面会交流が多すぎる!減らすリスクと対処法を解説
面会交流は、一般的には子どもにとって有益なものと考えられていますが、実施回数が多すぎると子どもの負担となり、かえって悪影響を及ぼすこともあります。
面会交流が多すぎる場合は、実情に合わせて頻度を減らす必要があるでしょう。
もっとも、頻度を減らすためには、基本的には話し合いや裁判所の手続きによる合意や決定が必要となります。
監護親の判断で一方的に頻度を減らしてしまうと、非監護親が納得せずトラブルに発展するリスクもあるので注意しなければなりません。
ここでは、面会交流を減らす方法、リスク、その対処法などについて解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
面会交流が多すぎるケースとは?
面会交流の平均的な頻度
面会交流の頻度は、月1回とされるケースが多いです。
子どもや監護親(子どもと一緒に暮らしている親のことです。)の負担を考えると、月1回が妥当であるケースが多いためです。
もっとも、月1回というのはあくまでも平均的な頻度であり、全てのケースでこれを基準としなければならないわけではありません。
面会交流の頻度は、子どもの年齢や生活状況・監護状況に合っており、子どもの利益になる程度であれば何回でも構いません。
月1回を上回る回数(月2回以上、週1回など)の合意をしても、その合意が無効となるわけでもありません。
ただし、実際上は、月2回以上実施するとなると、監護親や子どもにかかる負担が大きくなり、監護親にとって「多すぎる」状態になるケースが多いと思われます。
子どもが幼少(未就学児)の場合は、面会交流の実施には監護親の協力(付き添いなど)が不可欠になるケースがほとんどです。
しかし、監護親も生活費を稼ぐために仕事をしているケースが多いため、月2回以上は必ず面会交流に時間を割かなければならないとなると、過度な負担となり、子どもの監護にも支障が出る恐れもあるでしょう。
そのため、月1回とするのが妥当で、月2回以上とするのは「多すぎる」といえるケースが多いです。
子どもが小学校に通うようになれば、監護親の付き添いなしでも面会交流を実施することができるようになるケースは多いですが、今度は子ども自身が学校の勉強・部活動・習い事・交友関係などで忙しくなります。
そのため、子どもの生活ペースを妨げず、休息の時間も十分にとれて過度な負担とならない程度を考えると、月1回が妥当で、月2回以上とするのは「多すぎる」といえるケースが多いと思われます。
ワンポイント
実際の取り決めの際には、「月1回程度」と幅のある表現が用いられることが多いです。
「月1回」と定めてしまうと、子どもの体調不良等の事情で月1回実施できなかった場合も約束違反となってしまいます。
また、夏休みなどで月2回以上実施することが可能な場合でも、月1回に制限されてしまう可能性があります。
面会交流は、子どもの様子などを踏まえて柔軟に対応できるようにしておいた方が円滑にいく場合も多いです。
そのため、実務では、上記のように幅のある設定がされることが多いです。
面会交流を減らす方法
相手と話し合う
面会交流の頻度を減らしたい場合は、まずは相手と話し合ってみるようにしましょう。
例えば、月2回実施するとの取り決めをして、実際に何か月か面会交流を実施してみたところ、子どもの負担が大きい様子である場合は、子どものスケジュールや日常生活の様子を相手に伝え、頻度を減らす必要性を示すとよいでしょう。
また、これまでは月2回でも円滑に実施できていたものの、子どもの進学や監護親の転勤など、事情の変更が生じたために、今後は月2回の実施が難しくなるという場合もあります。
そのような場合は、事情の変更が生じたことを説明する必要があります。
非監護親は子どもと離れて暮らしているため、子どもの日常生活の様子や監護状況がわからず、また、子どもの成長に伴う生活環境の変化なども認識しづらいことが多いです。
そのため、これらについては監護親から伝え、子どものことを第一に話し合うことができるようにするのがポイントといえるでしょう。
話し合いの結果、頻度を減らすことについて合意ができた場合は、必ず合意内容を書面に残しておくようにしましょう。
口約束だけでは合意内容が明確にならず、後で「言った・言わない」の争いが生じトラブルになる恐れもあります。
どのような内容の書面を作成すればよいかは、事案によりますので、詳しくは離婚問題に強い弁護士にご相談ください。
弁護士に間に入ってもらう
相手と話し合うことが難しい場合は、面会交流の問題に詳しい弁護士に間に入ってもらうことをおすすめします。
弁護士が間に入ることにより、子どもの視点に立って冷静に話し合いをすることができるようになるケースも多いです。
また、弁護士であれば、監護親や子どもの事情を踏まえて、より負担感の少ない方法等についても、適切にアドバイスをすることができます。
面会交流の調停を申し立てる
相手と話し合っても合意ができない場合は、面会交流の調停を申し立てることを検討します。
調停とは、家庭裁判所において、調停委員会を仲介に話し合いを行い、合意による解決を目指す手続きをいいます。
調停では、裁判所が必要と判断する場合は、家庭裁判所調査官が関与し、子どもの意向や生活状況などについての調査が実施されることがあります。
