面会交流とは?ルール・拒否するリスク・注意点について
面会交流とは、離婚の際に、親権者とならず、子を監護していない親が子どもと会うなどして交流することです。
面会交流は、非監護親(子供と離れて暮らす親)にとってはもちろん、監護親(子供と同居している親)にも、重要な制度です。
また、それ以上に子供の未来に計り知れないほどの影響を与えます。
ここでは、面会交流について、押さえていただきたいポイントをわかりやすく解説いたします。
ぜひご参考になさってください。
この記事でわかること
- 面会交流の制度がわかる
- 面会交流の決め方と手続きがわかる
- 面会交流のポイントがわかる
目次
面会交流とは
面会交流とは、離婚の際に、親権者とならず、子を監護していない親が子どもと会うなどして交流することです。
離婚問題を扱う中で様々な点が問題となりますが、とりわけ面会交流は対立が激しくなって争いになることもしばしばあります。
離婚は夫婦の問題ですが、子どもにとっては両親であることに変わりはありません。
そのため、子どもに関する取り決めをする際には、子どものことを第一に考えて冷静な話し合いをすることが望ましいのは言うまでもありませんし、誰もが理解していることだと思います。
しかし、夫婦が離婚する多くのケースではお互いの感情的対立が激しくなるため、できる限り相手の要求には応じないという雰囲気になりがちです。
そして、その感情的対立の中に面会交流も巻き込まれてしまうのです。
具体的には、例えば、監護親は、相手方(非監護親)ができる限り子どもと会う機会を減らしたいと考え、非監護親はできる限り子どもと会いたいと考えることで、双方の意向の違いから対立が生じます。
たしかに、離婚に際して夫婦が対立することが多いのは事実です。
しかし、面会交流は、子どもが非監護親と交流する機会を設けることで、子どもの健やかな成長につながるという考え方から実施されるものです。
実際、家庭裁判所は、面会交流は、特段の事情がなければ実施するべきだという考え方で動いているように感じます。
したがいまして、離婚条件の中の面会交流を考える際には、子どもの福祉・利益に資するのは何かという視点で考えることが、とても重要になります。
面会交流は義務?
子どもと同居している親(多くは母親)から多いご質問は、「面会交流に応じる義務がありますか?」というものです。
離婚を決意する状況は、相手に対して、悪感情を持っている場合がほとんどです。
したがって、できれば、相手に子どもを会わせたくない、と考えるのは自然なことだと考えられます。
しかし、上記のとおり、面会交流についての家裁の考え方は「基本的に会わせるべき」です。
面会交流の法的な根拠
面会交流については、民法という法律に根拠があります。
すなわち、離婚するとき、面会交流については基本的に協議で定め、協議が難しいときは家裁が決定すると定められています(民法766条)。
もっとも、この条文には面会交流は「非監護親の権利」や「監護親の義務」とは記載されておらず、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と記載されています。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
(以下略)
引用元:民法|e-Gov法令検索
したがって、面会交流は基本的には実施すべきものですが、子供にとって弊害があるような状況であれば、制限される場合があると考えるべきでしょう。
正当な理由なく面会交流を拒否したら、以下のようなリスクが生じるおそれがあります。
親権者変更のリスク
面会交流は、子供の健やかな成長のために必要と考えられています。
したがって、これを拒否するということは、「子供の成長に支障をきたしている」と判断される可能性があります。
そのため、非監護親から親権者変更の申立をされることが懸念されます。
養育費を支払ってくれなくなるリスク
面会交流と養育費は別の制度であり、本来は面会交流を拒否したからと言って、養育費は支払わなくてはなりません。
しかし、非監護親としては、面会交流の拒否に不満を持ち、養育費を払ってくれなくなる可能性があります。
この場合、強制執行などの対処法も考えられますが、手続きが面倒であり、かつ、確実に回収できるわけではないためリスクとして捉えておくべきです。
面会交流を拒否した場合のリスクについては、下記のページで詳しく解説しています。
面会交流の拒否の正当な理由とは?
面会交流については、正当な理由があれば拒否をすることができます。
例えば、子供が本心から面会交流を拒否しており、面会交流を強制することが子供の成長を阻害するような場合です。
面会交流の拒否に正当な理由が認められるケースについて、くわしくは下記をご覧ください。
面会交流の頻度とは?
