面会交流の第三者機関とは?メリットやデメリットを解説
面会交流の第三者機関とは、当事者のみで面会交流を実施することが難しい場合に、当事者の間に入って連絡調整や子どもの受け渡し、付き添いなどのサポートをしてくれる機関のことをいいます。
第三者機関を利用すれば、相手と直接顔を合わせたり、連絡を取り合ったりすることなく、面会交流を実施することができます。
一方、第三者機関の利用にはコストがかかり、面会交流の回数、時間、方法等も制限されてしまいます。
そのため、利用するかどうかは、メリット・デメリット等を踏まえて慎重に検討する必要があるでしょう。
そこで、ここでは、面会交流の第三者機関の意味、利用方法、メリット・デメリット等について解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
面会交流の第三者機関とは?
面会交流の第三者機関とは、当事者のみで面会交流を実施することが難しい場合に、当事者の間に入って連絡調整や子どもの受け渡し、付き添いなどのサポートをしてくれる機関のことをいいます。
面会交流とは、子どもと離れて暮らす親が子どもと会うなどして交流をすることをいいます。
子どもの父母が離婚したり、離婚前に別居したりして、父母の一方のみが子どもを監護(一緒に暮らして世話をすること)している場合に実施されるものです。
面会交流を実施するためには、父母間で日程等について調整し、監護親が非監護親に子どもを受け渡し、場合によっては監護親が面会交流の場に立ち会って子どもに付き添うということが必要になります。
そのため、面会交流の実施に当たっては、父母が連絡を取り合ったり、直接顔を合わせて会話を交わしたりすることが基本的には欠かせません。
しかし、離婚や別居に至る事情によっては、父母が直接連絡を取り合ったり、顔を合わせたりすることが難しいこともあります。
このような場合は、当事者のみでは面会交流を実施することができない状態になってしまいます。
一方で、面会交流は子どもの健やかな成長のために重要なものと考えられています。
面会交流は、子どもにとって、離れて暮らす親からも愛されていることを実感する機会となり、両親の離別による喪失感や悲しみを和らげ、自己肯定感や安心感を与えることができます。
そこで、父母の事情で面会交流が難しい場合でも、子どものために面会交流を実施することができるように、父母の間に入ってサポートを行っているのが面会交流の第三者機関です。
面会交流の第三者機関の種類・サポート内容
面会交流の第三者機関には、NPO法人などの民間団体が運営しているものと、自治体が面会交流支援として自ら又は民間団体に委託して運営しているものがあります。
自治体の支援は無料(交通費等の実費は負担)で受けることができますが、監護親と子どもがその地域に居住していることや、父母の所得が一定水準以下であることが条件となっていることがほとんどです。
利用条件も原則として月1回、1回あたり1時間〜3時間程度、1年間(最大12回)に限られます。
現在は東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、静岡市、明石市、北九州市など多くの都道府県・市区町村で支援事業が実施されていますが、全ての自治体で実施されているわけではありません。
元家庭裁判所調査官、家庭問題カウンセラー、弁護士などが主体となって設立された民間団体で、代表的なものとしてはFPIC(公益社団法人家庭問題情報センター)などがあります。
利用には費用がかかりますが、利用条件等は自治体の支援よりも比較的緩やかです。
参考:法務省HP|親子交流支援団体(面会交流支援団体等)の一覧表について
サポート内容は、いずれの機関も次の3つが中心となります。
- ① 連絡調整型(第三者機関が父母の間に入って日時や場所などの連絡調整を行う)
- ② 受渡し型(面会交流の当日に第三者機関のスタッフが子どもの受渡しを代わりにを行う)
- ③ 付添い型(面会交流の場に第三者機関のスタッフが付添い、面会交流の様子を見守る)
※通常、受渡し型には連絡調整も含まれ、付添い型には連絡調整及び受渡しの支援も含まれます。
この他、機関によっては間接交流の支援(オンライン面会への立ち合い、手紙やプレゼントの仲介等)なども行っている場合があります。
面会交流の第三者機関の利用方法
一般的な利用方法の流れは以下のとおりです。
第三者機関利用の合意
第三者機関を利用するには、父母の間で第三者機関を利用して面会交流を実施することについて合意がされていることが必要となります。