当事者同士の話し合いで合意ができない場合でも、調停で話し合いを行い、さらに調査官調査の実施により子どもの意向や生活状況が把握できるようになると、お互いに冷静に子どもの利益の観点から適切な頻度について考えられるようになることも多いです。
もっとも、調停で話し合っても合意ができないケースもあります。
調停で合意ができない場合は、調停は「不成立」として終了し、その後は「審判」という手続きに自動的に移行します。
審判とは、裁判所が当事者の言い分や提出資料を踏まえて一定の判断を下す手続きです。
裁判所が結論を決めるので柔軟な解決は難しいですが、お互いに譲歩できずに解決できない場合は、最終的には審判で決着をつけることになります。
面会交流調停についての詳しい解説は、以下のページをご覧ください。
ワンポイント:ADRの利用
最近では、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用するケースも増えてきています。
ADRとは、裁判所を利用せず、公正な第三者(各分野の専門家)を間に入れて話し合いを行う手続きのことをいいます。
裁判所の手続きではないため、Zoom等によるオンラインでの話し合いや、土日・夜間の話し合いの実施も可能です。
また、裁判所の基準にとらわれることなく、柔軟に話し合うこともできます。
日中は仕事や育児で忙しいという方や、裁判所を利用することなく穏便に、迅速に話し合いを進めたいという方にとっては、調停よりもADRの方が利用しやすい場合もあります。
適切な解決方法はケースにより異なりますので、詳しくは専門の弁護士にご相談ください。
面会交流を減らすリスク
子どもの利益の観点から、父母で話し合い合意の上で回数を減らした場合は特にリスクは生じないでしょう。
一方、監護親が一方的に回数を減らし、非監護親がそれに納得していない場合や、子どもの利益の観点が欠けている場合は、次のようなリスクが生じると考えられます。
養育費が支払われなくなるリスク
面会交流を減らすと、非監護親が養育費を支払わなくなったり、一方的に減額する可能性があります。
面会交流と養育費は連動するものではないため、たとえ非監護親の希望どおりの頻度で面会交流が実施されなかったとしても、養育費の支払義務がなくなるわけではありません。
しかし、実際上は、非監護親が子どもになかなか会えないことへの不満、監護親への怒りなどから、養育費を支払わなくなるケースもあります。
強制執行を申し立てられるリスク
裁判所の手続き(調停・審判、訴訟など)で面会交流の頻度が具体的に定められている場合は、一方的に頻度を減らして定められた回数を実施しないと、相手に強制執行を申し立てられるリスクがあります。
強制執行とは、取り決め内容を強制的に実現する手続きのことをいいます。
面会交流の場合は、「不履行1回につき〇万円支払え」という形で強制金を課し、心理的に圧迫して履行を促すという間接的な方法で行われます(間接強制といいます)。
例えば、調停で「毎月第2土曜日と第4土曜日の月2回実施する」との取り決めがされ、時間や場所、方法などその他の条件も特定されているとします。
このケースで、監護親が第2土曜日の実施しか応じず、第4土曜日の面会交流に応じないという場合、取り決めに違反することになります。
そこで、非監護親が取り決めどおりに月2回実施することを求めて間接強制を申し立てる可能性があります。
間接強制の申立てが認められた場合は、強制金の支払いを命じられることになります。
強制金の金額は事案によりますが、5万円〜10万円くらいになることが多いです。
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面会交流の強制執行(間接強制)はできますか?【弁護士が解説】
親権者等の変更のリスク
正当な理由がないにもかかわらず、面会交流を年1回しか認めないなど、極端に回数を減らした場合は、親権者としてふさわしくないとして親権者変更の申立てをされるリスクも考えられます。
また、離婚前のケースや共同親権で一方が子どもを監護しているケースでは、監護権者の変更のリスクもあります。
面会交流は、一般的には子どもの健全な成長にとって重要なものと考えられています。
そのため、正当な理由なく面会交流の回数を極端に減らすことは、子どもの利益に反するものとして、親権者等としてふさわしくない事情と評価される可能性があります。
もっとも、裁判所が判断する際には、現在の監護状況、相手方の監護能力、事情の変更の有無なども重視されます。
面会交流の回数を減らしたことの一事をもって直ちに変更が認められるわけではありませんが、リスクとしては注意しておく必要があるでしょう。
損害賠償請求のリスク
正当な理由なく面会交流の頻度を一方的に減らすと、相手が子どもと交流する機会を奪われたことによって精神的苦痛を受けたことなどを理由に損害賠償(慰謝料)を請求してくる可能性もゼロではありません。
実際に慰謝料の支払いが命じられる事案は少ないですが、リスクとしては注意しておく必要があるでしょう。
子どもに悪影響が及ぶ可能性
極端に頻度を減らすと、子どもにも悪影響が及ぶ可能性も否定できません。
面会交流は一般的には子どもの健全な成長にとって重要なものと考えられています。