面会交流は基本的に実施すべきとして、次に、その頻度をどの程度にすべきかが問題となります。
これについては、絶対的な答えはありません。
まずは当事者同士で話し合って決めることが可能であればそれが一番です。
例えば、父親側が面会交流を積極的に希望しており、子どもと同居している母親側も抵抗感がなければ、週1回などの高頻度の開催でも大丈夫です。
逆に、母親側にある程度の抵抗感がある場合、月1回などとなるでしょう。
ただし、大切なことは、子ども視点で、どの程度が子どもに望ましいか、を検討すべきです。
子どもが面会交流を望んでいれば、本来は「子どもが会いたいときに自由に会える」方がベストです。
また、頻度を変更することもあります。
例えば、離婚や別居して間もない頃は、子どもの不安や混乱を払拭するために、高頻度で、しだいに回数を少なくするなどの方法があります。
なお、最高裁の統計データによれば、月1回以上が最も多いことがわかります。
まあ、宿泊の有無については、ほとんどの場合は無しとなっています。
※離婚調停等で合意された事案を前提としています。
面会交流をしない方がいいケース
上で解説したとおり、面会交流は子供の利益のために実施するものです。
したがって、面会交流させることで、子どもに弊害が生じるような場合は、面会交流の制限を検討すべきです。
例えば、次のような場合には面会交流の実施に慎重に対応すべきでしょう。
- 子どもが本心から面会交流を望んでいない
- 子どもに暴力をふるう、子どもの心を動揺させるなど悪影響を与える
- 経済力があるにもかかわらず養育費を支払わない
- 母に対してのDVがひどく、面会交流をスムーズに実施できない
子ども自身が面会交流に消極的な場合、面会交流を実施すべきかが問題となります。
子どもはある程度の年齢になると、自我が形成され、自分自身の意見を言えるようになります。
そのため、子どもが高校生くらいになって、自分の意見として、「会いたくない」と言っているようであれば、基本的にその考えを尊重すべきであり、無理矢理会わせることはできないでしょう。
しかし、幼児や小学校低学年くらいまでは、真意ではなく、面会交流に消極的になってしまうことがあります。
例えば、同居している親が相手に対して悪感情を持っている場合です。
このようなケースでは、子どもが同居親の考えに影響を受けて、面会交流に消極的になってしまうことがあります。
この場合、面会交流を制限するのではなく、同居親に面会交流の基本的なルールを守ってもらうなどの対応が必要となります。
面会交流のポイント
①面会交流のルールを遵守する
面会交流を円滑に実施していくためには、双方が面会交流のルールを遵守することが重要です。
面会交流のルールとは、例えば、相手の悪口を子どもの前で言わない、受け渡しの時間をきちんと守る、などです。
特に、面会交流を実施してすぐは、相手への不信感などがあります。
そのため、ルールを守って、相手の安心感を得ることが重要です。
相手に安心してもらうことができれば、面会交流のさらなる充実が期待できます。
また、同居親にしても、養育費の増額など、有利な離婚条件に繋がる可能性もあります。
②幼児との面会交流は特殊性があるため配慮が重要
子どもが幼児の場合、面会交流では、次のような問題が見受けられます。
- 子ども自身の意向が確認できない
- 母親が常に付き添っている必要がある
- 長時間の面会交流が難しい(宿泊付きは不可能)
- 交流する場所が限られる
幼児、特に乳幼児の面会交流については、このような特殊性があるため、父親、母親の双方とも、相手に対する配慮が重要となります。
面会交流を行う際の注意点
よりよい面会交流を実現するために、面会交流を行うための注意点をご紹介します。
別居している親の注意点
- 子どもの成長のペースをよく見ながら接する
- 大げさな態度をとったり、物で釣ったりしない
- 離婚したこと、今の生活への愚痴を言わない
- 同居している親の悪口は言わない
同居している親の注意点
- 離婚したこと、今の生活の愚痴を言わない
- 別居している親の悪口は言わない
- 気持ちよく送り出す
- 面会の様子を根掘り葉掘り聞きだそうとしない
- 子どもが面会の様子について話してきたときは、じっくり聞いてあげる。
面会交流の決め方とは?