そのため、面会交流について何らの取り決めもしていない場合は、まずは相手方と話し合い、第三者機関を利用して面会交流を実施することについて合意をする必要があります。
話し合いが難しい場合や、合意がまとまらない場合は、調停を申立て、裁判所で話し合いを行って合意をすることになります。
すでに面会交流の実施についての合意や裁判所の命令(審判・判決)がある場合でも、第三者機関を利用することについての合意がない場合は、相手方と話し合い、第三者機関を利用する合意をする必要があります。
また、費用の分担についても合意が必要です。
事前相談・申込み
第三者機関を利用して面会交流を実施する合意ができたら、第三者機関に問い合わせ、支援の申込みを行います。
ほとんどの機関では、支援申込みの前後に事前相談を実施しています。
支援の申込みをする前に、まずは事前相談の申込みをする必要がある場合もありますので、手順については各機関にご確認ください。
事前相談では、第三者機関が父母それぞれと個別に面談を行い、支援内容の説明、面会交流の具体的な内容や必要な支援についての確認・調整などが行われます。
なお、自治体の支援を利用する場合は、申込時に収入資料等の提出が求められ、利用条件を満たすか審査されることになります。
支援決定~契約の締結
利用条件等を満たし、支援が可能と判断された場合は支援決定となります。
その後、第三者機関と父母双方が契約を締結します。
実施方法の調整~支援開始
面会交流の日時・場所・方法などについて具体的な調整を行ったうえで、実際に第三者機関の支援を受けた面会交流を実施していくことになります。
面会交流の第三者機関のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
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第三者機関のメリット
面会交流の実施を可能にする
第三者機関を利用することで、当事者のみでは面会交流ができなかったケースでも、面会交流ができるようになります。
面会交流の実施を可能にするということは、第三者機関の存在意義でもありますが、何より子どもの利益につながるため最大のメリットといえるでしょう。
精神的負担を軽減することができる
第三者機関を利用すれば、第三者が間に入って相手との連絡や子どもの受け渡しなどを行ってくれます。
相手と直接接触せずに面会交流を実施することができるため、面会交流にかかる精神的負担を軽減することができます。
安心感が得られる
面会交流の場に第三者が立ち会うことで、非監護親がルール違反をしたり、子どもの利益に反することをしたりすることを抑止することができます。
そのため、監護親が安心して面会交流の実施に応じることができるようになるという点も、メリットといえるでしょう。
第三者機関のデメリット
利用できる地域が限られる
第三者機関が所在する地域は限定されているため、居住している地域によっては利用できない又は利用しにくいことがあります。
自治体の支援の利用は、監護親と子どもがその地域内に住んでいることが条件となりますから、居住する自治体が支援を実施していない場合は支援を受けることはできません。
民間団体の場合は、居住地域にかかわらず支援を受けられることが多いですが、スタッフの交通費や出張費などがかさむため、団体の所在地と面会交流場所が遠く離れている場合は利用が難しくなります。
面会交流の方法等が大幅に制限される
第三者機関を利用する場合は、ほとんどのケースで面会交流の方法等が大幅に制限されてしまいます。
自治体の支援の場合は、原則として月1回、1回あたり1時間〜3時間程度の実施に制限されます。
民間団体の場合も概ね上記と同様の目安が設定されています。
回数等の制限がない場合もありますが、回数が多くなればなるほど、実施時間が長くなればなるほど、費用はかさんでいきますので、頻繁・長時間の実施は実際上困難です。
また、基本的に外部の施設(公園、遊園地、レストランなど)で遊んだり食事したりするといった方法による実施に限られます。
宿泊付きの面会交流や、非監護親の自宅での面会交流などはできません。
当日に子どもの希望に合わせて行き先を変えることなども基本的にはできません。
そのため、子どもの状況に合わせて柔軟に実施したいような場合は、使い勝手が悪いと感じるかもしれません。
コストがかかる
自治体の支援は無料ですが、お住まいの地域で支援を実施していない場合や、所得要件を満たさない場合は利用することはできません。
民間団体の支援を利用するには利用料がかかります。
