁判所から義務者に対し、未払の養育費を支払うよう命じる審判が出されます。

この審判に正当な理由なく従わなかった場合、家庭裁判所は、義務者を10万円以下の過料に処することができます。

しかし、履行命令にも支払を強制する強制力はありません。

そのため、義務者が自発的に支払わなければ、養育費を受け取ることはできません。

強制執行

義務者が養育費を支払わない場合、最終的には、裁判所に申し立てて強制執行を行います。

他の手続と違い、強制的に財産を差し押さえてお金を取り立てることができます。

強制執行は、家庭裁判所の調停、審判、判決だけでなく、強制執行認諾文言付き公正証書がある場合にもすることができます。

強制執行では、義務者の給料や預貯金、不動産などの財産を差し押さえます。

どの財産を差し押さえるかは、権利者が選んで申立てをします。

養育費の支払のために給料を差し押さえる場合、給料の2分の1まで差し押さえることができます。

ただ、給料が差し押さえられると、義務者が職場で信用をなくし、立場が悪くなることもあります。

万一、義務者がリストラの対象になるなどすると、その後の養育費の支払にも影響が出る可能性があります。

強制執行の手続をしようと思うときは、どのような財産を差し押さえるか、他に方法はないかなどにつき、一度弁護士に相談することをお勧めします。

 

養育費の支払はいつまで?

養育費は、子どもが独り立ちすることができると考えられる年齢になるまで支払います。

多くの場合、養育費の支払は20歳になるまで、とされます。

ただ、近年は大学進学率が高くなり、20歳になった時点では経済的・社会的に自立できていない場合も多くなっています。

そのため、20歳になっていても、大学に進学しており、いまだ親の経済的支援が必要な場合には、養育費の分担を求めることができる、とされることも十分考えられます。

大学進学後も養育費の支払義務を継続させるか否かについては、

  • 夫婦間での進学についての同意や承諾の有無
  • 両親の学歴
  • 経済的状況

を総合的に考慮して判断されています。

なお、令和4年4月1日に施行された改正民法により、成人となる年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳から成人となることになりました。

しかし、養育費の支払も同様に18歳までとされるわけではありません。

法律上成人年齢が引き下げられたからといって社会の状況がいきなり変わるわけでもありませんので、養育費の支払は、これまでと同様、20歳になるまでとすることが多いようです。

 

まとめ

今回は、2人の子供がいる場合の養育費の相場、養育費の算定表の使い方、双方が子どもを引き取っている場合の養育費の算出の仕方、養育費に関するよくある質問(養育費の増減額、養育費の支払がない場合の対処法、養育費をいつまで支払うか)などについて解説しました。

養育費には算定表があり、簡単に金額が導き出されると思われるかもしれません。

しかし、算定表に記載されている養育費はあくまで、各家庭の状況はさておいて、「一般的な家庭」を前提として算出したものです。

学費や習い事費用、医療費などが特別にかかっている場合などについてまでカバーされているものではありません。

大学の学費についても、十分に考慮されているとは言い難いです。

それぞれの方の状況に応じて適切な養育費を定めるためにも、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

 

 

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