面会交流がまったく問題ない事案では、特に合意をしないケースもあります。
しかし、面会交流がスムーズに行われない可能性がある事案の場合、頻度(回数)や引き渡しの方法などを明確にして、合意された方がよいでしょう。
この場合、①協議による合意、②調停手続、③裁判手続が考えられます。
これらの簡単な特長とメリットやデメリットをまとめると下表のとおりとなります。
※一般的な傾向であり事案によって異なります
協議による合意(当事者同士の話し合い)
メリット | デメリット |
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調停手続(裁判所での話し合い)
メリット | デメリット |
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裁判手続(裁判所による命令)
メリット | デメリット |
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裁判で判決となると、執筆者の経験上、多くの場合「月1回の面会交流」となります。
これは面会交流を充実させたいという非監護親側にとっては少ないと感じるでしょう。
協議や調停の場合、相手が応じてくれれば泊付きや週1回などでまとまる可能性もあります。
また、監護親側の場合、様々なルール(引き渡し方法、実施場所、立会など)を決めたいとき、判決だと難しいです。
一般的に調停手続きや裁判手続きは解決まで長期間を要します。
家事調停にかかる期間についてくわしくはこちらを御覧ください。
例えば、面会交流調停の場合、調査官調査などが入ることが予想されるため、早くても半年、長期化すると1年以上を要すると見込んだほうが良いでしょう。
面会交流調停は、平日の日中に家裁に行かなければなりません。
そのため、仕事をしている方は休む必要があるでしょう。
また、弁護士に調停手続きをご依頼される場合、協議離婚のご依頼と比べると時間や労力がかかる分、弁護士費用が増加するでしょう。
面会交流を決める際に、取り決めておくべき事項
後々のトラブル防止のために、できるだけ細かく面会交流の条件・方法について決めておきましょう。
決めておくべき事項としては、以下のようなものが考えられます。
- 回数(月に何回か、半年に何回か、など)
- 時間(何時間か、何日間か)
- 方法(宿泊を含むか、どのように会わせるか、学校行事についてはどうするか)
- 場所(どこで面会交流するか)
- 子どもの意思についてはどうするか
面会交流の具体的な取り決めの例をご紹介します。
乙は、甲に対し、甲が未成年者と月1回程度、面会交流することを認め、その具体的な時間、場所、方法等については、子の利益を最優先に考慮し、当事者間で協議して定める。
この条項例は、別居している夫婦において、すでに面会交流を実施している、あるいは今後面会交流をすることが可能な事案において、もっともシンプルな取り決めです。
頻度を定める場合、上の例のように「月1回程度」などと定めることが多いです。
面会交流の最適な取り決め内容は、ケースによってまったく異なります。
ケース別の具体的な取り決め内容(条項例)は、下記のページで詳しく解説しています。
弁護士による交渉
面会交流などの離婚問題では、弁護士に交渉してもらう方法をお勧めいたします。
裁判所を利用しないため、柔軟な解決の可能性やスピード解決の可能性を確保できます。
また、弁護士が相手と交渉するので、依頼者の精神的・肉体的な負担を軽減できます。
まずは弁護士が相手と直接交渉し、納得がいく解決が得られない場合に、次善の策として、調停手続の利用を検討するとよいでしょう。
面会交流の調停について
調停の種類
面会交流について相手と合意できない場合、面会交流の調停申し立てを検討しなければなりません。
この場合、①離婚調停を申し立てて、その中で面会交流についても話し合う方法と、②面会交流調停を別に申し立てる方法があります。
すでに離婚が成立している方は、当然②のみとなります。
それぞれのメリットとデメリットをまとめると下表のとおりとなります。
①離婚調停を申し立てて、その中で話し合う
メリット | デメリット |
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申立書が1つでよい | 面会交流でまとまらない場合、裁判が必要 |
②面会交流調停を別に申し立てる
メリット | デメリット |
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不成立の場合審判移行できる | 申立書を2種類用意する必要がある |
面会交流の審判移行とは
審判とは、裁判所による決定のことです。
調停は話し合いによる解決であるため、相手が了承しない場合、不成立となります。
不成立となると基本的に審判移行はしません。
そのため、後日、離婚訴訟を提起し、その中で面会交流を主張していくこととなります。
調停が不成立となると自動的に審判へ移行し、公平な第三者である裁判官の判断結果が命令という形で示されます。
状況にもよりますが、
まずは、① 離婚調停を申し立て、その中で面会交流について主張
↓
合意が得られずに、審判での決着を希望したい場合
↓
追加で、② 面会交流の調停を別に申し立てるとよいでしょう。
以下、面会交流(子の監護に関する処分)の調停を申し立てた場合の流れを図示します。
面会交流調停に「弁護士なし」で大丈夫?