具体的な料金はサポート内容や機関によって異なりますが、例えばFPICの場合は次のように設定されています。
種類 | 内容 |
---|---|
付き添い型 | 1ケース 1回 2時間まで:15、000~20、000円(税込) 3時間まで:20、000~25、000円(税込) |
受渡し型 | 1ケース 1回 10、000~15、000円(税込) |
連絡調整型 | 1ケース 1回 3、000円(税込) |
その他、事前相談や申込みの際にも費用がかかります。
面会交流がうまくいっていない場合の対処法
以上に述べたように、第三者機関の利用にはデメリットもあります。
そこで、面会交流がうまくいっていない場合は、第三者機関の利用に進む前に、以下のような対処を検討されるとよいでしょう。
面会交流のルールを決める
面会交流のルールをしっかり取り決めておくことで、相手と直接連絡をとったり、顔を合わせたりすることに対するハードルが下がることがあります。
例えば、連絡調整はメールで行う(電話はしない)、メールには希望日時・場所・方法等のみを記載することし、関係のない事項(相手を非難したり、生活状況を聞き出したりすること)の記載は厳禁などと取り決めておくとよいでしょう。
受渡しの際にトラブルにならないか不安という場合は、子どもの受渡し時には最低限の挨拶はする、お礼を言う、相手に関する発言は控えるなどと取り決めをしておくとよいでしょう。
また、面会交流を安全に実施できるか不安という場合は、「子どもの安全に配慮する」「時間を守る」などの基本事項も含め、明確にルールを取り決めておくとよいでしょう。
このように、ルールを決めてお互いに遵守することを約束することで、負担感が軽減され、第三者機関を利用しなくても面会交流を実施できるようになるケースもあります。
具体的にどのような内容のルールが必要であるかは、状況により異なりますので、詳しくは専門の弁護士にご相談ください。
面会交流に詳しい弁護士に相談する
面会交流がうまくいっていない場合は、面会交流に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
面会交流がうまくいかない原因は様々で、具体的な事情に即した対処が必要になります。
まずは弁護士に具体的なアドバイスをもらうとよいでしょう。
弁護士によるサポート
面会交流に詳しい弁護士であれば、面会交流に対する不安や子どもの生活状況、意向などを踏まえたうえで、できる限り負担感の少ない方法を提案し、相手方と交渉をしてくれます。
また、弁護士に依頼している間であれば、弁護士を間に入れて面会交流を実施することが可能です。
弁護士が間に入って連絡調整を行い、必要に応じて、子どもの受渡しや付添いも監護親の代わりに又は監護親と一緒に行います。
まずは弁護士を間に入れて面会交流を実施してみることで、今後どのようにすれば自分たちだけで実施していくことができるのか具体的に考えることができるようにもなっていきます。
そうすることで、弁護士のサポートが終了した後も、第三者機関を利用することなく、自分たちだけで面会交流を実施することができるようになる場合もあります。
第三者機関を利用する場合
第三者機関の利用をお考えの場合も、早い段階で弁護士を間に入れることをおすすめします。
まず、面会交流に詳しい弁護士であれば、第三者機関のデメリットも踏まえて利用するべき状況かどうかについて具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。
また、第三者機関を利用する場合も、まずは第三者機関を利用することや費用分担について相手と話し合って取り決める必要があります。
弁護士に代理人としてこれらについて相手と交渉してもらうことで、精神的・肉体的負担を軽減できるだけでなく、スムーズに利用に進めることもできるようになるでしょう。
まとめ
以上、面会交流の第三者機関の意味、利用方法、メリット・デメリット等について解説しましたがいかがだったでしょうか。
第三者機関を利用することで、精神的な負担を軽減し、安心して面会交流が実施できるようになるケースもあります。
一方、第三者機関を利用するにはコストがかかり、面会交流の回数や時間、方法等も制限されてしまうため、利用するかどうかは慎重に検討する必要があります。
面会交流がうまくいっていない場合は、まずは面会交流に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
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