そのため、正当な理由がないにもかかわらず、面会交流を年1回などに制限するなどして、親子の交流を長期間断つことは、一般的には子どものためにはなりません。
子どもの年齢が小さい場合は、非監護親との交流が長期間途絶えると、非監護親の記憶が薄れて、せっかく形成された親子の親愛関係も失われてしまうこともあります。
そうすると、子どもから良好な親子関係を築く機会を奪うことにもなりかねません。
リスクへの対処法
養育費が支払われない場合は法的措置をとる
先にも述べたように、面会交流と養育費は連動するものではありません。
そのため、養育費が支払われない場合は、面会交流の実施・不実施にかかわらず、相当額の養育費を支払うよう請求することができます。
具体的には、家庭裁判所に養育費請求調停や強制執行(養育費の金額を定めた公正証書、調停調書、審判書、判決書がある場合)を申し立てることになります。
もっとも、いきなり裁判所を利用するのではなく、まずは弁護士を間に入れて、内容証明郵便を送付して請求したり、交渉したりすることで、任意に支払われるようになる場合もあります。
また、最適な請求方法の判断や養育費の適正額の算定については、専門知識が不可欠となります。
そのため、お困りの場合は、まずは離婚問題に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
面会交流に詳しい弁護士に相談する
面会交流の頻度を減らしたい場合は、面会交流に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士が間に入り、現状の問題点などを整理してお伝えすることで、相手の納得も得られてトラブルを防ぐことができるケースも多いです。
また、万一、養育費の不払い、親権者等の変更の申立て、損害賠償請求などがされた場合は、弁護士が就いていれば速やかに法的対処をすることが可能です。
面会交流の回数についてのQ&A
面会交流の回数を守らないと罰金?
調停や審判で回数を決めた場合は、その回数を守らないと金銭の支払いを命じられることがあります。
調停や審判で面会交流の頻度について取り決めがされたときは、監護親が決められた回数のとおりに面会交流に応じない場合、非監護親は強制執行を申し立てることができます。
面会交流の場合の強制執行は、「不履行1回につき〇万円支払え」という形で強制金を課して心理的に圧迫して履行を促すという形で行われます。
もっとも、上記のように強制執行をするには、面会交流の内容が特定されている必要があります。
例えば、頻度に関して言えば、「月1回程度実施する」では不十分で、「月1回第2土曜日に実施する」というように特定されている必要があります。
なお、面会交流の不履行は犯罪ではないので、刑罰は科されません。
そのため、強制金は厳密には「罰金」ではありませんが、心理的圧力をかけるという点では罰金と同じような役割を果たしているといえます。
面会交流が月2回は多すぎる?
月1回とするのが妥当なケースが多いことからすると、月2回では多すぎるといえるケースも多いと考えられます。
もっとも、面会交流の適切な頻度は、子どもの年齢や生活状況・監護状況などによって異なります。
また、面会交流の時間・場所・方法などによっても、適切な頻度は異なります。
そのため、月2回が多すぎるかどうかは、ケースによります。
現在、月2回実施しており、それが子どもの利益に適っており、かつ、ご自身(監護親)にとっても過度な負担とならずに継続していくことができているのであれば、月2回は妥当な頻度で、多すぎるということはないでしょう。
一方、月2回の実施が子どもの生活ペースを妨げていたり、子どもに無理をさせている状態になっていたり、ご自身にとって肉体的・精神的に大きな負担となっていたりするのであれば、多すぎる状態といえます。
面会交流を減らすと嫌がらせを受けないか?
面会交流を減らすことに納得しない相手が、養育費の減額その他様々な形で嫌がらせをしてくる可能性は一般に否定できるものではないでしょう。
頻度を減らすことに相手が納得せず、嫌がらせが想定できるような場合は、弁護士にご相談ください。
弁護士が間に入ることで、相手も冷静になり、トラブルを防止できることは多いです。
万一、養育費の減額やその他の嫌がらせを受けた場合も、弁護士がついていれば速やかに法的な対処をすることができます。
まとめ
以上、面会交流を減らす方法、リスク、その対処法などについて解説しましたが、いかがだったでしょうか。
事案によりますが、多くのケースでは面会交流の頻度は月1回程度が妥当で、月2回以上になると多すぎると感じる方は多いと思われます。
面会交流が多すぎると感じる場合は、一方的に減らすのではなく、相手との協議、弁護士を間に入れての交渉、面会交流調停・審判、ADRなど、具体的な状況に適した対処が必要になります。
非監護親は、もっと子どもと会いたいという気持ちが強く、頻度を減らすことに不満を抱くことも多いです。
そのため、適切に対処をしないとトラブルに発展する場合もあるので注意が必要です。
お困りの場合は、面会交流に詳しい弁護士にご相談ください。
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