弁護士に依頼されるデメリットとしては、弁護士費用の問題があります。
面会交流の調停を申し立てるために、理屈の上では弁護士は必須ではありません。
ただ、面会交流には上記のような問題があるため少なくとも専門家に相談されることをお勧めいたします。
なお、当事務所では、面会交流調停申立書の書式をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロード可能です。
ご自身で面会交流の調停を申し立てる場合、下記の書式を参考にされてください。
また、調停手続きについて、下記を参考にしていただければ幸いです。
面会交流の弁護士費用
面会交流については、離婚がまだ成立していない場合は、その他の離婚問題と合わせてご依頼される方がほとんどです。
離婚が成立している場合は、面会交流のサポートを依頼されることとなります。
いずれにせよ、協議によるのか、調停対応まで必要となるのかで弁護士費用は異なります。
調停対応の場合、弁護士の労力も増すため、追加費用が必要となるのが一般的です。
また、離婚問題についての弁護士費用は、各法律事務所によって金額が異なります。
そのため、具体的な費用については相談の際に確認されることをお勧めいたします。
明朗会計の法律事務所であれば、ご相談時にお願いされるとお見積りを出してくれるでしょう。
その他よくあるご質問
面会交流は何歳までですか?
面会交流を実施すべき時期について、特に決まりはありません。
例えば、一つの考え方として、未成年の間という場合もあります。
しかし、子どもはある程度の年齢になると、自我が形成され、自分自身の意見を言えるようになります。
また、中学校、高校へと進学するに連れ、部活や友人との付き合いも忙しくなってきます。
したがって、実際に面会交流でもめるのは、小学生くらいまでで、中学、高校となると、子どもの自由意志に任せる、というケースが多いです。
祖父母との面会交流は可能ですか?
おじいちゃんとおばあちゃんにとって、孫はとても可愛いものです。
そのため、親だけではなく、祖父母と孫との面会交流が認められないか、というご質問も多くあります。
面会交流は、法律上、親にのみ認められる権利です。
したがって、離婚調停や離婚裁判の中で、祖父母を当事者として面会交流を認めることは難しいと考えられます。
しかし、祖父母が孫との交流を求めることは心情的には十分理解できます。
そのため、当事務所では、裁判所を通さず、交渉の中で、相手に祖父母の面会交流を求めるというサポートを行っています。
また、実際に、祖父母の面会交流について、離婚協議書や公正証書で締結した事例もあります。
再婚したら面会交流はどうなりますか?
離婚して親権を取得した親が第三者と再婚することがあります。
この場合、再婚を機に面会交流に応じない、というご相談がとても多いです。
これは、子どもに「再婚相手のことを実の親のように考えてほしい」という感情が理由にあるようです。
つまり、子どもに非監護親のことを忘れてもらうために、接触を断つということです。
または、再婚相手に気を使ってという場合もあります。
すなわち、再婚相手の中には、自分の奥さんや養子縁組した子どもが面会交流で、元夫(または実の父親)と会っていることを快く思わない方がいます。
このような相手に不快な思いをさせないように、面会交流を止めたい、と考えるケースもあります。
いずれにせよ、この再婚した場合の面会交流に関する問題は、子どもがまだ小さい場合が多い傾向です。
面会交流については、上記のとおり、子どもにとって望ましいか否かで判断すべきです。
ただ、何が望ましいかは一概には言えず、個別具体的な状況において判断するしかありません。
面会交流は第三者機関を通した方がいい?
第三者機関のサポートの内容にもよりますが、一般には以下のようなデメリットがあります。そのため、個人的な感想としては積極的にはお勧めいたしません。
- 利用するための費用がかかる
- 手続きが面倒である
- 利用時間や場所が制限される
当事者同士での面会交流が難しい場合でも、まずは面会交流にくわしい弁護士に相談なさっていはいかがでしょうか。
まとめ
以上、面会交流について、詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。
面会交流は、子どもの将来に大きな影響を与えるため、実施の是非、実施する場合はその頻度、方法等について、適切に判断する必要があります。
そのため、可能であれば、面会交流に精通した専門家のサポートを受けながら、慎重に進めていかれることをお勧めいたします。
この記事が面会交流でお悩みの方にとってお役に立てれば幸いです。
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